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実学としてのリハビリテーション概観~理学療法士・作業療法士のために

  • ページ数 : 196頁
  • 書籍発行日 : 2015年2月
  • 電子版発売日 : 2022年1月12日
3,300
(税込)
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商品情報

内容

これからのPT・OTに必要な観点を修得できる,新しいリハビリテーション概論書!

医療制度が大きく変わりつつある現代のPT・OTのための,新しいリハビリテーション概論書.PT,OT,ST,リハ医師,看護師,義肢装具士,MSWなど多彩な執筆陣が,それぞれの業務やチーム医療について解説.多角的な観点からリハビリテーションの全体像をつかめる.リハビリテーションの現状,沿革や理念,今後の課題と展望,最新のトピックがわかる.これからのPT・OTの指針となる一冊.14項目とコラムから構成.

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序文

序文

理学療法士は,人間の姿勢分析・活動分析・運動分析をどの職種よりも多く勉強し,臨床で実践し,患者様などのニーズに応えてきた職種として自負してよいでしょう.また自負できるよう深く認識,学習し,臨床に生かすことにも心がけなければならないでしょう.本書の意図はこうした背景に則った試みとしても,大変有意義ではないかと思っています.そして第2 版への改訂の機会が得られたことを喜びたいと思います.

若い理学療法士数が急増している原因は,理学療法士養成施設が急増し現在230校となって,毎年13,000 名以上の卒業生が輩出される状況が続いているからです.米国発のサブプライムローン破綻から発した不況が,より安定した雇用を生み出す医療へ若者を導いているということも当然の成り行きです.しかしこのことは,理学療法士が不足していて地団駄を踏んでいた草創期から成長期には想像できない現象でした.多くの若い人たちが理学療法の分野に参入するということは素晴らしいことで,若い力を育てて未来への持続的な発展の道筋をつけることは,荒野の土壌を改良し,肥沃な大地に蘇らせて,一歩一歩実りを確保していく試みに似ています.

いま,急増のデメリットのみに目を奪われているわけにはいきません.急増した中には多くの志をもった人材,あるいは磨けば社会の手足となって患者・障害者・高齢者などを支援指導する人材が沢山いるととらえて,積極的に対処していくことが求められます.医療福祉の発展のためにリハビリテーション医学医療や理学療法の向上はなくてはならないものです.約半世紀前にリハビリテーションや理学療法が導入された頃から,多くの関係者の変わらぬ信念でした.

若い理学療法士の方々には,リハビリテーション医学医療や理学療法の向上のために何をしたらよいのか共に真剣に考え,理学療法士の洗練された技術を待っている患者様が沢山いることを常に想像してほしいと思います.そこで本書の趣旨である「臨床動作分析」のプロへと成長して行くための道筋の1 つの方法として,6 ステップ式の活用が参考になるのではないでしょうか.どうか,実際に手にとって参考にしてほしいと願うものです.

対象者は障害を有した患者様・小児から成人・高齢者まで,病気予防や健康増進からスポーツ分野の傷害予防など,より幅広くなっています.臨床のあらゆる分野の対象者の運動や動作・姿勢を分析する知識・技術を学習し,臨床応用し,繰り返し積み重ねていって,分析能力の向上を実感できるようにしていってください.本書は皆様の自己学習の指導書としても役割を果たすことができるでしょう.

今回第2 版への改訂にあたり第Ⅱ章において肩関節周囲炎,足部障害の2 つの疾患・障害を加え,臨床的なニーズにさらに広く応えるように試みました.また動作分析機器のところはより簡潔な解説とするようにしました.

本書が,運動・動作・姿勢分析のプロたらんと研鑽を重ねる多くの理学療法士やその学生,若手理学療法士の座右の書として,ささやかな安寧の地を確保できるよう引き続き努力していくことを心に念じています.また新潟の編集者・執筆者の先生方の努力に深甚の感謝の意を申し上げます.

