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頭頸部がんマスターガイド~患者さんと向き合う治療、患者さんと向き合う看護のためのアプローチ

  • ページ数 : 264頁
  • 書籍発行日 : 2021年3月
  • 電子版発売日 : 2021年6月23日
5,280
(税込)
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商品情報

内容

治療選択から終末期までケアの実践知が満載

頭頸部がんにおける、診断・治療・看護、精神的サポート、喉頭摘出後のリハビリテーション看護、放射線療法、意思決定・障害受容への心理的支援、看護ケア、エンドオブライフケアなどを網羅的に徹底解説! 豊富な図解で複雑な頭頸部の解剖がわかる!
*都合により,紙版の誌面と異なり割愛される箇所があることがございます(p153の図1-11は未収載となっております).

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序文

はじめに

近年、日本のがん患者数は増加を続け、2人に1人ががんになると言われています。頭頸部がんはがん患者全体の5%程度と言われており、数的に多いわけではありません。しかしこの割合は、日本人の40人に1人が頭頸部がんを発症しているということになり、どこの病院に患者さんがいてもおかしくない数値です。このように、どこの病院にも患者さんが存在するものの、その数が少ないために、専門的な頭頸部がんの知識をもってかかわることができる医療者も少ないというのが現状ではないでしょうか。

私自身、約20年間、頭頸部がん看護にかかわってきました。そのなかで、医療者と頭頸部がん看護の話をすると、いつも返ってくる言葉は「難しい」でした。頭頸部がんの疾患や創傷は、ほかのがんと比べると比較的見えやすい場所にあり、障害が生じる部位も予測ができるため、わかりやすいのではないかと思っていました。しかし、難しいのはその先のことなのかもしれません。受けた障害の克服、コミュニケーションや社会とのかかわりなど、患者さんにとってはその後も困難が続きます。したがって、術前・術後の看護だけでなく、退院後の支援やかかわりなども含まれてくることから、「難しい」と感じるのかもしれません。

頭頸部がんの患者さんは、がんの進行や治療によって、顔貌の変化、失声、嚥下障害、構音障害などのQOLに直結する障害を抱えます。障害によって患者さんはコミュニケーションの場を失い、食事、入浴、排泄、睡眠など生活のさまざまな面に影響を受けます。そのような状況において、診断を受けて治療の意思決定を行い、治療後は障害を受容してリハビリテーションを行い、社会復帰をしていかなければならないため、多くのサポートが必要となります。そのサポートには専門的な知識が必要なものが多く、患者数が少ない分野であるため、参考となる文献の数に限りがあるのが現状です。散見される文献も、頭頸部がんについて記されてはいますが、看護に特化したものはわずかです。また、頭頸部がんは、喫煙や飲酒などの生活習慣が原因の一部であるとも言われており、喫煙や飲酒に依存的な個性をもった患者さんとのかかわりが多くなります。そのため、そのような患者さんの個性をよく理解したうえで、意思決定や障害受容を支援していく必要があります。

本書では、頭頸部がん治療の実践経験が豊富な医師、頭頸部がん看護を得意とするがん看護専門看護師、がん放射線療法看護認定看護師、緩和ケア認定看護師、摂食・嚥下障害看護認定看護師が、頭頸部がん患者の診断・治療・看護をより具体的に解説し、専門的な頭頸部がんの知識のない医療者にもわかるように紹介しています。

本書は、エビデンスを集約したような教科書や参考書ではありません。当施設で実践している内容について、その賛否を議論していただくことにより、今後のエビデンスにつながる「頭頸部がん看護」の始まりとなれば幸いです。


2021年1月  

青山 寿昭


「頭頸部がん」は一般的に言ってマイナーな分野であるものの、そこに携わった者たちは、頭頸部がん治療というものがきわめて奥深く、興趣の尽きない分野であることを知っています。ありきたりな表現で言えば、「やりがいがある」のですが、実際の内容は平凡ではありません。その解剖学的構造は緻密でありながら、規模や侵襲の大きな手術・治療を伴うこともあり、越えるべきハードルは高いのです。また、患者の社会的背景、外観の変化、失声、嚥下摂食障害などにまつわる多くの課題があります。

