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レジデントノート増刊 Vol.22 No.17 複雑度別の症例で学ぶ マルチモビディティ診療の考え方と動き方

  • ページ数 : 208頁
  • 書籍発行日 : 2021年2月
  • 電子版発売日 : 2021年2月11日
5,170
(税込)
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商品情報

内容

多疾患併存状態を読み解き、治療の優先順位をつけ、適切にアプローチする

誰もが出合う「多疾患併存状態の患者」への対応,治療・退院までの動き方を丁寧に解説,全体像の捉え方,治療の優先順位のつけ方がわかります.また,複雑度に分類した症例を多数収録,確かな実践力が身につきます!

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序文


日本は超高齢社会となり,多疾患併存(Multimorbidity)が当たり前でよく遭遇するCommonな事象になってきています.医学部での教育や国家試験では単疾患である前提で学んでいるため,現場に出てMultimorbidity 状態の患者を担当してはじめて「問題が多すぎて全体像がみえない,優先順位がつけられない,標準治療が行えない」といった悩みを抱えます.その結果「治療効果が得にくく,長期入院になりがち.早期の再入院も多い」という苦労もしていると感じています.

とはいえ,「Multimorbidity だから,診療成績が悪くてもしかたない」という言い訳が通用するわけではありません.将来の志望科として総合診療科・総合内科に関心があるかどうかにかかわらず,すべての医学生・初期研修医,そして内科系・救急系・集中治療系・リハビリ系など「患者が今困っている問題に対して,臓器や疾患を絞らず幅広く主治医として対応する科」に進む後期研修医・専攻医にとっても「Multimorbidity診療のノウハウ」は“必修”と考えています.

以前に比べればMultimorbidity を取り上げた雑誌特集や企画は増えてきているように感じますが,総合診療の専攻医・指導医向けの媒体への掲載がほとんどで,広く一般に知られる機会はまだまだ乏しいと感じていました.しかし,今回,国内の多くの医学生・初期研修医が手に取る機会のあるレジデントノートでMultimorbidityの特集を組ませていただく機会を得ることができました.総合診療の第一線でMultimorbidityの診療に取り組んでいる専攻医や指導医の力を借りることで,日本全国の多くの若手医師に「Multimorbidity の捉え方,対応のしかた」についての方法論を伝えたいと考えました.

もちろん,エキスパートクラスの医師にとっても難しいと感じる超困難症例や,特定の医師や医療機関でしかできない超個別的な自己流診療の自慢,誰も知らない最先端の理論を伝えるだけではかえって苦手意識が強くなってしまう可能性がありますし,何より読んでいておもしろくありません.

そこで,総論では,「Multimorbidityでもちゃんとエビデンスがあり,対応方法がある」ということが伝わるようなテーマや,さまざまな規模・機能の医療機関において実際にどう振る舞えばいいかなど,実践に活かせるような項目を設定しました.

各論では,Multimorbidityという概念に“複雑度(問題の数や,心理社会的問題の影響の難しさの度合い)”という補助線を引いて3段階に分けることで,初学者から上級者まで幅広く取り組めるような工夫をしました.また,特殊な疾患のRare caseではなく,Common diseaseのCommonな組合わせに絞って提示することで,明日からの実践にすぐにでも活かせるように配慮しました.

総合診療の専門研修2~3年目であれば「最初から通読し,すべてを理解することをめざし,明日からの実践に反映する」ことを目標としてもよいですが,初期研修医向けの雑誌で取り扱うテーマとしてはやや難易度の高い内容だとは感じています.ざっと眺めてみて難しそう,重たそうと感じた場合は,「総論の気になるテーマだけ拾い読みして興味をもってみる」とか,「今担当している症例の疾患の組合せに近い各論だけ読んでみる」という使い方でハードルを下げて少しずつでも守備範囲を広げていただければ十分と考えています.

