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- 分子薬物動態学
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序文
本書は薬学研究,創薬研究に関わる研究者を目指す学部学生,大学院生を対象にして,近年,飛躍的な発展を遂げている薬物動態学の先端的領域を教育するために企画した教科書である.
薬物作用(効果,副作用)は,生体内の薬の動きによって大きく影響を受ける.試験管のなかでは薬理作用をもつ化合物も,生体内に投与した場合には必ずしも期待される効果が得られないことがあるのは周知の事実である.これは投与された化合物の濃度や暴露時間を十分確保できないためである.したがって,生体内での薬の動きを予測し,薬効が期待できるかどうか創薬の初期段階で評価する方法論の開発は,医薬品開発のリスクの軽減に大きく寄与すると考えられる.また,薬の排泄経路についても,単一の消失経路では薬物間相互作用や遺伝子多型など個体間変動要因の影響を受けやすいため,複数の排泄経路をもつ医薬品を開発することがより安全な医薬品による疾病治療のためには必要である.その上で,標的臓器に選択的に薬を分布させるドラッグデリバリーシステム(DDS)を開発し,医薬品の体内動態を制御することで,医薬品による疾病治療の効率が飛躍的に上昇することが期待される.これまで,医学,薬学の分野では,個体レベルでの現象の本質(機構)を理解するために,臓器,細胞,蛋白,遺伝子レベルへと遡る解析的な研究が推進され,多大な成果をあげてきた.しかしながら,こうして解明された分子レベルでの機構をもとに,個体レベルでの現象を定量的に再構築することを可能にするような方法論が開発されない限り,"効果と安全性の予測と制御"という重要な目的を果たすことはできない.医薬品が最終的に薬効を発揮するためには,(1)投与部位から循環血中への吸収過程,(2)代謝,排泄などの解毒過程,(3)薬効,副作用に関わる組織への移行過程,(4)薬効に関わる受容体への結合,それに続く薬効発現などの諸過程を経なければならない.これらの諸過程を表わすパラメーターを適切な数学モデルに組み込むことにより,"薬の投与量,投与経路","投与される患者の病態"などの入力情報から,"薬効および副作用の発現"という出力を予測することが可能になってきた."細胞生物学,分子生物学"に基づいて得られた実験データを基に,生体内での薬物動態,効果を予測することが可能になったということができ,編者らの研究室の名前,本書の名前が,ともに,"分子薬物動態学"と命名されている所以となっている.
急激に進展したゲノム解析,あるいはコンピュータを使ったインシリコ・スクリーニング,統計解析手法の成果によって,医薬品開発はかつての「幸運を期待する時代」から,明確な薬効ターゲットに対して,臨床効果も予測した上で論理的な創薬を行う時代に入った.すでに5年以上前から,現在の創薬過程,創薬教育は大きなパラダイムシフトを迎えているといわれている.このような創薬の時代において,薬物動態特性の解析は新しい創薬パラダイムの主役となる役割を果たすべきであり,学部,大学院における薬物動態学の教育もこのような視点で行うべきであると考えている.
本書の内容は,実際に東大薬学部において,学部学生,大学院生を対象にして講義している内容にほぼ近いものである.良好な消化管吸収,バイオアベイラビリティの上昇,適切な半減期をもった化合物の選択,薬物間相互作用(阻害,誘導)を受けにくい化合物の選択,遺伝子多型で説明できる個人差とそうでない個人差の理解と予測,そして,活性代謝物による毒性の誘起など,分子メカニズムの理解と速度論の理解の両方が必要である.さらには,それを統合できる人材が要請されている.本教科書は,薬物動態学の最先端領域に踏み込むための導入部を勉強したい学部学生,大学院生を対象にしたものである.また,企業における(探索・開発)薬物動態研究者が,自分たちの行っている研究の創薬全体における位置づけを学ぶために,また,最新の知見を知るために有用な本になるものである.さらには,個別化医療,薬物間相互作用(薬の飲み合わせ)などの解析,予測に日常の業務で関わっている病院薬剤師の方々がその基盤を学ぶためにも役立つものと考えている.
