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- 神経診察の極意
商品情報
内容
神経診察の理解において重要な神経徴候と神経解剖の知識と相関がわかる書籍となっている.筆者の豊富な経験・知識・知見を盛り込み,これから神経を診る医師に最適な内容になっている.特に本文中に散りばめられた「極意」コーナーは著者でしか語ることが出来ない内容となっており,必見である.
序文
内科学的患者の診察で神経学的検査について論ぜられるようになったのは1800年代後半のこととされ,それ以前の医学ではもっぱら観察による診断がされていたのはJames Parkinsonが1817年に書いた小冊子"An essay on the shaking palsy"のパーキンソン病患者の臨床記載からも明らかである.すなわち患者の手,足を触り,動かし,反射などをみる身体検査法physical examinationは1870~80年頃に始まった.1888年に英国で出版されたGowersの有名な神経学教科書"A Manual ofDiseases of the Nervous System"では症候学の中で症候の検査法として,筋力muscular strength,協調運動coordination,知覚sensory perception,トーヌスtone,振戦tremor,反射reflexes,個々の筋の作用actions of individual musclesがあげられている.現代神経学の創始者といわれるJean-Martin Charcot率いるフランス神経学では臨床徴候と解剖・病理との相関"Methode anatomo-clinique"の優れた研究で神経学の創設者的方向が示され,個々の症候の検査法は詳しく報告されているが,系統的な神経学的検査法は残されていない.米国ではフィラデルフィアの神経学者Millsが1898年に発行した教科書"The Nervous System and its Diseases"の中で神経症候学と検査法について初めて記載している.これらの神経症候に伴う検査法が体系的,系統的に確立したのは1900年に入ってからの英・仏・米の神経学者による多くの業績からであり,1946年にGordon Holmesが発刊した"Introduction to Clinical Neurology"の巻末付記に神経系機能の臨床検査のスキームとして,特殊感覚,脳神経系,運動系,反射,知覚,膀胱・直腸,性的機能の聴取,意識状態および言語をあげて以来,現在我々が一般的に行う神経系の系統的検査法が確立したといわれている.
この手引きは医学部5・6年生および研修医に標準的な神経学的検査法を学んでもらう目的で書かれたものである.筆者は日本の医学部を卒業したが,医学教育で神経学的検査なるものを教えられたことはなかった.立川米国空軍病院でのインターンと内科レジデントのトレーニングで,当時米国での3年間の神経学レジデント修練を終えたばかりの医師達の行う内科学的検査,および神経学的検査の実際を目の当たりにして感激して,その手法に見入ったものである.2年間の研修後筆者も神経科医を生涯の仕事と決め,米国での神経学レジデントおよび臨床研究員(clinical fellow)のキャリアを積み,筆者なりの神経学的検査法を確立した.あくまでも全身身体検査の一部となる神経学的検査ではあるが,詳細で正確な病歴聴取と患者を体系的,系統的にみることで神経疾患の正しい診断ができる神経学的診断法である.Sir Henry Headは神経学の魅力は神経系の構築と機能の原理を日々引き出して,患者に当てはめて科学的に考えることにあると説いたが,これこそ筆者のモットーでもある.
一口メモ
Sir Henry Head(1861-1940)は体性感覚系研究のパイオニアである.彼の残した言葉をここにあげる.
"The charm of neurology, above all other branches ofpractical medicine, lies in the way it forces us into daily contact with principles. A knowledge of the structure andfunctions of the nervous system is necessary to explain the simplest phenomena of disease, and this can be only attainedby thinking scientifically."
