誰でも再現できるNGS「前」サンプル調製プロトコール

  • ページ数 : 441頁
  • 書籍発行日 : 2024年7月
  • 電子版発売日 : 2024年7月9日
7,700
(税込)
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商品情報

内容

「綺麗なデータ」を得るためのサンプル調製のコツがわかる!
実験で「綺麗なデータ」が得られるかはサンプル調製が鍵になる!次世代シークエンサーへの利用を筆頭に,多様な実験系への応用が可能な「極意」を各種生物研究のプロから学ぶ一冊!

序文

配列を安価かつ大量に決定する“だけ”の装置であるが,解析にかけるサンプルを工夫することで,遺伝子発現の定量やエピゲノム状態,環境中に存在する生物種の網羅的同定など実にさまざまなことを調べることができる.近年ではDNA やRNA を次世代シークエンサーで解析するために“ライブラリー”に変換するためのスタンダードな手法が複数キット化され,多数の企業から各種受託解析サービスも提供されている.また,ライブラリー調製法や,生み出されたデータの解析法に関してもインターネットや書籍で体系的に紹介されている.例えば,本書の出版元である羊土社は次世代シークエンサー関連の書籍をこれまでに多数刊行しており,それらに助けられた読者も多いのではないだろうか.筆者もその1 人である.そのため,NGS 登場時にくらべれば予算・技術の両方面で非専門家によるNGS 使用のハードルが大きく下がっている.このような状況において初学者がNGS 実験をはじめる際に必要になってくるのが,実験デザインを立てるための知識と,なによりも質のよいサンプルを調製する技術である.しかしながら,実験デザインや受託解析を利用する“前”のサンプル調製にフォーカスした和文実験書は手薄であり,本書はそれらをカバーするために執筆されている.本書のコンセプトは誰でも再現できるプロトコールを提供することである.熟練者にとっては当たり前のことが初心者には常識でないということはよくあることで,本書では「学部生でも本書があれば高品質なサンプルを調製できること」をめざして,初歩的なことでも注意点を書き,使用する試薬・器具は具体的に例示することを,各執筆者には意識していただいている.

また,本書では,多様な生物種・組織を対象とした,さまざまなサンプルプロトコールが紹介されている.本書の特徴として,対象サンプルが異なれば,手法が同じであっても改めて掲載している点がある.そのため,困った際に辞書的に利用するだけでなく,横断的にプロトコールを比較しそれぞれの手法の長所や汎用性を理解し,読者が対象とするサンプルに特化したアレンジ版プロトコールを作成する際の足掛かりとすることも可能だろう.

第1章ではRNA-Seq などのNGS を使った各解析手法の原理や全体像を紹介し,初学者にNGS 解析の全体像を提供している.続く第2 章では,共同研究などでDry 解析に携わる側の視点で,実験をはじめる前にWet 研究者に知ってもらいたいことを紹介しており,初学者が実験デザインを考えるうえで,ぜひ,目を通していただきたい.第3 ~ 6 章では,DNA やRNA,シングルセル解析用の細胞といった具合に対象となるサンプル種ごとにさまざまな生物種・組織の調製プロトコールを紹介してもらっている.市販のキットを使用したものから,自作試薬を利用したものまで多岐にわたっており,初学者から熟練者まで新たな発見が含まれているはずである.なお,ChIP-Seq に関しては,サンプル調製とライブラリー調製がリンクしたプロトコールであるため,受託解析を利用する前のサンプル調製に焦点を絞るコンセプトに従って,受託解析での実施が困難な植物を対象としたChIP-Seq の例のみを紹介している点はご了承いただきたい.また,巻末には,付録として有志企業による受託NGS 解析サービスの比較表も掲載しており,依頼先選定の際に利用していただきたい.

最後に,トライアルアンドエラーから得られたノウハウを惜しみもなく提供してくださった共同編集者の伊藤様,尾崎様を含む執筆者の皆様,本書の企画から出版までをフルサポートしていただいた羊土社の早河様,吉田様,そして付録作成にご協力いただいた各受託サービス提供企業の皆様には心より感謝申し上げたい.本書が日本のサイエンスの進展に少しでも貢献し,皆様のNGS ライフが実りあるものになることを心より願っている.


