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- がん免疫ペディア~腫瘍免疫学・がん免疫療法の全てをまるごと理解!
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序文
序
日本はこれまで腫瘍学・免疫学の分野において,世界のトップクラスのさまざまな貢献をしてきた.また,多くの著名な研究者を育成し,輩出してきた.しかしながら,現在は人口減少,景気の低迷に伴う研究費の削減,若手研究者の留学者数の減少など,悲観的な情報が続いている.
さて世界的にみるとがん患者は増える一方である.ここ数年で免疫チェックポイント阻害剤はさまざまながん,ステージ,ラインでの使用がすすみ,文字通りがん治療の屋台骨となりつつある.その一方で,がん免疫の研究分野での大きなブレークスルーは,まだまだ必要である.しかしがん免疫は,免疫学・腫瘍学という2 つの領域にまたがるため,体系的な全体像の理解が難しいといわれていた.そこで必要な知識を体系的に整理した本書を企画した.これによりホットな分野であるがん免疫の世界に若手研究者が興味をもち,参加してくださることを心から希望する.
本書の執筆には,すでに著名な先生方から,比較的若手の研究者までご参加いただいているが,いずれも担当分野での顕著な研究実績がある方や,とても勢いのある研究や魅力的な研究をされている方である.私自身ははじめからがん免疫を専門にしようとしていたわけではなかったが,がん免疫の分野を多数の素晴らしい先輩の先生方に教えていただき,結果としてこの分野をとても好きになった.そのときに読んだ本のワクワク感を,次世代の方に感じてほしいという思いをこの本に込めた.たいへんお忙しいなか執筆をお引き受けいただいた諸先生方,またこの本を編集するにあたり,当初からご指導,ご支援をいただき,さまざまな相談にのっていただいた羊土社蜂須賀修司氏,橋本紫光氏はじめ関係者の皆様に心よりお礼申し上げます.
若手研究者には,ぜひ本書を自分の最も興味のある項目から読み,周りのがん免疫に詳しい人に質問しながらくり返し読んで,がん免疫へ興味をもって研究に積極的に参加していただきたい.また,本書がカバーできていない分野もまだまだたくさんある.奥深いがん免疫の世界を,読者の皆さんとともに拡げていければ幸いである.
2022年1月
吉村 清
目次
序【吉村 清】
概論 がん免疫研究と治療法開発の歴史【吉村 清】
臨床編
1章 がん免疫療法
1.アデノウイルスによる腫瘍溶解療法【藤原俊義】
2.単純ヘルペスウイルスによる腫瘍溶解療法【高橋雅道】
3.その他のウイルスによる腫瘍溶解療法【谷憲三朗】
4.免疫チェックポイント阻害剤①(抗PD-1抗体)【猶木克彦】
5.免疫チェックポイント阻害剤②(抗PD-L1抗体)【深井真璃,倉田宝保】
6.CAR-T細胞療法【長田 眞,蒔田真一】
7.T細胞療法(TIL療法,TCR-T療法)【吉松和彦,田中宏典】
8.抗ヒトIL-6R抗体(トシリズマブ)【細沼雅弘】
9.抗CCR4抗体(モガムリズマブ)【末廣陽子】
10.樹状細胞療法【勝田将裕】
11.ネオアンチゲンを用いたがんワクチン療法【硲 彰一】
12.IDO阻害薬,抗LAG-3阻害薬,抗TIGIT阻害薬【谷口智憲】
13.分子標的療法と免疫療法による複合療法【林 秀敏】
14.iPS細胞技術を用いたがん免疫細胞療法【河本 宏】
15.便移植【吉村 清】
2章 がん種とがん免疫療法
1.乳がんと免疫療法【鶴谷純司】
2.消化器がんと免疫療法【馬場啓介,山本 駿,平野秀和,加藤 健】
3.肺がんと免疫療法【堀池 篤】
4.メラノーマに対する免疫療法【加藤雪彦】
5.頭頸部がんと免疫療法【榎田智弘,田原 信】
6.産婦人科領域におけるがん免疫療法【濵西潤三】
