改訂にあたって

2021年秋季増刊号（以下、前号）に続いて、22年秋季増刊号についても、編著者として携わることとなりました。前号の「はじめに」に目を通してみると、医療界に厳しい影響を及ぼすようになった要因として、「経済」について言及しておりました。その後、先の見えないコロナ禍において、病院経営はますます厳しさを増すようになりました。コロナ患者さんの診療と並行して一般診療も継続していかなければならない現場は疲労困憊しています。それでも地域住民の健康を守る使命を有する病院を潰すわけにはいきません。

本書は、コロナ禍において毅然と患者さんを守り、部下を守り、病院を守っておられる看護管理者のみなさま方に、いち早くPostコロナを意識した管理に目を向けていただきたくて、上梓致しました。第1章「Postコロナ時代の病院経営」では看護部門の双肩にかかっている根拠を述べ、急性期入院医療においてはDPC/PDPSというマネジメントツールの活用について解説しました。第2章では、「病院経営の現状と試される看護管理の質」というテーマで、厳しい病院経営に看護部として貢献できることは何か。また、看護管理者に何が求められるのか。生産性を上げることから、看護管理者の教育まで幅広くトップマネージャーの方々に率直に語っていただきました。第3章は前号に引き続いて、問題解決に役立つツールとしてピボットテーブルの活用法を紹介しています。サンプルデータと事例を通じて、より実践的な内容になっています。第4章は収益性向上の2つの方法「生産性アップと良いコストダウン」として、それぞれ特徴的な取り組みをされている施設からのご報告をいただきました。飯塚病院では看護DXとしてRPAを導入したことによって、目を見張るような効果が得られたこと。名古屋大学医学部附属病院における適切なマネジメントが行える看護管理者の育成が、病院の事業利益率の向上につながっていること。鹿児島大学病院における特定行為研修修了看護師の活用や、夜間の看護補助者の業務改善の取り組みと看護補助者との協働体制の推進の具体的な事例報告。手稲渓仁会病院における高齢者への看護ケアの向上が病院の収益性アップに繋がったことと、地域との連携強化。近森病院のベッドの状況を時間軸でとらえ看護師の労働生産性を高める工夫。NTT東日本関東病院で取り組んでいる記録の質および収益性の向上に有益なクリティカルパスの活用等々、いずれもそれぞれの病院で成功している事例であり、管理者のみなさまに熱く響くものがあるかと思います。そして、第5章ではこれからの病院経営に不可欠な看護部門のIT、DX、AIへの挑戦について総括しました。

本書が前号に引き続き、看護管理者のお役に立てることを願っております。また、本書と一緒に前号も活用していただければ、管理者のみなさまのお悩み解決に十分な効果を発揮してくれることと確信しています。

2022年10月

鹿児島大学病院 医療情報部 特任教授・部長
宇都 由美子