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実験医学別冊 もっとよくわかる!食と栄養のサイエンス

  • ページ数 : 216頁
  • 書籍発行日 : 2021年2月
  • 電子版発売日 : 2021年2月11日
4,950
(税込)
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商品情報

内容

食行動を司る生体恒常性維持システム

ヒトはなぜ食べるのか?鍵は食行動の分子・神経基盤にあり!健康を維持するため,食物の情報を捉え処理するメカニズムを詳説.生活習慣病や摂食障害の改善をめざす医学,健康科学,栄養学,食品科学の研究者,必読!

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序文

はじめに
〜本書の意図について〜


健康寿命の延伸が先進諸国の課題となり,近年の医学研究の対象は「疾患の解明」だけでなく,「健康とはどういうことか」を明らかにする方向に拡大し,“Sick science”から“Health science”へと移行しています.とりわけ,生命の根幹をなす「食べる」という行為と,食品に含まれる「栄養」の機能の理解,そして,それらの理解に基づく健康増進の可能性に,高い関心が集まっています.

本書を手にされた方は,食欲・栄養・食品機能などに興味をおもちではないかと思います.自分の日常生活,および臨床業務などの自己体験を通して,食行動をコントロールするしくみに興味をもたれたのではないでしょうか.

本書では,「食行動を司る生体恒常性維持システム」というサブタイトルのもとで,食と栄養を「食行動」という切り口で捉え,健康(=生体恒常性が保たれた状態)を維持するために食行動がどのように調節されているのかを,わかりやすく,かつ最先端までカバーすることをめざしました.

食行動の研究は,調節メカニズムの基礎研究が現在進行形で進んでいる段階で,解明されたメカニズムに基づいた開発成果や,科学的エビデンスが蓄積した臨床応用の事例に限りがあります.そこで本書では,次のような4部構成にしました.まず,食行動の研究の意義と研究方法を理解するうえで必要な情報を,第1部にまとめました.次に,食行動の生理的な調節メカニズムを,「末梢から中枢への情報伝達(第2部)」と「脳内での情報処理と行動の測定法(第3部)」に分けてまとめました.最後に,社会的適用と今後の展望(第4部)についてまとめました.

本書を読むことで,「ヒトはなぜ食べるのか?」というクエスチョンを出発点に,基礎研究の知見を通して「食物→(神経入力・代謝シグナル)→生体恒常性→(食行動)→食物→……」というサイクルを,読者がイメージできるようになることを目標にしています.そして,臨床における食行動の変容や医食連携の視点を提供することにより,「規制(食薬区分)により分断されている医薬と食の連続性」および「食から健康を増進・向上させるために必要なサイエンスの全体像」を読者に伝えることが本書の狙いです.

健康寿命の延伸と医療費の抑制を両立させるには,科学的エビデンスに基づいた医食同源の普及が必要です.この目標を達成するには,さまざまなバックグラウンドの方々の協力が必要です.また,日常生活に直結している食行動は基礎学術と臨床・社会の距離が近いため,サイエンスの成果を社会に還元しやすい領域です.食行動研究に,より多くの方が参画することで学際的な産学官連携を進め,「サイエンスによる社会変革」をもたらす契機とするために,本書を作成しました.読者の皆さんの参入を期待します.


