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- 一見非典型・一見複雑を解きほぐす 病歴と身体所見で捉え直す消化器疾患の診かた
商品情報
内容
消化器症状の愁訴に対して、病歴と身体所見を手掛かりに鑑別診断するための知識と手法を、症例を挙げながらまとめました。症例は「典型例」「非典型例」の両方を含め、「非典型例に焦点を当てて典型例を捉え直す」というアプローチにより、病歴と身体所見で勝負するための真の力「底力」を高められるような内容になっています。本書は全5章からなり、各章の構成は以下の通りです。
Ⅰ章:なぜ「非典型例」を取り上げるのか? なぜ「病歴」と「身体所見」が重要なのか? 正診に到達するための「重要情報」とは何か? これらについて行動経済学的知見を活用しながら詳述します。
Ⅱ章:消化器診療の基本となる腹部身体診察について学びます。
Ⅲ章:重要情報が十分そろい、これの活用で正診に到達できる「典型例」を題材として、病歴聴取・情報収集の具体的な方法について学びます。
Ⅳ章:重要情報が不十分であるため、または十分であっても活用できていないために正診に至りにくい「一見非典型例」を、患者の訴え・プレゼンテーション・受診の時間帯やタイミングといった要素に分解したうえで検討し、正診のための注意点について学びます。
Ⅴ章:注意すべき個々の消化器疾患について、それまでの学びを確実なものとすべく臨床経過・病歴・身体所見の観点から解説します。
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序文
序文
『一見非典型・一見複雑を解きほぐす 病歴と身体所見で捉え直す 消化器疾患の診かた』をお届けいたします。
本書の共同編者である西垂水和隆先生は、私が沖縄県立中部病院にインターンで入職した際1期上のファーストレジデントでした。ファーストレジデントとインターンは、病棟担当医とその手足、といった関係にあり非常に濃厚なものでした。西垂水先生は業務中はもちろん、アフターファイブ(5時に終わることはなかったのでアフターワーク?)でも厳しく、そして時にやさしく指導してくださった自分にとっての恩人です。私がインターンだった年のファーストレジデント達は、この西垂水先生や本書の執筆を快諾してくださった仲里信彦先生、星哲哉先生をはじめそれはそれは優秀で怖い方々だったのですが、インターンにとってファーストレジデントは神様みたいなもので「来年自分がこんなにやれるようになるんだろうか?」と不安に思ったことを今でも思い出します。
その後西垂水先生は内科チーフレジデントになられるのですが、あふれかえる患者情報の中から重要な情報を抽出し正診に導くことが本当に上手な先輩でした。
当時いくら暇を見てWashington ManualやHarrison’sを読んでも、目の前の患者さんの臨床像と教科書やマニュアルに出てくる臨床像が一致せず、日々遭遇する症例はまさに非典型のオンパレードでした。しかしその一方で、ポイントとなる臨床経過の流れやバイタルサインの変化など、コアな情報をきちんと見極めてそれに注目すると非典型例が一気に典型例となる経験も多くありました。それらの経験を踏まえ「沢山の非典型例を共有していく中で、一見複雑怪奇な非典型例をクリアカットな典型例としてとらえられるようなコツを身につけられる本を作れないか」と西垂水先生に相談したのが本書を世に出すことになった端緒です。
同じく県立中部病院で外科トレーニングをうけた窪田忠夫先生には「非典型の罠」に陥らないような身体所見の取り方について丁寧に提示していただきました。症例については、県立中部病院在籍の先生方並びにかつて在籍の先生方、西垂水先生のご所属及び関連施設の先生方をはじめ、当方の思いに共感してくださった多くの先生方に提供していただきました。この場を借りて感謝申し上げます。
最後にとらえどころのない問題提起に辛抱強くご対応いただき、このような形にまとめ上げてくださった金芳堂の藤森祐介氏に深謝いたします。ありがとうございます。
それでは皆様 “Sit back,relax and enjoy the show!”