本増刊が読者の皆さんが臨床研修を行ううえでの有用なツールとなり,「Multimorbidityを抱える患者の生命予後やQOLの改善に寄与する」ことが実現するような,読み応えのある1冊をめざしました.今後も同様の企画を個人でも,各種媒体でも,関連学会などでも展開していきたいと考えていますので,明らかな間違いや改善点などお気づきの点がありましたら,ぜひとも編集部までフィードバックをいただければ幸いです.


2021年1月

札幌医科大学総合診療医学講座/ 札幌医科大学附属病院
佐藤健太

目次

序【佐藤健太】

Color Atlas

執筆者一覧

第1章 総論 Multimorbidityの基本的な考え方

1. Multimorbidityに関連するエビデンスの現在と将来【髙橋亮太,岡田唯男】

2. Multimorbidityに疾患別診療ガイドラインを適用する際の注意点【南郷栄秀】

3. 日常診療でよくみかける「医学的に正しいが患者がよくならない」Multimorbidity診療とその原因【喜瀬守人】

4. 複雑性の分類と対応方法【堀 哲也】

5. Multimorbidity診療を担当する医師が直面する意思決定ジレンマ【尾藤誠司】

第2章 総論 Multimorbidityの実践的な対応方法

1. 標準的な対応の原則,診療手順・治療戦略【大浦 誠】

2. 問題リストの整理方法【佐藤健太】

3. 大病院における診療のコツ~専門科が揃っている環境でのコンサルテーション・コーディネート【原田侑典】

4. 中小病院における診療の強み(病院総合医が主力となる診療の特徴や強み・魅力)【松本真一】

5. 診療所における診療の特徴~診療所家庭医が主力となる退院後の診療の特徴,連携【加藤利佳】

第3章 各論 複雑度レベルⅠ:Simple case(単純事例)

1. 肺炎+喘息【江川 萌】

2. 心不全+COPD【八百壮大】

3. 感染症+悪性腫瘍【小川太志】

4. 椎体圧迫骨折とMultimorbidity【澤近 弘】

5. 虚血性疾患+出血性疾患【勝倉真一】

6. 生活習慣病+運動器疾患・精神疾患【久保伸貴,岡田唯男】

7. 生活習慣病+フレイル・認知症【西 明博,岡田唯男】

第4章 各論 複雑度レベルⅡ:Complicated case(複合事例)

1. うっ血=心不全×腎不全×運動器【澁谷仁美】

2. 急性増悪=肝硬変×慢性腎不全×陳旧性心筋梗塞【長野広之】

3. 誤嚥=認知機能障害×嚥下障害×呼吸機能障害【森川 暢】

4. 褥瘡=膀胱直腸障害×サルコペニア×抑うつ・障害受容【岩上真理子】

第5章 各論 複雑度レベルⅢ:Complex case(複雑事例)

1. 閉じこもり ∋(慢性心不全×Polypharmacy)∩(認知症×孤立)【島津真理子】

2. 社会的排除:(肝硬変×COPD×心不全×閉塞性動脈硬化症)∩(脳梗塞×認知機能低下×ふらつき×ベンゾ依存)∩(家族の強い不安×介護保険未申請)∩(ケアの分断×救急頻回受診×隠された疾患)【水本潤希】

3. 会社経営危機 ∋(発達障害×生活習慣病)∩(脳梗塞×問題行動)【天野雅之】

4. スティグマ ∋(マイノリティ×リストラ×ホームレス)∩(アルコール依存症×結核疑い)∩(受け入れ拒否×受診拒否)【井村春樹】

5. つながりの断絶 ∋(心不全×腎不全×α)∩(高齢独居×意思疎通困難)∩(家族疎遠×経済的困窮)【折田 浩,田澤真吾,小松真成】

おわりに【佐藤健太】

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書籍情報

  • ISBN:9784758116572
  • ページ数:208頁
  • 書籍発行日:2021年2月
  • 電子版発売日:2021年2月11日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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