ケースで学び病態を理解する 頭部外傷の診かた

  • ページ数 : 208頁
  • 書籍発行日 : 2021年11月
  • 電子版発売日 : 2021年11月5日
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商品情報

内容

頭部外傷の何をみて、どう診断し、どう対応するかを具体的な症例をあげて徹底的に解説!

頭部外傷に出合うことのある救急専門医・脳外科専門医・研修医らに捧げる一冊! 頭部外傷治療をどうとらえ、どう対応すればよいのか、実際にあった症例をあげながら、解説しました。頭部外傷への苦手意識を本書で克服しませんか?
頭部外傷と聞くと、重篤な状態を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、重症頭部外傷だけでなく、軽症から中等症まで様々です。実際、救急外来では軽症・中等症頭部外傷に頻繁に遭遇するでしょう。その患者さんも近年では、小児から高齢者まで年齢層が幅広くなってきています。後遺症をのこすことなく回復させられるか、できないなら何がベストかなども頭部外傷診療の重要なポイントです。何を最優先にしてみるべきか、頭部CTは必要か、頭部MRIも撮ったほうがいいのか、日々の診療での悩みは尽きません。
本書では初期対応から長期的な対応も含め、第一線で活躍している著者たちが経験した症例をもとに、丁寧に、そして徹底的に解説します。

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序文

序文

「頭部外傷の病態は、複雑であり不安定である」というフレーズがある。これは急性期の損傷脳が相対的虚血状態にあり、興奮性神経伝達物質やフリーラジカル、炎症性サイトカインなどの放出や、細胞内カルシウムの増加などが誘導され二次性脳損傷が生じることから謳われるようになった。また、経時的に変化するため、先読みの対応も求められる。そのような頭部外傷の治療は煩雑なうえに予後が悪いため、これまで治療に関わった先生方の中には、治療意義を感じられないという方もいらっしゃるのではないだろうか。

頭部外傷の形態は時代と共に変化し、以前は脳神経外科診療の多くを占めていた重症頭部外傷は減少し、軽症・中等症頭部外傷の割合が増加している。これは高齢者の転倒、スポーツやレクリエーション活動における頭部外傷が主となっている。これらは時に日常生活に支障をきたす高次脳機能障害が後遺し、復職が妨げられ、結果的に社会的孤立者を生み出す。

近年、治療ガイドラインなどマニュアル本が溢れ、ある症候に対して無為に対応することが増えている。実臨床において単純作業的な治療では、逆に病態悪化へ移行することがあり得る。これは前述のような病態を理解していないことが原因である。

頭部外傷の治療は頭蓋内圧管理をすることではなく、病態を踏まえた脳循環代謝の安定化が目標である。と同時に二次性脳損傷の予防も重要である。つまり我々は多くの因子が関与した原因と病態を正確に理解し、未然に二次性脳損傷を防ぐ治療戦略を練る必要がある。

このテキストはまさに現役世代のエキスパートの先生方が、実に複雑な頭部外傷の病態をわかりやすく説いている。この解説を読めば私と同様に“頭部外傷の治療は面白い!!”と興味を持ち、治療ガイドラインやマニュアル本の真意が理解できるのではないだろうか?

