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- 基礎から学ぶゲノム医療
商品情報
内容
あらゆる医療者に求められるゲノム医療について体系的にカラーで学べる初学者向けテキスト.遺伝形式,遺伝カウンセリング,遺伝学的検査などの基礎や,難病・小児・生殖/周産期・がんなどの臨床の実際を解説.
序文
はじめに
─ゲノム医療を自らのものとして考えるために─
「ゲノム医療」とは,個人の「ゲノム情報」をはじめとした各種オミックス検査情報をもとにして,その人の体質や病状に適した「医療」を行うことを指す.具体的には,質と信頼性の担保されたゲノム検査結果等をはじめとした種々の医療情報を用いて診断を行い,最も有効な治療,予防及び発症予測を国民に提供することを言う.ゲノム医療実現推進協議会:中間とりまとめ.平成27 年7 月
(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/genome/pdf/h2707_torimatome.pdf)より引用.
わが国ではすでに難病やがんの領域を中心にゲノム情報にもとづいた診断や治療が進められております.
ゲノム医療の強みは病気や症状の診断や治療のみならず予防を可能にすることです.前漢時代の医学書である黄こう帝てい内だい経けいには「聖人は已い病を治さずして未病を治す」と,未病のうちから治療するのが聖人だと述べられています.現在の医療は病気や症状にもとづいた治療を中心に急速に発展してきましたが,ゲノム情報を知ることは未病からの介入を可能にします.さらに令和7 年度を目途に全ゲノム解析を医療に導入することを国策として決定しました.2000 年前は「聖人」の手のなかにあったとされる未病の医療でしたが,現在は個人でも遺伝情報を知ることができ,医療者や血縁者,研究者と一緒に考えていくことで,医療者のみならず,すべての国民がゲノム医療について知っておくべき時代が到来しています.
本書は当初岡山大学の教養教育課程講義「ゲノム医療入門」を担当する教員を中心に,大学の1 〜2 年生に向けて伝えることを目的に執筆をはじめました.羊土社さんのご尽力によりさらに専門家の皆さんに加わっていただき,立派な本にしていただきました.
ゲノム情報を一人ひとりが自分のものとして活用できる社会の到来に向けて,臨床遺伝学,ゲノム医学の基礎的な知識と考え方,遺伝カウンセリングと遺伝学的検査,難病,小児,周産期,がんにおけるゲノム医療について基本的な知識をもち,一緒に考えるきっかけになればと願っております.
2024年6月
平沢 晃
目次
はじめに ─ゲノム医療を自らのものとして考えるために─【平沢 晃】
1章 ゲノム医療の基礎【岡崎哲也】
1-1 ゲノム医療の歴史
1)メンデルの法則と遺伝形式の発見
2)ヒト染色体と染色体異常症の発見
3)DNAの塩基配列と遺伝子の解明
4)ヒトゲノムプロジェクト
5)次世代シークエンサーによるゲノム解析
6)現在のゲノム医療
1-2 ゲノムの構造と機能
1)ヒトの細胞とゲノム
2)ゲノムの基本構造としてのDNAの塩基配列
3)ゲノムの基本構造としての染色体
4)体細胞分裂と減数分裂
5)タンパク質の設計図としてのゲノム
1-3 ゲノム情報と疾患
1)塩基配列の違い(バリアント)
2)染色体の異常
1-4 単一遺伝子疾患と多因子疾患
1)単一遺伝子疾患とメンデル遺伝形式
2)多因子疾患
1-5 ゲノム医療を取り巻く環境や課題
1)ゲノム医療に関する医療体制の課題
2)遺伝カウンセリング提供体制の充実に向けた取り組み
3)ゲノムによる多様性の理解/認識の共有
4)ゲノム医療を加速させるためのデータシェアリング
2章 遺伝カウンセリングと遺伝学的検査【十川麗美,加藤芙美乃,二川摩周,深野智華】
2-1 遺伝カウンセリング
1)遺伝カウンセリングとその定義
2)遺伝カウンセリングの歴史
3)遺伝カウンセリングの実際
4)遺伝カウンセリングの基本態度
2-2 家族歴と家系図
1)家族歴と家系図
2)家系図の表記方法
3)家系図を活用する
2-3 遺伝学的検査
1)医療で用いる遺伝子の検査
2)遺伝学的検査の前に考慮すること
3)遺伝学的検査の目的
4)遺伝学的検査の流れ
5)遺伝学的検査の解釈
6)遺伝学的検査の結果開示と血縁者への対応
3章 ゲノム情報にもとづいた治療薬の選択【莚田泰誠】
3-1 薬の効果・副作用における個人差
3-2 ゲノム薬理学と薬理遺伝学
3-3 薬物動態に関連する薬理遺伝学検査
1)薬物動態と薬の効果・副作用
2)薬物代謝酵素遺伝子
3-4 薬物動態に関連しない薬理遺伝学検査
1)HLA遺伝子群
2)薬疹の発現リスクに関連するHLAアレル
4章 難病のゲノム医療【石浦浩之】
4-1 難病とは?
