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- 先天性サイトメガロウイルス感染症診療ガイドライン2023
商品情報
内容
序文
刊行にあたって
本書は,先天性サイトメガロウイルス(congenital cytomegalovirus:cCMV)感染症に関して,エビデンスに基づくガイドライン並びに,本症の包括的な診療を行うために必要な解説を,1冊のモノグラフとしてまとめたものです.Mindsに準拠したガイドライン(Part I)と,診療をする際に押さえておきたい11のポイントに関する専門家の解説・エキスパートオピニオン(Part II)で構成されております.
薬物治療が標準的診療に導入され,cCMVの診療は大きく変化することになります.包括的な診療を安心して行っていただくために必要な情報を可能な限り盛り込みました.
さて,cCMV感染症は,長く教科書にも記載されている疾患でありながら,多様な臨床像や確定診断方法の課題などから,臨床的な重要性が十分に認識されないという状況が続いていました.
しかし,抗ウイルス薬の出現と海外での臨床データ,新生児聴覚スクリーニングの普及等により,治療の可能性がある先天性難聴としての認識が広がり,2008年以降,cCMV感染の疫学,診断および治療についての研究班が国内で継続されてきております.
2008年に「全新生児を対象とした先天性サイトメガロウイルス感染スクリーニング体制」の研究班が,故藤枝憲二教授(旭川医科大学)を代表者として組織されました.ろ紙を用いた新生児尿のCMV核酸検査スクリーニングを2万人の新生児に行い,cCMV感染は300人に1人の高頻度であり,子どもの健康課題としての重要性が実証されました.この疫学調査が端緒となり,山田秀人先生(神戸大学)を研究代表者とする母子感染症研究班が継承され,2013年からは藤井知行先生(東京大学)を研究代表者とするAMED研究班の中で,cCMV感染の新生児尿でのCMV核酸検査法の臨床性能試験が実施されました.本試験の結果,2018年には新規体外診断医薬品が承認され保険適用も獲得し,新生児尿を用いたCMV核酸検査が全国の臨床現場の標準的な診断法として導入されました.
幸いにもちょうど2018年には,CMVに対する抗ウイルス薬であるバルガンシクロビルの小児用製剤が臓器移植後のCMV感染を適応として国内で使用可能となり,新たな検査法で診断された新生児への治療の期待が高まった時期でもありました.それを受けて,2019年度にAMED研究班が立ち上がり,症候性cCMV感染に対するバルガンシクロビルの医師主導治験が全国6大学病院で実施され,その結果を基に2023年3月にcCMV感染でのバルガンシクロビルの適応拡大承認を世界で初めて受けることができました.
cCMV感染の診療では,新生児期に診断をして治療を開始する迅速性,治療の適応や副作用などへの十分な注意の必要性,また胎児期新生児期からの切れ目のない適切な診療フォローアップ体制の重要性など,本症ならではの特殊性があります.研究班の中では,混乱なく治療法が導入されるためには,包括的なcCMV感染の診療のための医療情報の整理と提供が不可欠との問題意識が,早期から共有されていました.
そこで2022年より,研究班としてMindsに準拠した手法に則ったガイドラインを作成することになりました.小児科,産婦人科,耳鼻咽喉科,眼科からなる診療ガイドライン作成チームを組織し,胎児期からフォローアップまでのCQを選択し,手順を踏んで原案を作成し,外部評価をいただいた上で,今回,公開することができました.
生まれたばかりの無垢な新生児を前にして,cCMV感染と診断を告げられたご家族の不安や戸惑いは大変大きなものがあります.医療者としてできることは,正確な情報をわかりやすく提供し寄り添っていくことですが,その際に本ガイドラインを役立てていただくことを心から期待しております.
振り返ってみて,疫学研究開始後15年間で,わが国の臨床現場にcCMV感染の標準的な診断法と治療法を導入することができました.これもお世話になった多くの共同研究者の先生方のご指導とご尽力によるものと,改めて感謝申し上げます.特に,本ガイドラインの作成並びに本書全体の,企画段階から最後のとりまとめまで伊藤嘉規先生が中心となり成し遂げていただきました.
