自閉スペクトラム症の臨床

  • ページ数 : 190頁
  • 書籍発行日 : 2023年8月
  • 電子版発売日 : 2023年12月27日
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商品情報

内容

児童精神医学の第一人者である著者による、自閉スペクトラム症、広汎性発達障害の臨床・鑑別・歴史的概念の変遷・患児への対応について多角的にまとめらた本格的著作。永い臨床経験に基づく患児の養育者、療養に携わる専門家にも役立つ知識とアドバイスも盛り込んだ。

序文

はじめに

米国の児童精神科医のKanner が1943 年に初めて早期幼児自閉症の概念を発表して以来、自閉的な障害は永らく小児精神病あるいは小児分裂病として総称されており、精神病的状態の小児型といった捉え方をされていた。それを大きく変えて発達障害とする新しい見解を提示したのは、1980 年に出版された米国精神医学会の診断・統計マニュアル第3 版(DSM-III)で初めて用いられるようになった広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders :PDD)である。広汎性発達障害は、小児自閉症を中心とした自閉的な発達障害群であり、この名称はDSM-III の改訂版のDSM-III-R およびDSM-IV にも採用され、また医学領域の公式の診断名や診断基準を提示している世界保健機関(WHO)の国際疾病分類第10 版(ICD-10)にも採用され、世界中で使用されるものとなった。

2013 年に米国精神医学会はDSM-IV の改訂版であるDSM-5 を発表し、その中で従来の広汎性発達障害の単位障害の区分をなくし、かつ単一遺伝子の異常で生じることが知られてきたレット障害(Rett’s disorder)を除き、全体を自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder)と一括する新しい捉え方を発表した。また2018 年6 月に公表されたICD-10 の改訂版であるICD-11 でも自閉的な障害を包括する概念として同様な自閉スペクトラム症が採用されている。しかし広汎性発達障害の有病率は1.0% 超であり、レット障害の有病率は0.01% 程度とされており、広汎性発達障害の0.l% 弱を占めるのみであり、レット障害と他の広汎性発達障害の臨床的な区別はそれほど困難ではなく、実質的には広汎性発達障害と自閉スペクトラム症は同じものと考えることができる。

本書ではこの広汎性発達障害または自閉スペクトラム症について、その概念、診断、療育、医学的治療などについて包括的に述べることを試みた。本書で述べる内容は、筆者が自閉スペクトラム症を専門とする児童精神科医を志して以来の40 年有余の臨床経験にもとづいて、相談に来られた自閉的な子どもの親御さんにお話してきたことを骨子に、これまでの研究などで知られたことを肉付けしたものである。

本書は自閉的な子どものご家族にとっても、医師、心理士、保育士などの自閉スペクトラム症を有する子どもや成人に関わる専門家やそれらを目指している学生の方々にとっても参考となりうるものとすることを目的に執筆したものである。本書が自閉スペクトラム症の理解に貢献できれば幸いである。


著者

目次

第1章 自閉スペクトラム症の概念

1.臨床的特徴と定義

2.自閉スペクトラム症の概念と分類

 (1)米国精神医学会の分類(DSM)

 (2)WHOの国際疾病分類

第2章 近縁の概念との関係

1.広汎性発達障害と近縁の概念

 (1)上位概念としての発達障害

 (2)近縁の障害

2.疫学

3.自閉スペクトラム症に含まれる歴史的概念

 (1)幼年痴呆

 (2)共生幼児精神病

 (3)自閉的精神病質

 (4)その他の概念

 (5) 小児精神病あるいは小児分裂病と自閉スペクトラム症の関係

第3章 自閉スペクトラム症の診断

1.DSM-5およびICD-11による自閉スペクトラム症の診断

2.DSM-ⅣおよびICD-10による自閉スペクトラム症の診断

 (1)小児自閉症

 (2)アスペルガー症候群

 (3)小児期崩壊性障害

 (4)特定不能の広汎性発達障害/非定型自閉症

 (5)レット症候群(障害)

