もっとよくわかる!線維化と疾患

  • ページ数 : 172頁
  • 書籍発行日 : 2023年9月
  • 電子版発売日 : 2023年9月13日
5,500
(税込)
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商品情報

内容

炎症・疾患研究者必携!「線維化」の入門書がついに登場
炎症や疾患研究をしていると必ず通る「線維化」ですが,その進展機構や実態を正しく理解できていますか?メカニズムと病態の両面からわかりやすく解説し,最新論文を読む前の学びはじめに最適な初の入門書が登場!

序文

はじめに

線維化(症)は,コラーゲンをはじめとする細胞外マトリクスが組織中に異常に増加した病理組織学的な状態を指すため,静的な状態をイメージしやすい.実際には,組織傷害や種々のストレスによる実質細胞の障害や脱落,それに応答する免疫細胞や線維芽細胞など多種多様な間質細胞の増加,細胞外マトリクスの過剰産生というダイナミックな変化が生じている.しかしながら,多くの場合,年余の経過で病態が進行するため,動的な状態をイメージすることは容易ではない.さらに,正常な組織修復として恒常性を維持するか,慢性進行性に再構築が進んで臓器不全に陥るか,そのターニングポイントとなる“point-of-no return”も概念的にのみ捉えられている.このように線維化(症)は,病態の理解が難しく,気づいたときには不可逆的かつ予後不良の状態になっている

ため,主に予防的な観点でさまざまな試みがなされてきた.しかしながら近年,従来想定されていた“point-of-no return”を超えても一定の可塑性が残存する事例が次々に報告され,線維化(症)はアンメット・メディカル・ニーズのきわめて高い疾患として注目されるとともに,抗線維化薬の世界的な開発競争が生じている.そこで編者らは,2020 年に「実験医学増刊 線維化 慢性疾患のキープロセス」を上梓し,線維化(症)を多彩な間質細胞が織りなす組織リモデリングとして捉え,最新の知見を紹介した.従来,臓器別に各専門家が研究にとり組んできた線維化(症)について,共通に認められる間質細胞種や細胞間相互作用に焦点を当てつつ,臓器・疾患による違いを意識する構成とし,幸いにも好評をいただいた.その後,シングルセル解析をはじめとするテクノロジーの飛躍的な発展に加え,実際に線維化に対する新しい治療法が臨床応用されるなど,本研究領域には大きな変化があった.生物学・医学分野における国際的なシンポジウムのKeystone Symposia では,数年おきに線維化(症)をトピックとする集会を開催している.例えば,2020 年2 月開催時は,シングルセル解析の方法論や正常と線維化臓器の比較について活発に議論が行われていたが,2023 年3 月時には,シングルセル解析は定着した1 つの解析手法となり,むしろ大量のヒトサンプルやヒト病態を反映するサンプルの収集等に注目が集まっていた.本書では,このような最新の知見も追加したうえで,初学者にもわかりやすく,さまざまな臓器・疾患を俯瞰できる構成とした.本書を契機に,より幅広い分野の方々に線維化(症)研究の魅力と可能性を感じていただければ幸甚である.

最後に,ご多忙の中で執筆を快くお引き受けくださった先生方,本企画を推進してくださった羊土社の早河輝幸氏,中田理沙氏に心より感謝申し上げたい.


2023年8月

編者を代表して
菅波孝祥

目次

第1章 線維化(症)とは何か【菅波孝祥】

第2章 線維化(症)を担うプレーヤー

1 線維芽細胞 〜機能的多様性と線維化,慢性炎症【佐藤有紀】

2 炎症,回復,線維化とマクロファージ【浅野謙一】

3 マクロファージ以外の免疫細胞【田中 都,菅波孝祥】

4 血管内皮細胞【松居 彩,内藤尚道】

5 細胞外マトリクス【辰川英樹,人見清隆】

第3章 線維化(症)を制御するネットワーク

1 細胞間ネットワークの様式【伊藤美智子,菅波孝祥】

2 サイトカイン・ケモカイン【伊藤美智子,菅波孝祥】

3 細胞老化・SASP【清水逸平,南野 徹】

4 細胞死【伊藤美智子,菅波孝祥】

5 エクソソーム 〜細胞外分泌小胞の基礎から臨床まで【柳川享世,松木勇樹,稲垣 豊】

第4章 臓器・疾患と線維化(症)

1 皮膚【鬼頭昭彦,椛島健治】

2 肝臓 〜微小環境による肝線維化と再生の制御【寺井崇二,土屋淳紀,上村顕也,渡邊雄介,阿部寛幸】

3 腎臓【阪本景子,山本恵則,柳田素子】

4 肺【安部祐子,福島清春,熊ノ郷 淳】

5 心臓【武田憲彦】

6 消化器 〜腸管組織障害エントロピーの統合的理解と消化器疾患【三上洋平,金井隆典】

7 脂肪組織 〜さまざまな病態をもたらす脂肪組織の線維化【田中 都,菅波孝祥】

8 骨格筋【上住 円,上住聡芳】

9 がん【榎本 篤】

第5章 線維化(症)の克服に向けて【菅波孝祥】

Column

❶ シングルセル解析とは

❷ マクロファージ発見の父Metchnikoffの遺産

❸ 細胞系譜追跡実験

❹ マイクロ流体デバイス

❺ 筋線維芽細胞の腎保護作用

❻ オルガノイド

❼ がんの物理学的特性


索引

執筆者一覧

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書籍情報

  • ISBN:9784758122139
  • ページ数:172頁
  • 書籍発行日:2023年9月
  • 電子版発売日:2023年9月13日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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