序文

編者は毎年入学してくる学部1年生に臨床医学入門（旧医学概論および臨床医学概論）の講義をしているが， 講義にあたり， 適切な多数の画像が掲載されている教科書がないことが問題であり， 疾患に関係した胸部単純撮影，X線CT，MRIや消化管の造影検査などいくつかの臨床画像を用意して呈示している．中枢神経系，頭頸部，胸部，腹部など部位ごとの画像を収載した教科書は多数存在するが，全体にわたり各種画像を呈示し，かつ初心者でも理解できるような病気に関する記述がなされた教科書は手に入れることができないのが現状である．活字のみでは理解し難いことも画像を一緒にみせることにより，理解度が高まることはよく経験されることである．そこで，診療放射線技師養成施設の諸先生を中心として多数の画像を掲載した“絵（画）をみて学ぶ”本書を企画した．

本書は診療放射線技師の国家試験出題基準に依拠しつつ，さらに臨床現場の技師に役立つ疾患を追加した構成であり，全身の各臓器・部位ごとに撮像のアプローチと疾患ごとの特徴的画像所見を解説した，他に類をみない画期的な一冊であると考えている．各疾患について，撮像の前提として知っておくべき解剖学，生理・病態生理の知識をまとめ，その上で画像所見を掲げて撮像および画像再構成の要点とあわせて読影のポイントを解説し，初心者でもわかりやすい典型例を中心とする詳細な説明を加えた．

本書により読者はコメディカルに求められる疾病の成り立ちについての知識，画像所見，撮像技術を三位一体で理解できると思われる．それゆえ，技師養成課程の専門基礎分野における疾病論のテキストとしてのみならず，専門分野で学ぶ各種技術的な事項の基盤として必要な病気についての知識を復習するためのテキストとしても活用できる．さらに臨床現場において新人技師が臨床的事項について知るための参考書としても使うことができると思われる．理学療法士や看護師などの他のコメディカルのための放射線診療教育にも使用できると考えている．

本書は前述のようにコメディカル養成課程で診療放射線技師教育に尽力されている教育の第一人者もしくは画像診断の現場で真摯に患者と向き合い画像診断を極めている臨床の第一人者を執筆陣に迎えることができて完成した一冊であることを述べておきたい．なお， 文光堂編集企画部佐藤英昭氏・松本恵子氏には本書の作成にあたり多くの有用な助言を頂き，ここに感謝致します．

平成22年3月

金沢大学医薬保健研究域保健学系放射線技術科学専攻
鈴木正行