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- 医薬品副作用アセスメント
商品情報
内容
本書は,日本医薬品安全性学会監修のもと, 臨床上重要な「医薬品安全性学」のエッセンス,さらに,代表的な副作用症状を取り上げ重症度を判定し,臨床でのアセスメントのポイントを整理するとともに,副作用対応のステップアップに必要な専門的知識を解説する.
序文
序
医薬品が社会に多大な貢献をもたらし,今日の人間社会に必要不可欠な存在であることは周知のことである.数々の新しい医薬品の登場により,多くの人々の命が救われ,多くの病気が改善されてきた.しかし,その一方で医薬品が数々の有害事象をもたらしてきたことも事実である.薬物療法の安全性が叫ばれる今日では,医薬品の有害反応は医療従事者にとって避けては通れない重大な問題である.
医薬品は主作用と副(有害)作用という「光と影」の2つの側面を併せ持っている.そのため,適正な薬物療法は医薬品の有効性と安全性の確保であり,医薬品の「光と影」の調整が不可欠である.日本医薬品安全性学会(JASDS)は,医薬品の「影」に焦点を当て,いかにして「影」を少なくし,「光」を輝かさせるかを追求するドラッグ・セーフティ・マネージャー(DSM)として医薬品の安全性の向上を目指すために設立された.
医薬品の安全性管理では,医薬品の副作用アセスメントが重要となる.「医薬品副作用アセスメント」とは,医薬品有害事例に対して患者情報や医薬品情報を収集して,臨床解析を介して回避対策を見出して行く問題解決型の思考プロセスのことである.医薬品有害事例の臨床解析とは,患者情報や医薬品情報に基づいて有害事象(副作用症状),被疑薬剤,重篤度,関連性(因果関係),発症機序,誘発要因を解明して回避対策を導き出して行くことである.これはまさに医薬品安全性学の実践である.したがって,「医薬品副作用アセスメント」のスキルを身に付けることはDSMにとって必要不可欠である.
本書は,JASDS認定の医薬品安全性指導者(DSD),医薬品安全性専門薬剤師(DSSP)および医薬品安全性情報スペシャリスト(CDSIS)のテキストとして作成されたものであるが,6年制薬学教育の「医薬品安全性学」の教科書としても十分対応できるものであり,さらに医療現場における「医薬品安全性管理」の実践書として薬剤師や医師をはじめとした医療従事者にも有用であると考える.本書が医薬品の安全性の向上の一助となれば幸いである.
2018年春
編者代表 宇野 勝次
目次
第Ⅰ章「医薬品安全性学」総論
1「医薬品安全性学」とは
A.「医薬品の適正使用」が求められる背景と社会的意義
・過去の薬害からの教訓
・医薬品の「有効性」と「安全性」のバランス
・医療の安全を求める社会への変化
B.「医薬品の適正使用=操薬」での副作用アセスメント
・薬剤師誕生に基づく薬剤師の原点
・薬剤師倫理規定に基づく薬剤師の責務
・薬学の新たなる支柱「医薬品の適正使用=操薬」と医薬品安全性管理の意義
・医薬品安全性管理における副作用アセスメントの重要性
2 医薬品副作用の分類と発症メカニズム
A.医薬品副作用の分類
・発現型
・発現部位
・発症原因
・発症機序
B.中毒性副作用の発症メカニズム
・中毒性副作用とは
・ハイリスク薬
・中毒性の臓器障害
・生理機能低下により発症する中毒性副作用
C.代謝障害性副作用の発症メカニズム
・CYP2C9
・CYP2C19
・CYP2D6
・UGT1A1
・NAT2
・OATP1B1
・今後の展望
D.アレルギー性副作用の発症メカニズム
・薬剤性過敏症状
・アレルギー起因薬
・発症メカニズム
E.催奇形性(生殖発生毒性)のメカニズム
・催奇形性
・医薬品の胎児への影響
・主な医薬品の催奇形性メカニズム
F.発がん性が高い医薬品と取扱
・発がん性と細胞のがん化
・国際がん研究機関(IARC)における発がん性の分類