上記のことを考慮し,執筆者には,"知識を教えることは最低必要限度に抑えて,どういう考えに従って現在の知見が出てきたのかということを考える筋道を教えるような記載にする"こと,また,"分子論と速度論の両方を連結する重要性を教えるようにする"ことをお願いした.全体を通じて理解しやすいように内容を整理し,できるだけ多くの図表,チャートを用いて理解を助けるように努めた.また,各章ごとに,「演習問題」を掲載し,読者が自ら理解度をチェックできるように工夫した.
さらに,多くのコラムを設けて,息抜きの読み物も入れるとともに,新しい考えが構築されてきたエピソード,研究者のものの考え方,趣味と研究の関連など,素晴らしい研究者を育てる調味料が与えられるような工夫もした.現在も急速に発展している薬物動態学領域の若い研究者の基礎力を上昇させるとともに,さらなる研究の発展につなげる自信の礎になれば,編集者の大きな喜びである.
最後に,企画から出版に至るまでご尽力いただいた南山堂の中村久男さん,門脇佳子さんに深謝する.お二人の叱咤激励なしには本書の実現はなかった.
2008年 3月
東京大学大学院薬学系研究科
教授 杉山 雄一
准教授 楠原 洋之
目次
A.創薬と薬物動態学
1 創薬における動態研究の重要性
1. 医薬品の探索・開発過程における薬物動態研究の役割
1.1. 近代創薬の流れ
1.2. 新薬開発における薬物動態特性を把握することの重要性
2. 機構論に基づく薬物体内動態の予測
3. トランスポーター機能も組み入れた薬物動態の予測
4. 前臨床から臨床への橋渡し
5. 探索的早期臨床試験およびマイクロドーズ臨床試験の導入
6. まとめ および 今後の展開
◎ 演習1‐1~1‐2
2 生体膜透過,代謝,蛋白結合の基礎
1. 薬物の生体膜透過の基礎
1.1. 薬物動態における生体膜透過過程の重要性
1.2. 生体膜の構造と組成
1.3. 生体膜透過機構の分類
1.4. 生体膜透過を媒介する機能蛋白質
1.5. 生体膜輸送の速度論
1.6. 膜動輸送
2. 薬物代謝の基礎
2.1. 薬物動態と代謝
2.2. 薬物代謝反応の様式と代謝酵素
2.3. 薬物代謝の速度論
2.4. 薬物代謝の阻害と誘導
3. 薬物の血漿蛋白結合の基礎
3.1. 血漿蛋白質と薬物結合
3.2. 蛋白結合の測定法
3.3. 蛋白結合の解析
◎ 演習2‐1
B.薬物速度論の基礎
3 コンパートメントモデル解析
1. コンパートメントモデルとは
2. 1-コンパートメントモデル
2.1. 静脈内瞬時投与の場合
2.2. 静脈内定速注入の場合
2.3. 単回経口投与の場合
2.4. クリアランス,AUC の理解
2.5. くり返し経口投与の場合
3. 2-コンパートメントモデル
4. マルチコンパートメントモデル
5. 分布容積
6. ラプラス変換法
6.1. ラプラス変換の定義
6.2. コンパートメントモデルへの応用
7. 非線形最小二乗法によるパラメータの推定
◎ 演習3‐1
4 モデル非依存性の解析法:モーメント解析法
1. モーメント法とは
2. モーメントの定義
3. パラメータの計算方法
4. AUCとクリアランスとの関係
5. 平均滞留時間とその分散
6. ラプラス変換との対応
7. モーメントによるデコンボリューション
8. モーメント法による非線形動態解析
◎ 演習4‐1
5 投与ルート(静脈内,経口投与)依存性ならびにバイオアベイラビリティ
1. バイオアベイラビリティ:消化管と肝臓
1.1. バイオアベイラビリティ(Bioavailability,F)の定義
1.2. Extent of bioavailability(F)の算出
1.3. Rate of bioavailability の算出
1.4. 経口投与後のFに影響を与える要因
2. 肝臓初回通過の2-コンパートメントモデルに基づく理解
3. デコンボリューション法
4. 腸肝循環のあるときに,バイオアベイラビリティはどのように解釈できるか?
