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- 図解 臨床輸血ガイド
商品情報
内容
臨床で行われている輸血の大半は,実は理論的な裏付けを欠いた「なんとなく」の輸血であり,無駄が多く,救命にもつながりにくい.そこで本書は理論に基づく実践的な輸血手順とその考え方を詳説.多くの図版と,ポイントをまとめたイラストによって,非専門医も容易にエッセンスを理解できる.さらに文中のキーフレーズは欄外に掲出し,多忙な医師もすぐに要点をつかめるようにした.
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序文
はじめに
現在の日本では日本赤十字社を中心とした血液事業の充実により,血液製剤の迅速かつ円滑な供給体制が確立してきている.臨床現場では「医師なら誰でも」輸血の指示と実施が可能であり,あたかも薬剤の投与と同じ感覚で輸血治療が行われているかのごとくである.しかし,日々輸血に携わるごく少数の専門医を除けば,輸血治療における日本の医療現場の実態は,おおむね以下のとおりであろう.
1.「 輸血」といえば「出血がひどいようなら赤血球製剤を入れる」,「出血傾向が続き,なかなか止まらないようなら新鮮凍結血漿を入れる」,「出血が続き,血小板数が低いなら血小板製剤を入れる」というくらいの意識しかない.
2.血液製剤に関する知識も乏しく,ひとつ間違えば「輸血」という治療行為が逆に患者の大切な命を奪ってしまうことなど念頭にない.
3.出血や貧血に対して安易に輸血を行う医師は多いが,「どれくらいの量の輸血をすればどれくらい血液の数値が上昇するか」といった基本的な知識もなく,輸血による治療目標も持たずに輸血を行っている.
4.出血の際に輸血を行う場合,足りないと命に関わり大変なので,多めに入れるようにしている.予想よりも輸血量が少なくて済んだ場合,取り寄せたが余ってしまった血液製剤は廃棄となる.→ 過剰輸血と廃棄製剤の増加を招いている(貴重で高価な血液なのに……)→ 血液資源の慢性的な不足→ 依然として血漿分画製剤は海外への依存度が高い.
5.特に,新鮮凍結血漿や濃厚血小板製剤など,止血を目的として投与する製剤については,その適応,必要量,投与効果など,ほとんど理解できていないまま輸血を行っている.
6.輸血を行う際には患者もしくは家族への説明と同意取得が必須であるが,患者たちはまさか「輸血の説明をしている自分の主治医が,実際には輸血のことをあまり知らない」とは思ってもいない.
輸血とは「血液の移植」であり,時には命に関わる重篤な副作用を起こしうることを肝に銘じ,安易な輸血は厳に慎むべきである.と同時に,患者のために真に有益となるよう,科学的根拠に裏付けられた輸血治療を行うべく,医師たちの学習と意識改革が切に望まれている.
本書は従来の輸血解説書には見られなかった「具体的・実践的な輸血ガイド」を目的として,それぞれの専門領域のエキスパートに執筆をお願いした.最後には,輸血現場でしばしば問題となる事項を取り上げ,「Q&A」のコーナーも設けている.輸血という医療行為は,「血液」に精通していない医師でも行わなければならないものである.医師たちが自信を持って輸血治療が行えるよう,本書がその一助となれば幸いである.そして,輸血を必要とする多くの患者が,自分の命を預けた信頼する主治医から「真に有効で適切な輸血治療」を受けられるよう,願ってやまない.
2011年3月吉日
名古屋大学医学部附属病院輸血部副部長
山本 晃士
目次
I.緊急輸血の大原則~同型輸血にこだわるという「誤解」~
A はじめに~緊急輸血の問題と「誤解」
B 緊急輸血が必要となるのは?
C 出血の評価
D 緊急輸血のために必要な手順
E 症例検討
II.製剤別の輸血のポイント
1.赤血球輸血の適応と実際
A はじめに~輸血療法の原則~
B 赤血球輸血の目的とは?
C 赤血球輸血の適応は?
D 周術期の赤血球輸血の考え方
E 赤血球製剤の選び方と投与量の決め方
F 赤血球輸血の問題点,注意点
2.FFP輸血の適応と注意点
A はじめに~現状と課題は?~
B FFP製剤と凝固因子について
C FFPの使用を判断するための凝固検査
D FFPの適応
E おわりに
3.血小板輸血の適応と実際
A はじめに~現状と課題は?~
B 血小板製剤の種類,保存法,投与法
C 血小板輸血の適応は?