 (6)単位障害の診断の流れ

 (7)DSM-5との対応

3.PDDASによる広汎性発達障害の診断の概要

 (1)PDDASの構成

 (2)PDDASを用いた診断

 (3)症状の軽減(部分寛解と寛解)

 (4)青年・成人でのPDDの診断

 (5)まとめ

第4章 自閉症以外の広汎性発達障害

1.小児期崩壊性障害

 (1)概念と歴史

 (2)症状

 (3)診断

 (4)疫学

 (5)臨床経過と予後

2.レット症候群(障害)

 (1)臨床的特徴

 (2)疫学

 (3)予後

3.アスペルガー症候群(障害)

 (1)疾病分類と概念の発展

 (2)診断と臨床像の変化

 (3)疫学

 (4)病因・病態・合併症

 (5)治療的対応と予後

4.その他の広汎性発達障害

 (1)概念

 (2)診断

第5章 病因・病態

1.小児自閉症

 (1)発達神経学的および神経心理学的研究

 (2)神経生理学的研究

 (3)生化学的研究

 (4)免疫学的研究

 (5)画像診断学的研究

 (6)神経病理学的所見

 (7)遺伝学的研究

 (8)染色体異常

 (9)自閉症と他の障害の合併

 (10)病態モデル

2.アスペルガー症候群

3.小児期崩壊性障害

4.レット症候群

5.その他の広汎性発達障害

第6章 療育

1.幼児期の療育

 (1)早期に状態を把握することの重要性

 (2)療育グループへの参加

 (3)健常児集団の療育的意義

 (4)家庭での関わりの意義

2.就学

 (1)就学先

 (2)就学相談

 (3)発達レベル

3.学童期の療育

 (1)学校外での学習のサポート

 (2)療育機関での対応

 (3)児童デイサービス

 (4)学童保育

4.療育の効果

 (1)比較法

 (2)比較すべき期間と項目

 (3)療育効果に関する研究の結果

 (4)療育法の選択

第7章 行動障害

1.行動障害とは

2.行動障害の内容

 (1)攻撃的行動

 (2)自傷

 (3)パニック

 (4)こだわり(強迫的行動)

 (5)感覚障害

 (6)緊張病症状

 (7)常同行動

 (8)フラッシュバック

 (9)不登園・不登校

 (10)摂食の問題

3.行動障害への対応

 (1)原因の検討

 (2)薬物療法

第8章 併発する精神神経学的疾患

1.てんかん

 (1)てんかんの分類

 (2)てんかん発作の分類

 (3)薬物療法

2.気分障害

3.精神病的状態

4.多動性・衝動性および不注意

5.チック症

6.恐怖症

第9章 医学的検査

1.脳波検査

2.脳画像検査

第10章 障害福祉サービス

1.療育グループ

2.児童デイサービス

3.作業所

4.入所施設

 (1)知的障害児入所施設

 (2)知的障害者入所施設

 (3)グループホーム

 (4)ショートステイ

 (5)移動支援

第11章 福祉・医療的対応に関わる手当に関する診断書など

1.特別児童扶養手当

2.障害児福祉手当

3.特別障害者手当

4.障害者総合支援法の障害支援程度区分に関する医師意見書

5.自立支援医療診断書(精神通院)

6.障害基礎年金認定診断書

7.知的障害者手帳診断書

8.精神障害者保健福祉手帳認定診断書

9.医療要否意見書

10.診療情報提供書

11.その他の書類

第12章 経過と予後

1.自閉症は治るか?

2.自閉症の治癒を判断する条件

 (1)時期・年齢

 (2)治癒の条件

3.実際的な治療目標

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書籍情報

  • ISBN:9784521750422
  • ページ数:190頁
  • 書籍発行日:2023年8月
  • 電子版発売日:2023年12月27日
  • 判:四六判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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