◎ 演習5‐1
6 クリアランスの概念 -I
1. クリアランスの定義
2. 全身クリアランス
2.1. 全身クリアランスの定義
2.2. コンパートメントモデルとの対応
3. 臓器クリアランス
4. 分布容積
4.1. 分布容積の概念
4.1.1. 初期分布容積
4.1.2. 定常状態分布容積
4.1.3. β相の分布容積(Vdβ)
4.2. 分布容積の構成要素
4.3. 見かけのKp値と真のKp値
◎ 演習6‐1~6‐2
7 クリアランスの概念 -II
1. 固有クリアランス
2. 固有クリアランスと臓器クリアランスとの関係
2.1. Well-stirredモデル
2.1.1. 血流律速の化合物の特性
2.1.2. 固有クリアランス律速の化合物の特性
2.2. Parallel-tubeモデル
2.3. Dispersionモデル
3. 血漿中濃度基準のクリアランスと血液中濃度基準のクリアランス
4. クリアランスと血中濃度の時間推移について
◎ 演習7‐1
C.薬物体内動態の予測
-クリアランスコンセプト,生理学的速度論モデルの考え方に基づいて
8 肝クリアランス・腎クリアランス
1. 肝クリアランス
1.1. 肝臓の構造と肝臓における異物解毒
1.2. 肝クリアランス
1.3. 肝代謝固有クリアランスと胆汁排泄固有クリアランスの算出法
1.4. シヌソイド側膜の膜透過を考慮した場合の肝固有クリアランスについて
1.5. 取り込みクリアランスの評価
2. 腎クリアランス
2.1. 腎臓の構造
2.2. 腎クリアランス
2.3. 尿細管分泌固有クリアランスを構成する素過程
3. ヒトにおける肝クリアランスの推定
◎ 演習8‐1
9 バイオアベイラビリティの支配要因の解析(クリアランスコンセプトに基づく理解)
1. Fa,FG,FHの分離評価
2. 消化管投与時に相互作用が生じやすい理由
3. 腸肝循環のあるときに,バイオアベイラビリティは何を意味するのか?
4. 腸肝循環の薬効,毒性的な重要性
◎ 演習9‐1~9‐2
10 体内動態の非線形性
1. 代謝・排泄の非線形性
1.1. Michaelis-Menten式
1.2. 肝初回通過効果の飽和
2. 蛋白結合の非線形性
2.1. Langmuir式
3. 腎クリアランスの非線形性
4. 消化管吸収における非線形性
◎ 演習10‐1
11 生理学的薬物速度論解析
1. 生理学的薬物速度論モデルとは
2. 個々の臓器モデル(One-organモデル)の構築法と立式
3. One-organモデルにおける薬物の分布過程の記述(非消失臓器)
4. One-organモデルにおける薬物の分布および排泄過程の記述(消失臓器)
5. 多くの組織を結合した生理学的薬物速度論モデルの構築と立式
6. 生理学的薬物速度論モデルの解法
7. ハイブリッドモデル
8. 生理学的薬物速度論モデルの利用
◎ 演習11‐1~11‐2
12 In vitro-in vivo 補外法
1. アロメトリック式を用いたアニマルスケールアップの考え方
2. 血漿中・組織中蛋白非結合型分率の予測
2.1. 血漿中蛋白非結合型分率の測定
2.2. 組織中蛋白非結合型分率の測定
3. 血液~血漿中濃度比(RB)の予測
4. 分布容積の予測
5. 腎クリアランスの予測
6. 肝クリアランスの予測
6.1. アロメトリック式を用いた肝代謝固有クリアランスの予測
6.2. 肝ミクロソームを用いた肝代謝固有クリアランスの予測
6.3. リコンビナントCYP発現系を用いた代謝固有クリアランスの予測
6.4. 肝細胞を用いた肝固有クリアランスの予測
◎ 演習12‐1~12‐2
13 薬物動態特性のインシリコ予測
1. 動態特性のインシリコ予測に関する背景
2. 構造活性(動態)相関の方法論
2.1. Hansch-Fujitaの式
2.2. 基本的な構造活性(動態)相関研究の方法
2.2.1. 分子記述子の計算方法