「5東病棟」というのは、愛知県がんセンターの頭頸部外科病棟ですが、その病棟師長を務めていた青山寿昭氏とは、良い病棟を築き上げていくにはどうしたらよいかという話を何度となくしました(そしてこの話はまだ終わっていません)。そして、頭頸部がんの看護に関する情報のニーズが高いことを耳にしました。実際、頭頸部がんについての書籍は多く存在しますが、こと看護に特化した書籍はごく限られています。頭頸部がん分野の発展に伴い、そのニーズが高まることは必然であると思われます。

本書は、頭頸部がんの診断・治療・看護をわかりやすく解説するというものです。青山氏の趣旨に賛同した当院の頭頸部がん診療に関わる医師が、診断・治療についての執筆を担当し、協力しました。近年の頭頸部がん治療の発展には目を見張るものがあります。咽喉頭病変に対する経口的手術が多く行われ、高精度放射線治療も一般的なものとなっています。薬物療法においては、分子標的薬に続いて免疫チェックポイント阻害薬が登場し、とくにこの領域の標準治療は飛躍的に更新されつつあります。目まぐるしく変わる標準治療の解説をすべて行うことは不可能ですが、ある程度最新の情報を加えながら、頭頸部がんの看護を専門とする者が認識しておくべき基本的な知識を習得できるように、わかりやすい解説に努めています。

慌ただしい日常診療、時間外労働の削減、また働き方改革が叫ばれるなかで、5東病棟でも、病棟看護師に対する講義の機会を設けることは実際なかなか難しい現状があります。各執筆者は、これが看護師向けの書籍であることを念頭に置き、もし時間が許せばこのぐらいは講義しておきたい、という視点でまとめたものです。本書を手に取った皆さまには、ぜひ講義を受けるつもりで読んでいただけると幸いです。そして、疑問が生じた際には医師に尋ねたり、医師向けの書籍にも目を通したりしていただきたいと思います。さらには、相互コミュニティの中で議論を交わし、頭頸部がん看護の輪を広げ、発展させていただければ、本書の目的は十分達せられたことになるはずです。

2021年1月

花井 信広

目次

【第1章】総論 頭頸部がんの治療・看護

1 頭頸部がんの看護

頭頸部がんの特徴

頭頸部がん看護の役割

頭頸部がん看護は看護師の力が存分に発揮される領域

2 頭頸部がんの治療

頭頸部がん治療の原則

手術療法の特徴

皮弁再建の特徴

放射線治療・化学放射線療法の特徴

再発した場合の治療選択

【第2章】各論 頭頸部がんの診断・治療・看護

1 手術療法における口腔衛生管理

頭頸部がんにおける手術部位感染のリスクとケア

口腔衛生管理を行うための歯科との連携

術前の準備

手術療法における口腔衛生Q&A

2 術前・術後の看護  

術前

術後

術後経過

まとめ

3 気管切開の看護  

頭頸部がんにおける気管切開

気管切開のカニューレの種類と特徴

気管切開のカニューレ挿入中の対応

気管切開孔閉鎖に向けたかかわり

気管切開が嚥下機能に与える影響

失声している患者とのコミュニケーション

4 皮弁再建術後の看護  

皮弁による再建術とは

皮弁再建術後のトラブル

術後の観察

安静度

5 頸部郭清術後の看護  

頸部郭清とは

頸部リンパ節の解剖

術後の観察(急性期)

非リンパ組織

頸部郭清術後の頸部と肩のリハビリテーション

6-1 甲状腺がん診断・治療  

甲状腺がんとは

診断

治療

まとめ

6-2 甲状腺がん術後の障害へのアプローチ  

甲状腺の働きと術後の障害

術後の検査(反回神経麻痺)

声門閉鎖不全のリハビリテーション(反回神経麻痺)

甲状腺全摘術後の内服

まとめ

7-1 舌がん診断・治療  

舌がんとは

診断

治療

7-2 舌がん術後の障害へのアプローチ  

舌の役割と舌切除に伴う機能障害

舌切除に伴う嚥下関連組織への影響

喉頭挙上術および舌の再建術後のケア

術後のリハビリテーション

まとめ

8 上咽頭がん診断・治療  

上咽頭がんとは

診断

治療

まとめ

9-1 中咽頭がん診断・治療  

中咽頭がんとは

診断

治療

9-2 中咽頭がん術後の障害へのアプローチ  

中咽頭の働きと切除に伴う障害

中咽頭の再建術

中咽頭の再建術における創の安定後のケア

中咽頭の再建術後の嚥下訓練

10-1 下咽頭がん診断・治療  

下咽頭がんとは

診断

治療

10-2 下咽頭がん術後の障害へのアプローチ  

下咽頭の働きと切除に伴う障害

下咽頭で嚥下障害になる原因

嚥下訓練

まとめ

11-1 喉頭がん診断・治療  

喉頭がんとは

診断

治療

11-2 喉頭がん術後の障害へのアプローチ  

喉頭の働きと切除に伴う障害

喉頭切除の術式

気管カニューレの抜去

嚥下訓練

直接訓練(摂食訓練)

