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- 家庭医からER医まで 高齢者に寄り添う診療 学ぼうGeriatric Mind
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内容
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序文
Preface
Keep Our Granny Safe. うちなーぐちで言えばさしずめ、“おばぁの安全を守れ”と訳したらいいだろうか。ハワイでの老年医学フェロー時代に、入院診療による悪影響をどう回避すべきかを考えるセッションでの表題であった。セッションの内容はすごく真面目なものであったが、表題が面白く、ユニークで、とっつきやすかったことを思い出す。
高齢者の医療が語られるとき、耳にするのは、否定的な表現ばかりだ。高齢者は難しい、問題が多くてややこしい、一筋縄ではいかない、多死社会、ベッドが足りない……。確かにその通りなのだが、ここまで否定的な表現で慣れてしまうと、何か、高齢であることが厄介のような誤解に陥ってしまう。このような表現を聞いている高齢者はどう思っているのだろう? おそらく、いい気持ちはしないはずで、ともすると、肩身の狭い思いをさせている風潮になっているのかもしれない。
できれば、使いたくないのだが、本書でもおそらく否定的な表現は出てくるだろう。ただ、注意してほしいのは、高齢患者がややこしいことは確かにそうなのだが、問題は高齢患者なのではなく、複雑な病態を呈しうる高齢者の対応を学んだり、教えてもらったりする機会がない現状ということだ。
かく言う私も、米国ピッツバーグの家庭医療レジデンシー中に、老人ホームで担当した高齢患者の医療面接で、「家には帰れないよ」と何気なく言った一言が、その患者をうつ気分にし、リハビリにも集中できなくなったという失態を犯してしまい、指導医に注意されたことを思い出す。その後、ハワイ大学で老年医学のフェローを終え、日本に帰国。現在は、古巣である神戸市立医療センター中央市民病院で救急医として勤務している。少しは、経験も積んで、高齢者医療の指導があまりない現状をなんとかできないかと、そんな大それたことを考えていた。家庭医・老年医学の視点をもった救急医として、何かできることはないか? そう考えているときに、有吉孝一先生の勧めで、この出版の話をいただいた。非常に光栄な話である。
この本では、Approach・Management・Symptomatologyの3編に分けて、主に救急現場や総合診療の現場で役に立つであろう、高齢者診療の基本的な考え方をまとめさせていただいた。各章はそれぞれ緩やかなつながりしかないので、通読していただいてもいいし、気になったところから読んでいただいてもいいように構成している。硬い、難しい話で、どうしても否定的な表現も使わざるをえなかったが、少しでも楽しくなるように、砕けた表現で、図式もたくさん入れてまとめさせていただいた。恩師の林寛之先生や有吉孝一先生のように面白い(!?)とまではいかないまでも、せめて飽きないようにしてもらいたい一心を汲み取っていただけたらと思う。
なお、各項の最後には、まとめとしてGeriatric ER Ground Ruleを入れた。忙しい現場であれば、そこだけ読んでも大体の要点は思い出せるようになっているので、活用してもらいたい。これまで私が学んできた知識が、どこまで皆さんの役に立つのか? 少し心配なところもあるが、読んでくださるならば、ご意見やご評価をいただけると、今後の私の精進にもなるのでぜひ、お願いしたい。
最後に、締め切りを何度も延ばしたにもかかわらず、少しも怒りコメントなどなく、辛抱強く待ち続け、このような出版の機会をくださった金芳堂の藤森祐介氏と、私の読みにくい文章に喝を入れ、修正を加えて生き生きとしたものにしてくださった有吉孝一先生に感謝申し上げます。
2020年4月
神戸市立医療センター中央市民病院
許智栄
目次
Chapter 1:Approach:初期対応のコツ
1.主訴がわからない
高齢患者の訴えは曖昧なのか?
もっと困る、非典型な症状
なぜ、曖昧で非典型な症状になるのか?
曖昧・非典型な症状は恐ろしい!
どう対応する? 時間を味方に!
2.熱はなかったよね? 高齢者バイタルサインの謎
バイタルサインは当てにならないの?“バイタル正常”は恐ろしい
高齢患者バイタルサインの謎
熱はなかったよね?
高齢患者バイタルサインの謎に振り回されないように……
3.痛くないって言ったじゃないか!
高齢患者の痛みは曖昧
なぜ、高齢患者の痛みはわかりにくい?
高齢者の疼痛評価、その前に
さぁ、評価を始めよう!