2.2.2. 線形重回帰分析法
2.2.3. 部分最小二乗法(PLS法)
2.2.4. その他の情報科学的アプローチ
2.3. 分子モデリングによる方法
3. 大規模情報解析とdrug-likeness
3.1. Lipinski's Rules of Five
3.2. 主成分分析法とdrug-likeness
◎ 演習13‐1
D.薬効発現,DDS,臨床開発における薬物動態
14 PK/PD解析
1. 薬効の速度論
2. 薬効推移の定量的予測
2.1. 薬物の血中濃度と薬効の関係
2.2. 薬力学モデル
2.2.1. 線形モデルと対数線形モデル
2.2.2. シグモイド最大効果モデルと最大効果モデル
2.2.3. 固定効果モデル
2.3. 薬物動態学モデルと薬力学モデルの結合による解析(PK/PD解析)
2.4. 薬効コンパートメントモデル
2.5. 機構に基づいたモデル解析
2.5.1. 間接反応モデル
2.5.2. 受容体理論に基づいたモデル
3. まとめ
◎ 演習14‐1
15 ポピュレーション・ファーマコキネティクス
1. ポピュレーション・ファーマコキネティクス(PPK)とは何か
1.1. はじめに
1.2. すべてはNONMEMから
1.3. パラメータの分散を知ることの有用性
1.4. ベイズ推定とTDM
1.5. どの程度信頼できるか
2. ポピュレーション解析の実践
2.1. ポピュレーション解析のツール
2.2. 薬物動態モデルの選択
2.3. 誤差モデルの選択
2.4. 共変量モデルの構築
2.5. NONMEM解析の計算の技術
2.6. 解析結果の確認とバリデーション
2.7. PPKの利用
◎ 演習15‐1
16 ドラッグデリバリーシステム:標的指向化(ターゲティング)の定量的解析
1. ドラッグデリバリーシステム(DDS)の概念と有用性
2. ターゲティングの意義と対象となる薬物
3. ターゲティング製剤の設計における薬物速度論の重要性
4. ターゲティング製剤の速度論
5. 受動的ターゲティングの速度論
6. 能動的ターゲティングの速度論
7. 能動的 + 受動的ターゲティングの効果
8. ターゲティング効率の評価方法
8.1. ターゲティング効率の評価方法(1)
8.2. ターゲティング効率の評価方法(2)
8.2.1. Therapeutic Availability
8.2.2. Drug Targeting Index
◎ 演習16‐1
17 高分子・遺伝子の体内動態の制御(細胞内動態を中心に)
1. 概論
2. 細胞内動態制御を行う上での基盤技術
2.1. 細胞内動態制御におけるナノテクノロジーの重要性
2.2. 遺伝子のナノサイズ化を制御する基盤技術
2.2.1. カチオン性リポソーム
2.2.2. カチオン性ポリマー(ポリカチオン),デンドリマー
2.2.3. 高分子ミセル
2.2.4. 複合型ベクター
2.3. 細胞内動態制御のためのナノ構造体の設計
3. 細胞内動態制御の戦略
3.1. 細胞内取り込み過程の制御
3.2. エンドソーム脱出
3.3. 細胞質輸送
3.4. 核移行性制御
4. 遺伝子の細胞内動態の定量的解析
4.1. 細胞内動態の定量的評価法
4.2. アデノウイルスと非ウイルスキャリア間の細胞内動態比較
4.3. 核内動態制御
5. 今後の細胞内動態制御研究の課題
◎ 演習17‐1
E.生体内での異物解毒メカニズム
-組織分布・消失特性の評価
18 ベクトル輸送 -I
1. 医薬品の膜輸送形式
2. 経細胞輸送の速度論
2.1. 経細胞輸送の速度論
2.2. P-糖蛋白質 / BCRPによるベクトル輸送の速度論
2.3. P-gpによるベクトル輸送の分類
◎ 演習18‐1
19 ベクトル輸送 -II
1. 肝胆系輸送に働くトランスポーター
1.1. シヌソイド側の排出輸送がベクトル輸送に与える影響
2. 腎尿細管分泌に働くトランスポーター群
