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- 医療の可視化から始める看護マネジメント ナースに必要な問題解決思考と病院データ分析力
商品情報
内容
臨床現場の問題点を客観的に示し,病院組織の意思決定者にプレゼンし必要な改革を行うことが組織マネジメントとして強く求められ,その能力が看護師にも求められている.問題解決思考と病院データ分析力を持ち合わせていなければ根拠に基づいた看護マネジメントを行うことができないため,対象看護師にはぜひ利活用していただきたい一冊.
序文
序
2010年はビッグデータ元年と言われており,医療界にもその流れは強く影響しています.医療の現場には電子カルテ情報をはじめとして,医療安全管理レポート,感染制御に関するデータ,DPC・レセプトデータ,重症度,医療・看護必要度のデータなどの多くのデータが日々蓄積され,あふれています.そして,これらを上手に使うと医療現場で起こっているさまざまなことを可視化することができます.EBMという言葉も常識知となり,根拠に基づいた医療・看護を提供することによる質の維持・向上が当たり前になっています.また,高齢化や医療費の高騰という社会経済環境の変化の中,医療の質のみならず経営的な側面をより意識した医療の提供が不可欠な時代になりました.
このような背景のもと,管理者には臨床現場の問題点を客観的に示すとともに,それらを病院の組織運営に反映させていくことが求められるようになり,看護職にもその能力が大いに求められています.
どこの医療機関でも看護職は病院職員の中で最も人数が多く,患者さんやその家族,他職種とのかかわりが深い職種です.いわば病院でキー(要)となる職種です.そのため,院内の山積する問題に直面する機会も多いうえ,看護師自身問題意識が高い集団です.日々の疑問や問題を院内全体で共有するためには,他者にそれらを客観的に伝えることが改善のための正攻法といえ,問題解決思考とデータ分析のスキルが必要となります.しかし残念ながら,看護職の中には問題解決思考とそれをサポートするデータ分析に対する苦手意識をもつ人が多いように感じます.
そこで,こういった現状を鑑み,看護職の皆さんが日々の疑問や感覚的に思っている「本当にそうなのか?」,「どうしてそうなのか?」ということを,データを用いて表現するための方法論とスキルを身につけるきっかけになればと考え,本書を企画しました.
本書には皆さんが理解しやすく読み進めやすいように,厳密にいうと完全には正しいとはいえない内容も一部入っています.細部の厳密性にこだわった小難しい内容を省き,まずは概要をつかんでいただきたいとの思いで,あえてそのような内容にしています.本書は入門書ですので,これを契機により発展的に問題解決思考とデータ分析力を培っていただきたいと考えています.
本書の第Ⅰ章は,データ分析の意義と基本的知識について述べており,疑問点からスタートして原因を追及し改善策を導き出すためのプロセスと,データを扱うときの作法を学ぶことができます.これらは分析するときに必要な基本となる事項です.
第Ⅱ章では,データの加工方法や具体的な事例について,皆さんにとって比較的なじみのあるMicrosoft社のExcelRを用いた分析の一連の流れを紹介しています.これらは第Ⅰ章の内容が活かせるよう,日々の看護業務で直面するような身近な例を扱っていますので,皆さんもイメージしやすいと思います.ここで取り上げる分析はあくまでも一例です.これを参考によりよい別の方法を考えたり,ほかの分析に応用したりしてより発展的な分析につなげてください.
なお,データ集計や図表作成に際しては,産業医科大学病院医療情報部副部長の村上玄樹先生にご協力いただきました.この場をお借りして,心より感謝申し上げます.
今後われわれ看護職は,「経験値」だけでなく「データ」オリエンテッドな現状認識と原因追跡の手法を身につけることが不可欠です.本書が病院組織の意思決定や改善活動に貢献するための基礎能力を養う一助となることを期待しています.
2018年8月吉日
森脇 睦子
林田 賢史
目次
第Ⅰ章 ナースにとっての分析の意義と必要な基礎知識
1 どうしてデータ分析が必要なの?
1.ナイチンゲールが説いた看護管理も医療の可視化から始まっている
2.医療の質の可視化
3.数字に対する苦手意識
4.国策の流れ
5.院内にはたくさんのデータが眠っています
6.管理者に求められること
Column❶ 毎年やってくる人材不足問題
2 病院にはどんなデータがあるの?(病院で利活用できるデータ)
1. 病院で利活用可能な多種多様なデータ
1)データの情報源
2)1次データと2次データ
3)データの種類
Column❷ 「重み付き平均」って,な〜に?
4)個別データと集計データ
5)記憶媒体(メディア)
6)データ作成(収集)のタイミング
Column❸ 「縦持ちのデータ(ファイル)」と「横持ちのデータ(ファイル)」
2. DPCデータ
1)様式1
2)入院EF統合ファイル
3)Dファイル
3.重症度,医療・看護必要度データ
4.医療事故情報およびヒヤリ・ハット事例(日本医療機能評価機構における医療事故情報収集等事業)
1)データ収集の経緯
2)医療事故情報とヒヤリ・ハット事例
3)公開情報の利活用
5.院内感染対策サーベイランス(JANIS)データ
3 日々の疑問をどうやって分析するの?(データ分析の仕方)
1)分析のための事前準備
2)実際の分析
3)分析結果の解釈
1.(抽象的な)疑問やイメージを具体的に分析できる形に落とし込む
1)問題の構造化
2)言語化
3)事象とデータ項目との紐付け
Column❹ 「用語の定義」は大切です!
2.データの入手(収集と抽出)
3.分析と解釈
1)集団の特徴を記述する
Column❺ 平均値が適する? 中央値が適する?
2)事実確認と原因解明
3)分析結果の解釈
4)分析を実施する際の留意点
5)分析結果を解釈する際の留意点
第Ⅱ章 データ分析の超実践法
1 分析用データをつくる
1.統計的思考に基づいて課題を探求する
1)どうして統計的思考が必要なの?
Column❻ 統計とは!?
2)PPDACとは何か?
Column❼ 分析をするには目的をしっかりと決めてから!
2.分析用のデータはどうやってつくるの?
1)分析用データを作成する際の重要なポイント
2)行と列
Column❽ 説明変数をどうやって選ぶ?
3)変数を決める
4)データの型を決める
5)テーブル定義書をつくってみよう
2 具体的な分析例(初級編)
1.一般病棟の「重症度,医療・看護必要度」の可視化を試みる
2.「重症度,医療・看護必要度」の視点でハイケアユニット(HCU)の患者さんを一般病棟に転棟するタイミングは?
3.施設基準を活かした病棟運営を考えてみよう!
3 具体的な分析例(上級編)
1.術後感染症予防のための抗菌薬投与状況を可視化してみよう!
Column❾ 投与パターンによって改善策のアプローチが異なります
2.病棟の忙しさと有害事象は関係しているの?
参考図書・URL
参考資料
①「様式1」
②「入院EF統合ファイル(行為明細情報)」
③「Eファイル(診療明細情報)」
④「Fファイル(行為明細情報)」
⑤「Dファイル(包括診療明細情報)」
⑥「Hファイル」
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書籍情報
- ISBN:9784525500511
- ページ数:156頁
- 書籍発行日:2018年9月
- 電子版発売日:2019年5月8日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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