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- 向精神薬と妊娠・授乳 改訂3版
商品情報
内容
向精神薬の豊富な有効性・安全性情報,症例解説など,精神疾患をもつ女性の妊娠・授乳への対応に必要な情報や知識をまとめました.また,改訂3版では,情報のアップデートを行うとともに,ガイドラインの動向,妊娠中ストレスの児に対する影響,多職種連携に関する解説などを加えました.
リスク・ベネフィットを考慮して向精神薬を適切に用いるために,精神科領域・産婦人科領域で即戦力となる一冊です.
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序文
改訂3版の序
一人の女性がその年次の年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子どもの数,すなわち合計特殊出生率は,第二次ベビーブームが終わった1975年に2を切ってから下がりはじめ,少子化が社会問題として提起されるようになった.しかし,その後改善するどころかさらに低下を続け,最近の30年間は1.4前後を推移,2020年以降のコロナ禍によりその傾向に拍車がかかり,2022年には再び1.3を切る見込みである.
あるシンクタンクが行った調査で,女性が希望通りに子どもを産めない理由として,出産育児に伴う経済的な問題や不妊,女性が抱える健康問題などが挙げられていた.前二者については社会的にも認知され,それらに呼応する対策として出産費の補助や,不妊治療の保険適用などの社会的政策に力が注がれてきている.後者には慢性疾患をもつ女性が含まれる.そのような女性たちが妊娠に踏み切れない理由のなかで最も多いのが「薬剤の児への影響が心配」というものである.この問題解決をすぐに社会や政策に求めることはできない.解決できるのは患者を診ている臨床現場の医療者である.
妊娠希望ないしは妊娠中の女性であっても適切な治療をうけられ,根拠のない不安をもち続けることや不要な中絶を選択しない環境を作ることを目的として,妊娠と薬情報センターが開設された.現在全国56ヵ所にある拠点病院とともに「妊娠と薬外来」を行っているが,その相談薬の中で最も多いのは向精神薬で,その割合は年々増加している.
このような状況にあって,2014年に周産期メンタルヘルスケアと周産期薬理学の国内外のリーダーが集結して執筆した本書が登場したことの意義は大きく,この分野の医療者の意識変革に大きく寄与したことは疑いの余地はない.それから8年,この間にも新薬の登場や新たなエビデンスの発表など,当該分野の進化に合わせ第3版の出版を望む声を多く頂いた.前版までと同様,本書が母児にとって最適な薬物治療を行うための羅針盤となり,母児の健やかな未来を紡ぐ一助となることを願っている.
最後にご多忙の中,執筆・監修に関わったすべての先生方,編集にご尽力いただいた南山堂の山田氏,江石氏に深謝する.
2023年3月
編者を代表して 村島 温子
目次
第1章 妊娠・授乳期に関する基礎知識の整理
1 母性内科領域の基礎知識
❶ 妊婦への薬剤投与/後藤 美賀子
❷ 妊娠可能年齢の女性への薬物治療の実際
❸ 薬剤の母乳への移行性と乳児に与える影響/伊藤 直樹
❹ 母乳育児のメリット
2 添付文書情報の捉え方/濱田 洋実
❶ 添付文書の記載要領
❷ 旧記載要領に基づく妊娠・授乳期に関連する添付文書情報の問題点・限界
❸ 新記載要領に基づく妊娠・授乳期に関連する添付文書情報の評価
3 妊娠・出産による精神状態への影響とトータルケア/多門 裕貴,立花 良之
❶ 妊娠・出産による精神状態への影響
❷ トータルケア
4 周産期における飲酒・喫煙の影響/肥沼 幸
❶ アルコール
❷ タバコ
第2章 向精神薬投与と妊娠・出産・育児
1 妊娠と薬情報センターにおける向精神薬相談事例/渡邉 央美
