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高次脳機能障害・発達障害・認知症のための邪道な地域支援養成講座

  • ページ数 : 130頁
  • 書籍発行日 : 2017年6月
  • 電子版発売日 : 2022年2月11日
2,640
(税込)
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商品情報

内容

邪道だけど読んだ後から役に立つーポジティブな行動支援の考え方

高次脳機能障害、発達障害、認知症は脳の問題で頭の働きが低下していることが共通の病態です。
本書では、最新の脳研究の知見と臨床経験に基づいて、これらの疾患グループに共通の病態について、そしてどの疾患にも共通して役に立つ、個別ニーズに対応した、ポジティブな行動支援や治療的環境づくりについて、漫画を交えて、世界一わかりやすく解説します。
3つの疾患の診断・分類上の違いが知りたい、苦手な脳機能解剖について理解したい、というニーズに対しても、病院や地域で対象者に関わるあらゆる職種の方や家族の方にとっての支援の根拠やヒントとして、また疾患の理解や実践の振り返りのために、本書はきっと役に立ちます。

※本製品はPCでの閲覧も可能です。
製品のご購入後、「購入済ライセンス一覧」より、オンライン環境で閲覧可能なPDF版をご覧いただけます。詳細はこちらでご確認ください。
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序文


本書は邪道な養成講座シリーズの第二弾です.

今回は,高次脳機能障害・発達障害・認知症に対する共通対応を中心に,医療スタッフのみならず,当事者・家族にもわかりやすく,地域支援に携わるすべての人に役立つ知識を解説しています.

本書は,3つの点において邪道だと考えています.まず一つ目は,高次脳機能障害・発達障害・認知症をひとくくりに捉えていること,二つ目は,脳機能解剖を,動物脳とヒト独自の脳の相互作用という観点で捉えていること,そして最後は,マンガであることです.真面目な人にはこのうちの一つも許容できないかもしれません.でも役に立つ!

邪道な点の一つ目,「高次脳機能障害・発達障害・認知症をなぜひとくくりに捉えるのか?」に関しては,本編の第1回と第2回,および特別編第1.5回と第2.5回に詳しく解説してありますがここでも簡単に述べましょう.高次脳機能障害・発達障害・認知症は,「脳の問題によって頭の働きが低下している」点は共通であり,その病態はオーバーラップしています.経緯がはっきりしていた場合なら確定診断名をつけることはできるかもしれません.でも,全体の診断名がついたとしても,その人のもつ一つひとつの問題が,その診断名で説明がつくものなのか,それとも,生まれつきのものなのか,別の脳損傷のせいなのか,年のせいなのか(若さゆえか老いのせいか),精神的なものなのか…なんて,本当のところは絶対にわからないでしょ? ある一つの疾患に対してしか役に立たない考え方や支援方法を,その人のもつ問題のすべてにあてはめることは危険であることはちょっと考えればわかります.よって,問題の原因が何であっても役に立つ共通対応を中心に支援を考えていくことが重要になります.そのために,本書は3つの疾患グループに対する共通対応を中心に解説してあります.それだけでなく,本書は,「ある一つの問題に対してしか役に立たない考え方や支援方法」は書いていません.注意の問題にしか使えない支援方法や,記憶の問題にしか役に立たない考え方や,コミュニケーションに問題がない人にとっては意味のないコミュニケーション訓練などは載せていません.本書が扱っているのは,感情の問題を改善させるための支援環境の調整方法や,当事者への理解が深まる記憶障害の捉え方や,注意機能の訓練にもなるコミュニケーション方法などです.一つの問題に対するアプローチが,それ以外の問題に対しても相互によい影響を与え,全体の底上げにつながるような,そのような手法を選んで重点的に解説しています.