3章 治療効果の評価,診断
1.免疫関連有害事象【釼持広知】
2.免疫療法におけるpseudoprogressionとhyperprogressive disease【久保田祐太郎】
3.RECISTとiRECIST【田口禎浩,山本将一朗,野上尚之】
4.アブスコパル効果【森 毅】
5.バイオマーカー【伊藤美郷,河野浩二】
6.センチネルリンパ節【田中浩明】
7.ドナーT細胞のGVL効果【伊藤 歩】
8.がん免疫療法の有効性の評価【鈴木弘行】
4章 産業としてのがん免疫療法
1.細胞免疫療法における細胞培養加工施設とその関連法規・運用【岡崎利彦】
2.がん免疫療法と医療経済【原 智彦】
3.がん免疫療法におけるトランスレーショナルリサーチ【西塔拓郎,和田 尚】
4.免疫療法と用量設定【今村知世】
基礎編
1章 がん免疫応答と腫瘍抗原
1.がん免疫サイクル【唐崎隆弘】
2.T細胞受容体【北岡功次,茶本健司】
3.サイトカイン【恒富亮一】
4.免疫記憶【倉増敦朗】
5.STING【吉村 清】
6.GITR【青木一教】
7.年齢と免疫【平澤優弥,吉村 清】
8.ネオアンチゲン,MHC分子とがん【氷室秀知,笹田哲朗】
9.熱ショックタンパク質とがん免疫【藏滿保宏】
10.がん精巣抗原【垣見和宏】
2章 がん微小環境
1.腫瘍関連マクロファージ【鈴木拓児】
2.MDSC(骨髄由来抑制細胞)【柴田昌彦】
3.がんとNKT細胞【髙見真理子,本橋新一郎】
4.がん免疫におけるNK細胞【早川芳弘】
5.がん幹細胞【廣橋良彦,鳥越俊彦】
6.間葉系幹細胞【工藤千恵】
7.上皮間葉転換【工藤千恵】
8.血管新生【山下公大,掛地吉弘】
9.CAF(がん関連線維芽細胞)【城田英和】
10.低酸素とHIF【近藤科江】
11.骨転移における微小環境【細沼雅弘】
3章 がん免疫とゲノム
1.TCRレパトアと免疫ゲノミクス【主藤朝也,山田 亮】
2.人工知能とがん免疫【浅井義之】
3.ドライバー遺伝子変異とパッセンジャー遺伝子変異【上月稔幸】
4.Tumor mutation burden(TMB)【谷内田真一】
5.マイクロサテライト不安定性【白澤昌之,河野隆志】
4章 免疫抑制機構と免疫逃避機構
1.がん免疫編集【廣橋良彦】
2.免疫チェックポイントとT細胞疲弊【岩井佳子】
3.がん免疫とオートファジー【和田 聡】
4.メトホルミンのがん治療への応用【宮下知治,高村博之】
5.HMGB1【植木紘史】
6.腸内細菌叢が宿主生理機能に与える影響【金 倫基】
7.OX40/4-1BB【村田 聡,谷 眞至】
8.炎症性サイトカイン【巖本三壽】
9.インターフェロンγ,腫瘍壊死因子α【川瀨勝隆,冨樫庸介】
10.JAK-STAT3【柴田龍弘】
11.ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬【三邉武彦】
5章 代謝とがん免疫
1.T細胞におけるグルタミン代謝活性化機構【徳増美穂,鵜殿平一郎】
2.制御性T細胞と代謝【熊谷尚悟,西川博嘉】
3.T細胞老化,疲弊とがん免疫【桑原 誠,山下政克】
4.メチオニンのがん免疫へのかかわり【濵田和幸】
5.IDOと免疫【正木彩子】
6.脂肪酸代謝制御による免疫記憶【遠藤裕介,中山俊憲】
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書籍情報
- ISBN:9784758121194
- ページ数:223頁
- 書籍発行日:2022年2月
- 電子版発売日:2022年3月9日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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