2021年1月

佐々木 努

目次

はじめに 〜本書の意図について〜【佐々木 努】

第1部 イントロダクション

第1章 食と栄養のサイエンスとは 〜意義,特徴,およびハードル【佐々木 努】

 1 「食べる」とは,どういうことか

 2 食と栄養のサイエンスの意義

 3 理解すべき食行動の特徴

 4 食と栄養のサイエンスに対するハードル

 5 食と栄養のサイエンスを新たに確立するための方策

 6 食と栄養のサイエンスへようこそ

第2章 全体像を理解するための基礎知識【佐々木 努】

 1 動機づけの原理

 2 栄養学の基本概念

 3 内分泌代謝学の基本概念

 4 神経科学の基本概念

 5 IDA サイクルによる情報の流れの理解

 6 全体像の理解の大切さ

第3章 食にかかわる感覚の種差【糸井川壮大,今井啓雄】

 1 ヒトを含む霊長類と齧歯類の味覚の差

 2 ヒトを含む霊長類と齧歯類の嗅覚の差

 3 モデル動物研究からヒトへの応用に向けた今後の展望

第2部 末梢から中枢への情報伝達

第4章 食と味覚 〜食行動における役割【中島健一朗】

 1 味覚のもつ2つの側面:認識と嗜好

 2 末梢(舌)における味覚の認識

 3 味細胞での味覚の認識

 4 脳内での味覚の認識・嗜好メカニズム

 5 今後の課題

第5章 食と嗅覚 〜食べ物の匂いの検知から食行動まで【山口正洋】

 1 匂いと食の関係:オルソネーザル匂い知覚とレトロネーザル匂い知覚

 2 匂いの検知と情報処理の神経機構

 3 嗅覚と食行動の関係

 4 栄養・代謝状態によって調節される嗅覚機能

 5 レトロネーザル匂い知覚と食べ物の味わいについて

 6 今後の展望

第6章 食における五感の相互作用 〜視覚を中心に【和田有史】

 1 視覚による食の認知

 2 五感の相互作用と食品の味わい

第7章 内臓感覚神経による摂食調節 〜求心性迷走神経を中心に【岩﨑有作】

 1 早期膨満感と内臓感覚神経

 2 内臓感覚神経の解剖学的理解と機能

 3 食物/栄養情報を感受して求心性迷走神経へ伝達する腸管内分泌細胞とneuropod

 4 求心性迷走神経がセンスする末梢因子と摂食調節機能との連関

 5 求心性迷走神経から発せられる摂食行動調節における中枢機序

 6 今後の展望

第8章 栄養・代謝シグナルと血液脳関門【佐々木 努】

 1 栄養素による摂取調節

 2 ホルモンによる摂取調節

 3 腸内細菌の代謝産物による摂取調節

 4 血液脳関門と血液髄液関門の役割

 5 液性経路の重要性

第3部 脳内での情報処理と行動の測定法

第9章 恒常的摂食調節の脳内回路【佐々木 努】

 1 一次中枢:視床下部弓状核での感知

 2 二次中枢①:視床下部弓状核からの投射先

 3 二次中枢②:結合腕傍核への投射

 4 二次中枢より先の投射先

 5 一次中枢に対する神経性入力

 6 栄養素に対する食欲の調節メカニズム

 7 その他の摂食調節因子

 8 これまでのまとめと今後の課題

第10章 食のもたらす快情動の神経メカニズム 〜報酬系の脳内回路【小澤貴明,疋田貴俊】

 1 報酬系を司る神経伝達物質

 2 報酬・価値判断の脳内回路

 3 今後の展望

第11章 経験学習と予測による食行動の調節

 1 食行動における味覚や嗅覚に関連する学習とそのしくみ【八十島安伸】

 2 予測と生体リズムによる食行動の調節【佐々木 努】

第12章 食行動の測定法

 1 ヒトでの食行動の評価法と課題①:個体ごとの認知・食行動の計測【和田有史】

 2 ヒトでの食行動の評価法と課題②:集団としての評価法(疫学的手法)【朝倉敬子】

 3 齧歯類における食行動の評価法【佐々木 努】

第4部 食と栄養のサイエンスの社会的適用と今後の展望

第13章 肥満と食行動【佐々木 努】

 1 肥満の社会的インパクト

 2 肥満の成因

 3 肥満による食行動の変容メカニズム

 4 肥満における食行動への介入の難しさ

 5 開発・検証中の薬剤

 6 今後の課題

第14章 摂食障害と食行動【佐々木 努】

 1 摂食障害の定義と社会的インパクト

 2 摂食障害のメカニズム研究のハードル

 3 摂食障害の病態メカニズム仮説

 4 介入法

 5 今後の課題

第15章 ストレスによる食行動の変容メカニズム【岡本士毅,箕越靖彦,益崎裕章】

 1 ストレスと食行動の関係

 2 急性ストレスと慢性ストレスによる食行動への影響

 3 ストレス性過食

 4 今後の展望

第16章 食によるヘルスケアを実現するには【佐々木 努】

 1 食品と医薬品を分ける食薬区分

 2 機能をもつ食品,保健機能食品

 3 食品と医薬品の承認制度の違い

 4 食品と医薬品の市場性の違い

 5 生活習慣病の克服に必要な制度

 6 今後の課題

おわりに【佐々木 努】

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書籍情報

  • ISBN:9784758122092
  • ページ数:216頁
  • 書籍発行日:2021年2月
  • 電子版発売日:2021年2月11日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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