改訂2版 ねころんで読めるてんかん診療

  • ページ数 : 216頁
  • 書籍発行日 : 2024年9月
  • 電子版発売日 : 2024年8月30日
¥3,960(税込)
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商品情報

内容

【「ねこてん」、8年ぶりに待望の改訂!】 てんかんは有病率1%の「ありふれた病」。その診療を担う多くは非専門医で、診療科も多岐にわたる。患者は小児から高齢者まで幅広く、脳波の判読は難しく、薬剤の処方は悩ましい。そんな医師たちに愛読された本書が、満を持して改訂! 2017年分類での用語改訂に準拠し、大幅に「薬剤」解説を追加。EpiPick日本語版も紹介し、治療や生活なども最新知見にアップデート。ねころびながら、てんかん診療の最前線がわかる!

序文

改訂2 版はじめに

「教育とは炎を燃え上がらせることであって、入れ物を満たすことではない」

  ―ソクラテス(紀元前470 年頃- 紀元前399 年)

てんかん診療は楽しい

医師になりたての頃は、脳神経外科研修医として生き甲斐を感じていた私でしたが、助けられない患者や大きな障害を遺す患者も経験するようになり、年々、つらい気持ちが蓄積されるようになりました。さらに、高度な手術を難なくこなす先輩を見ていくうちに、自分には脳神経外科医という仕事は到底無理なのではないだろうか、と思うようにもなりました。こうした私の悩みを察してくれたかどうかは別として(笑)、恩師のご高配により、25 年前から、てんかんを専門的に診療する機会を得ることになりました。そこからの毎日は、楽しくて仕方ありませんでした。さらに2010 年、日本で最初の「大学病院てんかん科」も創設でき、私の幸せは絶好調に達したのです。こうして2016 年に出版されたのが、本書の初版です。なぜ、てんかん診療がこれほどまでに楽しいのか。当時に感じた気持ちは、今も大きく変わってはいません。

たとえば、初診の外来診療。患者や家族はドキドキですが、私も緊張しています。「はじめまして」のあいさつから、「どうして当科への来院を決めたのですか」と続き、「いま、病気のことや生活のことで何が一番お困りですか」という質問に入ります。患者の悩みを、自分や自分の家族のこととして感じられるようになったら大成功。きっと、患者も私に信頼をおき始めているでしょう。発作、それも小さい発作の聴取に20 分はかけます。そのあとに、発作以外の悩みを聞くのに20 分超。そうして、長年、抗てんかん発作薬を服用してきた方が、てんかんではないと判明する場合もありますし、てんかんと診断されても病態を把握して、次にとるべき診療ステップを提示することができます。薬を変更し発作がピタリと消える方も少なくありません。自分の専門的な知識が、こんなにも劇的に患者や家族の人生を変えることができるのかと感激できるのです。楽しくないわけがありません。

もちろん、てんかん患者の3 人に1 人は、外来診療では限界があります。その時には悩まずに入院検査です。入院施設を持たない場合は、どうぞ専門施設にご紹介ください。私が外来で下したとりあえずの仮診断が、入院精査後の症例検討会でひっくり返るのは日常茶飯事です。これがなんと快感か。退院後の初回の診察時には、ニコニコしながら「入院して良かったですね! 私ひとりの外来診察では無理でしたよ」と説明するのです。楽しくないわけがありません。

この「てんかん診療は楽しい」という気持ちを誰かに伝えたく、いてもたってもいられずに執筆したのが本書の初版でした。

10年前には戻りたくない

とはいえ、医学は、どんな領域でも日進月歩です。初版刊行から8 年が経過してみると、当時の記述がいかに時代遅れになってしまったのかを実感します。

たとえば当時、新薬のエース「トリプルL(エル)」は、一部が登場したばかりで使用経験も浅かったのです。診療ガイドラインでも、焦点てんかんならカルバマゼピン、全般てんかんならバルプロ酸が第一選択という時代でした。ですから、本書の初版では「焦点てんかんか全般てんかんかの見極めがきわめて大事」であり、正しく診断されてから、カルバマゼピンからバルプロ酸へ変更したり、あるいは逆にバルプロ酸からカルバマゼピンに変更しただけで発作が消失し「めでたしめでたし」という症例を多数、紹介したのです。

そこで今回は、3 章「てんかんと薬」を一番大きく改訂しました。新薬のなかった時代に戻ることは、てんかん診療では困難です。10 年前どころか、5 年前にも戻りたくありません。てんかん専門医たちが現在、新しい抗てんかん発作薬をどのような方針で使っているのかを知るためだけでも、本書は役に立つと思います。2018 年に改訂された診療ガイドラインの内容も詳しく説明しています。それだけではありません。診療ガイドラインには間に合わない新しい情報、すなわちエキスパートオピニオンについても解説しています。

