湿潤療法の考え方,使い方

  • 書籍発行日 : 2020年6月
  • 電子版発売日 : 2020年5月28日
2,640
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商品情報

内容

近年広まった湿潤療法は,創傷・熱傷をより短期間で瘢痕を最小限にとどめて治癒させることも可能にした一方,却って悪化させてしまうような誤った方法が独り歩きしている.本書では「キズ・やけど外来」で湿潤療法を実践し,救急医でありながら創傷や熱傷の初期治療から治癒まで対応してきた筆者が本来の湿潤療法の考え方と方法について執筆.感染を防ぎ安全に湿潤療法を行うためのドレナージなどについて解説する.

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序文

はじめに

「湿潤療法」としてこの治療法を世に広められたのは,現在は都内で開業されておられる夏井睦先生です.かつて先生の御経験された患者の中には,従来の治療法で治療困難な症例があり,手探りの中で治療を続けていると,長期経過で治癒されるものがあったようです.そのような症例を1つ1つご検討されて,湿潤療法の理論を確立し,そして長年にわたり診療に従事されておられます.診療された今までの多くの実績症例は夏井先生のHP「新しい創傷治療」内で公開されており,創傷や熱傷などを受傷された多くの患者の希望となり,また治療に当たる医師にも大変参考になっています.一方で,この「湿潤療法」はその後,治療法が独り歩きし,もはや原型をとどめていない変法も世に出回っているのも事実です.もちろん,そのような治療法を続けると創部が良くなるどころか悪化する可能性もあり,もはや安全な治療法ではありません.しかし,本来の湿潤療法は創傷や熱傷に対して,本当にきれいな状態で治癒させることができ,たとえ深い傷であっても,瘢痕は最小限に止めることが可能です.また消毒剤を使用しないため痛みも最小限で済み,処置後の痛みはまず気になりません.今まで植皮が必要と思われていた創傷や熱傷もそれは必要なくなり,医療費も削減.しかもきちんと処置できるのであれば自宅でも治療が可能であり,簡便さに反してそのポテンシャルは大きいのです.

実は当直帯で来院される創傷患者,熱傷患者をどのように処置すべきかということは,現場の医師には悩ましい問題なのです.そして一般の方には意外かもしれませんが,医学部で創傷・熱傷の処置方法など詳しく習わないのが実情です.私自身も研修医時代,決まった型の処置指示を受けたことはありませんでした.個人でインターネットで調べたり,医学書籍などを購入したりして処置方法を学びました.そうして出会った本の中に夏井睦先生の本がありましたが,まだ「湿潤療法」が本当に効果のある治療法なのかは自信が持てないままでした.その後,幸いなことに夏井睦先生が以前勤めておられた病院に週1回のペースで約2年の間,その診療を見学させていただく機会に恵まれました.当初は浅い創傷や熱傷を診るだけの外来なのだろうと思っていたのですが,今までの診療スタイルであれば確実に入院治療となるであろう多くの患者を外来で診療されており,しかも日を追うごとにみるみる状態が良くなっていくのを目の当たりにしました.私にとってこれは本当に衝撃的なことでした.なぜこのような治療がここだけで行われているのだろう? もっと広まっていいはずだ,という思いを強くしました.しかし,湿潤療法と付き合っていくに従い,前述のような問題も抱えていること,そしてそれらがある意味,野放しになっている現状も散見されました.「湿潤療法」が今後も臨床で役立てていけるようになってもらわないと,患者に不利益となると思っているのは私だけではないと思います.私はただの一介の救急医に過ぎませんが,創傷・熱傷は現場で日々目にします.以前勤務していた病院では,救急の初療室に「キズ・やけど外来」を併設して,当院に受診された外傷患者は体の部位に関係なく,すべて当科で処置を行っていました.救急医が創傷や熱傷の初期治療から治癒までを診ているのは,全国でも珍しいと思いますが,これらのほとんどが湿潤療法だけで治っていきます.「どうして救急医が湿潤療法の本を書くのか?」

「もっと実績のある先生方ではなく,自分がこのような本を世に出していいのか?」出版のご依頼を受けた際に自問自答しましたが,夏井睦先生の外来で治癒過程を何例も長期に拝見したからこそ,そして自身での治療経験を積んだからこそ,言えることもあると思います.この本は決して完成形ではないと思いながらも,本来ある湿潤療法の方法と考え方を綴ったものです.昔の自分が悩んだこと,躓いたことなどわかる今だから書ける内容にしようと思い,筆を執りました.皆様の「湿潤療法」への理解と日々の診療の一助になれば,これほどうれしいことはありません.


令和2年5月吉日

入江康仁

目次

1章 創傷治療の歴史

A.古代の治療法

B.近世の治療法

C.感染への気付き

D.近代の治療法

E.現代の治療法への歩み

F.現代の治療法へ

2章 皮膚の構造と治癒過程

A.「湿潤療法」とは?

B.皮膚の機能

C.皮膚の構造

D.創傷治癒過程

 1.浅い創の場合

 2.深い創の場合

3章 モイスト・ウント・ヒーリング

A.閉塞性ドレッシング

B.創傷治癒に影響を与える局所因子

 1.湿潤

 2.pH

 3.温度

 4.酸素濃度

C.モイスト・ウント・ヒーリングの限界

4章 湿潤療法

A.陰圧閉鎖療法

B.なぜドレッシング材の選択・交換が必要なのか?

 1.表皮までの出血をきたさない擦過傷など

 2.出血のあるような擦過傷や挫創など

 3.皮下組織まで損傷した挫創など

 4.浸出液が多いII度〜III度熱傷など

C.「死腔」という厄介な空間

D.死腔を作らないとは?

5章 創傷被覆材の種類

A.ポリウレタンフィルム

B.アルギン酸塩被覆材

C.ハイドロコロイド

D.ポリウレタンフォーム

E.プラスモイストⓇ

F.穴あきポリ袋+吸水シート

6章 軟膏剤

A.効果的な軟膏剤とは?

7章 消毒剤

A.消毒剤との付き合い方

8章 ドレナージの概念の重要性

A.一次治癒,二次治癒,三次治癒

B.一次治癒と湿潤療法

C.ドレナージ方法

 1.大きな挫創の場合

 2.小さな挫創,咬傷などの場合

D.ドレナージ処置の適応は?

9章 処置後に処方するとしたら…

A.抗菌薬

 1.抗菌薬はどのようなときに必要か?

B.破傷風トキソイド・テタノブリンIHⓇ

C.鎮痛薬

D.漢方薬

10章 肥厚性瘢痕・ケロイド

11章 症例提示

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書籍情報

  • ISBN:9784498063747
  • ページ数:0頁
  • 書籍発行日:2020年6月
  • 電子版発売日:2020年5月28日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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