• ページ数 : 152頁
  • 書籍発行日 : 2023年10月
  • 電子版発売日 : 2023年9月14日
2,970
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商品情報

内容

【医療事故調査制度を改めて正しく理解する】
2015年に施行された医療事故調査制度だが、今なお、本制度を正しく解釈しない、不適切な対応をしている病院が多い。今改訂では、参考として編著者施設における死亡症例管理システムを紹介、医療法改正に伴う制度改正や、定義が混乱している用語を整理した。

序文

第3版 はじめに

医療事故調査制度(以下、「本制度」という)制定前から、医療の安全に関する国民の不信が著しかった。医療事故発生防止が最重要であるが、最善の努力をしてもゼロにはできない。医療事故が発生した場合には、適切に対応する必要がある。事故発生の状況、要因、原因の調査が重要であるが、医療界および医療機関における事故調査体制は不十分であり、適切な医療事故調査体制構築が急務であった。

この考え方に基づいて、厚生労働科学研究費補助金地域医療基盤開発推進研究事業「医療事故発生後の院内調査の在り方と方法に関する研究(研究代表者 飯田)」(2010.4─2012.3)を実施し、その成果を基に、本書『院内医療事故調査の指針』(初版)を出版した(2013.11)。

その後、第6次医療法改正で本制度が制定され(2014.6)、2015年10月施行が決まった。本制度のガイドラインとも言える政省令が、やっと施行の半年前に公布された(2015.5)。これを反映して、『院内医療事故調査の指針 第2版』(2015.8)を出版した(出版経緯の詳細は、初版および第2版「はじめに」を参照)。

本制度制定時の参議院付帯決議(2年後の見直し規定)に基づき、医療法施行規則が改定され、管理者に全死亡例の把握が義務化された(2016.6)。筆者は、医療界、医療機関、医療従事者として自立・自律すべきと学会、研修会で警鐘を鳴らし、当院では、義務化前から全死亡例を管理者が把握するシステムを構築していた(第2章 3.死亡症例管理システムの事例報告)。

しかし、管理者の本制度の対象事例の判断が不適切な医療機関が多く、医療機関の本制度への対応に関する問題が指摘された。適切な判断を促進するために学会で報告し、研修会を開催し、その成果として事例の判断に関して詳細に解説した『院内医療事故調査の考え方と進め方』(じほう)(2017.4)を出版した。

本指針第2版出版後、8年弱経過したが、今なお、本制度を正しく解釈しない、不適切な対応が多い。第3版出版の趣旨は、院内事故調査体制を構築し、事例の適切な判断と院内事故調査実施体制構築および実施を支援することである。

第2版でも、用語の定義を明確にしたが、いまなお、“事故”、“事故調査”を明確に定義しない、あるいは、定義が混乱している。第3版では、定義をさらに明確にし、新たに表を作成し、理解を容易にした。

本指針の目的は、本制度における院内医療事故調査を円滑に実施することである。しかし、患者に健康障害が発生あるいは死亡直後には、本制度の対象事例となるか否かは判断できない。したがって、管理者が、本制度の対象事例(提供した医療に起因する、予期しない死亡あるいは死産)と判断するまでは、一般的な事故の定義(予想外の患者への障害)として対応せざるを得ない。第6章1節、2節、第7章1節(図7─1の最初)、第8章1節(図8─1の最初)における“事故”がそれである。本事例の対象事例と判断した後は、本制度における“医療事故”として対応する。蛇足ながら、読者が明確に意識し、混乱しないことを期待する。

本指針を参考に、自組織の特性を勘案して、適切に対応できる体制を構築していただきたい。また、病院団体、学会、職能団体、医療事故調査・支援センター、行政などの関連団体が支援の際に本書を参考にしていただくことを期待する。


令和5年5月

公益社団法人全日本病院協会
医療安全・医療事故調査等支援担当委員会委員
公益財団法人東京都医療保健協会
情報・質管理部長
医療の質向上研究所 研究員
練馬総合病院   名誉院長
飯田修平

目次

第1章  医療事故調査に関する検討(飯田修平)

1 .医療事故とは

2 .医療事故調査と医療事故対応

3 .安全管理(セイフティマネジメント)と危険管理(リスクマネジメント)

4 .医療事故調査における医療行為の適切性の検討

5 .医療事故調査に関する検討の経緯

6 .医療事故調査の目的

7 .医療事故調査の種類

8 .医療事故報告の種類

第2章  医療法・医療法施行規則改正に伴う医療事故調査制度改正への対応(飯田修平・小谷野圭子)

1 .管理者の責務

2 .特定機能病院の組織統治

3 .死亡症例管理システムの事例報告

第3章  本指針の対象(長谷川友紀)

1 .本指針の利用者は誰か?

2 .院内事故調査の対象はどのような事例か?

3 .医療事故調査制度の対象はどのような事例か?