2018年1月
廣瀬 源二郎
目次
第一章 病歴
1 正しい病歴のとり方
2 2種類の病歴のとり方
A 時系列順の病歴
B 病因を考える病歴
3 システムレビューの重要性
第二章 神経学的検査法
1 精神状態のみかた
1.意識レベルのみかた
2.見当識
3.記憶
4.言語
5.失認
6.失行
2 脳神経系のみかた
1 第1脳神経:嗅神経(特殊感覚性脳神経)
A 基礎知識
B 検査法
2 第2脳神経:視神経
A 基礎知識
B 検査法
1.視力検査
2.視野検査
3.眼底検査
3 第3脳神経:動眼神経・第4脳神経:滑車神経・第6脳神経:外転神経
A 基礎知識
B 検査法
1.瞳孔検査
2.外眼筋運動検査
4 第5脳神経:三叉神経
A 基礎知識
B 検査法
1.顔面の温痛覚,触覚
2.角膜反射
3.三叉神経第三枝運動枝の検査
4.頤反射
5 第7脳神経:顔面神経
A 基礎知識
B 検査法
1.顔面運動検査
2.味覚検査
6 第8脳神経:内耳神経
A 基礎知識
B 検査法
1.聴覚検査法
2.平衡感覚検査法
7 第9脳神経:舌咽神経および第10脳神経:迷走神経
A 基礎知識
B 検査法
1.軟口蓋・咽頭検査
2.嘔吐反射(咽頭反射)
3.喉頭検査
8 第11脳神経:副神経
A 基礎知識
B 検査法
1.僧帽筋検査
2.胸鎖乳突筋検査
9 第12脳神経:舌下神経
A 基礎知識
B 検査法
3 運動系のみかた
A 基礎知識
B 検査法
1.視診
2.触・打診
3.筋トーヌス検査
4.機能的検査
5.徒手筋力検査
6.不随意運動のみかた
4 深部腱反射のみかた
A 基礎知識
B 検査法
1.頤反射(反射弓:三叉神経下顎枝)
2.上腕二頭筋反射(反射弓:C5-6)
3.上腕三頭筋反射(反射弓:C7-8)
4.腕橈骨筋反射(反射弓:C5-6)
5.指屈曲反射(反射弓:C9-T1)
6.膝蓋腱反射(反射弓:L3-4)
7.くるぶし反射(反射弓:S1-2)
5 表在反射のみかた
A 基礎知識
B 検査法
1.腹部皮膚反射(反射弓:T5-T12)
2.挙睾筋反射(反射弓:L1-L2)
6 病的反射のみかた
1 Babinski徴候(反射)
1.Babinski手技(Babinski JJFF:1857-1932)
2.Chaddock手技(Chaddock CG:1861-1936)
3.Oppenheim手技(Oppenheim H:1858-1919)
4.Gordon手技(Gordon A:1874-1953)
2 Marie-Foix屈筋退避反射
A 基礎知識
B 検査法
3 手掌頤反射
A 基礎知識
B 検査法
4 眉間反射
A 基礎知識
B 検査法
5 把握反射
A 基礎知識
B 検査法
7 感覚系のみかた
A 基礎知識
B 検査法
1.温痛覚試験
2.触覚試験
3.深部感覚検査;位置覚試験
4.深部感覚検査;振動覚試験
5.複合感覚;2点識別覚試験
6.複合感覚;皮膚書字覚試験
7.複合感覚;立体認知試験
8.複合感覚;重量認知試験
9.複合感覚;両側同時刺激試験
8 協調運動のみかた
A 基礎知識
B 小脳協調運動検査法
1.鼻指鼻試験
2.指鼻試験
3.手首回内・回外試験,膝叩き試験
4.踵膝試験(踵脛試験)
5.立位・歩行試験(継ぎ足歩行試験,Romberg試験,tandem Romberg試験)
6.手首回内・回外試験
7.Holmes-Stewart試験
9 姿勢と歩行のみかた
A 基礎知識
B 検査法
1.立位・歩行試験
2.継ぎ足歩行試験
3.片足立ち試験
10 極意:『昏睡患者の神経診察』
1 昏睡患者への救急対応
A 局在症状の有無からみた原因疾患の鑑別
B 肢位からみた病巣診断
C 片麻痺と共同偏視方向の関係からみた病巣診断
D 呼吸パターンからみた病巣診断
E 瞳孔変化からみた局在診断
F 人形の目試験とカロリック試験からみた局在診断
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書籍情報
- ISBN:9784525212315
- ページ数:164頁
- 書籍発行日:2018年4月
- 電子版発売日:2019年2月20日
- 判:B6変型
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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