脳卒中の機能評価―SIASとFIM[応用編]

  • ページ数 : 164頁
  • 書籍発行日 : 2020年5月
  • 電子版発売日 : 2021年2月26日
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商品情報

内容

脳卒中機能評価におけるバイブル、SIASとFIM[基礎編]の発刊より8年。科学的な機能評価法の重要性が高まるなか、リハビリテーション医療者が正確な機能評価を行うことを目的として、[応用編]が刊行された。
[応用編]においては、SIAS、FIMの応用、最新の研究業績を掲載するほか、FIM講習会意見交換会での意見を踏まえ、多くの医療者が疑問をもつ評価の具体的方法について、わかりやすく解説している。

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序文

はじめに

『脳卒中の機能評価SIASとFIM[基礎編]』(以下、「基礎編」と略す)が2012年に出版されてから、約8年の歳月が過ぎました。その間、我が国においては、脳卒中をはじめとするリハビリテーション医学・医療の治療効果に関して、科学的な機能評価法が強く求められるようになりました。高齢・少子化による医療介護費用の増加が年々問題視されており、リハビリテーション医療による治療効果の客観的なエビデンスを示すことが診療報酬制度の中に盛り込まれたことも、その要因の一つと言えます。そこで、リハビリテーション医療関係者がより正確に機能評価を行えるよう、本書、『脳卒中の機能評価SIASとFIM[応用編]』(以下、「応用編」と略す)を発刊することといたしました。


脳卒中機能評価法(SIAS:Stroke Impairment Assessment Set)ならびに、機能的自立度評価法(FIM:Functional Independence Measure)の基礎的内容と歴史的経緯については、既に「基礎編」に詳細に述べられており、「応用編」では概略を記載することにとどめ、実践的かつ科学的な内容といたしました。また、機能障害の評価法であるSIAS、能力低下の評価法であるFIMともに、その有用性は、我が国での『脳卒中治療ガイドライン』の初版(2004)から最新版(2015)にも取り上げられています。脳卒中治療法と合わせて、SIASとFIMの評価内容の改変や進展を記載することも、重要なことと考えました。


本書「応用編」では、SIASに関しては「基礎編」に掲載しなかった機能評価法としての信頼性・妥当性の検証について詳細に記しております。さらに、Brunnstrom StageやMotricity Indexなどの機能評価法との比較、SIASを使用して検討されたリハビリテーション医療による治療効果など、最新の研究業績をまとめております。


ご承知のように、FIMは米国ニューヨーク州立大学バッファロー校のUDS(Uni form Data System) から、1987年に初版が出版されました。1994年の第4版から知的財産権が設定されましたため、我が国では第3版を使用しています。FIMの採点基準に関しては、ADLの評価項目や採点基準(1点~7点の採点)には修正や変更を許可しないことをUDSから求められていました。そこで、私たちは倫理的観点からUDSの方針を遵守し、我が国における評価の具体的方法の統一を計る目的で、2009年から毎年1回、FIM意見交換会(現在、リハビリテーション機能評価研究会ならびにADL評価法FIM講習会意見交換会)を開催しております。事務局は、兵庫医科大学リハビリテーション医学教室に設置いたしました。


一方、米国では2002年に、高齢者・障害者向け公的医療保険制度(Medicare)による入院費算定で、FIMが採用されることとなりました。従来の能力評価方法との整合性を図る観点から、UDSは一部のFIM項目(トイレ動作、歩行など)の評価に0点(患者がADLで「していない」項目に適応)と記載するという軽微な変更を行ったと伺っております。当然のことながら、我が国で使用しているFIMの採点基準に変更を加えることは認められません。しかしながら、30年近いFIM利用の検討の歴史から、日本の生活環境に合わせてFIM評価法に微細な改変を行うことも検討中です。本書では、ADL評価法FIM講習会意見交換会の意見を踏まえて、多くの方々が疑問に感じている評価の具体的方法について、わかりやすく解説しております。


以上のような経緯をもとに、本書「応用編」では、第1章:脳卒中機能評価法(SIAS)の応用、第2章:機能的自立度評価法(FIM)の応用、第3章:機能的自立度評価法(FIM)Q&A、第4章:機能的自立度評価法(FIM)採点例の4章に分けて記載いたしました。


本書「応用編」が「基礎編」と同様に、我が国のリハビリテーション医療に携わる医師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、看護師、介護福祉士(CW)のみならず、脳卒中の治療と介護を担当する医療福祉専門職の方々に利用していただければ幸いです。



2020年5月

編著者を代表して 千野 直一

目次

1 章.脳卒中機能評価法(SIAS)の応用

◎1-1 SIAS の概要と特徴

 1-1-1 SIAS の概要

 1-1-2 SIAS の特徴

◎1-2 SIAS を使った研究

 1-2-1 SIAS の信頼性・妥当性の検証

 1-2-2 脳卒中機能障害の経時変化

 1-2-3 機能障害と能力低下との関係

 1-2-4 機能障害による能力の帰結予測

 1-2-5 SIAS を用いたその他の研究

2 章.機能的自立度評価法(FIM)の応用

◎2-1 FIM を使った研究

 2-1-1 FIM の信頼性および妥当性

 2-1-2 FIM 改善の阻害因子

 2-1-3 FIM 項目別難易度

 2-1-4 FIM を用いた改善指標

 2-1-5 FIM 帰結予測

 2-1-6 FIM の経時変化

 2-1-7 転倒とADL との関係

 2-1-8 FIM を用いた訓練量などの治療効果検証

3 章.機能的自立度評価法(FIM)Q&A

◎3-1 総 論

  Q 01:「割合を計算する場合」と「低い方の点数を採用する場合」の違い

  Q 02:複数の評価項目で減点対象となる場合

  Q 03:介助しているのに、5 点までしか下がらない場合

◎3-2 セルフケア

 3-2-1 食事(eating)

  Q 04:食事の形態による評価の違いは?