2.1. 再吸収過程におけるベクトル輸送
2.2. 肝腎ふり分けの制御
◎ 演習19‐1
20 血液脳関門,血液脳脊髄液関門
1. 脳関門と薬物の脳への分布過程
2. 脳関門透過性と脳内薬物分布
3. 血液脳関門の血液から脳への供給輸送機構
4. 血液脳関門の脳から血液への排出輸送機構
5. 血液脳関門の高分子輸送を利用した遺伝子デリバリー
6. 薬物の血液脳脊髄液関門輸送機構
◎ 演習20‐1
21 トランスポーターの細胞内局在メカニズムと薬物動態変動への影響
1. トランスポーターの細胞内局在と薬物排泄
1.1. 薬物排泄におけるベクトル輸送
1.2. トランスポーター同士の機能的なカップリング
1.3. カップリングの効果
1.4. アダプター
2.アダプターによるトランスポーターの発現,局在,機能調節
2.1. PDZアダプターとその特徴
2.2. トランスポーターに及ぼすアダプターの働き
2.3. PDZK1の役割
2.4. 他のアダプター分子
3. トランスポーター局在メカニズムの応用と展望
3.1. トランスポーターの細胞内局在に影響する薬剤
3.2. トランスポーターの細胞内局在と毒性との関連
3.3. 細胞膜透過評価系としてのトランスポーター遺伝子発現系
◎ 演習21‐1
F.薬物消化管吸収の機構と予測
22 消化管吸収概論
1. 経口投与後の薬物吸収率(Fa)
1.1. Faを決定する基本的要因
1.2. Faの変動要因
1.2.1. 消化管内移動速度
1.2.2. 消化管分泌液
1.2.3. 血流速度
1.2.4. 併用薬物(薬物間相互作用)
2.薬物の消化管膜透過性
2.1. 受動的な膜透過
2.2. トランスポーターを介した膜透過
2.3. 消化管膜透過性の評価法
3.固形製剤投与後の薬物吸収率(Fa)
◎ 演習22‐1
23 消化管吸収におけるトランスポーターと代謝酵素
1. 経口投与薬の現状と課題
2. 小腸上皮細胞層透過機構とその区別化の課題
2.1. 小腸上皮細胞層透過経路の分類
2.2. 小腸上皮細胞層透過機構の考え方
3. ヘキソーストランスポーターと単糖吸収
4. 2次性能動輸送による濃度勾配形成
5. アミノ酸輸送とペプチド輸送
6. 薬物吸収に働くトランスポーター
7. 吸収障壁として働くトランスポーター
8. P-糖蛋白質と薬物代謝酵素
◎ 演習23‐1
24 消化管吸収の評価法
1. 吸収評価のための腸管のモデル化
2. 吸収評価法
2.1. In vivo法
2.2. In situ法
2.3. In vitro法
3. In vitro 対 in vivo 相関に基づく消化管吸収の補外予測
◎ 演習24‐1
25 プロドラッグによる消化管吸収増大
1. プロドラッグの概念
2. プロドラッグの血中濃度
3. 経口投与プロドラッグの分類
4. プロドラッグの小腸上皮細胞内動態
4.1. プロドラッグの小腸上皮細胞内への取り込み
4.2. 小腸粘膜におけるプロドラッグから親薬物への変換
4.2.1. 小腸酵素に全く認識されないプロドラッグ(CLdeg = 0)
4.2.2. 小腸酵素で代謝されるプロドラッグ
4.3. 小腸上皮細胞内で生成された親薬物の細胞からの排出
5. 肝臓で初回代謝されるプロドラッグの体内動態
6. プロドラッグの生体内変換に関与する酵素
7. カルボキシルエステラーゼの代謝活性を利用したプロドラッグのデザイン
8. おわりに
◎ 演習25‐1
G.薬物動態の個人間変動,薬物間相互作用
26 薬効・副作用の個人差,テーラーメード医療
1. 薬効・副作用の個人差克服のためのテーラーメード医療
2. 薬効・副作用の個人差を生み出す要因
3. テーラーメード医療の実際 ~実現化された事例と今後の展開~
3.1. 分子標的治療薬のテーラーメード医療
3.2. 網羅的な遺伝子発現プロファイルを用いたがんの個性診断
◎ 演習26‐1
27 薬物間相互作用 -I(代謝酵素)
