がんのリハビリテーション診療ガイドライン 第2版

  • ページ数 : 320頁
  • 書籍発行日 : 2019年6月
  • 電子版発売日 : 2019年12月4日
3,850
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商品情報

内容

“がんと共存”する時代、切れ目のない患者ケアのために、がんのリハビリテーション診療の拠り所となる1冊。

わが国では、国民の2人に1人が生涯のうちに悪性腫瘍(以下、がん)に罹患し、3人に1人ががんで死亡する。早期発見や治療法の進歩により生存率は向上し、がん経験者(サバイバー)は今後、年に約60万人増えることが予測されており、がんが“不治の病”であった時代から、“がんと共存”する時代となりつつある。
初版発刊から6年、新たな知見を加え、より現状に即したガイドライン。

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序文

発刊によせて

わが国では、国民の2人に1人が生涯のうちに悪性腫瘍(以下、がん)に罹患し、3人に1人ががんで死亡する。早期発見や治療法の進歩により生存率は向上し、がん経験者(サバイバー)は今後、年に約60万人増えることが予測されており、がんが"不治の病"であった時代から、"がんと共存"する時代となりつつある。

2006年に制定された「がん対策基本法」においては、病状、進行度に合わせてその時点で最善の治療やケアを受ける権利が患者にあると謳われているが、現実には、治癒を目指した治療からQOLを重視したケアまで切れ目のない支援をするといった点で、今の日本のがん診療は未だ不十分である。

がん患者にとっては、がん自体に対する不安は大きいが、がんの直接的影響や手術・化学療法・放射線治療などによる身体障害に対する不安も同じくらい大きい。しかしこれまで、がんそのもの、あるいはその治療過程において受けた身体的なダメージに対しては、積極的に対応がなされてこなかった。その一因は、がん患者のリハビリテーション治療に関する診療ガイドラインが存在しないため、適切なリハビリテーションプログラムが組み立てられないことにあった。

そこで、2010年度から2012年度までの3年間、厚生労働科学研究補助金(第3次対がん総合戦略研究事業)「がんのリハビリテーションガイドライン作成のためのシステム構築に関する研究(主任研究者 辻哲也)において研究事業が実施され、日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会 がんのリハビリテーションガイドライン策定委員会と協働して、原発巣や治療的介入別に網羅された診療ガイドラインの策定作業に取り組み、2013年4月に「がんのリハビリテーションガイドライン」が公開された。本ガイドラインは書籍としての販売(金原出版)とともに、Minds診療ガイドラインライブラリからフリーでダウンロード可能である。

本ガイドライン策定を機に、2013年10月に日本リハビリテーション医学会は、日本癌治療学会がん診療ガイドライン委員会にリハビリテーション分科会として参画することが承認された。本ガイドラインは同学会ホームページに掲載され、わが国のがん診療ガイドラインの一翼を担っている。なお、同学会がん診療ガイドライン評価委員会による審査では、全体評価で7点中6点、個々の評価項目においても高評価を得た。また、2014年7月には、Minds(公益財団法人日本医療機能評価機構)ホームページへの掲載も開始された。

初版の診療ガイドライン策定から3年が経過したことから、今回、2016年度から2018年度までの3年間、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)革新的がん医療実用化研究事業 外来がんリハビリテーションの効果に関する研究(研究開発代表者 辻哲也)の事業の一環として、日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会 がんのリハビリテーションガイドライン改訂委員会と協働して、がんのリハビリテーション診療ガイドラインの改訂作業に取り組んだ。

初版は「診療ガイドライン作成の手引き2007」に準拠したが、改訂版ではGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)の手法を取り入れた「Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2017」に基づいて、診療ガイドラインの構成や推奨の強さを決定した。初版では、さまざまなバイアスリスクを排除すべくランダム化比較試験、メタアナリシス、システマティックレビューの結果を重んじて推奨を行ったが、改訂版では、リハビリテーション治療の益と害のバランス、患者の価値観や好み、コスト(患者の負担)や臨床適応性(全国の医療施設で実施可能か)を十分に勘案し、多職種の医療職・がん患者団体代表のがんサバイバーも含む委員で構成された推奨決定会議での投票により推奨を決定した点が、初版と大きく異なる点である。

工程表に則って、原発巣・治療目的・病期別に章立てされた「がんのリハビリテーションガイドライン(素案)」が作成され、リハビリテーション医学会ホームページでの公開とパブリックコメント募集を経て、必要な改訂が行われた後、このたび診療ガイドラインとして出版を迎えることができた。

医療行政においては、2016年12月に成立したがん対策基本法改正法の第17条では「がん患者の療養生活の質の維持向上に関して、がん患者の状況に応じた良質なリハビリテーションの提供が確保されるようにすること」が新たに盛り込まれ、2017年度から開始された第3期がん対策基本計画において、ライフステージやがんの特性を考慮した個別化医療の必要性が重点課題となるなかで、がんリハビリテーションは重要な施策のひとつと認識されるに至り、まさにこれから各都道府県単位でさまざまな取り組みが始まろうとしている。

