はじめに

本書籍は看護管理者向けの雑誌『ナーシングビジネス』で、私が企画した2本の連載を元に再構成し、加筆修正したものです。書籍化にあたり、事例ご執筆者の皆さまには掲載を快くご了承いただき、本当にありがとうございました。紙面の都合で連載原稿すべてを掲載できなかったことが、心残りでもあります。

第1章から第5章は連載「できる看護管理者のシゴトのひみつ」を元とし、主として私が院内研修などでお邪魔させていただいた病院の看護師長さん（当時）に、自部署のマネジメントの成功事例を挙げていただきました。日々現場で行われている「看護師長のマネジメント」を振り返り、考えたこと、アクションを可視化していただいたのです。現場で日夜奮闘されている皆さまの管理実践は、どれもすばらしいものばかりでした。提供いただいた事例に対して、私の拙い解説とマネジメントの意味づけを受忍いただいたことにも、改めて深くお礼申し上げます。

本書に掲載するマネジメント事例は、どれも他院の看護管理者が読んで参考になり、現場での問題解決に役立つものばかりです。また、“できる看護管理者” のマネジメントの実態を、通常は見えない思考の部分も含めて事細かに書いていただいています。その一つひとつを、看護管理者がこれまで学んできたマネジメント理論や思考法、リーダーシップ理論に紐づけ、意味づけしながら解説させていただきました。それは私にとっても楽しく、気づきや学びの多いものでした。

また、第6章の元となった連載「次世代管理者（副師長・主任・リーダー）をどう育成するか　問題解決力を高める」で事例を紹介いただいた病院では、次世代看護管理者の弱いところや足りない部分など、自院看護部の特徴を明確にとらえられています。また、目指す管理者像を明確にしたうえで育成に取り組まれているので、現状とのギャップ、問題や目標に対する分析がしっかりできています。改めて各施設の取り組みを考察してみると、「次世代管理者教育は早ければ早いほど効果が高い」ということが浮かび上がります。卒後10年前後のリーダークラスからマネジメント教育を定期的に行うことで管理者としてもレディネスが高まり、学びが即、現場の問題解決に活かされていきます。若い世代の柔軟性と吸収力に期待し、ぜひラダー教育にマネジメント研修を早い段階から導入されることを検討いただきたく思います。

本書籍は、看護管理者の事例バイブル集ともいえます。読者の皆さまには、ぜひとも大いに活用いただき、ご自身のマネジメントの質を高めていただきたく思います。

2024年7月　

河野秀一