・医薬品による発がん性の評価
・抗がん薬の取扱い
・曝露予防対策
G.依存性のメカニズム
・中枢神経系の薬物依存
・薬物に対する依存性と耐性
3 医薬品副作用の影響要因
A.体質─遺伝子多型・人種差・個人差
・薬物代謝酵素
・トランスポーター
・薬効に関する遺伝子多型
B.環境因子─栄養状態・食事・嗜好品・ポリファーマシー
・低栄養と副作用
・食事・嗜好品と薬物の相互作用
・ポリファーマシー
・今後の取り組み
C.生理的因子─性差・年齢・妊娠
・性差
・年齢
・妊娠
D.基礎疾患─肝障害
・肝臓の機能と肝疾患で問題となる医薬品の副作用
・肝障害時における禁忌な薬剤
・肝障害時の薬物動態からみた医薬品の副作用の発現
・肝障害時における薬物の投与設計
E.基礎疾患─腎疾患
・腎臓の機能
・腎は薬物排泄臓器の主役
・薬剤性腎障害(DKI)
F.基礎疾患─感染症
・細菌感染によるアジュバント効果
・"アンピシリン疹" と伝染性単核症
・DIHSと薬剤アレルギーの関係
4 医薬品副作用事例の臨床解析
A.副作用症状聴取のための面談技法
・副作用聴取のための面談例
B.臨床解析の有用性
・有害症状の重篤(重症)度解析の有用性
・被疑薬と有害症状の関連性解析の有用性
・医薬品有害反応の発症機序解析の有用性
・医薬品有害反応の発症要因解析の有用性
・医薬品有害反応の回避対策解析の有用性
C.因果関係と重篤度の評価基準
・医薬品副作用の重篤度の評価基準
・医薬品副作用の被疑薬との関連性評価基準
D.中毒性副作用事例の臨床解析
・症例
E.アレルギー副作用事例の臨床解析
・症例
第Ⅱ章 副作用アセスメントの実践
1 全身障害アセスメント
・ショック
・薬剤熱
シーン1 アンピシリン(β-ラクタム系抗菌薬)によるショックが疑われた!
シーン2 オキサリプラチン(白金製剤)によるショックが疑われた!
シーン3 イオキサグル酸(ヨード造影剤)によるショックが疑われた!
シーン4 インフリキシマブ(抗体医薬)によるショックが疑われた!
シーン5 メフェナム酸(NSAIDs)によるショックが疑われた!
シーン6 リドカイン製剤によるショックが疑われた!
シーン7 セフメタゾール(β-ラクタム系抗菌薬)によるdrug fever が疑われた!
2 皮膚障害アセスメント
・薬疹の分類
・被疑薬の選定
・薬疹の治療
・起因薬の特定
・患者指導
シーン1 セフポドキシムプロキセチル(β-ラクタム系抗菌薬)による薬疹が疑われた!
シーン2 ロキソプロフェン(NSAIDs)による蕁麻疹が疑われた!
シーン3 カルバマゼピン(抗痙攣薬)による薬疹が疑われた!
シーン4 アロプリノール(高尿酸血症治療薬)による薬疹が疑われた!
シーン5 パニツムマブ(抗がん薬)による薬疹が疑われた!
3 血液・造血器障害アセスメント
・薬剤性血球障害の臨床型
・薬剤性血球障害の起因薬
・起因薬の検出
・薬剤性血球障害の発症機序
・薬剤性血球障害の処置/治療
・薬剤性血球障害の回避対策
シーン1 リバビリン(抗肝炎ウイルス薬)による貧血が疑われた!
シーン2 フルオロウラシル(抗がん薬)による顆粒球減少が疑われた!
シーン3 ファモチジン(H2遮断薬)による顆粒球減少が疑われた!
シーン4 ジクロフェナク(NSAIDs)による血小板減少が疑われた!
シーン5 セフタジジム(β-ラクタム系抗菌薬)による顆粒球減少が疑われた!
シーン6 アナストロゾール(アロマターゼ阻害薬)により心血管系イベントが疑われた!─Dダイマーの上昇─
4 循環器障害アセスメント
・心不全
・不整脈
・高血圧
シーン1 ジゴキシン(強心配糖体)による不整脈が疑われた!
シーン2 ピオグリタゾン(チアゾリジン系糖尿病治療薬)によるうっ血性心不全が疑われた!
シーン3 クエチアピン(MARTA)による起立性低血圧が疑われた!
シーン4 ジソピラミド(Ⅰa群抗不整脈薬)による心室頻拍が疑われた!
