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- ぼくらのアルコール診療 シチュエーション別。困ったときの対処法
商品情報
内容
本書では,「非専門医がどこまで診断していいの?」「“ほどほど”ってどれくらい?」「精神科紹介を患者さんに拒否された……」など,総合診療医が直面しがちな状況ごとに,どう対応するとよいかを解説します.総合診療医の目線に立った,総合診療医のための“本当に”使える実践書です.
序文
総合診療医より
日常業務を振り返ると,アルコール問題に触れる機会は,思ったよりもたくさんあることに気づきます.外来では,健康診断の際や,高血圧,糖尿病,うつ病,睡眠障害患者さんのなかに,多量飲酒者が多くいます.救急外来には,急性アルコール中毒,不整脈,交通事故を含む外傷などで,アルコール問題を抱える人が受診します.さらに,入院診療においては膵炎,転倒・骨折,振戦せん妄などについて,訪問診療ではケアマネジャーから大量のビールの空き缶の存在について相談され,頭を悩ませることもあります.小中学校や住民対象の健康講座などもあるでしょうか.酩酊者に苦戦した経験や,二日酔いの同僚医師のサポートに回ったこともあるかもしれません.
日本には,多量飲酒者を含めると1,000万人以上の介入の必要な方がおられ,アルコール問題を適切に認識し,介入・紹介することが総合診療医に期待されています.本書に記載された数多くのアルコール問題への対応方法が,多くの患者さんの幸せに,そして苦しむ家族・周囲の方の涙の数が減ることにつながれば,と切に願っています.
吉本 尚
総合診療医より
私がアルコール医療と連携を自分の医者人生の大きなテーマとした契機は,「こういう知識をもっと早く知っていれば......」という慚愧の念です.志望科ストレート入局が90%以上の時代に,「総合診療もできる精神科医」を目指して,総合内科的ごちゃまぜ研修を2年間一所懸命にやりました.不全感が残ったのは,すべてアルコールがらみのケースで,母校の精神科医局で初期研修をした1年間も,そこは変わりませんでした.しかし,アルコール教育プログラムのなかで回復している患者さんたちに出会って,いろいろな疑問が初めて氷解したのです.
いまだに,「飲んで死ぬのも,その患者さんの選択さ......」という台詞を,医療関係者から聞きます.しかし,本書を手に取られた先生方は,「実はそうではない」と,日々の臨床実践できっと実感してくださるだろうと思います.
小松知己
精神科医より
日本プライマリ・ケア連合学会で「多量飲酒者に対するブリーフ・インターベンション」のワークショップを開催した際に,アルコール問題に熱心に取り組む先生方の多さに,驚いたと同時にほっとした記憶があります.というのも,私自身,総合診療科に身を置いていた時期があり,アルコール問題を抱える人の多さと,対処法を知らない自分自身の腑甲斐なさ,精神科医療に繋ぐことができないもどかしさを痛感していたからです.私は現在,精神科医として精神疾患の予防をテーマに臨床および研究を行っており,アルコール問題の予防にも取り組んでいます.今回の企画の話をいただき,アルコール依存症に特化した専門家ではない私が,編者としてどれだけ役に立てるのだろうかとも思いました.しかしながら,自身の経験から,総合診療医側と精神科医側の両方からの視点を,読者の皆さまに共有していただきたいという思いを込めて,編集いたしました.本書がアルコール医療の発展の一助となりますことを心より願います.
最後に,本書の出版に際しては,多くの方々に大変お世話になりました.出版全般において多大な貢献をいただいた南山堂編集部の方々に感謝の意を表します.また,監修していただきました伴 信太郎 先生,樋口 進先生,ご執筆くださったすべての先生方,本書の出版に当たってたくさんのことをご協力いただきました日本若手精神科医の会の先生方には,この場をお借りして御礼を申し上げます.
久我 弘典
精神科医より
アルコールを専門としない医療スタッフを対象に,アルコールに関する書籍を企画するというお話をいただき,心から感謝申し上げます.通読するだけでなく,その場ですぐに使えるツールとして,外来書棚の必需品を目指そうと思い,作成しました.