2024年5月

編者を代表して
鹿島 誠

目次

第1章 NGS解析の全体像

1 RNA-Seq概論【鹿島 誠】

2 DNAシークエンス技術の進化と現在地【河野暢明】

3 エピジェネティクスとエピゲノム【伊藤 佑】

4 シングルセル解析【安水良明】

5 水圏における環境DNA分析【潮 雅之,辻 冴月】

第2章 実験をはじめる前に検討すること

1 NGSを使った研究のはじめ方【鹿島 誠,小俣和輝,加藤尚志】

 どこまで相談するか?

2 NGSデータ解析の共同研究や相談の際のTips【尾崎 遼】

3 メタゲノム解析をはじめる前に【東 光一,黒川真臣,森 宙史】

4 シングルセル・トランスクリプトーム解析【芳村美佳,二階堂 愛】

 バイオインフォ技術員から見た共同研究の進めかた

5 最先端シークエンサーのWet実験で知っておくべきこと【藤江 学】

第3章 DNA調製プロトコール

1 バクテリア【河野暢明】

 バクテリアからの一般的なゲノムDNA調製

2 酵母【阿部文快】

 スフェロプラスト化による高純度DNAの抽出

3 マウス【山口新平】

 組織からのDNA抽出法

4 ゼブラフィッシュ【貞光謙一郎,鹿島 誠,平田晋三】

5 ショウジョウバエ【布施直之】

 成虫と幼虫からのDNA抽出

6 線虫【菊地泰生】

7 プラナリア【熊谷信是,鹿島 誠】

 長鎖ゲノム抽出法

8 アリ【岩井碩慶,河野暢明】

 節足動物を対象としたDNA調製

9 シロイヌナズナ【伊藤 佑】

10 イネ【千装公樹,本田爽太郎,安達俊輔】

  ショートリードシークエンスのためのDNA抽出

11 コムギ【岡田萌子】

12 ヒメツリガネゴケ【友井拓実】

13 根圏微生物相【下野綾子】

  根からのDNA抽出

14 水圏の環境DNA【潮 雅之,辻 冴月】

  分析のための採水・濾過・DNA抽出

第4章 ChIP用調製プロトコール

1 植物組織①【稲垣宗一】

 簡便・高効率なクロマチン抽出を行えるeChIP法

2 植物組織②【池田陽子,植村美代子,森 泉】

 ChIP-Seqとその応用編(カキ)

第5章 RNA調製プロトコール

1 酵母【阿部文快】

 ホットフェノール法によるtotalRNAの抽出

2 マウス【武智真里奈,山口新平】

 組織からのRNA抽出法

3 ゼブラフィッシュ【氏部浩太,鹿島 誠,平田晋三】

4 ツメガエル大腿骨【伊東正剛,小俣和輝,鹿島 誠,加藤尚志】

5 ツメガエル血球【小俣和輝,塩川雅貴,加藤尚志】

 採血と遺伝子抽出

6 カエル臓器全般【井川 武,林 舜,小俣和輝,越智陽城,小川斐女,鈴木 誠,鈴木菜花,加藤尚志,荻野 肇】

7 ショウジョウバエ【布施直之】

8 線虫【菊地泰生】

9 ニワトリ胚【小野沙桃実,河西 通】

10 刺胞動物【小林千余子】

11 マツノザイセンチュウ【田中 克】

  簡便なRNA抽出法

12 シロイヌナズナ【爲重才覚】

  茎頂からのRNA抽出

13 イネ【橋田庸一】

  デンプンの多いサンプル

14 ヒメツリガネゴケ【友井拓実】

15 オオムギ【井藤 純,辻 寛之】

16 樹木葉・枝【萩原幹花,栗田悠子】

17 コンニャク【橋田庸一】

  水溶性多糖類の多いサンプル

18 piRNA【山田紘実,岩崎由香】

  配列解析にむけた精製

19 イネ生殖組織のsmallRNA【小宮怜奈】

   RNA-IPを用いたsmallRNAトランスクリプトーム

第6章 シングルセル調製プロトコール

1 マウス脳【武智真里奈,山口新平】

 シングルセル解析のための細胞回収

2 植物核抽出【石 東博】

 セルソーターによるシングル核解析に適した抽出

3 ゼブラフィッシュ【田崎純一,劉 舒捷】

 シングルセル解析に向けた胚の分散

4 メダカリンパ球【岩波礼将,坂口ひより】

 セルソーティングによる調製

NGS解析受託サービス一覧


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書籍情報

  • ISBN:9784758122726
  • ページ数:441頁
  • 書籍発行日:2024年7月
  • 電子版発売日:2024年7月9日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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