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- 身近な生化学 分子から生命と疾患を理解する
商品情報
内容
生化学反応を日常生活にある身近な生命現象と関連づけながら,実際の講義で話しているような語り口で解説することにより,学生さんが親しみをもって学べるテキストとなっています.好評書『身近な生物学』の姉妹編.
序文
序
まずは,どういう理由であれ,本書をお手に取っていただいたことに,心より感謝を申し上げたい.本書は『身近な生化学』と題されているが,われわれの日常生活にあるさまざまな事象を参考に,
生体内で起きている生化学的な現象を理解しよう,というコンセプトのもとに執筆したものである.本書では,さまざまな化学反応の機構も解説するが,むしろ「化学反応の生物学的意義」に,より重点を置いた内容になっている.われわれの目に見えない化学反応をイメージしなさいと言われても,簡単ではない.一方で,われわれが生きている様,何かしらの病気になった様,そういうものは日常の中で多く目にしてきたことと思う.日常生活の中には,生化学の理解につながるヒントや事象が,そこら中に溢れている.それらを無視し,利用しないのは,あまりにもったいない.すでにわれわれの目に触れているものなのだから,まさに「実学」として「実感」できるのだ.そこで,生化学的現象の理解に役立つヒントを,できるだけ多く紹介した.ものによってはただの「雑学」でしかないかもしれないが,逆に理解するうえでは大きなアドバンテージとなり,座学を超えて,「科学」に対する興味を抱くきっかけになってくれればと思う.
また,本書では「なぜ?」という問い掛けの形式を多用したので,ぜひ皆さんもご自分で思考する努力をしていただきたい.他人から教わったものを棒暗記して丸飲みするのは簡単だが,それは無味乾燥で,実につまらない作業である.コンピューター,フラッシュメモリ,スマートフォンなどに容量の限界があるように,われわれの脳にも容量の限界があり,知識を詰め込もうと思っても次々に上書きされ,古いもの・自分が興味をもたないものから順に忘却の彼方に消えてしまうものだ.筆者は薬学部において生化学の講義を担当しているが,学部生の頃は,実は生化学を大の苦手としていた.しかし,生化学の講義を担当すると決まってから,私は「なぜ生化学が苦手だったのか?」を自問してみた.その答えは,やはり例に漏れず「無味乾燥な丸暗記に終始していたから」であった.だから私は,まさしく「しくじり先生」の気持ちとなり,「私が講義を担当する学生らには,生化学を苦手にさせない!」と誓った.そして,学生たちがイメージしやすいさまざまな事象と関連させながら,「体系的に理解する」ことを目標に設定し,日々の講義を行っている.さまざまな知識をストーリー立てて体系的にしっかり理解していれば,小さなヒントから芋づる式に次から次へと知識が蘇ってくる.そんな境地をめざしてもらいたい,その一心である.そして,その先では,生理学・栄養学・薬理学などといった,生化学を基盤とする他の応用科目の理解も深まることだろう.本書は,普段の講義の中で私が実際に話していることをそのまま活字に起こす,そんなイメージで執筆した.だから,本書を「教科書」という堅苦しい感じではなく,どちらかというと「読み物」として緩く捉えていただけたらと思う.そして,最終的に,これから生化学を学ぶ人には生化学を苦手にしないように,また,昔の私のようにすでに生化学が苦手になってしまった人には苦手の感覚を少しでも緩和できるように,本書がそんな学生たちの一助になれば幸いである.
これまでの多くの方々とのご縁が一本の線となってつながったがゆえに,この本の執筆に至った.気づけばご縁の線上に乗っていた皆様,そして,私のわがままを最大限に取り入れてくださり,一緒につくっていただいた羊土社編集部の皆様に深くお礼を申し上げたい.
2024年1月
畠山 大
目次
序
0章 生化学とは?
1. 高校理科教育との違い
2. 生化学とは?
3. 生物の階層性
4. 水の特性と生命活動における働き
第Ⅰ部 生体の構成要素
はじめに:生体を構成する物質
1. 細胞および細胞小器官の構造と機能
2. 生体を構成する4種類の分子群
3. タンパク質・酵素の構造と機能
1章 細胞の構造と機能―はたらく細胞たちの真の姿
1. 細胞発見の歴史
2. 原核細胞と真核細胞
3. 生体膜
4. 細胞小器官
5. 小胞輸送
6. 細胞骨格
章末問題
2章 生体分子の構造と性質―私たちの身体は,食べたものでできている
1. アミノ酸
2. 糖質
3. 脂質
4. 核酸
章末問題
3章 タンパク質の構造―生命活動を司る「神様」
1. ペプチド結合
2. タンパク質の立体構造
3. 構造と機能との関連
4. タンパク質の解析方法・精製方法
章末問題
4章 酵素―ちょっとわがままなタンパク質の「エース」
1. 酵素とは?
2. 酵素の特性
3. 酵素の分類
4. 補因子とビタミン
5. 酵素反応速度論
6. 酵素活性の阻害
7. 酵素の多様性
章末問題
第Ⅱ部 生体分子の代謝
はじめに:代謝の全体像
1. 三大栄養素の分解
2. 三大栄養素の代謝系のクロストーク
3. エネルギー源としてのATP
5章 糖質代謝―みんな大好き「甘いもの」,食べ過ぎるとなぜ太る?
1. 消化と吸収
2. 解糖系
3. 嫌気的条件下での糖質代謝:発酵
4. 好気的条件下での糖質代謝:クエン酸回路
5. 糖新生
6. グリコーゲン代謝と血糖調節機構
7. ペントースリン酸経路
章末問題
6章 脂質代謝―脂は「旨い肉」,敵ではありません
1. 「水と油」
2. 消化と吸収
3. 体内運搬
4. 脂肪酸の分解:β酸化
5. 脂肪酸の合成・伸長・不飽和化
6. エイコサノイド
7. リン脂質の代謝
8. コレステロールの代謝
章末問題
7章 アミノ酸代謝―アミノ酸の利用は諸刃の剣
1. 食餌性タンパク質の消化
2. 体性タンパク質の分解
3. アミノ酸の分解
4. アミノ酸の代謝
5. アミノ酸に由来する生理活性物質群
章末問題
8章 電子伝達系と酸化的リン酸化―2つの「流れ」がATPを生み出す
1. 流れのエネルギー
2. 電子伝達系の概要
3. 還元型補酵素のNADH+H+・FADH2
4. 電子伝達にかかわる複合体タンパク質と化合物
5. 1分子の還元型補酵素で汲み出されるプロトン数
6. 酸化的リン酸化によるATP合成
7. ATP産生量の計算
章末問題
9章 核酸の代謝―核外でもはたらく「核内の酸性物質」
1. 核酸の構造と機能
2. 核酸合成の概要
3. プリンヌクレオチドの代謝
4. ピリミジンヌクレオチドの代謝
5. 細胞内情報伝達物質としての核酸
章末問題
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書籍情報
- ISBN:9784758121705
- ページ数:295頁
- 書籍発行日:2024年2月
- 電子版発売日:2024年3月22日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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