❶ 相談者の過半数が向精神薬を使用していた
❷ バルプロ酸ナトリウムについての相談
❸ 向精神薬を使用していた女性の飲酒・喫煙率および薬物乱用
❹ 授乳中の薬剤についての相談
2 挙児希望者・妊産婦に対する向精神薬の適正使用への対応―患者・家族とのリスクコミュニケーション―/鈴木 利人
❶ 妊孕性を有する患者には,プレコンセプションケアとして妊娠前に話し合いの機会をもつ
❷ 偶発的に妊娠が判明した際には,患者の心情を察することからはじまる
❸ 妊娠前および妊娠判明時の相談に「説明すべきこと」を整理しておく
❹ 薬物療法を中断した際の精神疾患の再燃やそれに伴う母児のリスクについて理解する
❺ 添付文書の内容を説明するとともに,ガイドラインを参照し対応する
❻ 患者・家族に理解しやすく説明できるように工夫する
3 妊婦における向精神薬の薬物動態と処方設計/越前 宏俊
❶ 妊婦における薬物治療の必要性
❷ 妊娠中の生理変化と薬物動態
❸ 妊娠中の薬物動態変化の臨床的な解釈
❹ TDM
4 向精神薬服用による出生後の疾患と発達の予後/伊藤 直樹
❶ 新生児不適応症候群
❷ 母体SSRI 服用と新生児遷延性肺高血圧症
❸ 母体SSRI 服用と自閉スペクトラム症
❹ バルプロ酸ナトリウムと認知機能への影響
❺ 新生児出血傾向と抗てんかん発作薬
5 向精神薬の胎児毒性と情報提供上の留意点/渡邉 央美
❶ 向精神薬服用のリスクに対する女性の考え
❷ 治療中断のリスク
❸ 催奇形性の説明
❹ 新生児期の症状
❺ 神経行動先天異常
6 わが国におけるガイドラインの動向/下屋 浩一郎 80
❶「産婦人科診療ガイドライン―産科編」における向精神薬の取り扱い
❷ 精神疾患に特化したガイドの作成の経緯
❸「精神疾患を合併した,あるいは合併の可能性のある妊産婦診療ガイド」における向精神薬の取り扱い
7 向精神薬の児への影響に関する基礎研究/伊藤 賢伸
❶ 抗精神病薬
❷ 抗うつ薬
❸ 気分安定薬(炭酸リチウム)
❹ 抗てんかん発作薬(抗てんかん薬):VPA
第3章 向精神薬の薬剤情報と有益性・危険性の考え方
1 SSRI・SNRI・NaSSA/渡邉 央美
❶ 妊婦・授乳婦への有益性
❷ 妊娠期
❸ 授乳期
2 三環系・四環系抗うつ薬/小澤 秀介,渡邉 央美
❶ 妊娠期
❷ 授乳期
3 炭酸リチウム/鈴木 利人
❶ 妊娠期におけるリチウムの催奇形性
❷ 妊娠期におけるリチウムの産科合併症および胎児・新生児への影響
❸ 産後のリチウム服用と授乳の両立の問題
4 抗不安薬/西村 あや子
❶ 妊娠期
❷ 授乳期
5 睡眠薬/三浦 寄子,八鍬 奈穂
❶ 妊娠期
❷ 授乳期
6 第一世代抗精神病薬/石井 真理子
❶ 第一世代抗精神病薬
❷ 抗コリン性抗パーキンソン病薬
7 第二世代抗精神病薬/宇野 千晶
❶ 妊娠期
❷ 授乳期
8 抗てんかん発作薬(抗てんかん薬)/加藤 昌明
❶ 抗てんかん発作薬の胎児への影響
❷ 妊娠中の抗てんかん発作薬の薬物動態
❸ 授 乳
第4章 周産期メンタルヘルスに必要な知識
1 産褥精神病/竹内 崇
❶ 診断学的な位置づけ
❷ 双極性障害との関連
❸ 近年の報告
❹ 治 療
2 産後うつ病/西紋 昌平,鈴木 利人
❶ 概念に関する歴史的変遷
❷ DSM-5 における産後うつ病の位置づけ
❸ 近年の大規模研究による産後うつ病の特徴
❹ 薬物治療の特性から考える産後うつ病の特徴
❺ 産後うつ病の対応の留意点
3 妊娠中のストレスと児への影響/西郡 秀和
❶ 児の神経発達
❷ 児の喘息とアトピー性皮膚炎
❸ 胎児の感受性が強い妊娠期
❹ 児の性別による感受性
❺ DOHaD 学説による妊婦のストレスなどが児に影響を与える機序
4 特定妊婦と胎児虐待/岡島 美朗
❶ 特定妊婦
❷ 胎児虐待
5 多職種連携/渡邉 博幸
❶ 周産期メンタルヘルスに関わる多職種
❷ だれが周産期メンタル不調をピックアップするのか?