ばらつきなく、質の高いがんリハビリテーション医療を全国で提供するためには、一般市民への啓発活動、患者会との協力体制、リハビリテーション関連の学術団体が中心となった普及活動・臨床研究発展のための取り組み、リハビリテーション専門職養成校の教育体制の充実、がん診療連携拠点病院を中心としたリハビリテーションスタッフ間の交流、がんリハビリテーション研修会の拡充等が依然として課題となっている。

全国のがん医療に携わる方々に本診療ガイドライン改訂版を活用していただき、症状緩和や心理・身体面のケアから療養支援、復職支援などの社会的な側面のサポート体制が構築され、治癒を目指した治療からQOLを重視したケアまで切れ目のない支援をすることが可能となることを期待したい。

本研究の成果が、「がん対策基本法」において謳われている「がん患者の療養生活の質の維持向上」が具現化される一助となることを願うとともに、現場からのフィードバックに基づいて定期的な改訂を加え、より実践的な診療ガイドラインに育てていきたいと考えている。読者諸氏からの忌憚のないご意見、叱咤激励をいただければ望外の喜びである。


2019年5月

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED) 革新的がん医療実用化研究事業

外来がんリハビリテーションの効果に関する研究 研究開発代表者

公益社団法人 日本リハビリテーション医学会 診療ガイドライン委員会

がんのリハビリテーション診療ガイドライン改訂委員会 委員

辻 哲也

目次

本診療ガイドラインについて

第1章 総論・評価

CQ 01:がん患者のリハビリテーションに関する診療ガイドラインは存在するか?

CQ 02:がん患者の身体機能,日常生活動作(ADL),QOL 評価の方法は?

第2章 肺がん

CQ 01:肺がん患者に対して,術前にリハビリテーション治療(運動療法,呼吸リハビリテーション)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 02:肺がん患者に対して,術後にリハビリテーション治療(運動療法)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

第3章 消化器がん

CQ 01:消化器がんで腹部手術を行う予定の患者に対して,術前にリハビリテーション治療(運動療法,呼吸リハビリテーション)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 02:消化器がん術後患者に対して,リハビリテーション治療(運動療法)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

第4章 前立腺がん

CQ 01:前立腺がん患者に対して,リハビリテーション治療(運動療法)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 02:尿失禁のリスクがある前立腺がん術後患者に対して,リハビリテーション治療(骨盤底筋筋力訓練)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

第5章 頭頸部がん

CQ 01:頭頸部がんに対する治療(手術,化学放射線療法)が行われた患者に対して,リハビリテーション治療を行った場合にその治療効果を確認する評価の方法は?

CQ 02:舌がん・口腔がんに対する手術が行われる患者に対して,術後のリハビリテーション治療(摂食嚥下療法)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 03:咽頭がん・喉頭がんに対する手術が行われる患者に対して,術前後にリハビリテーション治療(摂食嚥下療法)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 04:頭頸部がんに対する放射線療法中・後の患者に対して,リハビリテーション治療(摂食嚥下療法)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 05:舌がん・口腔がんに対する手術が行われる患者に対して,術後のリハビリテーション治療(音声言語訓練)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 06:咽頭がん・喉頭がんに対する手術が行われる患者に対して,術後のリハビリテーション治療(音声言語訓練)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 07:頭頸部がんに対する放射線療法中・後の患者に対して,リハビリテーション治療(音声言語訓練)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 08:頭頸部がんに対する頸部リンパ節郭清術が行われる患者に対して,術後のリハビリテーション治療(上肢機能訓練)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 09:頭頸部がんに対する放射線療法中・後の患者に対して,リハビリテーション治療(運動療法)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

第6章 乳がん・婦人科がん

CQ 01:乳がん患者に対して,術後にリハビリテーション治療(肩関節可動域訓練など)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 02:乳がん術後の患者に対して,積極的な肩関節可動域訓練を術後5〜8日目から開始することは,術直後から開始する場合に比べて推奨されるか?