2023年2月
篠浦丞
誤診の原因の一つに非典型例がある。例えば尿管結石の典型例というと、太った男性が朝方に突然の腰背部痛で救急車で搬送され、オエーと言って吐いたりして悶え苦しんでいる姿が想像されるだろう。しかし痩せた若い女性が外来に下腹部痛で受診したり、高齢者が「数日前から何となく腹痛と便秘なんだよね」と言って来られたりすると、このような尿管結石の症例は誤診する可能性がある。
教科書的な典型例を知っておくと診断が早くなるので便利ではあるが、それだけだと多くの非典型例を診断できない。誤診を重ねることで自分なりの疾患の患者像(ゲシュタルト)は出来上がっていく。当然経験する症例のバリエーションによって、患者像は医師毎に異なってくるし、個人の経験によってどんどん変化していくものである。つまり多くの非典型例を経験した医師のほうが、より幅広い患者像を持っていることになる。
しかし漠然と「非典型だ!」「こんなのわかる訳ない!」と症例を振り返らないでいると、結局患者像は何でもありに思えてきて、病歴や身体所見を軽視し、検査を出しまくることになるだろう。しかし詳細に検討すると、一見非典型例に思える症例でも、「やっぱりこの病歴・所見は外せないんだな」というものが見えてくるし、なぜ非典型例になったのかを理解できるようになる。それを積み重ねていると、それまで非典型例と思っていたものが、非典型な典型例として自分の患者像に組み込まれるようになり、正診率が上がっていくだろう。
この本では実際に経験しなくても、非典型例のパターンやそのメカニズム的なものを症例毎に検討することで、自分なりの患者像を幅広く作り出す一助になり得るはずである。そのためには基本的な病歴と身体所見を押さえておく必要があり、この点で今回の著者の選考は間違いなかったであろう。篠浦氏との研修医時代は、腹部CTを撮影するにも、上腹部・腹部・下腹部のどれか一つしか選べなかった。そう考えると多くの非典型例を見逃していたかも知れず、現代の方がより正確に非典型例を診断できていると思われる。しかし、正常なCTを供覧することは恥とされ、何としても病歴と身体所見で鑑別を絞り込む必要があった時代に鍛えられた姿勢は、今でも大切な習慣であり、この本の作成に繋がったと思っている。
2023年2月
西垂水和隆
目次
Ⅰ 本書の目的:病歴と身体所見の重要性
1 なぜ「非典型例」で、なぜ「病歴聴取と身体所見」なのか
- 1 なぜ「非典型例」なのか:典型例と非典型例 本書における定義と考え方
- 2 なぜ「病歴聴取と身体所見」なのか
- 3 本書の目的
2 非典型例とは何か
- 1 「非典型例」を細分類する
- 2 行動経済学でとらえよう
- 3 非典型症例の行動経済学的解釈
- 4 本書の目的―まとめ
Ⅱ 身体診察の基本
1 腹痛診察の流れ
2 腹部診察の実際
Ⅲ 病歴と情報収集の基本
1 病歴(OPQRST)
- 1 発症様式(O:onset)
- 2 増悪緩解因子(P:provocative/palliative)
- 3 [疼痛の]質(Q:quality)
- 4 随伴症状、関連・放散、部位(R:related symptoms,refer/radiation,region)
- 5 症状の強度(S:severity)
- 6 症状の順序・経過(T:time course)
2 身体所見 なぜ「このバイタルサインなのか」常に考えよう
- 1 この人は、なぜ血圧が高いのか?
- 2 この人は、なぜ血圧が低いのか?
- 3 この人は、なぜ脈拍が速いのか、遅いのか?
- 4 この人は、なぜ呼吸が速いのか?
3 情報統合 他科(皮膚科・眼科・膠原病科など)的所見・疾患と消化器疾患の関係に注意しよう
- 1 消化器疾患と皮膚・眼科所見
- 2 消化器疾患と膠原病
Ⅳ 非典型例の病歴と身体所見:どこが「典型例」と異なるのか?
1 診察前段階:患者の訴えだけで決めつけない!患者に合う前から色眼鏡をかけない
- 1 腹痛・腹満
- 2 下痢
- 3 吐血
- 4 倒れた
2 病歴
- 1 プレゼンテーションが変 属性から想起できない(年齢・性別・左右差)
- 2 第一印象が変 なぜfatal diseaseなのにケロッとしているのか?
- 3 愁訴が変 よくある訴えなのに要領を得ない
- 4 受診の時間帯やタイミングが変 受診までの時間を考慮するケース
3 身体所見
- 1 炎症性疾患
- 2 内分泌疾患
- 3 心・血管疾患
- 4 胸膜炎・肺炎
Ⅴ 疾患別にみる非典型例
1 消化管
- 1 胃癌
- 2 血管性浮腫による腸管病変
- 3 腸炎・憩室炎
- 4 腸閉塞
- 5 急性虫垂炎
2 肝胆膵
- 1 急性肝炎
- 2 急性胆嚢炎
- 3 急性膵炎
3 消化器系以外の原因
- 1 脊椎・脊髄疾患
- 2 婦人科疾患
- 3 腹壁疾患
- 4 泌尿器疾患
- 5 家族性地中海熱
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書籍情報
- ISBN:9784765319430
- ページ数:266頁
- 書籍発行日:2023年3月
- 電子版発売日:2023年4月17日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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