サイエンスに基づいた教育を得てこそ応用が可能である。応用力を要する頭部外傷治療の質の向上に、少しでも貢献できれば本望である。


国際医療福祉大学成田病院脳神経外科
末廣栄一

目次

第1章 疫学:わが国の頭部外傷

1.はじめに

2.日本の頭部外傷の現状(JNTDB P2015より)―年齢構成の推移

3.高齢者(65歳以上)に対する頭部外傷治療と転帰

4.軽症・中等症頭部外傷

5.おわりに

第2章 外傷初期診療の中での脳外科診療

1.外傷診療の特殊性

2.標準化された外傷初期診療

3.primary surveyにおけるDの評価と対応

4.頭部外傷患者の転送判断と伝達すべき項目

5.おわりに

第3章 抗血栓薬内服患者への対応

1.抗血栓薬内服患者の頭部外傷と初期評価

2.抗血栓薬の中断・中和

3.抗血栓薬の種類と中和に際して留意する点

4.再開のタイミング

5.おわりに

第4章 頭部外傷患者における凝固障害への対応

1.外傷性凝固障害の病態と頭部外傷での特徴

2.外傷におけるトラネキサム酸のエビデンス

3.抗血栓薬服用中の患者に対する対応

4.本CASEの振り返り

5.おわりに

第5章 頭部外傷とてんかん

1.外傷性てんかんの定義

2.早期発作

3.てんかん重積状態

4.外傷性てんかん

5.おわりに

第6章 頭部外傷の病態と診断:局所性脳損傷

1-1.病院前情報の重要性

1-2.切迫するDと気管挿管

1-3.画像評価

1-4.外傷性凝固異常症

1-5.フォローアップ戦略(定期的画像フォローアップとICPセンサー留置)

2-1.テント下の局所性脳損傷

2-2.テント上下に局所性脳損傷が存在する場合

3.おわりに

第7章 頭部外傷の病態と診断:びまん性脳損傷

1.びまん性脳損傷とは

2.びまん性脳損傷の病態による分類と診断

3.各論

4.おわりに

第8章 頭部外傷の病態と診断:外傷性頭頚部血管障害

1.総論

2.各論

3.おわりに

第9章 頭部外傷の手術適応と方法:穿頭術

1.はじめに

2.ICPセンサー留置術

3.脳室ドレナージ術

4.穿頭血腫除去術

5.おわりに

第10章 頭部外傷の手術適応と方法:開頭術

1.手術までの患者の状態把握

2.手術目的

3.手術手技

4.おわりに

第11章 頭部外傷の手術適応と方法:外傷性髄液漏、視神経管骨折・視神経損傷

1.外傷性髄液漏

2.視神経管骨折・視神経損傷

3.おわりに

第12章 ICP管理と神経集中治療①基本

1.はじめに

2.頭蓋内圧と頭蓋内圧亢進の病態生理

3.頭蓋内圧モニターについて

4.おわりに

第13章 ICP管理と神経集中治療②実践

1.はじめに

2.ICP上昇時の治療

3.ICPモニタリングのトレンド

4.おわりに

第14章 頭部外傷と血液バイオマーカー

1.頭部外傷における採血検査の役割

2.一般採血における血液バイオマーカー

3.頭部外傷に特異的な血液バイオマーカー

4.おわりに

第15章 小児頭部外傷への対応

1.小児頭部外傷の特殊性

2.小児の頭頚部の解剖学的特徴

3.年齢と受傷機転の特徴

4.初期診療時の注意点

5.頭部CT検査の適応基準と考え方

6.小児重症頭部外傷の集中治療:2019ガイドラインについて

7.小児重症頭部外傷の治療アルゴリズム

8.虐待による頭部外傷(AHT)の鑑別

9.高次脳機能障害・リハビリテーション・フォローアップ

10.おわりに

第16章 高齢者頭部外傷への対応

1.高齢者の頭部外傷の疫学と特徴

2.高齢者頭部外傷の治療管理のガイドライン

3.おわりに

第17章 軽症頭部外傷・脳振盪・スポーツ頭部外傷への対応

1.搬送時の注意事項

2.スポーツ頭部外傷の特徴と各種の提言

3.軽症頭部外傷(スポーツ頭部外傷を含む)における画像診断の適応

4.スポーツ頭部外傷診療における評価と患者指導の注意点

5.おわりに

第18章 高次脳機能障害への対応

1.外傷後高次脳機能障害の診断基準

2.頭部外傷後の高次脳機能障害の症状

3.頭部外傷後の高次脳機能障害の画像診断

4.頭部外傷後の高次脳機能障害の評価

5.頭部外傷後の高次脳機能障害に対する薬物療法

6.頭部外傷後の高次脳機能障害に対するリハビリテーション治療

7.おわりに

索引

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書籍情報

  • ISBN:9784765318815
  • ページ数:208頁
  • 書籍発行日:2021年11月
  • 電子版発売日:2021年11月5日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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