「なぜ」がわかる!胃炎・胃癌の内視鏡診断

  • ページ数 : 177頁
  • 書籍発行日 : 2024年10月
  • 電子版発売日 : 2024年10月25日
7,700
(税込)
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商品情報

内容

複雑化する胃炎・胃癌の内視鏡診断に立ち向かう!
内視鏡所見と病理所見をリンクさせ,「なぜこのような内視鏡所見になるのか」を,胃を研究し続けてきたエキスパートが全力で解説.複雑化する胃炎・胃癌の内視鏡診断に立ち向かうため,見るから診るへレベルアップ!

序文


1998年にregular arrangement of collecting venules(RAC)を発表して以来,胃炎・胃癌の研究に没頭してきました.そして消化器内科医人生の集大成の本を出したいと考え,羊土社さんに相談しました.思えば学生時代,NHKに出演した故・市川平三郎先生(当時国立がんセンター病院長)から「胃癌は日本の国民病です.しかし早期発見することで救えます」という内容のお話しを聞き,そして柳田邦男さんが執筆された「ガン回廊の朝」を読み大変感銘し,消化器癌診断に自分の医師人生にかけてみようと考えるようになりました.

RACの発見はピロリ菌に未感染の正常の胃の拡大内視鏡像,組織像などの多くの知識を提供してくれ,さまざまな胃研究をはじめることができました.

その後慢性胃炎の進展や癌発生機序が胃研究への大きな課題として残りましたが,そのような研究は一般病院勤務の立場ではなかなか手を出せずにいました.しかし2017年に新潟大学地域医療教育センター・魚沼基幹病院の特任教授に就任することで文部科学省の科学研究費申請の資格を得ることができ,この広大な研究を開始することができました.その内容は本書の第3章,第7章,第8章に記述しています.またgreen epitheliumもこの研究から生まれた副産物でもあります.

この研究のために5,000枚を超えるプレパラートの胃炎と胃癌の免疫染色を引き受けてくださった病理技師の西村広栄氏(2017年当時新潟県立吉田病院,現在県立がんセンター新潟病院),新潟県立吉田病院の標本使用を許可してくださった中村厚夫先生(県立吉田病院院長)に厚く感謝を申し上げます.

またこの研究にご興味をもってくださり,遺伝子研究をお薦めくださった新潟大学消化器内科の寺井崇二教授,共同研究者の土屋淳紀准教授,橋本 哲先生(埼玉県済生会川口総合病院消化器内科主任部長)にこの場をお借りしてお礼申し上げます.

2024年現在,RAC陽性のピロリ未感染胃の方々が増加し続けるなか,新しいタイプの胃腫瘍が発表され注目されています.胃疾患研究はこれからも留まることはありません.

胃底腺,幽門腺という固有腺と表層の腺窩上皮という複雑な構造からなり,さらにその固有腺が化生を起こしていくという性格が胃をきわめて興味深い臓器にしています.

この本を手にとった方々が夢をもってワクワクしながら胃の研究の指針として本書を利用してくださることを心から願っています.


2024年9月

まだまだ残暑の続く新潟市の自宅にて
八木一芳

目次

第1章 胃の正常像を理解する

・正常胃の構造

・正常胃の通常内視鏡像

・正常胃の拡大内視鏡像

第2章 white zoneについて

・white zoneはNBI内視鏡像のどれ?

・white zoneが視認される機序

・white zoneが視認されない上皮

・NBI内視鏡像と酢酸撒布像の対比

第3章 慢性胃炎の内視鏡像と組織像

1 慢性胃炎における萎縮のプロセス 〜腸上皮化生に至るまでの組織学的変化

・萎縮の発生と進展の概念

・正常の胃底腺粘膜の組織像

・動物実験における胃粘膜萎縮の最初の現象:Spasmolytic polypeptide-expressing metaplasiaについて

・ヒトの慢性胃炎で腺底部に幽門腺化生が発生している組織像

・主細胞様細胞のMUC6陽性細胞への変化

・腸上皮化生はどこから発生するか

・分子細胞学からみる腸上皮化生の発生

・免疫組織から見たCDX2の働きと腸上皮化生の発生

・胃底腺粘膜から腸上皮化生発生までのプロセスのまとめ

2 通常内視鏡における活動性炎症と萎縮の診断

・活動性胃炎

・非活動性胃炎

3 拡大内視鏡における萎縮と活動性炎症の診断

・A-B分類

・拡大内視鏡による活動性胃炎と非活動性胃炎の鑑別法

第4章 胃癌の診断~分化型胃癌を中心に~

1 拾い上げ診断のコツ

a 色調変化

・発赤調病変

・黄色調病変

・褪色調病変

b 近接観察模様

c NBIでの色調変化

・発赤調病変

・褪色調病変

・近接観察模様

・green epitheliumが背景に現れない症例

2 色素撒布の効用と弱点

・色素撒布と拡大観察の比較

・色素撒布が有効な病変

・色素撒布が一部有用でない症例

・色素撒布が有用でない病変

3 NBIを有意義に用いる方法

・green epitheliumの紹介

・NBIの色調変化観察で気をつけるべき病変

4 NBI拡大内視鏡診断のコツ

a 胃底腺粘膜が背景の症例

・未分化型胃癌

・胃底腺型胃癌

・胃底腺型胃癌と鑑別を要する胃疾患

・胃底腺が他の組織に置き換わることで拡大像が管状模様に変化する原理の応用

・腺窩上皮の癌

b 萎縮粘膜が背景の症例

・癌が管状模様を呈する場合

・癌が円形開口部を伴う場合

5 高分化管状腺癌(tub1)と中分化管状腺癌(tub2)

・tub1とtub2の考え方

・tub2の拡大内視鏡像

第5章 腸型腺腫の診断 〜腺腫と癌の症例検討から

・腸型腺腫の定義

・腫腫が生検で“癌”となる理由

・検討内容の紹介

・腸型腺腫と腺癌(tub1)との拡大内視鏡の鑑別点の検討

・症例の紹介

第6章 胃型腺腫の診断

・胃型腺腫の定義

・症例の紹介

第7章 分化型胃癌の発生機序 〜免疫組織学および遺伝子解析より

・腸上皮化生の発生と癌の発生

・CDX2の細胞に与える役割

・遺伝子解析による検討

・慢性胃炎の萎縮発生から胃癌発生までのプロセス

・腸上皮化生が存在しない胃からの胃癌発生

第8章 除菌後胃癌に出現する非癌表層上皮の由来

・除菌後胃癌に観察される非癌表層上皮の現在までの知見

・非癌表層上皮発生の検討方法

・非癌表層上皮の発生機序の検討

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書籍情報

  • ISBN:9784758110839
  • ページ数:177頁
  • 書籍発行日:2024年10月
  • 電子版発売日:2024年10月25日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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