感度と特異度からひもとく感染症診療のDecision Making

  • ページ数 : 380頁
  • 書籍発行日 : 2012年4月
  • 電子版発売日 : 2020年12月30日
7,700
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商品情報

内容

感染症診断に利用する一般的な検査から最近導入された話題の検査まで約80項目をpick upし,その感度・特異度・陽性尤度比(LR+)・陰性尤度比(LR-)を掲げ,この特性と精度に基づいた臨床決断のポイントとコツを余すところなく提供.エビデンスに基づいた臨床対応はもちろん,エビデンスの適応が難しいデリケートな場面や困ったときの次の一手についても,豊富な経験に裏打ちされた臨床センスとオピニオンを交えて執筆.

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序文

感染症診断において最も重要な検査は病原微生物の同定である.微生物を特定することがすなわち確定診断となるからである.しかし,病原微生物を直接とらえることができない場合,診断確定のために種々の検査を組み合わせて利用する.

近年,遺伝子を検出する種々の方法や,微生物の構成成分,抗原などを検出する新しい検査が数多く開発されている.これらの中には臨床的な評価が定まっていないにもかかわらず,過大な期待をもって信頼されている検査も見受けられる.これらの新しい検査は従来の検査同様に,あくまでも“surrogate marker”(代替指標)であり,一つの検査で陽性,即ち診断確定,あるいは陰性,即ち否定できるものではない.また, 検査を絨毯爆撃的に提出し得られた結果をもとに判断しようとしても,偽陰性,偽陽性に悩まされ判断を間違ったり,結局判断できなくなる事例も見受けられる.


検査結果を冷静に判断し,正しく診断にたどり着くためには,検査が“どの程度診断に寄与するか”を理解して利用する必要がある.検査の性能を評価する指標が“感度”と“特異度”である.感度と特異度を知ることで,得られた結果がどの程度信頼できるのか,どの程度診断に影響を与えるのかを理解することができる.

EBM が診療に大きく影響を与える時代に, 検査においてもできる限りエビデンスに基づいた判断を行う必要がある.検査関連書籍に記載されている感度,特異度はしばしばどのくらい少ない物質を検出できるか,どのくらいほかの物質と区別できるかを意味することが多く,臨床診断における感度,特異度とは意味が異なる.

本書は一般的な検査から, 最近導入された検査まで約80 項目をpick up し,その感度・特異度・陽性尤度比・陰性尤度比を掲げ,検査特性に基づいた臨床判断のポイントとコツを余すところなく提供すべく企画された画期的な1 冊である.実際に感染症診療の現場で奮闘されているすばらしい執筆陣に恵まれ,エビデンスに基づいた判断の仕方はもとより,エビデンスの適応が難しいデリケートな場面や,困ったときの次の一手についても,豊富なご経験に裏打ちされた臨床センス/オピニオンを交えて執筆いただいた.

本書は検査自体に興味のある読者ではなく,臨床診断を行う医師を対象に診断の一助となることを目的として編纂されている.読者にとって日々の臨床判断のお役に立つならまさに望外の幸せである.


最後になったが,エビデンスの乏しいところを苦労して探してくださったり,無理難題に近いようなテーマをお願いしたにもかかわらず,すばらしい内容を著述してくださった分担執筆者に感謝を申し上げたい.有り難うございました.


2012年4月

編者識す

目次

1章 検査をオーダーするまえに

検査の特性(感度・特異度)を臨床判断に活かすには

有病率によって,陽性適中率,陰性適中率は変化する

2章 各種検査の感度・特異度と臨床判断のポイント

1.一般臨床検査(ルーチン検査)

A. 血液検査

白血球

赤血球沈降速度

B. 尿検査

尿蛋白・赤血球(血尿)

白血球・尿中亜硝酸

C. 穿刺液検査(グラム染色/培養検査を除く)

髄液検査

胸水検査

腹水検査

関節液検査

髄液細菌抗原検査

2.塗抹・培養検査

A. 塗抹検査

喀痰グラム染色

チール・ネールゼン染色

髄液グラム染色

便グラム染色

尿グラム染色

関節液グラム染色

B. 培養検査(各種検体)

喀痰一般細菌培養

喀痰抗酸菌培養

血液培養

カテーテル先端培養

髄液培養(一般細菌/抗酸菌)

便培養

腹腔内膿培養・腹水培養・胆汁培養

尿培養

壊死組織の培養

3.抗原・抗体検査

A. 細菌

ASO,ASK,ADNase B,A群溶連菌迅速抗原検査

尿中肺炎球菌抗原

溶血性連鎖球菌抗原

レジオネラ尿中抗原(レジオネラ抗体含む)

クラミドフィラ・ニューモニエ抗体

マイコプラズマ・ニューモニエ抗体

百日咳抗体

ヘリコバクター・ピロリ抗原・抗体

梅毒血清試験

クラミジア・トラコマチス抗原

トキソプラズマ抗体

ブルセラ凝集反応

B. 真菌

β-D-グルカン(見本原稿)

ガラクトマンナン抗原(アスペルギルス抗原)

クリプトコッカス抗原

カンジダ抗原

ヒストプラズマ,ブラストミセス,コクシジオイデス

C. ウイルス

インフルエンザウイルス抗原

RSウイルス抗原

アデノウイルス抗原・抗体

ロタウイルス抗原

ノロウイルス抗原

B型肝炎ウイルスマーカー

C型肝炎ウイルスマーカー

A型肝炎ウイルスマーカー

E型肝炎ウイルスマーカー

HTLV-1抗体

HIV抗原・抗体

サイトメガロウイルス抗原,サイトメガロウイルス培養(シェルバイアル法),白血球中サイトメガロウイルスPP65抗原(CMVアンチジェネミア)

水痘・帯状疱疹ウイルス抗原・抗体

EBウイルス抗体

麻疹抗体,風疹抗体,ムンプス抗体

ヒトパルボウイルスB19抗体

4.毒素検査

CDトキシンA/B

ベロ毒素

5.バイオマーカー

CRP(C反応性蛋白)

PCT (プロカルシトニン)

エンドトキシン

6.遺伝子検査

結核菌(薬剤耐性含む)

MAC

クラミジア・トラコマチス

淋菌

ニューモシスチス・イロベチイ

HIV(薬剤耐性含む)

ヘルペスウイルス(HSV)

サイトメガロウイルス(PCR定性/リアルタイムPCR(定量))

エンテロウイルス

7.その他

クオンティフェロン(R)TBゴールド

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書籍情報

  • ISBN:9784830620256
  • ページ数:380頁
  • 書籍発行日:2012年4月
  • 電子版発売日:2020年12月30日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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