序

この度は，『脊椎手術パーフェクト』発刊にあたり，編集，企画の段階から千葉大学医学部附属病院整形外科 古矢丈雄 先生，またご執筆いただきましたすべての先生方には，大変なご尽力いただき心より感謝申し上げます．本書は「第1 章 頚椎」「第2 章 胸椎」「第3 章腰椎」「第4 章 仙椎・骨盤」「第5 章 脊椎脊髄腫瘍・感染」「第6 章 最新手術」という構成からなり立っております．最も重視したコンセプトは，初級者でも容易に活用でき，また脊椎手術の臨床実践で，最大限お役に立てる点です．また，脊椎手術の基本的手技の一貫性を保つために，千葉大学整形外科同門を中心に，筑波大学整形外科，北里大学整形外科の先生方にご執筆を賜りました．若手の筆者も多く，普段どのようなpitfall があるのかなど，読者と共通目線での執筆となっております．

一般的な脊椎の後方除圧，前方除圧固定，後方除圧固定，インプラントの基本的使用方法，最近増加している骨粗鬆症椎体骨折に対する手術，またトピックであるナビゲーション手術，ロボット手術を盛り込んでおります．従来法だけではなく，低侵襲法手術もあり，さらにシェーマや術中写真を多用して視覚的もわかりやすくしております．一部に脊髄腫瘍・感染と，頻度は高くはありませんが，必ず遭遇する疾患に対する手術も含まれております．随所に，各筆者のpoint，Clinical Tips, memo, 注意点があり，普段学会では聞けないような内容も記載されております．今回各章にコラムとして，椎骨動脈損傷時の対処法，胸膜・腹膜損傷時の対処法，分節動脈損傷時の対処法，髄液漏に対する対処法などをあわせて載せてあります．通常の手術でも一定の頻度で起こりえますが，あまり遭遇はしたくありません．今一度，基本的な対処法を復習していただきたく思います．

もちろん，本書で取り上げている手術法は，脊椎手術の一部であります．まだまだ，高難易度の手術は多数存在します．しかしながら基本技術の習得は，優秀な脊椎外科医師になるのに最短の方法と思っております．また，本書で紹介する技術と異なる基本的手技は多数存在します．あくまでも，一例として，ご覧いただきたく思います．脊椎手術を安全に成功させるためには，脊椎手術の技術はもちろん重要でありますが，前提として，どのような患者に向き合うか，適切な手術適応，合併症への対応，有事の時の患者対応はそれ以上に重要です．ぜひ，技術と並行して，医師としての高みをめざしていただき，一流の脊椎外科医師になっていただきたく思います．

最後になりますが，本書発刊にあたり羊土社の皆様方，特に，鈴木美奈子様，大家有紀子様には立案の段階から大変お世話になりました．心より御礼申し上げます．

2024年1月

千葉大学大学院医学研究院 整形外科学 教授
大鳥精司