また,臨床研究に際して,ご協力をいただいた患者様ご家族,および患者様をご紹介いただいた多くの先生方のご協力にこの場を借りて深謝申し上げます.さらには,患者会であるトーチの会の皆様の熱意が,これまでわれわれ研究者を支えてくださいました.改めて御礼を申し上げます.
令和5年8月
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 成育疾患克服等総合研究事業―BIRTHDAY
症候性先天性サイトメガロウイルス感染症を対象とした
バルガンシクロビル治療の開発研究班 研究代表者
診療ガイドライン作成委員長
岡 明
目次
PartⅠ 診療ガイドライン
ガイドライン作成方法・作成経過
疾患トピックの基本的特徴
診療アルゴリズム
CQと推奨一覧
クリニカルクエスチョンに対する推奨と解説
重要臨床課題1:胎児期のリスク評価・診断された場合の対応
CQ1―1 胎児期の垂直感染予防に啓発(情報提供)は有用か?
CQ1―2 妊婦抗体スクリーニングは胎児の垂直感染リスク評価に有用か?
CQ1―3 先天性感染を疑う胎児超音波検査所見は何か?
重要臨床課題2:早期新生児期~出生後3週の時期における診断
CQ2―1 症候性感染を疑う契機となる臨床所見は何か?
CQ2―2 母体抗体検査でサイトメガロウイルス初感染が疑われる場合に,どのように対応するか?
CQ2―3 妊娠中にどのような異常所見が認められたら,児の尿核酸検査が必要か?
CQ2―4 先天性感染と診断した場合に,症候性かどうかを判断するための臨床検査は何か?
CQ2―5 新生児聴覚スクリーニングでリファーであった場合の診断手順は?
CQ2―6 出生後3週以降に保存検体等で診断するのは有用か?
重要臨床課題3:治療
CQ3―1 症候性先天性サイトメガロウイルス感染症にバルガンシクロビル内服は有効か?
CQ3―2 バルガンシクロビル内服治療の対象となる症候は何か?
CQ3―3 バルガンシクロビル内服治療の対象となる時期はいつか?
CQ3―4 どのような症例にガンシクロビル静注が選択されるか?
CQ3―5 バルガンシクロビル内服治療において,頻度の高い副作用は何か?
CQ3―6 バルガンシクロビル内服治療において,治療効果の評価項目は何か?
CQ3―7 バルガンシクロビル内服で治療効果が不十分な場合に抗ウイルス薬の変更は有用か?
重要臨床課題4:フォローアップ
CQ4―1 バルガンシクロビル内服治療例の長期フォローアップに必要な評価項目は何か?
CQ4―2 耳鼻咽喉科的なフォローアップは有用か?
CQ4―3 無症候性児の眼科的なフォローアップは有用か?
CQ4―4 無症候性児の精神運動発達のフォローアップは有用か?
資料:検索式
PartⅡ 解説・エキスパートオピニオン
1.サイトメガロウイルス感染総論
2.サイトメガロウイルス感染症の診断
A.ウイルス学的診断
B.先天性サイトメガロウイルス感染症におけるCMV量
C.先天性サイトメガロウイルス感染症の頭部画像所見
3.先天性サイトメガロウイルス感染症の治療
A.治療総論
B.治験の概要
C.バルガンシクロビル治療の適正使用の手引き
バルガンシクロビル治療に関するQ&A
4.感染対策と生活指導
5.発達フォローアップ
6.耳鼻咽喉科診療の実際
7.患者団体と患者家族支援
資料:国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)成育疾患克服等総合研究事業―BIRTHDAY
サイトメガロウイルス,トキソプラズマ等の母子感染の予防と診療に関する研究班
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書籍情報
- ISBN:9784787881120
- ページ数:132頁
- 書籍発行日:2023年10月
- 電子版発売日:2023年10月13日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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