4.急がば回れ
よくあるコミュニケーションの間違い
ERが予後を左右する
明日から実践しよう!
5.社会的入院は無意味だ―認知症患者の救急
認知症を患う高齢者とは?
歳のせい? 未診断の認知症患者に対応する
認知症患者へのアプローチ
Fill in the Gap、何を確認すべきなのか?
6.やっぱり外せない、フレイル
フレイルの影響を軽んずなかれ
どうやって診断するのか?
介入はどうするのか?
7.CGA をうまく使え!
効果があるのかCGA
CGAとはなんぞや?
実際はどうするの!?
とは言っても、全員には無理でしょ!?
8.身体所見と検査のあれこれ
脱水はあるのか?
呼吸音と腹部所見は解釈を吟味せよ
やっぱり検査でしょ!
検査閾値は低く、解釈は慎重に
Chapter 2:Management:高齢患者の管理術
1.無駄なケア?“負け戦”は“無駄なケア”?
無駄なケア、どう判断する?“無駄なケア”? と思ったら……
高齢ER 患者治療方針決定のフローチャート
2.どこまでやるの?
患者や家族が主役!
やっぱり使えるSPIKES
Emotion とPerception に着目!
Trajectory ―患者の軌跡―
どうやって聞き出すTrajectory?
3.ちょっと待て! その患者さん、ホントに決められる??
医の倫理の大原則
CURVES で攻めろ!
CURVES 番外編
4.患者の側に誰がいる?
Caregiver Burden
Invisible patient
代理意思決定の苦悩
患者の側にいる人への配慮とは?
5.Too much? or Too Little??
高齢者がER を受診する理由は?
3つのポイントを具体的に
Too much ? or Too Little?? それが問題だ!
望まれるプロアクティブな姿勢
6.マスターしたい疼痛管理
薬剤に飛びつく前に……
さぁ、薬の話をしよう
筋骨格系にはNSAIDs を!?
腹痛にACAP?
オピオイドやその他の薬剤は?
最後の最後に、もっと大切なこと……
7.マネージメント、Start Low, Go Slow
薬を考える基本はADME ?
知ったうえで、うまく使おうオピオイド
PIMって知っている? ER受診の鑑別に薬剤を挙げること
8.せん妄を制するものは……
せん妄は入院診療のことでしょ?
まずは、しっかり診断しよう!
すぐに薬に飛びつくなかれ
Step1:よくある原因で、見逃しているものはないか? すぐ対応できるものは?
Step2:環境要因を検討せよ!
Step3:どうしようもないときに、薬剤を考慮しよう
9.帰宅させる? その前に……
わかっているの?
こんな場合は危険度大!
回避する方法はあるのか?
かかりつけ医を巻き込もう!
伝えるべきこととは?
10.診断と治療、その先に……
ERに来なくてもいいんじゃない!?
Unmet Palliative Care Needs
問題は、ケアが必要なのに見逃していること!
Chapter 3:Symptomatology:よくある症状の診かた
1.元気がない
「元気がない」は本当に厄介なの?
高齢者の「元気がない」は入院を前提に!
「元気がない」を診断する早道
Step1:「なぜ、元気がないと感じたのでしょうか?」
Step2:「元気がない」を時間経過と局所性で分類
「元気がない」の鑑別診断 I CHEER uP N’ FUN あるいは代・循・感
2.動けない
「動けない」≒とっても「元気がない」
「動けない」、難しいのは……
「動けない」を鑑別する
「動けない」と「元気がない」、そしてフレイル!
3.様子がヘン
どうアプローチする、この症例“様子がヘン”を解剖する
せん妄と認知症、どう見分ける?
Confusion と思ったら……
4.ふらつく……
分類アプローチでは、太刀打ちできない
回転性なら安心!?
鑑別を網羅しよう
ATTEST アプローチ1:問診で攻めろ!
ATTEST アプローチ2:うまく使いこうなそう身体所見
最後の最後に……
5.転んじゃった……
もっと努力を!
恐ろしい転倒患者の予後
まずはきっちり、外傷評価!
なぜ、転んだのか?
予防への挑戦
6.お腹が痛い
なんで、高齢者は特別注意なのか?
鑑別を考える
CTの閾値は低く……
緊急手術のリスクは?
7.忘れた頃の虐待
実態はいかに!?
どんなときに疑うべきなのか?
疑ったら……
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書籍情報
- ISBN:9784765318303
- ページ数:220頁
- 書籍発行日:2020年6月
- 電子版発売日:2020年6月5日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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