相談援助 保育相談支援

  • ページ数 : 248頁
  • 書籍発行日 : 2014年5月
  • 電子版発売日 : 2021年11月24日
2,750
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商品情報

内容

子どもの成長の課程において,本人やその保護者の相談相手となり,支援を行うのは,保育関係者にとって必須の技術となっている.本書では,そのコミュニケーションの技術や社会制度について,具体例を交えながら解説する.保育士養成課程「相談援助」「保育相談支援」2つの科目のテキストを1冊にまとめて,内容の連携を図っている.

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序文


子どもが幸せに育つうえで大きな要因の一つは親であり,親のおかれている環境の影響は大きいものである.近年,ひとり親世帯や共稼ぎ世帯などの増加で保育所の待機児童が社会問題となっている.さらに,核家族化が進み,近隣とのつながりが薄くなり,育児の伝承や支援が受けにくくなってきていることから,育児の孤立化が問題となり,子育て支援の体制づくりが強く求められてきている.

子育て支援策として国は1994年に『エンゼルプラン』を皮切りに,2010年には子育ては家庭だけではなく社会全体で支える仕組みが必要であると『子ども・子育てビジョン』を施行した.さらに,保育の量的拡大や,教育・保育の質的改善を目指して『子ども・子育て支援新制度』を2015年4月の施行にむけて準備を進めている.

子どもを取り巻く家庭環境や社会環境が大きく変化するなか,保育の中心を担う保育士に寄せる社会の期待が大きくなり,2001年には『児童福祉法』が改正され,保育士の資格が法定化された.保育士は専門知識と技術をもって,子どもの保育に加え,保護者への指導援助を行うことが明記された.

さらに,2008年には,幼児教育の重要性から『幼稚園教育要領』と『保育所保育指針』の改定があった.子どもの「生きる力」を高めるための“健康”“人間関係”“環境”“言葉”“表現”の5領域の強化と,保護者に対する支援が共通のねらいである.

保護者支援のポイントは,家族を取り巻く背景(少子化,都市化,核家族化,ひとり親世帯,家庭経済の動向など)を理解し,保護者と保育士とのよい関係をつくることである.

しかし,今日では,育児中の親との接触が少ない学生が多いことから,各章ごとに事例を取り入れて具体的に理解しやすい内容となるように努めた.

本書は,家族が抱える多様な問題に保育士が鳥ちょうかんてき瞰的(鳥が高い所から全体を大きく眺め渡すこと)な視野でとらえ,支援できるように,ソーシャルワークの基礎を「相談援助」で学び,その応用として「保護者支援」が学べるように1冊に集約されている.国から提示された内容も盛り込みながら,総合的にソーシャルワークを学ぶことができるように考慮した.

本書が皆様の学習や実践に役立ち,子どもと親の幸せにつなげていただけたら望外の幸せである.

末尾ではあるが,本書の刊行に際して,終始われわれをご支援くださった中山書店の鈴木幹彦氏,佐藤貢氏をはじめ関係諸氏にこの場を借りて感謝の意を表したいと思う.


2014年3月

札幌大谷大学短期大学部 保育科 准教授
小橋明子

目次

【相談援助】

1章 相談援助の概要

1-1 相談援助の理論

1 社会福祉実現の方法としての相談援助

2 相談援助の理論

3 相談援助の体系

1-2 相談援助の意義

1 法的な根拠を背景にした実践としての意義

2 支援を必要とする人々のニーズに応えるものとしての実践の意義

3 権利擁護としての相談援助の意義

1-3 相談援助の機能

1 多様な相談援助の機能

1-4 相談援助とソーシャルワーク

1 ソーシャルワークとは何か

2 ソーシャルワークの体系

3 ソーシャルワークの歴史

4 ソーシャルワークの価値と理念

5 ソーシャルワークとしての相談援助

1-5 保育とソーシャルワーク

1 保育士に求められる相談援助

2章 相談援助の方法と技術(1)

2-1 相談援助の対象

1 相談援助の対象

2 相談援助における対象理解の仕方

2-2 相談援助の展開過程

1 援助における過程

2 展開過程の意義

3 ソーシャルワークの展開過程

3章 相談援助の方法と技術(2)