  Q 05:義歯などの補助具を使用する場合の採点は?

  Q 06:食事中の介助による減点は?

 3-2-2 整容(grooming)

  Q 07:5 つの要素の介助量が異なる場合は?

  Q 08:口腔ケアの手段による違いは?

 3-2-3 清拭(bathing)

  Q 09:入浴時の補助具、介助についての採点は?

  Q 10:平均を計算する場合、低い方の点数を採用する場合の違いは?

 3-2-4 更衣(dressing)

  Q 11:病衣の扱いはどう考える?

  Q 12:平均を計算する場合、低い方の点数を採用する場合の違いは?

  Q 13:着脱が難しい衣服や環境についての採点は?

  Q 14:紙オムツ、リハビリパンツ、尿とりパッドの違いは?

  Q 15:更衣動作中に関連内容を介助した場合は?

 3-2-5 トイレ動作(toileting)

  Q 16:3 つの要素の介助量が異なる場合は?

  Q 17:紙オムツ、リハビリパンツ、尿とりパッドを使用している場合の採点は?

  Q 18:トイレ動作中に関連内容を介助した場合は?

◎3-3 排泄コントロール

 3-3-1 排尿管理(bladder management)

  Q 19:排尿管理における介助量の評価とは?

  Q 20:昼間と夜間で排尿方法が異なる場合は?

  Q 21:カテーテル管理が必要な場合の採点は?

 3-3-2 排便管理(bowel management)

  Q 22:排便管理も排尿管理と同様に考えるのか?

  Q 23:坐薬、浣腸、下剤の採点上の扱いは?

  Q 24:ストーマを使用している場合の採点は?

◎3-4 移乗

 3-4-1 移乗:ベッド・椅子・車椅子(transfer:bed, chair, wheelchair)

  Q 25:ベッド移乗での減点対象は?

  Q 26:介助量が変動する場合の採点は?

 3-4-2 移乗:トイレ(transfer:toilet)

  Q 27:トイレ移乗での減点対象は?

  Q 28:紙オムツを使用している場合の採点は?

 3-4-3 移乗:浴槽・シャワー(transfer:tub, shower)

  Q 29:介護浴槽(機械浴)使用の場合の採点は?

  Q 30:シャワーチェアを使用する場合の採点は?

◎3-5 移動

 3-5-1 移動:歩行・車椅子(locomotion:walk, wheelchair)

  Q 31:移動の距離による採点とは?

  Q 32:車椅子と歩行のどちらを採点するか?

  Q 33:日中と夜間、補装具などにより変動する場合の採点は?

  Q 34:歩行には直接関係のない補助具の扱いは?

  Q 35:車椅子移動での方向転換の介助は?

  Q 36:移動における安全性の配慮とは?

 3-5-2 移動:階段(locomotion:stairs)

  Q 37:どんな種類の階段で採点するとよいのか?

  Q 38:昇降する段数による採点とは?

◎3-6 コミュニケーション

 3-6-1 理解(comprehension)

  Q 39:「理解できている」とはどのような状況か?

  Q 40:コミュニケーション手段(手話、筆談など)の扱いは?

  Q 41:「手助けの内容」と「理解できた割合」とは?

 3-6-2 表出(expression)

  Q 42:病前の状態が採点に影響する場合とは?

  Q 43:「表出できている」とはどのような状況か?

◎3-7 社会的認知

 3-7-1 社会的交流(social interaction)

  Q 44:社会的交流の評価における迷惑行為とは?

  Q 45:採点での具体的計算方法は?

 3-7-2 問題解決(problem solving)

  Q 46:問題解決とは、実際に行動すること?

  Q 47:減点の対象となるか迷う場合は?

  Q 48:採点での具体的計算方法は?

 3-7-3 記憶(memory)

  Q 49:FIM の評価における「記憶」とは?

  Q 50:失語症患者の「記憶」の評価は?

  Q 51:採点での具体的計算方法は?

4 章.機能的自立度評価法(FIM)採点例

◎患者1 81 歳、女性(脳出血)

◎患者2 55 歳、女性(くも膜下出血)

◎患者3 72 歳、男性(脊髄損傷)

◎患者4 63 歳、男性(くも膜下出血・脳梗塞)

◎患者5 90 歳、女性(腰椎圧迫骨折)

◎患者6 75 歳、女性(脳出血)

◎患者7 67 歳、男性(脳梗塞)


付録1 SIAS 定義まとめ(簡易版)

付録2 SIAS チャート

付録3 FIM の評価表

付録4 FIM の評価表(記入例)


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書籍情報

  • ISBN:9784307750592
  • ページ数:164頁
  • 書籍発行日:2020年5月
  • 電子版発売日:2021年2月26日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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