Pythonで体感! 医療とAIはじめの一歩

  • ページ数 : 239頁
  • 書籍発行日 : 2024年8月
  • 電子版発売日 : 2024年8月8日
¥3,960(税込)
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商品情報

内容

プログラミングが初めてでも大丈夫!医療AIの入門書,決定版!
本書のゴールは,肺のX線画像が肺炎かどうか予測する深層学習モデルを作成すること.Pythonが初めてでも大丈夫です.本書で機械学習やAIがグッと身近なものに!データサイエンス教育の教材としてもお勧め.

序文

監修の序

2020年4月1日,コロナ禍のなか東京医科歯科大学に設置されたM&D データ科学センター(DSC)がスタートしました.Medical(医)とDental(歯)のためのデータサイエンス教育と研究が大きなミッションの一つです.ベンチマークデータを使って統計的なデータ解析の方法を教育したり,目的の定まっていない新たなデータ解析手法を開発したりすることが当センターの目的ではありません.“現場感”のある教育と研究を目指しています.

センターの設置準備をしていた2019 年度,東京医科歯科大学には世界トップレベルのデータサイエンスを展開できる計算・ストレージインフラはありませんでした.すでに整備されていた疾患バイオリソースセンター(BRC)という検体とデータを集める仕組みを除いて,病院のデータの利活用は限定的なものでした.現在は,世界最高水準の計算・ストレージサーバーが利用できる環境が整備されています.また,医病・歯病は医科歯科大学病院として統一され,新たにデータウェアハウス(DWH)も導入されて院内の電子カルテデータがここに集積されています.そして,2020 年よりDSC+DWH+BRC を核として,医療データを社会に還元するプロジェクトが全学一体となって進められています.本執筆時点において,すでに数万人の患者さんからデータ利活用に同意をいただいています.

こうした事業と並行して,2021 年度からは「医療とAI・ビッグデータ入門」の講義が,毎年オムニバス方式で行われてきました.ここでは今後のデジタル社会の基礎知識である数理・データサイエンス・AI の基礎的素養を習得します.これらを学ぶことで,社会にどのような新たな価値を生み出せるのか全体像を把握し,かつ健康・医療分野でのAI の活用事例も学びます.さらに保健医療分野におけるAI 技術研究を進め,企業等の技術者と共同でAI 技術開発を推進するために必要となる素養も習得するのが目的です.本書はこうした背景のもとで執筆されたものです.

東京医科歯科大学副学長の木下淳博先生が本書企画のリーダーシップをとりました.中林潤教授ならびに,授業で辣腕を振るわれている須藤毅顕特任講師も加わり,羊土社編集部の冨塚達也氏,望月恭彰氏のご尽力により実現したものです.

0章~ 5章は,数理科学やプログラミングのハードルを限りなく取り除いた現場感のある優れた導入教材になっています.医療データを題材に,機械学習や深層学習の実際を体験できることでしょう.須藤毅顕先生を中心に角勇樹先生,石丸美穂先生,曹日丹先生方のご尽力の成果です.さらにTopics として,AI の応用の先端研究と社会実装をテーマに8 つの話題を掲載しています.AI のエキスパートである富士通研究所長の岡本青史博士と丸橋弘治博士に執筆の労をとっていただき,アイリス社の医師である沖山翔先生には社会実装の現場を紹介していただきました.東京医科歯科大学からは,疾患バイオリソースセンターの田中敏博先生をはじめM&D データ科学センターの髙橋邦彦先生,坂内英夫先生,清水秀幸先生,鎌谷高志先生,同大学病院がんゲノム診療科の池田貞勝先生が意欲的に執筆してくださいました.皆様に深く感謝します.


2024年7月

宮野 悟


編集の序

インターネットをはじめとする情報通信技術の発達によって,デジタル化されたデータが世界中を飛び回る世界が実現しました.例えば近所のコンビニエンスストアで買い物をしたとき,レジに打ち込まれた商品のデータは即座に集計され,いつ,どこの店舗で,どの商品が売れたのか分析することができます.こういったことを一昔前にやろうとすると,全国の各店舗から伝票を集めて集計しなければならず,膨大な手間と時間のかかる作業となります.それが今では商品のバーコードを読むだけで済むのです.このように発達した通信技術によって集められたデータは膨大な容量となります.これも人力で解析していたら大変な作業となるので,高パフォーマンスのコンピュータを使って機械的に解析する必要があります.そこで活躍するのが人工知能(Artificial Intelligence,AI)です.膨大な容量のデータを機械に学習させることで,あたかも人が行うような,あるいは人にはできないようなタスクをコンピュータに行わせ,これまでの解析手法では得られなかった知見を得たり,それをさらに新しい技術開発に利用することが可能になってきています.

