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- 腫瘍病理鑑別診断アトラス 十二指腸・小腸・虫垂腫瘍
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内容
あわせて読む → 「腫瘍病理鑑別診断アトラス」シリーズ
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序文
十二指腸は他の消化管より疾患頻度が低いが,上部消化管内視鏡検診の普及に伴い,無症状で発見される十二指腸腫瘍性病変が増えており,学会や雑誌で取り上げられることが多くなった回腸・空腸もかつては内視鏡検査が困難なことから“暗黒の臓器” と呼ばれたが,近年ではカプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡が普及し,小型病変を含め様々な疾患の発見機会が増加している.しかしながら,十二指腸・小腸腫瘍に対しては,他の消化管のような取扱い規約や治療ガイドラインが現時点で定められておらず,組織分類や診断基準が十分整理されていない点があり,内視鏡治療の適応基準などの臨床的取り扱いも統一がなされていない.消化器系腫瘍のWHO分類第5版(2019年)では十二指腸,回腸・空腸の上皮性腫瘍はsmall intestineの項でnon-ampullary病変としてまとめられ,十二指腸に特徴的な胃型腫瘍の分類など(幽門腺腺腫以外)に関して十分な記載がなく,病理診断の際にこれだけでは十分対応しきれない場面がある.また,虫垂腫瘍には大腸一般とは異なった特有の病変が発生するため,特に鋸歯状病変,粘液性腫瘍,杯細胞腺癌等について最新の知見を整理する必要がある.
「腫瘍病理鑑別診断アトラス」シリーズは日本の病理学の標準的なガイドラインを示すことを目的として刊行されている.このシリーズは全巻共通の4部構成で,本書の第1部では標準的な組織分類を示していただき,病理標本の取り扱いや肉眼所見の取り方など検鏡前に知っておくべき事項を解説していただいた.第2部はアトラスとして中心となる組織像を示していただき,診断のポイントや鑑別診断を概説していただいた.第3部はこの分野で特に鑑別が問題となる疾患についての解説をお願いした.第4部は臨床との接点となる重要事項を取り上げ,病理医が知っておくべき内容を解説していただいた.他の消化管と比べるとエビデンスが少ない事項もあるかと思われるが,現時点での日本の標準的な内容を示すべく,各分野の第一線で活躍される先生方に執筆をお願いした.
十二指腸・小腸・虫垂腫瘍を対象とするのはシリーズの中では初版となるが,実践的でわかりやすい美麗な写真が満載のアトラスとなった.本書が日本における標準的な組織分類や診断基準を提示し,この領域の病理診断のゴールドスタンダードとなることが期待される.
令和3年3月
九嶋 亮治
牛久 哲男
この「腫瘍病理鑑別診断アトラスシリーズ」は日本病理学会の編集協力のもと,刊行委員会を設置し,本シリーズが日本の病理学の標準的なガイドラインとなるよう,各巻ごとの編集者選定をはじめ取りまとめを行っています.
腫瘍病理鑑別診断アトラス刊行委員会
小田義直,坂元亨宇,深山正久,松野吉宏,森永正二郎,森谷卓也
目次
第1部 検鏡前の確認事項
Ⅰ.十二指腸・小腸腫瘍の組織分類
1.小腸粘膜・異所性胃型上皮
2.十二指腸・小腸腺腫の組織分類と粘膜内癌
3.腸型腺腫・幽門腺腺腫
4.腸型腺腫・幽門腺腺腫に分類できない非浸潤性病変および良悪境界病変
5.腺 癌
Ⅱ.虫垂腫瘍の組織分類
1.WHO分類と大腸癌取扱い規約の概要
2.WHO分類,癌取扱い規約分類の比較・相違点
Ⅲ.切除標本の取扱い方
1.一般的事項
2.外科切除標本の取扱い
3.内視鏡切除標本の取扱い
Ⅳ.肉眼診断
1.十二指腸を含む小腸原発癌の肉眼型・肉眼所見
2.虫垂癌・虫垂腫瘍の肉眼所見
第2部 組織型と診断の実際
Ⅰ.十二指腸上皮性腫瘍
1.腺腫と境界病変
2.腺 癌
3.稀な組織型の癌
1.粘液癌