3-1 専門的技術を学ぶ前に

1 技術とは何か

2 援助者の基本姿勢

3-2 相談援助のための基本的技術

1 相談援助における面接

2 基本的面接技術:コミュニケーション技術の理解と活用

3 対象者理解のためのアセスメントツールの活用

3-3 相談援助のための実践アプローチ

1 実践アプローチとその技術

3-4 実践の質を高めるための方法

1 援助者の力量を高めるための方法

2 職場環境の整備

4章 相談援助の具体的展開

4-1 計画・記録・評価

1 相談援助における計画

2 相談援助における記録とその活用

3 相談援助における評価の実施

4-2 関係機関との協働

1 協働とは

2 保育士と協働する関係機関

3 さまざまな分野の専門職

4-3 多様な専門職との連携

1 連携の構成要素と展開過程

2 連携における留意点

4-4 社会資源の活用,調整,開発

1 社会資源とは何か

2 相談援助における社会資源の活用

3 社会資源の調整,開発

5章 事例分析

5-1 虐待の予防と対応に関する事例分析

1 保育士の地道なアウトリーチによって援助につながったケース

2 虐待への対応

5-2 障害のある子どもとその保護者への支援に関する事例分析

1 苦情対応をきっかけに専門機関へとつながったケース

5-3 ロールプレイ,フィールドワークなどによる事例分析

1 援助場面のロールプレイ

2 絵本を活用してピアサポートグループ形成したケース

【保育相談支援】

1章 保育相談支援とは

1-1 保護者に対する保育相談支援の意義

1 保育相談支援の導入経過

2 保育士資格の法定化と業務について

3 保育相談支援と相談援助の関係

4 保育相談支援のねらい

1-2 保育相談支援の対象

1 児童福祉施設入所者の保護者

2 地域で家庭保育している児童の保護者

1-3 家族の変化と保育相談支援

1 家族構成の変化

2 世帯数と平均世帯人員

3 ひとり親世帯の増加

4 働く女性の増加

5 共働き家庭の増加による要保育児童の増加

6 子どもの環境の変化と子育て事情

2章 保育相談支援の基本

2-1 子どもの最善の利益と福祉

1 子どもの権利擁護

2 児童虐待

3 子どもの権利に関する法的制度などについて

4 子育て支援施策の流れと子育て支援事業

2-2 子どもの成長の喜びの共有

1 保護者の理解を深める

2 子どもの成長や発達を喜ぶ

3 子どもの理解の促進

2-3 保護者の養育能力の向上

1 親になるには

2 親自身の「生きる力」を大切にする

3 知識や気づきの提供(行動見本の提示,物理的環境構成)

4 保育士の専門的価値や倫理

5 援助を求めない保護者とのかかわり

6 親同士のつながりを支援する

7 ひとり親家庭への支援

2-4 地域資源の活用と関係機関との連携・協力

1 子育てに関係する資源

2 連携や協力の対象となる社会資源や関係機関

3 地域の関係者からの情報提供

4 連携してネットワークをつくる

5 民生委員・主任児童委員とは

3章 保育相談支援の実際

3-1 保護者支援における保育者の役割

1 親の応答性や育児行動の関係

2 保育相談支援の内容

3 保育相談支援の方法と技術

4 アセスメント,プランニング,エバリュエーションの視点

5 カンファレンス

6 保護者支援の記録

4章 児童福祉施設の保育相談支援

4-1 児童福祉施設における種別

1 入所型と通所型

4-2 児童福祉施設(保育所以外)における保育相談支援の視点

1 親育ちの支援

2 家族との交流

3 子どもや保護者の置かれている状況を理解する

4 保護者と子どもの新たな関係づくりの構築を図る

5 児童養護施設の子どもへの支援

6 苦情への対応

4-3 障害児施設などにおける保育相談支援

1 法律による障害の定義

2 障害児保育の保護者支援の視点

4-4 保育所における保育相談支援

1 保育所に入所している保護者に対する支援の特徴

4-5 地域で子育てしている保護者の保育相談支援

1 地域における子育て支援の例

2 子育て支援者の役割

3 園庭開放

4 子育て支援センター

4-6 特別な対応を要する家庭への支援

1 虐待予防の基本的なかかわり方

2 虐待に至るリスク要因

3 虐待の早期発見のチェックポイント−保育所,幼稚園,学校など−

4 虐待の通告義務

5 緊急時の対応

6 児童虐待対応における児童相談所の主な権限

7 初めて親からの相談を受けたときの考え方

8 保育所・幼稚園などにおける対応の流れ(例)

9 要保護児童対策地域協議会について

4-7 保育所以外の児童福祉施設の保育相談支援

1 乳児院や児童養護施設などの入所施設

2 母子生活支援施設

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書籍情報

  • ISBN:9784521739564
  • ページ数:248頁
  • 書籍発行日:2014年5月
  • 電子版発売日:2021年11月24日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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