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- 小児科医・かかりつけ医に知ってほしい発達障害のこと
商品情報
内容
児童精神科医として地域の子どもたちと日々向き合っている著者が,発達障害をもつ子どもたちを診る機会のある医師に向けて,伝えたいことを詰め込んだ一冊.
発達障害の定義や分類,健診で注目したいポイント,専門医への紹介やその後のフォローについて,エビデンスを交えつつ,著者の経験知に基づいて解説しました.子どものライフサイクルに応じた理解と支援のポイントが,わかりやすく学べます.
子どもたちへの優しい眼差しにあふれた事例は必読です.
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序文
序
発達障害という言葉を医学領域のみならず,ネットニュースの記事や新聞などでも見かけることは増えていると思います.発達障害の中には自閉スペクトラム症autism spectrum disorder( ASD)や注意欠如・多動症attentiondeficit/hyperactivity disorde(r ADHD),限局性学習症specific learning disorder(SLD)などいくつかの種類があることが知られています.ASDやADHDにおいては,幼児期の子育てにおける苦労も大きく,親御さんはしばしば 「かんしゃくがおさまらない」 ことや,「すぐにどこかに行ってしまう」 という子どもたちの示す行動に疲弊してしまうこともあります.最近では,保健や福祉の分野においても発達障害の概念がよく知られるようになっており,このような子育てに悩む親御さんが適切な相談の窓口や支援の場,療育の場につながりやすくなってきているといえます.親御さんたちはこのような場で,子どもに合った子育ての仕方や環境について知るとともに,同じような子育ての悩みをもつ他の親御さんと出会っていくことで,少しずつ自分の子どもにとって適切な環境で子育てをできるようになっていくものと思います.そのためにも,私たちのような立場の者は発達障害の子どもの特性だけでなく,その子どもたちが好む適切な環境についての知識などももっている必要があるといえます.
一方で,子どもたちにとって適切な環境を知るためには,どこかで自分の子どもの発達障害の特性について知る必要があり,そのために医療機関の受診を求める親子も多いのですが,現状においてはこれらの発達障害の診断にあたる専門家としての児童精神科医や発達障害を診療する小児科医はとても少ないといわれています.小児科医や精神科医の先生の中には,「発達障害の分野には興味がある」 けど 「どのようにフォローすればよいか分からない」と悩まれる先生もたくさんおられると聞いています.確かに,発達障害の診療においては診断だけつければいいというわけではなく,その後の継続的なフォローが必要になってきます.幼い頃にその特性について診断され,療育や子育て支援の場に通っていた子どもも,大きくなり少しずつ行動が落ち着いてきて保育園や幼稚園などの集団の場がその生活の中心になるかもしれません.保育園や幼稚園において必要な環境調整やそのほかの支援は,家庭で必要な支援とは異なることも多く,子どもたちが安心して生活できるように,保育園や幼稚園の先生と連携することも必要になってきます.子どもたちはやがて就学の時期を迎えますから,その際には親御さんの悩みも大きくなります.そのような際には就学に際しての適切な助言が必要になることも多いと思われます.やがて,小学校に入学し,教室で学習するようになればそれぞれの子どもたちに適した環境や必要な支援も異なってきますから,学校との連携も必要になってくるでしょう.また,友人関係をはじめとする対人関係の変化に悩む子どももいるでしょうから,そのような相談に応じることも増えてきますし,抑うつや不安などの併存症への対応が必要になってくることもあります.やがて,大人になる時期が近づいて来れば,将来の就労を見据えた支援や小児科から精神科へのトランジションなど今後のフォローの場の移行が必要になってくるケースもあるかもしれません.これらは一例ですが,このように発達障害の診療においては,早期の診断だけでなく,その後のライフサイクルに応じた支援や連携が必要になってきます.
この本は,これから 「発達障害の分野を知りたい」 と思われる小児科や精神科の先生が,発達障害の子どもたちの支援として 「どのようなフォローが必要なのか知りたい」,「どのようなタイミングで専門医を紹介すべきか知りたい」 といった声に答えられるように,発達障害の定義やその分類,子どものライフサイクルに応じた子育てへの眼差しや困難の理解,適切な支援のポイントなどについて書いてきたつもりです.
2022年5月
関 正樹
目次
はじめに
第1部 総論
1 発達障害ってなんだろう
1 発達障害の定義ってどうなっているんだろう?
2 DSM-5における神経発達症
3 ICD-11における神経発達症
4 発達障害者支援法における発達障害とは?
5 まとめ:発達障害とは
2 発達障害とライフステージ―地域における療育や福祉制度について―
1 発達障害と乳幼児健診
2 1歳6ヵ月の乳幼児健診と自閉スペクトラム症
3 3歳児健診と発達障害
4 乳幼児健診の場で自閉スペクトラム症特性など発達障害の特性が認められる場合
5 発達障害の特性から継続的なフォローへ
6 乳幼児期の発達障害の診療においてかかりつけ医が知っておくと役に立つ用語や福祉サービス
3 発達障害とその周辺
1 発達障害と子どもの心身症や身体的愁訴
2 発達障害と不登校
3 発達障害と児童虐待
4 小児科と精神科,児童精神科の役割と連携
1 実際の発達障害診療では何が行われているのか?
2 トランジションと連携について
3 どのようなときに専門職を紹介したらよいのか?
第2部 各論
1 自閉スペクトラム症
1 自閉スペクトラム症の歴史
2 DSM-5における自閉スペクトラム症
3 発達早期の自閉スペクトラム症の臨床像
4 幼児期の自閉スペクトラム症
5 幼児期の自閉スペクトラム症と保育園
6 学童期から思春期の自閉スペクトラム症
7 自閉スペクトラム症と併存症
8 自閉スペクトラム症の支援~基本理念としてのSPELL~
9 早期支援で子どもの何を育てるか?
10 私たち支援者がフォローをしていく中で大事にしたいこと,大事にしていること
2 注意欠如・多動症
1 注意欠如・多動症の歴史
2 幼児期の注意欠如・多動症
3 学童期の注意欠如・多動症
4 思春期・青年期の注意欠如・多動症
5 注意欠如・多動症と併存症
6 注意欠如・多動症の子どもの支援
3 限局性学習症
1 学習障害とは
2 学習障害の歴史
3 診断の流れ
4 評価ツール
5 臨床的な特徴と支援
6 学習障害の支援における大切なこと
4 知的能力障害/知的発達症
1 知的障害の概念と用語の変化
2 知的発達症の臨床的な症状
3 知的発達症と身体科などの医療機関受診
4 重度知的発達症(を伴う自閉スペクトラム症)と強度行動障害
5 行動の機能を知ること
5 発達性協調運動症
1 発達性協調運動症の概念
2 発達性協調運動症の疫学
3 発達性協調運動症の子どもの臨床症状や心理社会的影響
4 発達性協調運動症の子どもの支援
6 チック症
1 チック症の概念
2 チック症の診断
3 チック症の疫学
4 チック症の治療や支援
7 コミュニケーション症
1 コミュニケーション症の概念
2 コミュニケーション症の分類
おわりに
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書籍情報
- ISBN:9784525285913
- ページ数:254頁
- 書籍発行日:2022年6月
- 電子版発売日:2022年7月13日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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