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鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2024[第2版]
商品情報
内容
システマティック・レビューが困難な臨床疑問、今後の重要課題に対してもコラム形式等で解説。鼠径ヘルニアのほか大腿ヘルニア、小児ヘルニアも取り上げ、本邦の実情に即したガイドラインとなった。
日本ヘルニア学会2021年版鼠径部ヘルニア分類に関するCQも掲載。
序文
発刊にあたって
ヘルニア手術は外科医にとっての登竜門であり、一度は必ずメスを握る手術である。その歴史は古く、外科学の歴史そのものとさえ言われている。19世紀以降、多くのレジェンド外科医たちにより様々な組織縫合法が考案されたが、その後人工物を用いた修復術が始まると、従来の組織縫合法とともに多くの術式が乱立することとなり、何が適切な手術なのかという点において混乱を招いた時期があったのは事実である。
そのような状況の中で、ヘルニア診療を学問的に議論し、正しい方向性を導こうとする動きが生まれ、欧州、米国に続き我が国でも2003年日本ヘルニア研究会が、初代理事長故冲永功太先生のリーダーシップのもと発足し、2008年日本ヘルニア学会へ移行した。この時期に、冲永先生より鼠径部ヘルニア分類の作成と鼠径部ヘルニア診療ガイドラインの作成が提唱された。2009年欧州では統一したガイドラインがヨーロッパヘルニア学会(EHS)から公表されたが、我が国の実情にそぐわない部分もあり、第2代理事長である柵?信太郎先生をガイドライン委員長として作成を開始した。その後、2015年日本ヘルニア学会より「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2015」が発刊された。このガイドラインは、鼠径ヘルニアだけでなく、大腿ヘルニアや小児鼠径ヘルニアを内容に含めたものであり、すべての年齢を対象とした世界初のガイドラインであった。
その後、EHSが主導した“International guidelines for groin hernia management”が2018年に発表され、その後も更新されていく状況の中、我が国のガイドラインをどうしていくかの議論がなされたが、第3代理事長である早川哲史先生のもと、やはり我が国の実情に合ったガイドラインの作成が必要であるとの結論に至り、第 2 版の作成が開始された。当初は筆者がガイドライン委員長を務めたが、その後井谷史嗣先生に引き継がれ完成に至った。この場をお借りして、委員長の井谷史嗣先生と前回に引き続き最大級の貢献をされた嶋田元先生をはじめ作成に尽力していただいたすべての外科医の皆様に感謝申し上げたい。
最後に、このガイドラインを読まれる先生方にぜひお伝えしたいことがある。ガイドラインはあくまで現時点で最も評価されている診療指針に過ぎない。外科学の中で、“minor surgery”と言われているヘルニア診療でさえ日進月歩であり、常に進化している。このガイドラインを「入口」として用い、0.1%の改善を求めて日々の診療に当たっていただきたい。特に、若手外科医の先生方は、最も身近なヘルニア診療を通じて学問的手法を学び、次のステップに進み、外科学の進歩に貢献してほしいと願っている。してガイドラインを「出口」として使わないことを切望する。
一般社団法人 日本ヘルニア学会
理事長 蜂須賀 丈博
発刊にあたって
2022年に日本ヘルニア学会理事に就任したと同時に、蜂須賀丈博理事長のご指示でガイドライン委員会の委員長を拝命したことが、ガイドライン改定作業にかかわるきっかけでした。その後日本ヘルニア学会の一般社団法人化、ガイドライン委員会からガイドライン作成検討委員会への変更に伴う委員の変更など大きな変革を経たこともあり、改定作業に予想以上の時間を要しましたが、何とか発刊に至ったことは大きな喜びであります。
2024 年版のガイドラインでは、大腿ヘルニアも含む鼠径部ヘルニアと小児分野を広くカバーするという初版の特徴は継続したうえで、より詳細なデータ解析を行うために新たにメタアナリシスを行っています。結果としてクリニカルクエスチョン(CQ)としては、成人、小児合わせて32カテゴリーで、2015年版の 40カテゴリーに比較してやや少なくなってはいるものの、ページ数は106ページから20ページほどの増加となっています。作成に携わっていただいた関係者の方々には、大変な作業であったにもかかわらず、また日常診療などでご多忙の中、快くご協力いただいたことに心よりお礼申し上げます。
本ガイドラインは、ガイドライン評価部会の先生方の評価の後に、パブリックコメントを経て発刊されるものですが、評価部会より、“ガイドライン作成にあたり一般人、生命倫理の専門家、メディア代表者、法律の専門家が入るべきである”とのご指摘がありました。
また、“内容が外科医を対象としたCQに偏っており、外科医以外の医師の参考にもなるような、鼠径部ヘルニアの総論的な視点を含むCQも必要である”とのコメントもいただきました。いずれも的を射たご意見であり、今回のガイドラインに不足している部分であることは否めないと考えています。これらに関しては、現時点では十分な改善に至っていないのが現状であり、今後の課題として継続的に検討させていただきたいと存じます。加えて、発刊後もみなさまのご評価をいただき、よりよいガイドラインの作成・改訂を目指したいと考えておりますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
一般社団法人 日本ヘルニア学会
ガイドライン作成検討委員会
委員長 井谷 史嗣
目次
本ガイドラインについて
本ガイドラインの目的、テーマ
本ガイドラインの対象患者
本ガイドラインの利用者
ガイドラインの使用上の注意点
責任
本ガイドライン作成における資金
利益相反
ガイドライン作成方法
ガイドライン評価方法
使用した推奨の方向性とエビデンスの確実性
旧方式での推奨提示
コラム
用語・略語の定義と概念
今後のガイドラインの改訂について
鼠径部ヘルニア診療ガイドライン クリニカルクエスチョンと推奨一覧
各論
成人-鼠径ヘルニア発症における危険因子
成人-大腿ヘルニア発症における危険因子
成人-術前診断に必要な検査
成人-鼠径部ヘルニア分類
成人-適応-症候性・無症候性鼠径ヘルニアにおける治療オプション
成人-適応-症候性・無症候性大腿ヘルニアにおける治療オプション
成人-鼠径ヘルニアの外科治療
成人-大腿ヘルニアの外科治療
成人-治療オプションの個別性
成人-Occultヘルニア
成人-日帰り手術
成人-メッシュ材質
成人-メッシュ固定
成人-予防的抗菌薬
成人-麻酔
成人-周術期管理と指導
成人-慢性疼痛-予防と治療
成人-再発鼠径ヘルニア
成人-鼠径部ヘルニアの緊急手術
成人-トレーニングとラーニングカーブ
成人-専門施設とヘルニア専門医
成人-コスト
成人-症例登録
成人-鼠径部ヘルニアの健康アウトカムと質評価
小児-術前診断に必要な検査
小児-鼠径部ヘルニア分類
小児-適応-症候性・無症候性鼠径ヘルニアにおける治療オプション
小児-鼠径ヘルニアの外科治療
小児-日帰り手術
小児-周術期管理と指導
小児-麻酔
小児-併発症の予防と治療
小児-トレーニングとラーニングカーブ
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書籍情報
- ISBN:9784307204743
- ページ数:144頁
- 書籍発行日:2024年5月
- 電子版発売日:2024年5月21日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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