1. 代謝酵素を介した薬物間相互作用の様態
2. 酵素反応の阻害様式の速度論的な理解
3. 薬物代謝酵素の阻害(競合・非競合)による薬物間相互作用のin vivoにおける定量的予測のための方法論
3.1. 予測に用いる阻害薬濃度の推定
3.1.1. 肝臓入口における阻害薬の最大濃度を見積もる方法論
3.1.2. 生理学的薬物速度論モデルによる阻害薬濃度の時間推移を見積もる方法論
3.1.3. 阻害薬の膜透過過程にトランスポーターが関与する場合
3.2. 特定の代謝酵素の阻害が,in vivoでの動態の変動に及ぼす影響を予測する上で考慮すべき要因
4. 薬物代謝酵素のmechanism-based inhibitionによる薬物間相互作用のin vivoにおける定量的予測のための方法論
5. 小腸における薬物代謝酵素の阻害による薬物間相互作用
◎ 演習27‐1
28 薬物間相互作用 -II(トランスポーター)
1. トランスポーターが関与する薬物の有害事象
2. 阻害薬併用によるトランスポーター機能の変化
3. 薬物の消化管吸収の速度論と吸収過程で生じる薬物間相互作用
4. 消化管におけるMDR1とCYP3A4の協働
5. 肝での薬物消失メカニズムとトランスポーターを介した薬物間相互作用
6. 腎での薬物排泄メカニズムとトランスポーターで生じる薬物間相互作用
7. 組織分布に関与するトランスポーターを介した相互作用
8. まとめ
◎ 演習28‐1~28‐2
29 代謝・輸送能力の個人差に影響を与える遺伝子多型(総論)
1. 薬理遺伝学にまつわるキーワード
1.1. 遺伝子変異に関する分類
1.2. アレルの考え方・変異の頻度について
1.3. 変異の連鎖・ハプロタイプ
2. 遺伝子変異を検出するための診断法
2.1. PCR-RFLP(polymerase chain reaction-restriction fragment length polymorphism)法
2.2. アレル特異的PCR(allele specific PCR)法
2.3. PCR-SSCP(single-strand conformation polymorphism)法
2.4. FRET(fluorescence resonance energy transfer)を用いた蛍光検出法~TaqMan法,インベーダー法~
2.5. DNAチップを用いた方法
3. フェノタイピングによる診断法
4. In vitro実験による変異体蛋白の機能解析結果の解釈に関する留意点
◎ 演習29‐1
30 代謝酵素の遺伝子多型
1. CYP2C9
1.1. CYP2C9遺伝子構造
1.2. 遺伝子変異の頻度
1.3. 遺伝子変異の表現型への影響
1.3.1. 翻訳領域にみる変異の影響
1.3.2. 非翻訳領域にみる変異の影響
1.4. In vivo(ヒト)CYP2C9活性評価法
2.CYP2C19
2.1. CYP2C19遺伝子構造
2.2. 遺伝子変異の頻度
2.3. 遺伝子変異の表現型への影響
2.4. In vivo(ヒト)CYP2C19活性評価法
2.5. Phenocopy(フェノコピー)現象
3.CYP2D6
3.1. CYP2D6遺伝子構造
3.2. 遺伝子変異の頻度
3.3. 遺伝子変異の表現型への影響
3.4. In vivo(ヒト)CYP2D6活性評価法
3.5. Phenocopy(フェノコピー)現象
4.UGT
4.1. UGT遺伝子構造
4.2. 遺伝子変異の頻度
4.3. 遺伝子変異の表現型への影響
5.Epigenetics(エピジェネティクス)
5.1. メチル化(methylation)
5.2. アレルの不均等発現
◎ 演習30‐1
31 トランスポーターの遺伝子多型
1. トランスポーターの遺伝子多型が薬物動態・薬効に及ぼす影響
2. MDR1の遺伝子多型
3. OATP1B1の遺伝子多型
4. BCRPの遺伝子多型