第4章  用語の定義(飯田修平・小谷野圭子)

1 .医療

2 .事故

3 .医療事故

4 .医療に起因する

5 .予期しない

6 .医療過誤

7 .ヒヤリ・ハット事例

8 .インシデント報告(偶発事象報告)

9 .アクシデント報告(事故報告)

10.エラー・過誤

11.リスク

12.安全

13.ヒューマンエラー

14.ヒューマンファクター

15.ヒューマンファクターズ

16.信頼性

17.合併症

18.併発症

第5章  医療事故調査・支援センターへの報告はどうするか?(飯田修平)

1 .医療事故発生報告

2 .医療事故調査報告

第6章  事故調査の概要(藤田 茂)

1 .事故発生直後

2 .事故発生後24時間以内

3 .医療事故調査制度に該当する事案と判断した場合

4 .1週間以内

5 .2週間以内

6 .1ヶ月以内

7 .45日以内

8 .6ヶ月以内

9 .医療事故調査制度による医療事故調査の終了後

10.1年後

第7章  事故発生直後および24時間以内の対応(藤田 茂)

1 .主治医、執刀医、現場の看護師等のすべきことは?

2 .医療安全管理者のすべきことは?

3 .病院長のすべきことは?

4 .緊急対策会議で検討することは?

5 .警察署への届出の必要性の判断は?

6 .医療事故調査・支援センターに報告すべき事案は何か?

7 .病理解剖の要否の判断は?

8 .どこに(誰に)報告するか?

9 .警察署に報告する前にすべきことは?

10.遺族へどのように話すか?

11.解剖を勧めるべきか?

12.死亡診断書はどのように書くか?

第8章  院内事故調査委員会の設置(藤田 茂)

1 .設置の是非をどのように判断するか?

2 .いつ開催するか?

3 .誰が参加するか?

4 .外部の専門家に求められる要件は?

5 .外部の専門家を招へいするにあたってあらかじめ決めておくべきことは?

6 .何をするか? 何をしてはいけないか?

7 .事務局に必要な機能は?

第9章  事情聴取(永井庸次・藤田 茂)

1 .何のために事情聴取するか?

2 .誰が事情聴取するか?

3 .誰に事情聴取するか?

4 .いつ事情聴取するか?

5 .どこで事情聴取するか?

6 .何を事情聴取するか?

7 .どのように事情聴取するか?

8 .遺族に対してどのように事情聴取するか?

9 .発言や記録時間の食い違いをどうするか?

10.事情聴取における問題点は何か?

11.事情聴取の回数は?

12.診療記録で何を確認するか?

第10章 原因分析(永井庸次・飯田修平)

1 .どの分析手法を使うか?

2 .原因分析の問題点は?

3 .原因究明と責任追及は同じか?

第11章 対策立案、改善、評価(永井庸次・飯田修平)

1 .どのような改善策があるか?

2 .どのような方法で改善策を立案するか?

3 .対策分析表(メリット・デメリット分析表)をどう使うか?

4 .改善策をどのように評価するか?

5 .どのような改善策が不適切か?

6 .手順の不遵守はどうして起きるか?

7 .手順の不遵守をどう抑えるか?

8 .どのように検証・評価するか?

第12章 診療記録の整備(永井庸次)

1 .診療記録に何を記載すべきか?

2 .問題とされる記載・未記載は?

3 .診療記録の追記・修正時の注意点は?

4 .診療記録の内容に整合がない場合どうするか?

5 .医療事故発生時、診療記録開示請求時の診療記録の点検点とは?

第13章 事故報告書の作成(安藤敦子)

1 .誰が書くか?

2 .誰宛に書くか?

3 .書式は?

4 .記載時の注意点は?

5 .報告書の公表の範囲は?

6 .遺族が報告書を閲覧する際に気を付けることは?

7 .マスコミやホームページでの公表の際に気を付けることは?

第14章 遺族への対応(安藤敦子)

1 .誰が対応するか?

2 .説明・謝罪の方法は?

3 .どのような継続支援が必要か?

第15章 当事者の職員への対応(安藤敦子)

1 .どのような継続支援が必要か?

第16章 警察署への対応(森山 洋)

1 .警察署への届出の判断は?

2 .警察署へ届け出る前にすべきことは?

3 .警察署への対応の組織としての注意点は?

4 .取り調べを受ける際の当事者の注意点は?

5 .司法解剖になった時の注意点は?

第17章 マスコミへの対応(森山 洋)

1 .マスコミへの公表の基準は?

2 .マスコミから取材申込があった場合どうするか?

3 .職員に対して何をすべきか?

第18章 その他(森山 洋)

1 .どのような弁護士の協力を得るべきか?

2 .弁護士の役割は?

3 .事故調査で困った場合はどうするか?

4 .事案解決後に必要な対応は?

5 .賠償保険で気を付けるべき点は?

6 .消費者庁からの問い合わせにどう対応するか?

第19章 医療事故調査の前提となる、安全に関する考え方の提言(飯田修平・長谷川友紀)

1 .医療は安全か?

2 .重大な医療事故にどう対応すべきか?

3 .なぜ医療事故調査が円滑にいかないのか?

4 .どうしたら医療事故を見過ごさないか?

5 .医療事故調査の意義は何か?

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書籍情報

  • ISBN:9784840482196
  • ページ数:152頁
  • 書籍発行日:2023年10月
  • 電子版発売日:2023年9月14日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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