さらに、2024 年6 月に国内で製造販売が承認されたばかりの「超新薬」に関する情報も、校了ギリギリの段階で追加することができました。

「変わらないこと」や「変わってはいけないこと」

医学が進歩しても、てんかん診療の基本姿勢に変わりはないであろうと思います。

たとえば、焦点てんかんか全般てんかんかの見極めが大事なことは、双方に有効な新薬が登場した現在でも大切です。今回の改訂でも、カルバマゼピンとバルプロ酸を互いにスイッチして幸せになった症例は、あえて残しているのはそのためです。

ひとりの患者さんには、初診ではとくに時間をかけることは、てんかん診療ではもっとも大切なことだと思います。発作のことだけでなく、生活全般に関する悩みを聞き出すことも大切です。外来で解決できない問題は、てんかん専門の入院精査を実施することが大切です。ひとつの診療科で解決できない問題は別の専門医に相談することも大切。医師が解決できない問題でも、看護師や心理職、薬剤師やソーシャルワーカーが解決してくれることもあります。こうしたメッセージは、時代が流れても「変わってはいけないこと」ですから、改訂版ではより強調する形で執筆しました。

「てんかん診療は楽しい」を再び

てんかん診療は、外来診療でも入院精査でも外科治療でも、患者の未来を明るく変えることができます。てんかん学会の専門医のみならず、非専門医であったとしても、ちょっとした知識で患者を幸せにすることができます。患者の数が極めて多いのがてんかんです。てんかんを専門とする学会には所属していないという医師であっても、抗てんかん発作薬は日常的に処方されていると思います。そのような医師にこそ、本書を届けたいと思います。さらに、てんかんを専門的に診療されているハイスペックの専門医たちにも、本書を手に取って眺めていただきたいと思います。周囲の心配や反対にもかかわらず「大学病院てんかん科」の看板を掲げた私というひとりの男が、これまで何を考えてきたのかを知ることは、プロ中のプロにとっても、きっと人生観の一部を変えてくれると思うのです。そうして専門医たちにとっても、ますますてんかんについて勉強していただきたいと思うのです。本書の改訂の目的は、てんかん診療のすべてを盛り込むことではありません。てんかん診療について、もっと勉強したくてウキウキしてもらえたらと願っているのでした。


2024年7月

東北大学大学院医学系研究科てんかん学分野教授
東北大学病院てんかん科科長/てんかんセンター長
中里 信和

目次

1章 てんかんと問診−患者と向き合う、患者の話を聴く

1 自分や家族が「てんかん」になったとき

2 てんかん診療の初回の設定

3 発作症状の聴取

4 生活歴はなぜ必要か

2章 診断と検査1 てんかん診断に脳波は必要か?

2 てんかん診断におけるMRI

3 てんかんを「脳波抜き」で診断する方法

4 人生を変える「ビデオ脳波モニタリング」

5 診断が一段落したら患者に伝えること

3章 てんかんと薬

1 てんかん治療のゴール設定

2 ガイドラインとエキスパートオピニオン

3 ブリーバラセタム―新薬のヒーロー、レベチラセタムを超える可能性

4 カルバマゼピン―焦点てんかん薬の「古典的英雄」

5 クロバザムとクロナゼパム―「クロウト」好みのレスキュー薬

6 エトスクシミド―「欠神発作」専門の仕事人

7 フェンフルラミン―ピペットで注入する専門性の高い「超」新薬

8 ガバペンチン―効果も副作用も、羽根毛のように軽い補助薬

9 レベチラセタム―てんかん診療の歴史を塗り替えたヒーロー

10 ラコサミド―名優への道を歩む「新薬のプリンス」

11 ラモトリギン―悲しみのヒロインから、大活躍するヒロインへ

12 フェノバルビタールとフェニトイン―最古参の長老たち

13 トピラマート―医師の技量が問われる「諸刃の剣」

14 バルプロ酸―全般てんかん薬の「古典的英雄」

15 ゾニサミド―トピラマートと同様に、医師の技量が問われる「諸刃の剣」

16 第二の薬剤を選ぶ、人生を考える

17 抗てんかん発作薬との「別れ方」

4章 てんかんと手術

1 てんかん外科への迷信:術前診断編

2 てんかん外科への迷信:診療連携編

3 専門施設に紹介する勇気

5章 てんかんと生活

1 思春期の患者と向き合う

2 妊娠への備えは初診時から

3 妊娠、出産、授乳と育児の応援

4 てんかんでも明るい老後

5 運転免許対応へのヒント

6 「てんかんのリハビリテーション」を知っていますか? 

7 医師よ弱くなれ! 患者よ強くなれ!

巻末資料てんかん情報を扱う代表的なウェブサイト

筆者おすすめの参考図書

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書籍情報

  • ISBN:9784840485197
  • ページ数:216頁
  • 書籍発行日:2024年9月
  • 電子版発売日:2024年8月30日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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