本書が邪道である点の二つ目,「脳機能解剖を,動物脳とヒト独自の脳の相互作用という観点で捉えていること」は,本編第3回,特別編第3.5回目以降で語られます.ここでも簡単に述べておきます.脳機能解剖の話の王道は,前頭葉はこれこれな働きをしているとか,錐体路の走行はこうなっているとか,そうした話であると思います.でも,脳の各所はそれぞれ相互にリンクして機能している(ネットワークがある)ので,局所の機能を別々に覚えていっても,高次脳機能障害・発達障害・認知症の病態は理解できません.問題があるのは一か所だけではないので.この相互リンクを理解するためには,局所の機能解剖だけではなく,もっと大きな脳全体のネットワークで脳機能を理解することが重要です.その相互作用を捉える王道のアプローチとして,脳の階層的な構造を進化の古い順に,古皮質・旧皮質・新皮質の三層構造で捉えて,その相互作用を考えるモデルがあります.本講座は,三層ではなく,人間以外の動物にもある脳の部分(主に古皮質・旧皮質)と,ヒト独自の脳の部分(新皮質のうちの連合野)の二つに分けて解説しています.それが,本講座の脳の擬人化キャラクター,ゆきしろに乗ったあいかちゃんです.動物脳を擬人化(擬犬化)したゆきしろと,ヒト独自の脳を擬人化したあいかちゃんを別々の人格(犬格?)をもったキャラとして,お互いにやり取りをさせたら,脳内の相互作用を理解しやすいのではないかと思って,そうしました.本講座のように,脳機能を二つのシステムの相互作用で説明するモデルは,実は王道です(最もみなさんになじみがあるであろう言い方に近似すると,「感情(本能)vs理性」ではないかと思います).本書の2システムモデルは,脳疾患の病態説明のみならず,経済行動学などの応用心理学の世界でも広く用いられているアプローチです.邪道だとしたら,擬人化(擬犬化)した点だけですので,安心してくださいw

邪道な点の最後は,マンガであることです.マンガにしたのは,難しい脳の話を,少しでもわかりやすく感じられるようにと思ったからです.マンガで勉強するのはアリなのか? と真面目な方は思われるかもしれません.医療従事者には,成書や論文を読んで勉強しないといけないのではないかという不安があることには同意します.その点は大丈夫です.本書は,「【月刊】地域リハビリテーション」誌に連載されていた総説論文の単行本です.少なくとも,本編の第1回から第12回までは,医学中央雑誌(医中誌)で検索するとヒットしますので,参考文献にしていただいても大丈夫ですよ! イラストがあるから気づきにくいだけで,本書の文字数は実は一般書籍並み,情報量的にはむしろ超濃密です(その点を偽装するためにあいかちゃんとせんせいの対話形式のマンガにしてあるといえますw).それでもマンガは不安だ! 信用できない! という方のために,特別編は文章を中心に構成し,参考文献・引用文献がはっきりわかるように書いてあります.是非孫引きして,最新の知見がマンガ化されていることに驚いてくださいw

高次脳機能障害・発達障害・認知症について極めようという方にも,これから勉強してみようという方にも,本書が地域支援に携わる皆さんのお役に立てば幸いです.


2017年5月

粳間 剛

目次

【本編】

養成講座第1回  高次脳機能障害・発達障害・認知症の共通点を見よう

養成講座第2回  病歴の違いがそのまま各疾患群の違い

養成講座第3回  脳機能解剖:ここだけはおさえよう

養成講座第4回  認知機能の評価の最初は表情・しぐさ等の様子の評価から

養成講座第5回  感情と体調は切り離せない.環境とも切り離せない

養成講座第6回  問題行動への共通対応:「ポジティブな行動支援」

養成講座第7回  注意機能・注意障害の捉え方と対応

養成講座第8回  注意や感情の観点から遂行機能を捉える―アイオワギャンブル課題を考察して

養成講座第9回  つながりを司る人間独自の脳:連合野─遂行機能の話②意味・理由づけ・連合学習

養成講座第10回 支援を考えるための記憶の捉え方

養成講座第11回 言語とコミュニケーション(前編)─逆向連合/対称性バイアスと言語の決定不十分のテーゼ

養成講座第12回 言語とコミュニケーション(後編)─Looping/Dipping,メラビアンの法則,ガヴァガーイ問題等

【特別編】

養成講座第1.5回  診断名は本当に正しい? 専門医のADHD診断例の中にも高次脳機能障害が混じるケース等

養成講座第2.5回  環境の違いで大違い─実例編:健常な高齢者と若年の脳外傷を比べる

養成講座第3.5回  できるだけシンプルな次元から,問題を捉えようとするべき

養成講座第4.5回  動物脳が司る運動─motor─の話

養成講座第5.5回  Treatable dementiaを思い出そう!感情と体調の話,アレコレ

養成講座第6.5回  問題行動が起きるのは何のため?目的に注目した支援

養成講座第6.75回 問題行動改善に「罰」は有効なのか

養成講座第7.5回  上手に注意のコントロールをしよう.モードとタスク設定の話

養成講座第8.5回  「身体⇔感情」,双方向性の相互影響の話

養成講座第9.5回  直感を暴走させないための考え方でインフルエンザ診断キットも理解できる

養成講座第10.5回 財布を自分で置き忘れたのに家族が盗んだと言っている患者さんの例

養成講座第11.5回と第12.5回一括 対称性バイアスの復習と,そこから一歩進んで考える

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書籍情報

  • ISBN:9784895906029
  • ページ数:130頁
  • 書籍発行日:2017年6月
  • 電子版発売日:2022年2月11日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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