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- 腰痛の病態別運動療法体幹筋機能向上プログラム
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序文
序文
恩師の勧めで脊椎外科医の道を選び,千例を超える手術経験を積んできたが,神経学的所見のない腰痛を外来で診ることが苦手だった.手術例には画像検査で診断される病態が必ず存在し,治療方針は自ずと定まるが,画像所見のない腰痛の評価方法や対処法は誰も教えてくれなかったし,教科書にも載っていなかった.
大学病院を離れ,スポーツ医学の教鞭をとり,脊椎以外の障害を診るようになった.スポーツ障害の病態には筋腱への牽引力による肉ばなれや付着部症,組織どうしが擦れるインピンジメント症,関節や骨への負荷による関節障害や疲労骨折などがあり,これらを引き起こす原因としては不意な遠心性の筋収縮や関節不安定性による異常挙動などがあげられる.スポーツ選手の腰痛を数多く診ることになり,彼らの腰痛の病態も四肢関節のスポーツ障害と同じであることに気づいた.つまり背筋群の牽引力による肉ばなれとしての筋筋膜性腰痛や筋付着部症,棘突起どうしの接触による棘突起インピンジメント,関節への繰り返す挙動負荷による椎間関節障害や仙腸関節障害,椎弓の疲労骨折による腰椎分離症,脊椎特有の組織である椎間板の障害を除いたこれらの病態は他のスポーツ障害と同様である.
これらを引き起こす不意の遠心性収縮や関節不安定性による異常関節挙動には関節近傍の単関節筋の機能不全が関与しており,このような病態によるスポーツ障害をstabilizer 機能不全症候群と捉えることができる.このような身体機能不全によって発生した腰痛の病態が理解されれば,その対応策は自明であり,脊柱安定性を高めるための体幹深部筋機能向上や特定分節への挙動負荷を減らすための隣接関節可動性向上を目的とした運動療法が求められる.
本書では腰部障害の病態別の機能的評価方法,脊柱に安定性を与える体幹筋群の機能とその機能改善の方法,これらの理論に基づいた運動療法について紹介している.画像所見を認めない腰痛に対して漫然とした対症療法を行うのではなく,正しい身体機能を再獲得させる運動療法が求められる.本書が,原因が明らかにされず医療施設を転々としている腰痛難民やその対処に苦慮している治療家の道標となることを願う.
2016年立春
金岡恒治
目次
I 脊柱の安定性とは?
1 脊柱の安定性
2 ニュートラルゾーン
3 体幹筋の役割─ローカル筋とグローバル筋(単関節筋と多関節筋)─
4 神経系の役割,フィードフォワード機能
5 stabilizer機能不全によって発生する障害
1 肩関節インピンジメント障害
2 上腕骨外上顆炎
3 大腿内転筋付着部障害(グローインペイン)
4 腸脛靱帯炎
II 機能的腰部障害とは?
1 非特異的腰痛とは
2 腰部障害の機能的評価方法
1 問 診
2 脊柱所見
3 圧 痛
3 椎間板性腰痛
1 椎間板の変性とは
2 椎間板変性と腰痛
3 評 価
4 対処方法
4 椎間関節性腰痛
1 椎間関節の特徴と評価
2 対処方法
5 仙腸関節障害
1 特 徴
2 評 価
3 対処方法
6 筋筋膜性腰痛,筋付着部障害
1 機 序
2 評 価
3 対処方法
7 その他の腰部障害(棘突起インピンジメント障害,横突起付着部障害)
1 棘突起インピンジメント障害
2 横突起付着部障害
III 器質的腰部障害への進行とその特徴は?
1 器質的腰部障害への進行
2 腰椎椎弓疲労骨折(分離症)
3 腰椎椎間板ヘルニア
1 症状と診断
2 対処方法
4 椎間関節変形性変化(変形性脊椎症)
5 腰部脊柱管狭窄症
IV 体幹筋群の機能的特徴とその評価方法は?
1 体幹筋の分類
2 各体幹筋の機能解剖
1 腹直筋
2 外腹斜筋
3 内腹斜筋
4 腹横筋
5 多裂筋
6 腰方形筋
7 大腰筋
3 体幹深層筋の活動評価方法
1 ワイヤ電極による筋活動評価
2 表面筋電図を用いたローカル筋活動評価の妥当性
3 超音波画像装置による評価
4 MR画像による筋活動量評価
4 身体運動時の体幹深層筋の活動様式
5 体幹安定化運動時の体幹筋活動様式
1 draw-in
2 bridge exercise
3 sit-up exercise
4 active SLR
V 腰痛に対する徒手療法の応用と機能的障害に特異的な運動療法とは?
1 腰痛に対する徒手療法と運動療法
2 各種徒手療法の原理とその効果発現機序
1 徒手療法の歴史と各種徒手療法の体系
2 徒手療法の腰痛治療に対するエビデンス
3 関節に対する徒手療法の原理と効果発現機序
3 腰痛の機能的評価方法(徒手療法を応用した疼痛除去テストの紹介)
1 問診と疼痛部位評価
2 自動運動による評価
3 徒手的介入方法─疼痛除去テスト─
4 機能的評価方法に基づいた運動療法
1 椎間関節障害に対する運動療法
2 椎間板障害に対する運動療法
3 仙腸関節障害に対する運動療法
4 筋筋膜性腰痛に対する運動療法
VI 慢性腰痛者の特徴と効果的な腰痛体操とは?
1 慢性腰痛が与える社会的影響
2 腰痛者の特徴
1 腰痛者では体幹深部筋が機能していない
2 腰痛者では体幹深部筋が萎縮している
3 腰痛の運動療法
4 stabilization exerciseの紹介
1 draw-in(腹部引き込み運動)
2 front bridge exercise(hand-knee)
5 慢性腰痛に対する運動療法の効果
6 体幹機能不全と加齢との関連
1 ロコモティブシンドローム
2 加齢による筋萎縮
3 加齢による筋萎縮の予防
7 体幹機能不全とその他の障害との関連
1 骨盤底筋機能障害との関連─腹圧性尿失禁─
VII スポーツ活動時の体幹筋の役割とその機能を向上させる方法とは?
1 スポーツ選手における体幹筋機能
2 スポーツ選手の体幹筋の形態的特徴
3 スポーツ活動時の体幹筋活動様式
1 ジャンプ動作時の体幹筋活動
2 バレエのパッセピボット時の体幹筋活動
3 テニスサーブ時の体幹筋活動
4 バドミントンのサイドアームストローク時の体幹筋活動
5 水中のバタ足時の体幹筋活動
4 体幹筋機能と運動パフォーマンスとの関連
1 体幹筋機能テスト
2 体幹筋機能テストと運動パフォーマンスの関連性
3 体幹筋機能の向上は運動パフォーマンスを向上させるか?
5 体幹トレーニングのさまざまな方法とその評価
1 体幹トレーニングの分類
2 トレーニング時の姿勢
3 腹筋背筋運動
4 体幹安定化運動
5 コーディネーションエクササイズ
6 不安定面エクササイズ
6 体幹トレーニングプログラム
1 腹筋背筋運動は必要か?
2 段階的なトレーニングプログラムとは?
3 適切なトレーニングの頻度や期間は?
4 stabilization exerciseのウォーミングアップとしての利用
7 体幹筋機能改善による外傷・障害予防効果
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書籍情報
- ISBN:9784830645310
- ページ数:140頁
- 書籍発行日:2016年3月
- 電子版発売日:2021年8月25日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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