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- 外来精神科診療シリーズ 診断の技と工夫
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序文
序 新しい精神科診断学の提案
〈外来精神科診療シリーズ〉の構成を考えた際に,「ぜひ,診断の巻も作ろう.屋上屋を架すことにならぬよう,新鮮味のある内容にしたいものだ」という大願を抱いた.何とも大それたこの願いをもつに至ったのは,軽率でそそっかしい編者の宿痾が災いしたばかりではない.精神科診断をめぐる積年の不充足が,背景に存在した気配濃厚である.しからば,その欲求不満の内実は何か.
編者が精神科医になって三十余年経たが,この間に精神科診断学は劇的な変貌をとげた.研修医になった当初はもっぱら伝統的な診断学を学んだが,その後DSMに代表される操作的診断が世界中を席巻した.こうした変革の嵐の中で,「伝統的な診断学 vs操作的診断」という構図の議論がさかんに行われてきた.そこでは「自らが拠って立つ立場の長所」と「相手側の欠点」が,声高に主張されることが多いように見受けられる.
編者の目から見ると,伝統的な診断学と操作的診断の関係は対決して雌雄を決する類のものではなく,両者は相補的な間柄にある.そして双方を基盤にした内容にプラスアルファの要素を加えて,さらに臨床に役立つ進化したネオ診断学を目指すべきと考えてきた.このような認識が語られることが必ずしも世に多くなく,「新しい診断学」に関する議論が乏しい風景が屈託につながっていたのである.
こうした編者にとって,本書の企画に携わる機会はまさに奇貨居くべし,と感じられた.好機到来のこの意識が,劈頭に記した蛙の願立てにつながった次第.
目次を眺めると,本巻の編集方針の概要をご理解いただけるだろう.全体の構成は,①各派の精神療法/リハビリテーションからみた診断のコツとポイント(精神療法/リハビリテーションに役立つ診断),②精神科診断に関するエッセイ(臨床の知を自由に語っていただくコーナー),③当事者からみた精神科の診断―実態と問題点(当事者の視点),④精神科診断に役立つ質問票,症状評価尺度―概要と利用法,⑤診断をめぐる往復書簡(お二人の優れた精神科医による,診断にまつわる金言を楽しむ欄).加えて本書の執筆者全員に,次の『精神療法の技と工夫』巻への寄稿を併せてお願いしたことも,今回工夫してみた点である.
渾身の珠玉論文が勢ぞろいして,目論見通り「新しい診断学」について考える格好の一巻となった(と思っている).読者諸賢におかれましては親しく頁をめくって,精神科診断をめぐる豊かな思索をご満喫ください.
2016年12月
原田 誠一
目次
Ⅰ.精神科診断概論
精神科診断概論
1 新しい精神科診断学の提案―「伝統的な診断学」と「操作的診断」を補完する内容とは?
II.精神療法の各流派からみた診断のコツとポイント
1 精神分析
2 自己心理学
3 行動療法
4 認知行動療法
5 ユング心理学
6 アドラー心理学
7 森田療法
8 内観療法
9 交流分析
10 芸術療法
11 動作療法
12 生活臨床
13 ブリーフサイコセラピー
14 家族療法
15 集団療法
III.精神科リハビリテーションからみた診断のコツとポイント
1 精神科リハビリテーションからみえてきた診断の工夫
2 リワーク活動における診断
IV.精神科診断に関するエッセイ
1 名づけることの意味
2 日々の診療―症状の連続性と「不連続さ」
3 解決志向における診断の技と工夫
4 私の臨床心得と診断
5 文化精神医学からみる解離症状の再考
6 新しい性格類型と精神疾患の診断―うつ状態の鑑別診断の試み
7 神田橋條治『精神科診断面接のコツ』を再読する
8 病跡学からみた精神医学的診察と診断
9 精神科診断をM's理論により科学にする
10 診断の「軽さ」と「重さ」―就労支援の現場から
11 「発達障害」と診断することの難しさについて
V.当事者からみた精神科の診断ー実態と問題点
1 「患者を良くする」ことを念頭においた診断を
2 あの頃は......18年を経て思い出すこと
3 精神疾患をかかえた方の「子ども」に目を向けてください
4 べてるの家
VI.精神科診断に役立つ質問票, 症状評価尺度ー概要と利用法
1 不安症, 気分障害
2 発達障害
3 依存症,嗜癖
4 睡眠障害
5 性の障害
6 パーソナリティ障害
7 認知症
VII.精神科診断をめぐる往復書簡
1 原田誠一, 山中康裕往復書簡
2 原田誠一, 森山成杉木往復書簡
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書籍情報
- ISBN:9784521740065
- ページ数:368頁
- 書籍発行日:2017年6月
- 電子版発売日:2020年4月3日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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