通信技術やコンピュータの発達によって起こっている一連の技術革新は,18 世紀の産業革命に匹敵するインパクトを我々の社会にもたらすかもしれません.医療の分野もその例外ではありません.近い将来,あらゆる病院でカルテは電子化され,患者のデータにどこからでもアクセスできるようになり,膨大な容量を持つ個人のゲノム情報を臨床の現場で活用できるようになるでしょう.

このように我々の社会は大きな変革のときを迎えています.しかし残念ながら,このような大きな変化に対して人材の育成が追い付いていないのがわが国の現状です.デジタルデータを扱える知識や技術を持った人材が,社会のあらゆる分野で不足しています.このような人材を育成することは,一刻の猶予もない喫緊の課題となっています.これに対してさまざまな施策が打ち出されています.今では小学生の一人一人にタブレット端末が配布されるようになりました.自分の子どものころを思い出すと,学校から配布されるのは習字道具やそろばんでしたが,これがタブレット端末に取って代わられたわけです.もちろん,現在でも小学校で習字やそろばんの授業は行われていますが,その意味合いは昔と異なっているでしょう.

その昔,寺子屋で教えることを読み,書き,そろばんと言いました.今の言葉で言えばリテラシーということになります.リテラシーとは,何かを学習するときの前提となる必要最低限度の知識や技術のことです.確かに文字が読み書きできなければ,何も学習することはできません.現在,デジタルデータ革命とも言える社会の変化を迎え,新しい人材を育成するための新しい読み書きそろばん,すなわち新時代にふさわしい新しいリテラシーが必要となっています.つまり,AI・データサイエンス教育のためのデータリテラシーが必要ということです.現在ではAI やデータサイエンスそれ自体を研究の対象とする専門家でなくても,あらゆる学問を学ぶときにこのデータリテラシーが必要となります.初等教育の段階からデジタルデータに触れ,それをコンピュータなどを用いて分析するという作業に慣れ親しんでおく必要があります.さらに,高等教育においてもデータリテラシー教育が必要となります.

ここで,医療従事者はAI やデータサイエンスをユーザーとして利用する立場だから,理屈についてそれほど詳細に理解しておく必要はないのではないかと考える人がいるかもしれません.しかし,例えばX 線写真について,X 線に関する物理学的知識を全く持たず,ただそこに写った白い影が肺であるとして胸部X 線写真を見ている医師と,なぜフィルム上に肺が白く写るのか理解したうえで読影している医師とで,そこから得られる情報に差が出ることは明らかでしょう.AI やデータサイエンスについても同じことが言えます.ユーザーとしてこれらを利用する立場であったとしても,必要最低限度の基本的理論について理解したうえで利用すべきです.さらに医療の分野ではインフォームドコンセントの問題があります.あらゆる医療行為は患者に対して十全に説明し,同意を得たうえで実施する必要があります.AI 技術を医療分野に応用するにあたって,それを利用する医師はその原理をしっかり理解しておかなければ,患者に対して説明責任を果たすことができないでしょう.

このように,これからは医療従事者であってもデータリテラシーを身につける必要があるのですが,今では科学技術の発達によって専門知識の高度化,専門化が進んでいます.例えば,さまざまな疾患に関する発病のメカニズムは分子のレベルで解明されています.学ぶべき医学的知識や技術は一昔前と比較して急激に増加しており,6年間の医学教育の期間に収めるのに苦労するほどです.ここにさらに,データリテラシー教育を加えなければなりません.そのために医療従事者を志す者が無理なく効率よく学べる,いわば医療に特化したデータサイエンス教育が求められています.そのための教材として活用してもらうことが本書の目的となっています.

本書の特徴は実際の作業の副読本として利用できることです.何かを学ぶとき,実際に手を動かし,自分で試行錯誤してみることが重要であることは言うまでもありません.AI・データサイエンス教育も例外ではありません.本書では学習用のデモデータやAI プログラムのコードが豊富に提供されています.これらを使えば,自分でAIプログラムを動かし,データを処理・解析させてみて,AI を体感しながら学ぶことができます.

「AI って難しそう」「捉えどころがなさそう」─そんな印象を抱いている方が,本書によってAI や機械学習,深層学習を少しでも身近に感じていただければ幸いです.もちろん,この本で学ぶのはデータリテラシー,つまりAI やデータサイエンスにおける読み書きの部分です.AI やデータサイエンスの分野は現在も急速に進歩し,応用の範囲を広げています.医療分野でも予想もしなかったような新技術が次々に実用化されていくでしょう.そこにはまだ見ぬ新しい医療の世界が広がっています.本書で身につく知識や技術は,そのような世界への扉を開く􄼴となります.本書を通じてAI やデータサイエンスに興味を持った読者は,本書に掲載された参考文献などを手掛かりに,さらに本格的なAI・データサイエンスの世界へ進んでいっていただきたいと思います.本書がその一助となることを望んでいます.