2.印環細胞癌
3.腺扁平上皮癌・扁平上皮癌
4.肝様腺癌・胎児消化管上皮類似癌
5.癌肉腫
Ⅱ.小腸(空腸・回腸)上皮性腫瘍
1.小腸の上皮性良性腫瘍
2.腺 癌
Ⅲ.虫垂上皮性腫瘍
1.腺 腫
2.低異型度虫垂粘液性腫瘍
3.鋸歯状病変
4.腺 癌
5.杯細胞腺癌(杯細胞型カルチノイド)
Ⅳ.内分泌細胞腫瘍
1.日本分類における消化管内分泌細胞腫瘍の概念
2.内分泌細胞腫瘍の分類
3.カルチノイド腫瘍
4.内分泌細胞癌
5.内分泌細胞腫瘍の病理診断の手順と項目
6.内分泌細胞腫瘍の組織学的な鑑別診断
Ⅴ.間葉系腫瘍
1.GIST
2.GIST以外の間葉系腫瘍
1.平滑筋腫
2.平滑筋肉腫
3.デスモイド型線維腫症
4.炎症性筋線維芽細胞腫瘍
5.炎症性線維性ポリープ
6.孤立性線維性腫瘍
7.脱分化型脂肪肉腫
8.消化管明細胞肉腫/悪性消化管神経外胚葉性腫瘍
9.神経鞘腫
10.虫垂神経腫
11.神経節神経腫
12.gangliocytic paraganglioma
13.グロームス腫瘍
14.Kaposi肉腫
15.その他の間葉系腫瘍
Ⅵ.悪性リンパ腫と類似病変
1.十二指腸型濾胞性リンパ腫
2.単形性上皮向性腸管T 細胞リンパ腫(MEITL)と腸症関連T 細胞リンパ腫(EATL)
3.その他の十二指腸・小腸・虫垂に発生する主なリンパ腫と類似病変
Ⅶ.転移性腫瘍
Ⅷ.ポリポーシス・遺伝性疾患
1.Peutz-Jeghers症候群
2.家族性大腸腺腫
3.若年性ポリポーシス
4.Cowden病/PTEN過誤腫症候群
5.Cronkhite-Canada症候群
6.Lynch症候群
Ⅸ.Crohn病関連腫瘍
Ⅹ.腫瘍様病変
1.定義・概念
2.正常構築
3.胃型・Brunner腺型病変
4.Peutz-Jeghers型ポリープ
5.異所性膵とadenomyoma/myoepithelial hamartoma
6.子宮内膜症
7.炎症性ポリープ・ポリポーシス
8.間葉系の腫瘍様病変
第3部 鑑別ポイント
Ⅰ.十二指腸腺腫と癌の診断基準
1.腺腫と癌の病理組織学的診断基準
2.病理組織学的鑑別診断の実際
3.鑑別診断に有用な臨床的事項
Ⅱ.虫垂粘液性腫瘍の鑑別診断
1.鑑別すべき疾患
2.虫垂粘液性腫瘍
3.粘液癌
4.良性病変
Ⅲ.反応性異型と腫瘍性異型との鑑別診断
1.十二指腸粘膜に関する基礎的事項
2.表層上皮の反応性異型と腫瘍性異型との鑑別
3.Brunner腺の反応性異型と腫瘍性異型との鑑別
第4部 臨床との連携
Ⅰ.コンパニオン診断
1.免疫チェックポイント阻害薬のコンパニオン診断
2.MSI/dMMR/TMB検査法
3.MSI-H/dMMRを示す癌の特徴
4.NTRK 融合遺伝子
5.分子標的治療の現状
Ⅱ.内視鏡所見
1.十二指腸腫瘍の内視鏡診断
2.小腸腫瘍の内視鏡診断
3.虫垂腫瘍の内視鏡診断
4.病理医と臨床医の連携─正確な診断のための確認事項
Ⅲ.腹腔細胞診の判定と臨床的意義
1.腹腔細胞診の目的と臨床診療における位置づけ
2.実施方法
3.スクリーニングと判定の手順
4.判定結果の記載方法
5.腹腔細胞診観察のポイント
6.腹腔細胞診の腫瘍細胞像
7.鑑別の必要な非腫瘍性細胞
Ⅳ.治療ガイドラインの概要
1.腺腫・癌
2.NETとNEC
3.GIST
4.悪性リンパ腫
Ⅴ.病理診断報告書の記載
1.手術検体における病理報告の記載
2.内視鏡的切除検体の病理所見の記載
3.悪性リンパ腫,GISTの病理所見の記載
4.生検検体の病理所見の記載
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書籍情報
- ISBN:9784830622571
- ページ数:252頁
- 書籍発行日:2021年4月
- 電子版発売日:2021年4月23日
- 判:B5変型
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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