CQ 03:乳房再建術後の患者に対して,リハビリテーション治療(肩関節可動域訓練など)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 04:化学療法・放射線療法中の乳がん患者に対して,リハビリテーション治療(運動療法)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 05:治療終了後の乳がん患者(サバイバー)に対して,リハビリテーション治療(運動療法)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 06:乳がんによる慢性疼痛がある患者に対して,リハビリテーション治療(運動療法)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 07:がんやがん治療に関連した認知機能障害がある乳がん患者に対して,リハビリテーション治療(認知機能訓練)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 08:乳がん術後でリンパ浮腫の危険性がある患者に対して,リハビリテーション治療を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 09:肥満がある治療終了後の子宮体がん患者(サバイバー)に対して,リハビリテーション治療(運動療法)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 10:化学療法中の卵巣がん患者に対して,リハビリテーション治療(運動療法)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 11:婦人科がん術後で,尿失禁もしくはその危険性がある患者に対して,リハビリテーション治療(骨盤底筋筋力訓練)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

第7章 骨軟部腫瘍

CQ 01:四肢の悪性腫瘍に対して,手術が実施される場合,患肢温存手術を行うことは,四肢切断術を行う場合に比べて推奨されるか?

CQ 02:四肢原発骨軟部肉腫に対する患肢温存手術を実施する患者に対して,液体窒素または放射線あるいは加温処理骨による再建を行うことは,腫瘍用人工関節を使用する場合に比べて推奨されるか?

CQ 03:骨転移を有する患者に対して,病的骨折や脊髄圧迫による麻痺などのリスクを予測するための評価を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 04:四肢長幹骨に骨転移を有する患者に対して,病的骨折が生じた後に手術を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 05:四肢長幹骨骨転移による切迫骨折の患者に対して,病的骨折が生じる前に予防的な手術を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 06:脊椎転移による麻痺の症例に対して,手術施行を検討することは,手術施行を検討しない場合に比べて推奨されるか?

CQ 07:骨転移によりADL やQOL が障害されている患者に対して,リハビリテーション治療(運動療法)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 08:骨転移を有し病的骨折や脊髄圧迫による麻痺の危険性がある患者に対して,装具を使用することは,使用しない場合に比べて推奨されるか?

CQ 09:骨転移を有する患者に対して,ADL 向上のために放射線療法を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 10:骨転移を有する患者に対して,リハビリテーションゴール設定のために生命予後の予測評価法を用いることは,用いない場合に比べて推奨されるか?

第8章 脳腫瘍

CQ 01:脳腫瘍患者に対して,リハビリテーション治療を行った場合に,その治療効果を確認する評価の方法は?

CQ 02:運動障害を有する脳腫瘍患者に対して,リハビリテーション治療を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 03:脳腫瘍の高次脳機能障害に対して,リハビリテーション治療を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

第9章 血液腫瘍・造血幹細胞移植

CQ 01:血液腫瘍に対して造血幹細胞移植が行われた患者に対して,造血幹細胞移植中・後にリハビリテーション治療(運動療法)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 02:血液腫瘍に対して造血幹細胞移植が行われ,造血幹細胞移植後に認知機能障害を生じた患者に対して,リハビリテーション治療(神経認知機能訓練)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 03:血液腫瘍に対して造血幹細胞移植が行われる予定の高齢患者に対して,造血幹細胞移植前に高齢者総合的機能評価(サルコぺニア,フレイルの評価を含む)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

第10章 化学療法・放射線療法

CQ 01:化学療法・放射線療法中の患者に対して,リハビリテーション治療(運動療法)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 02:化学療法・放射線療法中もしくは治療後のがん患者に対して,化学療法・放射線療法中・後に物理療法(寒冷療法,電気鍼治療)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 03:化学療法・放射線療法中もしくは治療後に認知機能障害のあるがん患者に対して,リハビリテーション治療(運動療法)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 04:化学療法・放射線療法中もしくは治療後に認知機能障害のあるがん患者に対して,リハビリテーション治療(認知機能訓練)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 05:化学療法・放射線療法施行予定の高齢患者に対して,治療前の高齢者総合的機能評価を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 06:化学療法・放射線療法中の患者に対して,運動療法と併せて栄養療法を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 07:化学療法・放射線療法後の患者に対して,運動療法と併せて栄養療法を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

第11章 進行がん・末期がん

CQ 01:根治治療対象外の進行がん患者に対しても,監督下での運動療法を行うことは,行わない場合と比べて推奨されるか?

CQ 02:緩和ケアを主体とする時期の進行がん患者に対して,病状の進行や苦痛症状に合わせた包括的リハビリテーション治療を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 03:緩和ケアを主体とする時期の進行がん患者に対して,疼痛や呼吸困難などの症状緩和を目的とした患者教育を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 04:疼痛(内臓痛を除く)を有するがん患者に対して,疼痛緩和を目的とした経皮的電気神経刺激(TENS)を行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 05:緩和ケアを主体とする時期の進行がん患者に対して,症状緩和を目的としたマッサージを行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

CQ 06:進行がん患者に対して,リハビリテーション専門職を含む多職種チーム医療・アプローチを行うことは,行わない場合に比べて推奨されるか?

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書籍情報

  • ISBN:9784307750561
  • ページ数:320頁
  • 書籍発行日:2019年6月
  • 電子版発売日:2019年12月4日
  • 判:A4判
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