まとめ

12-1 上顎がん診断・治療  

上顎がんとは

診断

治療

12-2 上顎がん術後の障害へのアプローチ  

上顎がん

上顎がんの手術

上顎がん術後の障害

嚥下訓練の方法

まとめ

【第3章】放射線治療・化学放射線療法の治療・看護

1 放射線治療・化学放射線療法の治療・看護  

放射線治療の種類と目的

頭頸部がんの放射線治療

化学放射線療法

頭頸部がんの薬物療法

薬物療法のケア

起こりやすい主な副作用と支援のポイント

薬物療法に伴う栄養管理

セルフケア支援における看護師の役割

セルフケアを促進させる患者への働きかけ

治療開始前の患者指導

看護ケアに活かす治療計画の見方

再現性を確保するための看護支援

2 放射線治療の副作用への対応  

副作用マネジメント

放射線性皮膚炎

口腔咽頭粘膜炎

味覚障害

唾液腺障害

せん妄

栄養管理

治療終了後に起こりやすい有害事象の情報提供とケア

3 放射線治療中の口腔衛生管理  

口腔衛生の目的

頭頸部領域の放射線治療における口腔衛生管理

放射線治療中の口腔清掃用具

事例と対応方法

【第4章】治療選択における意思決定支援

1 頭頸部がん治療における意思決定支援の意義  

意思決定支援の意義

頭頸部がん治療の特色からみる意思決定支援のポイント

高齢頭頸部がん患者における意思決定支援

2 意思決定支援の具体的方法  

支援の準備

支援のステップ

治療選択でよく起こる〇〇への対応

患者の価値観や人生観を知る手がかり

まとめ

【第5章】社会復帰に向けての支援

1 頭頸部リハビリテーション看護と日常生活支援  

頭頸部がん治療における看護師の役割

障害受容を中心としたリハビリテーション看護

生活の再構築への支援

危機理論を用いた障害受容支援

障害受容における具体的支援

危機理論による障害受容カンファレンスを行った事例

障害受容カンファレンスの紹介

喉頭摘出後の日常生活への支援

外来における支援

2 アピアランスケア  

頭頸部がん患者に対するアピアランスケア

頭頸部がんの外科的治療に対するアピアランスケアの実際

アピアランスケアニードの把握

アピアランスケアの方法

3 就労支援  

摂食嚥下障害

コミュニケーション

就労支援にかかわる専門職との連携

4 患者会  

患者会の役割

喉頭摘出者の患者会

患者会を紹介するメリット・デメリット

【第6章】エンドオブライフケア

1 エンドオブライフの身体的な症状  

エンドオブライフの身体的な症状

腫瘍の自壊部の処置

2 エンドオブライフの精神的特徴  

ボディ・イメージの変調(自分らしさの喪失)

患者のコミュニケーションに対する思いを受け止める

コミュニケーションへの配慮

3 アドバンスケアプランニング  

他のがんに比べて急変しやすい頭頸部がん

頭頸部がんにおけるアドバンスケアプランニング

アドバンスケアプランニングの目標の決め方と開始時期

アドバンスケアプランニングにおけるコミュニケーション

まとめ

【第7章】症例から学ぶ看護の実際

1 甲状腺(甲状腺がん)  

2 口腔(舌がん)  

3 永久気管孔(喉頭がん)  

4 放射線治療(上咽頭がん)  

5 エンドオブライフ(甲状腺低分化型乳頭がん)

【第8章】家族への支援

1 家族の理解  

家族とは

患者にとっての家族を把握する

頭頸部がん罹患による家族への影響

2 家族支援における看護師の役割  

いろいろなかたちの情報提供

身体的・精神的支援

役に立っていると感じるためのケア参加をうながす

まとめ

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書籍情報

  • ISBN:9784840475198
  • ページ数:264頁
  • 書籍発行日:2021年3月
  • 電子版発売日:2021年6月23日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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