2024年7月

中林 潤

目次

0章 演習準備 〜Google Colaboratoryの基本【須藤毅顕】

0-1 Google Colaboratoryとは

0-2 試しに実行してみよう

 1)Googleアカウントを準備する 2)Colabを開く 3)セルに入力し,実行する 4)ノートブックを保存する,読み込む

0-3 ライブラリを使ってみよう

0-4 ファイルを読み込んでみよう

0-5 その他のColabの特徴と注意事項

 1)GPUで演算できる 2)連続使用時間の制限に注意する

1章 Pythonに触ってみよう 〜年齢と歯の本数【曹 日丹,須藤毅顕】

1-1 演習用データの確認

1-2 Pythonの基本

 1)変数 2)四則演算 3)変数の型 4)リスト 5)関数

1-3 演習用データの読み込み

1-4 データフレームの操作

1-5 散布図を作成するためのデータ準備

課題

2章 機械学習のしくみを理解しよう 〜糖尿病と乳がんのデータ【石丸美穂,須藤毅顕】

2-1 機械学習とは

 1)教師あり機械学習 2)教師なし機械学習

2-2 教師あり機械学習の回帰とは

2-3 線形回帰を実践してみよう

STEP ⓪ 事前準備 ① データの用意 ② 学習モデルの選択 ③ データを入れて学習 ④ 傾き(偏回帰係数)と切片(定数項)を推定 ⑤ 未知の特徴量xで予測 ⑥ モデルの評価

2-4 学習用データと検証用データの分割

2-5 ロジスティック回帰を実践してみよう

STEP ⓪ 事前準備 ① データの用意 ② 学習モデルの選択 ③ 学習用データを用いて学習 ④ 傾き(偏回帰係数)と切片(定数項)を推定 ⑤ 新しい変数で予測 ⑥ モデルの評価

 [COLUMN]ロジスティック回帰式

課題

3章 さまざまな機械学習を理解しよう【石丸美穂,須藤毅顕】

3-1 機械学習のアルゴリズム

3-2 サポートベクターマシンを実践してみよう

STEP ⓪ 事前準備 ① データの用意 ② 学習モデルの選択 ③ データを入れて学習 ④ 予測を行う ⑤ モデルの評価

 [COLUMN]ハイパーパラメータ

3-3 決定木分析を実践してみよう

STEP ⓪ 事前準備 ① データの用意 ② 学習モデルの選択 ③ データを入れて学習 ④ 予測を行う ⑤ モデルの評価

3-4 ランダムフォレストを実践してみよう

STEP ⓪ 事前準備 ① データの用意 ② 学習モデルの選択 ③ データを入れて学習 ④ 予測を行う ⑤ モデルの評価

課題

4章 深層学習のしくみを理解しよう【須藤毅顕,中林 潤】

4-1 深層学習とは

4-2 深層学習の流れ

 1)ニューロンと人工ニューロン 2)ニューラルネットワークを使った深層学習

 [COLUMN]ReLU関数とシグモイド関数の計算方法

4-3 深層学習を実践してみよう

STEP ① データの用意 ② 学習用データでの学習 ③ 損失と重みの更新 ④ 結果の確認 ⑤ テスト用データでのモデルの評価

4-4 学習モデルの改良

課題

5章 肺のX線画像を用いた画像分類にトライしよう【須藤毅顕,木下淳博】

5-1 外部のデータを読み込む

5-2 デジタル画像のデータは数値で表すことができる

5-3 肺のX線画像の分類モデルを作成してみよう

STEP ① 肺のX線画像ファイルのリスト作成 ② 画像ファイル数の集計と変数の作成 ③ 健康な肺のX線画像の読み込み ④ 肺炎のX線画像の読み込み ⑤ X線画像のシャッフル ⑥ 深層学習モデルの作成

5-4 未知のデータが肺炎かどうかを予測

課題

展 望 進化する深層学習――その発展の歴史と未来【角 勇樹】

Topics 医療とAIのこれから

1 AIによる未来医療のためのロードマップ【清水秀幸】

2 医療における意思決定のために【髙橋邦彦】

3 公共データベースを用いたオミクス解析【鎌谷高志,池田貞勝】

4 医学ビッグデータ研究におけるバイオバンク【田中敏博】

5 医療ビッグデータ解析のためのアルゴリズム【坂内英夫】

6 AIのこれからと企業の取り組み【丸橋弘治,岡本青史】

7 スタートアップで医師がAI医療機器を開発するということ【沖山 翔】

8 AIの病院への実装【宮野 悟】


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  • Androidロゴは Google LLC の商標です。

書籍情報

  • ISBN:9784758124188
  • ページ数:239頁
  • 書籍発行日:2024年8月
  • 電子版発売日:2024年8月8日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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