5. トランスポーターの遺伝子変異に起因する遺伝病
6. トランスポーターの遺伝子変異のin vitro機能解析における留意点
◎ 演習31‐1
H.代謝酵素,トランスポーターの誘導および毒性発現の機構
32 酵素の誘導機構
1. AhRによるCYP1A1の誘導
2. PXRによるCYP3A4の誘導
3. CARによるCYP2B6の誘導
4. PXR/CARによるUGT1A1の誘導
5. Nrf2による代謝酵素の誘導
◎ 演習32‐1~32‐2
33 トランスポーターの発現調節機構
1. PXR/CARによるP-糖蛋白質(P-gp)の誘導機構
2. 核内受容体によるMrp2/Mrp3の誘導機構
3. FXRによる胆汁酸関連トランスポーターの発現調節
4. Hepatocyte nuclear factor 1alpha(HNF1α)によるSLCO1B1遺伝子発現調節機構
◎ 演習33‐1
34 毒性と薬物動態
1. 薬物の毒性と体内動態の関係
2. 薬物による毒性と代謝
3. 薬物が代謝によって,反応性中間体となる例
4. 細胞保護に働く因子としてのGSH
5. アセトアミノフェンによって生じる毒性
6. 薬物によるトランスポーター阻害
◎ 演習34‐1
35 医薬品探索・開発と毒性の評価:製薬企業の戦い
1. 探索段階での薬物動態および毒性研究
2. 動物種差とヒトにおける毒性
3. トキシコキネティクス
4. 特異体質性薬物毒性の問題
4.1. 反応性代謝物と特異体質性薬物毒性
4.2. アレルギー性特異体質性肝障害
4.3. 代謝性特異体質性肝障害
5. 特異体質性薬物毒性の回避
◎ 演習35‐1
索引
コラム 目次
コラム1 大学院生との研究生活,教育の楽しみ
コラム2 トランスポーターの構造・機能に関する概念と実体
コラム3 GeneralistかSpecialistか?
コラム4 企業研究者にとって薬物動態解析はどうであるのか
コラム5 座右の銘
コラム6 数学モデルの重要性:真理探究へのショートカット
コラム7 インシリコによるドラッグデザイン
コラム8 小腸における代謝
コラム9 古くて新しい薬物速度論的な考え方~システムズバイオロジーの勃興~
コラム10 研究興味の持続性,粘り強さの重要性
コラム11 "インシリコ"の終焉は...?
コラム12 学生に寄せる期待
コラム13 臨床統計とポピュレーション解析
コラム14 Serendipityに恵まれるために
コラム15 人知は神を超える!~
コラム16 分子イメージングの利用による薬物動態の可視化
コラム17 他の研究領域の研究者とのインタラクション
コラム18 「研究者度」をチェックしてみよう!Yesを5点としてあなたは何点ですか?
コラム19 Na+/ジカルボン酸共輸送体(NaDC-1)共発現系を利用したOAT1の遺伝子クローニング
コラム20 消化管吸収の難しさと面白さ
コラム21 研究の楽しみはどこにあるか?
コラム22 非撹拌水層の話
コラム23 プロドラッグの消化管吸収の予測にCaco-2細胞は利用できる?
コラム24 Fork in the Road
コラム25 博士課程に進んだ理由
コラム26 Brain stormingの勧め
コラム27 はずれデータの取り扱い
コラム28 研究期間の制限は効果的 !?
コラム29 核内受容体はどこにある?
コラム30 研究者・学会の国際化の必要性
コラム31 パラダイムシフト
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書籍情報
- ISBN:9784525723712
- ページ数:690頁
- 電子版発売日:2011年4月5日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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