日本にリハビリテーション医学・医療が展開され始めてから半世紀が経過する.その間,リハビリテーション関連職種の養成は,リハビリテーション専門医師をはじめ,看護師,理学療法士,作業療法士,メディカルソーシャルワーカー,義肢装具士,言語聴覚士,介護福祉士などリハビリテーション医療に必要な高度な専門職として確立されてきた.そして,日本の社会的構造の変遷,つまり,超高齢社会の到来によって,保健・医療・福祉領域の地域包括的ケアの必要性が叫ばれており,これに応えるために,リハビリテーション関連専門職への社会的要請はますます高まってきている.

さて,これらの専門職教育における初期の導入において,チーム医療の重要性とそれぞれの専門分野を総合的に学ぶ教科目の1つとして「リハビリテーション概論」を開講している教育機関は数多い.「リハビリテーション概論」に関連した書籍は数冊あるが,それぞれの専門職が分担して執筆した「リハビリテーション概論」に関連した書籍は,私が知る限り皆無である.よって,本書は,各専門職が各分野について記述・解説することで,より詳細でかつ具体的内容を呈示し,各分野を専攻する初学者がリハビリテーション医学・医療を総体的に理解することを意図して企画した.また,本書では適切な医学用語の使用について配慮した.

日本にリハビリテーション医学・医療が展開され始めたときから,「リハビリテーション」の正式な日本語の学術用語は創出されていない現状が続いている.近年では,専門職のみならず行政,国民,マスメディアの用語として,「リハビリ」と表現されることが多いが,今でも「訓練」という語が用いられる場合がある.「訓練」の英語,training(語源は機関車が列車を引くことから,養成や訓練となったといえる)であり,特定の人が特定の技能や職業を習得するときに使用されるケースが多い.しかし,日本語の「訓練」は,その対象者に判断の余地は乏しく上位の者が一方的に特定の行動を身に付けさせるニュアンスが強く,望ましい用語とは思えない.

また,「障害」,「障害者」については,医学,行政,法律などの分野で多用されている.最近,「障がい」,「障がい者」と表現されることもあるが,「障」とは,隔てる,邪魔,差し障りなどの意味がある.「害」は,家の宀,割の主と口から構成され,傷つける,犯す,殺すなどの意味(人を損なう発言が家の主人から起こる,物を割り削る)があり,物騒で怖い用語といえる.私たちは生まれた国や地域の文化の多大な影響を受け,それらが刷り込まれて,「日本人らしい言動」をとるようになる.しかし,文化の功罪を意識的に吟味することがなければ,成人になっても,あるいは教育を受けても刷り込まれた用語や知識を鵜呑みにしてしまう傾向が強い.差別用語や放送禁止用語とされる「ことば」の使用を控える動きは是正されてきていると思うが,リハビリテーションを含む医学・医療界でも専門用語,例えば,痴呆から認知症,精神分裂病から統合失調症などと是正されているが,今後は,上記した用語などについも是正されたいものである.

アメリカ精神科学会は,Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM-5)の改訂版を発刊し,用語の見直しを行っている.それを受けて日本精神神経学会の精神科病名検討連絡会で病名・用語翻訳ガイドラインを精神神経学雑誌(第116巻第6号429-457, 2014)に初版として掲載している.その中でdisabilities,disorders は「障害」とされてきたが,それに代わり原則的に「症」に改訂され,さらに検討を続けるとしている.

本書では,法律,行政,文献引用などを除き「訓練,障害,障害者」の使用を控え,可能な限りICF に準じた用語を使用することに心がけた.

本書が,卒前卒後を通じて各現場における業務が,より綿密なチーム医療に基づいて成立しうることの重要性を認識するためのオリエンテーションの役目を果たすことを期待したい.