1)難病とはどういった疾患か?
2)難病のゲノム医療の具体例
4-2 遺伝性疾患の病態メカニズム
4-3 ゲノム情報にもとづく治療
4-4 正確な診断のためのゲノム解析手法
4-5 わが国における難病患者支援体制
5章 小児の先天異常に関するゲノム医療【吉橋博史】
5-1 先天異常症候群とは
5-2 小児遺伝診療の実際
1)診断をめざす前に
2)臨床診断(clinical diagnosis)
3)遺伝学的診断(genetic diagnosis)
5-3 未診断疾患に対する診断アプローチ
5-4 先天異常に関する社会資源と家族支援
5-5 先天異常における移行期医療
5-6 小児に対する遺伝カウンセリング
6章 生殖・周産期のゲノム医療【佐々木愛子】
6-1 生殖・周産期における遺伝医療の歴史
1)背景
2)日本における出生前遺伝学的検査の歴史
3)出生前遺伝学的検査における生命倫理の歴史
4)着床前遺伝学的検査における日本の歴史
6-2 出生前/着床前遺伝学的検査にかかる現状と課題
1)出生前遺伝学的検査における現状と課題
2)着床前遺伝学的検査における現状と課題
3)ノーマライゼーションとSRHRにおける課題
7章 がんのゲノム医療【山本英喜】
7-1 がんとゲノム異常
1)「がん」の歴史
2)「がん」をゲノムの観点から理解する
3)がんの発生に関連する遺伝子
7-2 がんの予防と遺伝性腫瘍
1)遺伝性腫瘍の特徴
2)遺伝性腫瘍の遺伝学的検査と浸透率
3)遺伝性腫瘍と非遺伝性腫瘍
4)多遺伝子パネル検査(MGPT)
5)遺伝性腫瘍に対する先制医療
7-3 がんの遺伝子解析と個別化治療
1)わが国におけるがんゲノム医療の導入
2)がんの個別化医療の実際
3)がんゲノム医療で見出されるgermline findings
8章 ゲノム情報の利活用【冨田秀太】
8-1 ゲノム医療の現状と全ゲノム解析時代の到来
1)本邦におけるゲノムデータ蓄積と利活用の推進
2)がん遺伝子パネル検査から全ゲノム解析へ
3)全ゲノム解析とは
8-2 病的バリアントを調べるためのデータベース
1)遺伝子の概要を知る手法
2)遺伝子バリアントの臨床的意義を知る手法
3)同一疾患やコホートにおける遺伝子バリアントの頻度を知る手法
8-3 遺伝子の概要を知る手法
1)GeneCards ®:The Human GeneDatabase
2)UCSC Genome Browser
8-4 遺伝子バリアントの臨床的意義を知る手法
1)OncoKB ™
2)COSMIC
3)ClinVar
8-5 同一疾患やコホートにおける遺伝子バリアントの頻度を知る手法
1)cBioPortal for Cancer Genomics
2)がんゲノム情報管理センター(C-CAT)
8-6 大規模全ゲノムデータを活用した解析方法
1)ゲノムワイド関連解析(GWAS)とポリジェニックリスクスコア解析
2)マルチオミクスデータを用いた予測モデルの構築
9章 ゲノム医療における倫理的・法的・社会的課題(ELSI)【髙橋沙矢子,甲畑宏子,吉田雅幸】
9-1 ゲノム医療における倫理的課題
1)成人期発症疾患の発症前遺伝学的検査
2)小児領域における遺伝学的検査
3)出生前遺伝学的検査と着床前遺伝学的検査
4)二次的所見との取り扱い
9-2 ゲノム医療における法的課題
1)遺伝情報による差別の禁止
2)プライバシーとしての遺伝情報の保護
3)研究における倫理指針
9-3 ゲノム医療における社会的課題
9-4 バイオバンクとELSI
9-5 ゲノム情報のデータシェアリングと患者・市民参画(PPI)
おわりに ─ゲノム情報を有効に活用可能な世の中をめざして─【平沢 晃】
索引
Column
モザイク(mosaicism)
新生変異(de novo)
ミトコンドリアDNAとミトコンドリア病
DTC遺伝子検査とは?
妊娠週数と各種検査の時期
情報学的な塩基数の数え方
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書籍情報
- ISBN:9784758121729
- ページ数:134頁
- 書籍発行日:2024年7月
- 電子版発売日:2024年8月9日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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