監修の序

このたび，羊土社から“ ドリルシリーズ”の一環として，「循環器の検査 基本とドリル」を発行させていただくことになりました．本シリーズは大変好評を得ており，研修中に購読する若い医師が多いと聞いています．本書の特徴は，基礎編と実践編の二部構成としており，基礎編では検査ごとの理解度を深めることができ，実践編では症例あるいは疾患ベースのドリル形式で問題を解きながら検査の選び方から組み合わせ方を学ぶことができるようになっていることです．最終的には治療方針の決定までの流れを身につけることができます．

循環器の検査は，他の領域に比べて画像を判読することが多いため，本書はその点にも十分な計らいがなされています．基礎編で検査についてある程度理解した後に，実践編において「出題→解説→解答」をくり返すことで，多くの画像に触れ，この1 冊で循環器関連検査の進め方や診断法が自然と身につくように工夫されていると思います．また，本文は端的な文章とし，体裁はできるだけ編ごとに同一にするなど，読者が見やすい紙面とすることで，必要な知識を効率よく習得できるようになっています．そのため，明日からの実臨床にすぐに活かせるようになっています．医学生の頃に，共用（CBT）試験や医師国家試験の対策で慣れ親しんだ問題集のような形式で学ぶことができます．

本書の企画・編集は，先に出版された「循環器薬ドリル」と同様に，北里大学医学部循環器内科学の阿古潤哉先生にお願いしました．また，教室員ですべての項目を分担し，執筆していただいたことで，本書においても統一性を保てているように感じます．

ぜひ，本書を活用していただき，循環器診療のスキルアップにつなげていただければ幸いです．一押しの一冊となっています．

2024年2月

東邦大学大学院医学研究科循環器内科学 教授
池田隆徳

編集の序

循環器内科は難しいという声を研修医から聞くことも稀ではありません．動脈硬化性疾患から不整脈，さらには心筋症に至るまで多くのバラエティに富んだ疾患を診療する循環器診療には，その扱う疾患の数にも対応して数多くの検査が用いられています．時には緊急で検査方針を立てる必要があることもあれば，鑑別疾患をじっくり考えて必要な検査を考えていくこともあります．循環器診療においてどの検査をどの順番で選んでいくのかは，患者のアウトカムを最適化するうえで必要かつ重要な場面であるといえます．

さて，本書，「循環器の検査 基本とドリル」は，循環器診療で登場する検査についてドリル形式で学習することを目的に作成されました．教科書から得られるような知識ではなく，実際の臨床に即した形式で，しかも問題形式を取り入れることにより実用的な知識が習得できることを期待しています．姉妹書である「循環器薬ドリル」と同じく，北里大学の医局員を中心に編集した本書は，当院での研修医に求められる知識を念頭に書かれたものとなりますが，もちろん多くの病院で共通認識とされるものが多いはずです．

循環器内科に限らず，すべての医学には本来の意味で唯一の正解とされるものはありません．診療に使えるリソースや時間的状況などにおいて，本書に記載された検査が必ずしも行えない状況も多くあろうと思います．しかし，基本的な考えがここには示されていますので，そこからの応用はやりやすいのではないかと思います．最後に，本書は循環器にはじめて触れる研修医を対象に執筆されましたが，もちろんそれ以外にも学生やメディカルスタッフにも楽しく読んでいただけるのではないかと期待しております．本書が皆様のお役に立つのを心から祈っております．

2024年2月

北里大学医学部循環器内科学 教授
阿古潤哉