5 呼吸器障害アセスメント
・定義
・疫学
・薬剤性肺障害の原因
・薬剤性肺障害のリスク因子
・薬剤性肺障害の発生機序
・薬剤性肺障害の臨床病型
・薬剤性肺障害の臨床症状,診断,鑑別診断
・薬剤性肺障害か否かの臨床推論
・薬剤性肺障害の治療,予後
シーン1 パクリタキセル(タキサン系抗がん薬)による肺障害が疑われた!
シーン2 レボフロキサシン(抗菌薬)による肺障害が疑われた!
シーン3 プラノプロフェン(NSAIDs)による肺障害が疑われた!
シーン4 エナラプリル(ACE阻害薬)による咳嗽が疑われた!
シーン5 小柴胡湯(漢方製剤)による間質性肺炎が疑われた!
6 肝障害アセスメント
・薬物性肝障害の分類と発症機序
・薬物性肝障害を特定する上で除外する慢性肝疾患
・薬物性肝障害診断基準スコアリングシステム
・処置/治療
・今後の展望
シーン1 アセトアミノフェンによる肝障害が疑われた!
シーン2 ジクロフェナク(NSAIDs)による肝障害が疑われた!
シーン3 イソニアジド(抗結核薬)による肝障害が疑われた!
シーン4 パニペネム(β-ラクタム系抗菌薬)による肝障害が疑われた!
シーン5 ボリコナゾール(抗真菌薬)による肝障害が疑われた!
シーン6 バルプロ酸(抗てんかん薬)による肝障害が疑われた!
シーン7 クロルプロマジン(抗精神病薬)による肝障害が疑われた!
7 腎障害アセスメント
・薬剤性腎障害(DKI)とは
・急性腎障害(AKI)の定義
・腎障害の症状
・検査値異常
・薬剤性腎障害(DKI)の分類
シーン1 ジクロフェナク(NSAIDs)による腎障害が疑われた!
シーン2 アルベカシン(アミノグリコシド系抗菌薬)による腎障害が疑われた!
シーン3 バンコマイシン(グリコペプチド系抗菌薬)による腎障害が疑われた!
シーン4 メトトレキサート(葉酸代謝拮抗薬)による腎障害が疑われた!
シーン5 アシクロビル(抗ヘルペスウイルス薬)による腎障害が疑われた!
シーン6 タゾバクタム/ ピペラシリン(β-ラクタム系抗菌薬)による腎障害が疑われた!
シーン7 シクロスポリン(免疫抑制薬)による腎障害が疑われた!
8 泌尿器・生殖器障害アセスメント
・泌尿器障害
・生殖器障害
シーン1 フェジピン(カルシウム拮抗薬)による勃起不全が疑われた!
シーン2 ジソピラミド(抗不整脈薬)による排尿障害が疑われた!
シーン3 麻薬による尿閉が疑われた!
9 消化器障害アセスメント
・薬剤性消化性潰瘍
・薬剤性腸炎
シーン1 ロルノキシカム(NSAIDs)による胃潰瘍が疑われた!
シーン2 抗菌薬多剤併用によるC.difficile 腸炎が疑われた!
シーン3 H.pylori除菌薬による出血性大腸炎が疑われた!
シーン4 アモキシシリン(β-ラクタム系抗菌薬)による出血性大腸炎が疑われた!
10 神経・精神障害アセスメント
・薬剤による神経・精神の障害の症状と原因
・神経障害アセスメントの基本
・精神障害アセスメントの基本
シーン1 ハロペリドール(抗精神病薬)によるパーキンソン症候群が疑われた!
シーン2 ビンブラスチン(ビンカアルカロイド)による痺れが疑われた!
シーン3 メチルフェニデート徐放錠(精神刺激薬)による体重減少・不眠が疑われた!
シーン4 5-FU(抗がん薬)による白質脳症が疑われた!
11 感覚器障害アセスメント
・聴覚障害
・視覚障害
シーン1 トブラマイシン(アミノグリコシド系抗菌薬)による難聴が疑われた!
シーン2 ボリコナゾール(アゾール系抗真菌薬)による視覚障害が疑われた!
シーン3 プレガバリン(鎮痛薬)によるふらつきが疑われた!
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書籍情報
- ISBN:9784525775018
- ページ数:402頁
- 書籍発行日:2018年5月
- 電子版発売日:2019年3月13日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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