D おわりに
III.診療科・状況別の輸血のポイント
1.小児領域の輸血療法
A はじめに~小児輸血の現状と課題は?~
B 製剤分割の必要性と分割方法〜安全な方法を考える〜
C 早急に対応が必要な,新生児医療施設における輸血管理体制
D おわりに
2.周術期の輸血療法
危機的出血が起きた!そのとき麻酔科医は…
A はじめに
B 術中の大出血は予測できるか?
C 周術期出血量が多くなる可能性がある場合への対応
D 急速な術中出血がある場合への対応
E 院内体制の準備と確認
F 術後の注意点
3.心臓血管外科手術における輸血療法
A はじめに~現在の状況~
B 赤血球輸血の基準
C 新鮮凍結血漿(FFP),クリオプレシピテート,濃縮フィブリノゲン製剤の輸血基準
D 濃厚血小板製剤の使用基準
E 大量出血に関する早期の血小板製剤,血漿製剤の積極的投与の有効性
F リコンビナント活性化第VII因子
G おわりに
4.肝臓外科・肝移植手術における輸血療法
A はじめに
B 肝臓外科手術の特徴
C 肝移植手術の特徴
D おわりに
5.産科領域の輸血療法
A 産科出血の原因と特徴は?
B 産科出血に対する輸血準備
C 産科領域での緊急輸血の開始
D 緊急輸血時の交差適合試験と血液製剤の選択
E 急速輸血時の注意
F 産科DIC
G 枯渇性凝固障害と消費性凝固障害
H 産科DICに対する凝固因子補充療法
I おわりに
6.術中大量出血時の輸血療法
A はじめに~現状と課題~
B 術中の大量出血はいかにして起こるのか(原因と病態)
C 術中大量出血時に行うべき検査値の評価
D 術中大量出血時の輸血治療
E おわりに
IV.輸血副作用の実際と予防・治療
A はじめに
B 原因血液製剤による副作用の発生頻度と特徴
C 輸血副作用の診断の仕方
D 輸血副作用の予防と治療
E おわりに
V.輸血現場でのQ&A
Q1 輸血によって,血液データはどれくらい改善するのでしょうか?
Q2 血咳製剤の価格はどれくらいしますか?
Q3 血液製剤の投与速度はどれくらいが適切でしょうか?
Q4 慢性的な貧血の場合,輸血の開始基準はどれくらいですか?
Q5 Rh陰性患者にRh陽性赤血球を輸血するのは絶対にだめですか?
Q6 クームス陽性の自己免疫性溶血性貧血の患者に対して,輸血を行ってもいいですか?
Q7 カリウム値の高い患者に輸血を行う際に留意すべきことは?
Q8 全血(新鮮血・生血)輸血のメリット,デ・メリットは?
Q9 肝障害(慢性肝炎~肝硬変)患者の凝固異常,血小板減少に対するFFP,PC輸血の基準は?
Q10 FFPに出血予防効果や止血効果がありますか?
Q11 FFP投与の際に注意すべき副作用は?
Q12 血小板輸血をしても血小板数が増加しない場合,原因として何が考えられますか?
Q13 臨床的に出血を認めない血小板減少患者(<20,000/μL)への対応は?
Q14 臨床的に活動性出血を認める患者に対し,止血目的にFFPや血小板を輸血すべきでしょうか?
Q15 血小板輸血の弊害にはどういうものがありますか?
Q16 化学療法後に起こる骨髄抑制の場合,輸血の開始基準は?
Q17 輸血の際にはあらかじめ抗アレルギー薬を投与しておくべきですか?
Q18 輸血によって患者が死に至る原因には,どんなものがあるのですか?
Q19 輸血によって感染症にかかる確立はどれくらい?
Q20 ひとつの病院での年間血液製剤購入額,および廃棄額はおよそどれくらいでしょうか?
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書籍情報
- ISBN:9784830614231
- ページ数:176頁
- 書籍発行日:2011年3月
- 電子版発売日:2023年2月22日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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