❸ 母子保健医療から精神科医療への連携
❹ 精神科医療につなぐ目安と,精神科側の支援方法
第5章 症例から学ぶ ― 精神症状のコントロールと妊娠・授乳
1 統合失調症/根本 清貴
❶ 統合失調症とは
❷ 統合失調症を有する妊婦の臨床における問題点
❸ 統合失調症が妊婦や胎児に与える影響
❹ 統合失調症と産後の精神症状
❺ 抗精神病薬と妊娠・授乳
❻ 統合失調症を有する妊産婦の治療の原則
❼ 統合失調症の薬物治療におけるガイドラインやガイド
❽ 症 例
2 うつ病/菊地 紗耶
❶ うつ病とは
❷ うつ病の妊娠期・授乳期における特徴,注意点
❸ プレコンセプションケア
❹ うつ病の妊娠期・授乳期における薬物療法
❺ 妊娠期・授乳期におけるうつ病症例
3 双極性障害/武島 稔
❶ 双極性障害の症状,疫学,治療
❷ 周産期の病状と留意点
❸ プレコンセプションケア,⼼理教育と周産期の治療方針の決定
❹ 症 例
4 不安症・強迫症/清野 仁美
❶ 不安症
❷ 強迫症
❸ 症例1(不安症)
❹ 症例2(強迫症)
5 摂食障害/今村 弥生,菅 さくら,坪井 貴嗣
❶ 摂食障害の概念と症状
❷ 摂食障害に対する薬物療法
❸ 摂食障害に併存する精神疾患や薬物療法
❹ 摂食障害患者の妊娠・授乳期における心身の問題と薬物療法の注意点
❺ 症例(計画妊娠の事例)
6 アルコール依存/湯本 洋介
❶ 女性と飲酒の疫学
❷ 女性への飲酒が及ぼす影響
❸ 妊娠中の飲酒の胎児への影響
❹ 授乳へのアルコールの影響
❺ 妊産婦へのアルコール依存治療薬剤選択
❻ どうマネジメントするか
❼ 症例(ブリーフインターベンションからアルコール依存症専門治療につながった妊娠希望の女性例)
7 発達症/伊瀬 陽子,内山 登紀夫
❶ 発達特性に起因する困難さ
❷ 二次的な影響
❸ 妊娠中のSSRI とSNRI の影響
❹ 症 例
8 てんかん/岩崎 弘
❶ 挙児を希望するWWE を診療する上で踏まえておくべき事項
❷ てんかん合併妊娠の治療戦略
❸ 症例1(計画妊娠の事例)
❹ 症例2(妊娠中に抗てんかん発作薬の用量調節を要した事例)
9 ボンディング障害/大橋 優紀子,齋藤 知見,馬場 香里,北村 俊則
❶ 定義と評価
❷ 症状と発症時期
❸ 成 因
❹ 虐待との関連
❺ ボンディング障害の治療・介入・予防
❻ 症例(産褥期のボンディング障害に対する医療と地域における連携支援事例)
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書籍情報
- ISBN:9784525382339
- ページ数:254頁
- 書籍発行日:2023年4月
- 電子版発売日:2023年4月12日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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