皆さまは「教科書どおりに治療したのに,なぜかうまくいかない」という経験はありませんか? だからこそ,指導医はそのあたりを伝えることに尽力するのですが,そういったノウハウは自分の専門分野にとどまってしまいがちです.本書はその傾向を考慮し,臨床現場の困りごとに具体的にかかわる技術を提供することを目標としています.総合診療的な視点,専門医療からみた視点,そして,研修医の視点をバランスよく取り入れたつもりです.研修医の意見は,主に三重県立総合医療センターに勤務する先生方から,指導医のいない場所で,こっそり「現場で困っていること」を教えていただきました.この場を借りて御礼申し上げます.
長 徹二
目次
Ⅰ これだけは知っておきたい!
1 アルコールによる健康障害① 精神科的問題
2 アルコールによる健康障害② 身体合併症
3 アルコール歴のとり方
4 スクリーニングとブリーフ・インターベンション
5 非薬物療法
6 薬物療法 ─離脱期から身体ケアまで─
7 精神科への紹介
8 知っておきたいアルコール問題における多職種連携と教育
9 家族を資源として巻き込んだ治療の枠組み
10 医療者側の「アルコールに関するネガティブな感情」とのつき合い方
Ⅱ お困りシチュエーション別! クイック・リファレンス
A 一般外来
スクリーニング・診断
1 スクリーニングをかけずに痛い目にあった......
2 非専門医がどこまで診断していいの? 本人に「依存症」って伝えていいの?
3 高齢者のアルコール問題にはどう対応したらいいの?
4 生活習慣病患者さんにアルコール問題をみつけた!
5 睡眠障害患者さんにアルコール問題をみつけた!
6 うつ病患者さんにアルコール問題をみつけた!
7 家族には同席してもらったほうがいい?
8 「ほどほど」ってどれくらい?
9 具体的な減酒の方法って?
10 具体的な断酒の方法って?
11 別れ際のひと工夫ってあるの?
12 本人・家族がアルコール依存症だと認めない......
13 家族がお酒を買ってきてしまう......
14 「タバコはやめたが酒はやめない」「酒はやめたがタバコはやめない」「酒もタバコも両方やめない」人にはどう対応したらいいの?
紹介
15 アルコール依存症を疑って精神科に紹介するときには?
16 精神科紹介を本人に拒否された......
17 治療意欲がみられないと精神科に断られてしまった......
その他
18 家族だけが相談に来てしまった!
19 アルコール依存症を抱える人に使わない・処方しないほうがいい薬ってどんな薬?
20 ノンアルコールビールを勧めていいの?
B 救急室(ER)
21 見逃してはいけないアルコール関連疾患にはどんなものがあるの?
22 患者さんが酩酊している場合の対応は?
23 患者さんに離脱症状がみられたら?
24 単純酩酊でER を初回受診した未成年者へはどう指導すればいい?
25 アルコール問題でER を頻回利用する患者さんへはどう指導すればいい?
C 病棟
26 アルコール多飲者が入院してきたら何をすればいい?
27 アルコール問題を抱える人に入院中に精神科受診してもらうとき気をつけるべきポイントって?
28 アルコール問題を抱える人が退院するときにはどう対応すればいい?
29 入院中に患者さんが飲酒した場合にはどう対応すればいい?
D 往診先
30 在宅医として気づくことって?
31 介護職員から利用者のアルコール問題について相談された!
32 介護者にアルコール問題がある場合にはどう対応すればいい?
巻末資料
アルコール依存症を本人・家族に説明する際に使えるツール
全国の精神保健福祉センター
専門医との繋がりをもてる学会・研修
実践! 困ったときの対処法
索引
column
γ-GTP のnon-responder
酒は百薬の長ってホント?
誰でもできる! 二日酔い対処法
依存症治療は何回再飲酒しても回復することができる
これってアルハラ?
私のアルコール失敗談
幹事になったときの心得
飲んでいる人を診療拒否していいの?
「百薬の長」から「60以上の病気のもと」へ
飲みニケーションは本当にいいの?
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書籍情報
- ISBN:9784525203313
- ページ数:253頁
- 書籍発行日:2015年6月
- 電子版発売日:2019年6月7日
- 判:B6変型
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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