2015年2月

編著者代表 奈良 勲

目次

Chapter 1

医学的・社会的リハビリテーションの歴史と概要

 はじめに

 1.医学的・社会的リハビリテーションの歴史と概要

 2.リハビリテーション専門医師とその役割

 3.医学的リハビリテーションの対象者,対象疾患とそのプログラムの概要

 4.チーム医療

Chapter 2

リハビリテーション倫理・哲学と理念

 はじめに

 1.宇宙と人類の誕生とその解釈

 2.宿命と運命による個々人の人生

 3.なぜ,リハビリテーションと倫理・哲学と理念なのか

 4.プロフェッションとしての関連専門職種の姿

 5.自然治癒力と治療の原則

 6.ICFに準じた脳卒中簡易総合評価システムとアプローチ

 7.リハビリテーション専門職種に求められる諸要素

 おわりに

Chapter 3

理学療法の概要 その1─役割と対象者─

 1.理学療法の原点

 2.各病期および各分野からみた理学療法(士)の役割

 3.専門性と独自性

 4.理学療法士になってから

Chapter 4

理学療法の概要 その2─理学療法現場における業務,評価とアプローチ─

 1.理学療法現場における業務

 2.評価とアプローチ

Chapter 5

作業療法の概要 その1─役割と対象者─

 1.作業療法のルーツとその発展

 2.作業療法の定義

 3.作業療法の対象と領域

 4.各病期における作業療法

 5.作業療法の役割・独自性(専門性)

Chapter 6

作業療法の概要 その2─評価とアプローチ─

 1.作業療法士の業務の流れ

 2.事例検討

 3.作業療法のエビデンス

 おわりに─「作業療法以前の課題」と「人の尊厳への配慮」─

Chapter 7

言語聴覚療法の概要─役割と対象者─

 1.言語聴覚士とは

 2.コミュニケーションのメカニズム

 3.言語聴覚機能不全の種類と分類

 4.言語聴覚士と職種間連携

Chapter 8

リハビリテーション看護の概要─ 役割と対象者─

 はじめに

 1.看護の概念と独自機能

 2.リハビリテーション看護の概念と独自機能

Chapter 9

リハビリテーション分野における義肢装具と福祉機器の概要

 1.リハビリテーション分野における義肢装具と福祉機器の歴史的動向

 2.用語の解説

 3.義肢装具と福祉機器の種類と用途

 おわりに

Chapter 10

医療ソーシャルワーカーの役割と業務

 1.社会福祉とは

 2.医療福祉とは

 3.医療ソーシャルワーカーの資格制度

 4.医療ソーシャルワーカーの役割と業務

 5.地域におけるソーシャルワーク

 6.事例:脳卒中患者への医療ソーシャルワークの流れ─急性期から適応期(維持期)へ─

Chapter 11

リハビリテーションに関する心理的配慮

 1.心理学的な人間の理解

 2.リハビリテーションにおける心理学的配慮の内容とスタッフの役割

 3.セラピストらの立場,認知と個々の対象者などの立場,認知

 4.来談者中心療法,カウンセリング技法などを参考にした心理的配慮

 5.「心身の機能・構造などの永続的変調」に関する認知・影響・支援などについて

Chapter 12

近未来における理学療法の課題と展望

 はじめに

 1.人口構成の変化

 2.報酬関係の変化

 3.地域包括ケアシステムの動向

 4.予防理学療法の発展

 5.治療理学療法の進化と深化

 6.時代背景に沿った理学療法学教育の方向性

 おわりに

Chapter 13

近未来における作業療法の課題と展望

 はじめに

 1.日本における作業療法の歴史と変遷

 2.作業療法の定義

 3.作業療法の考え方

 4.作業療法を取り囲む心身機能(構造を含む)・活動・社会参加の範囲と現状

 5.近未来への取り組み

 おわりに

Chapter 14

リハビリテーションの課題と展望─地域リハビリテーション,チームアプローチ─

 1.地域におけるリハビリテーションの考え方

 2.対象者の態様に応じたリハビリテーション

 3.地域における多職種の連携と協働

 4.リハビリテーション医療とチームアプローチ

 5.良好なチームアプローチのために

コラム

 1.精神科領域の理学療法の課題と展望

 2.動物の理学療法・リハビリテーションの課題と展望

 3.認知機能低下予防・向上へのコミュニケーションロボットの応用

 4.大災害時の理学療法・作業療法の支援の課題と展望

 5.高齢者・社会参加制約者の自立に向けた支援の課題と展望

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書籍情報

  • ISBN:9784830645174
  • ページ数:196頁
  • 書籍発行日:2015年2月
  • 電子版発売日:2022年1月12日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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