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- 麻酔 2024年5月号 麻酔科学会とその関連学会の現況と課題
商品情報
内容
序文
巻頭言
定量的な麻酔のすすめ
本誌2016年9月号の“「ペッパー麻酔」を考える”と題した巻頭言に,“当科では,麻酔担当医の不足を補う手段として,看護師ではなく,ペッパーによる麻酔を真剣に考え始めています。実技以外は標榜医と同レベルのペッパーを育てるのが当面の目標(夢)です。”と書きました。そのペッパーは,通称Dogenとして日本光電工業株式会社から製造販売されました。これは,パソコン,シリンジポンプ3台,BISモニター,および筋弛緩モニターで構成されたロボット麻酔システムです。パソコンには,プロポフォールとレミフェンタニルおよびロクロニウムを,BIS値を45に,TOFカウントを1に調節するように自動投与するソフトウェア(販売名AsisTIVA:2023年のグッドデザイン賞を受賞した全身麻酔用医薬品投与制御プログラム)を搭載しています。ロボットと呼びましたが,ヒトの肉体労働を代替するのではなく,知的作業を支援する,いわゆるRPA(roboticprocess automation)で,これで麻酔科医が不要となるはずもなく,実際に点滴漏れなどで停止したときには,即座に揮発性麻酔薬によって麻酔が維持される体制でなくては稼働してはいけません。自動血圧計や人工呼吸器,電子麻酔記録器のように,機械化できるところから機械化したものです。Hemmerlingは,最近の総説(Anesth Analg2024;138:239‒51)の文末に,“日常生活と同じように,ロボットは徐々に我々の仕事を奪うだろう。我々にいかなる仕事が残されるのだろうか。”と記述しています。彼は,ロボット麻酔が普及して,麻酔科医の業務がなくなるのを心配していますが,当方は,現状では麻酔科医としてするべきことや,したいことができないので,この装置を開発しました。開発者は,麻酔科医の仕事がなくなる心配や,麻酔の自動化の善悪の議論ではなく,システムそのものの正当な評価を必要としています。不都合があれば早く改良しなくてはなりません。
この装置の特徴は,まず痛みのモニターがなくても稼働すること,次にフィードバック制御であれば一般的に採用されているPID制御を用いず,用量反応曲線や鎮痛と鎮静のバランスを用いた調節であること,そして電位式筋弛緩モニターを用いたことなどが挙げられます。これらは,臨床現場の麻酔科医が発案し,企業の技術者にそれを実装してもらいました。開発費は日本医療研究開発機構(AMED)から支援を受けました。ヒューマンエラーを削減し,少ない麻酔科医が精一杯努力しても不足する点を補うことを目的として開発しました。
一連の開発過程において,定量的な麻酔の重要性を再認識しました。麻酔技術には,長年にわたり繰り返し訓練して体得するものもありますが,定量的にデジタル化できれば,より速く学習できるだけでなく,実臨床において試行錯誤が削減され,遠隔医療に応用できる利点も生まれます。現在,ロボット麻酔システム2号機を開発中です。麻酔導入時には,血圧が容易に下がりますが,この装置は,平均血圧の表示が閾値未満になったとき,一定量の昇圧薬を即座に自動的に投与します。これまで血圧は,フランク・スターリングの心機能曲線とガイトンの静脈還流曲線から心拍出量を,オームの法則で血管抵抗を算定し,心拍出量は1回拍出量(SV)と心拍数の積として求め,SVは心前負荷,心後負荷,心収縮能の組み合わせから総合的に評価しました。最近,これを従来の概念にとらわれずに,左心室内圧容量関係に着目して,SVを変数として用いずに,血圧(Pm)と,左心室拡張末期容量(Ved),左心室収縮末期エラスタンス(Ees)および実効大動脈エラスタンス(Ea)との関係を,Pm=Ved/{(1/Ees)+(1/Ea)}という近似式で定量化し,これをもとに血圧を調節するロボットを生み育てる夢を見ています。
(福井大学名誉教授/現:市立舞鶴市民病院病院長
重見研司)
目次
巻頭言
定量的な麻酔のすすめ (重見研司)
特集
麻酔科学会とその関連学会の現況と課題
緒言とまとめ(花岡一雄)
公益社団法人日本麻酔科学会―過去・現在を見直すことで未来を考える― (山蔭道明)
一般社団法人日本産科麻酔学会( 照井克生)
一般社団法人日本ペインクリニック学会―現況と課題― (飯田宏樹ほか)
日本臨床麻酔学会(森松博史)
日本老年麻酔学会―現況と展望―(山内正憲)ほか
日本静脈麻酔学会―現況と課題― (木山秀哉)
一般社団法人日本心臓血管麻酔学会(岡本浩嗣)
日本神経麻酔集中治療学会 (川口昌彦ほか)
一般社団法人日本区域麻酔学会―設立経緯ならびに現況と課題―(横山正尚)
総 説
キネシン:麻酔科領域における今後のターゲット分子モーター(田口真也ほか)
症例報告
抗うつ薬の内服中断により術後に悪性症候群を発症した乳房再建術の1 症例 (南川侑介ほか)
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書籍情報
- ISBN:9784014007305
- ページ数:96頁
- 書籍発行日:2024年5月
- 電子版発売日:2024年5月30日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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