急性循環不全《救急・集中治療アドバンス》

  • ページ数 : 344頁
  • 書籍発行日 : 2019年5月
  • 電子版発売日 : 2020年1月10日
11,000
(税込)
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商品情報

内容

生命に危機の迫る急性循環不全に対しては,その病態を正確に判断し,適切に対処しなければならない.本書では,管理に不可欠な各種モニタリング法の目的と限界,循環不全を引き起こすショックと重症心疾患を取り上げて,それぞれの病態と治療について解説した.IABP,ECMO,補助人工心臓などの導入と管理のポイント,輸液療法や薬物療法などについても詳述.集中治療医,救急医必携の1冊.

序文

心疾患を代表とするポンプ機能障害と心疾患以外の原因によるものに分かれる.本書『急性循環不全』では,いずれの領域も診断,モニタリング,治療法と治療戦略に関して解説されている.

救急・集中治療領域における全身管理は多岐にわたるが,その中で循環管理は根幹をなす存在である.対象となる主たる病態はショックであるが,原因によって対処法は異なる.しかし適切な治療が行われなければ多臓器不全に至るのは同じである.ショックの原因は本シリーズの対象となる読者は救急・集中治療領域の医療関係者であるが,心疾患関連の知識はきわめて重要であるとともに,新しい治療法やエビデンスの蓄積が豊富かつ多岐にわたるため救急・集中治療領域の医師がすべてに精通することは難しい.それらに対応するために,大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学の坂田泰史教授にご協力を仰ぎ,循環器内科の専門家を選定していただき,ポンプ機能障害の項目を執筆していただくことにした.近年,進歩が著しい補助循環に関しては,とくに重点をおくように配慮した.また救急・集中治療領域における主要病態の一つである敗血症に関しては,最新のガイドラインに基づく解説をお願いした.敗血症の循環管理はRivers らのearly-goal directed therapy の登場以後,各要素に関してさまざまな検討が行われることでガイドライン改定ごとに少しずつ変化している.日常的に敗血症患者を診療する読者においても知識の確認にお役立ていただければと思う.

本書の特長として,用語の解説を豊富に行い初学者や医師以外の職種の読者にも理解できるように心がけた.また記述の根拠となる参考文献を充実させることで,読者がさらに理解を深めることが可能となるように配慮した.内容に関連した基礎生理学・薬理学の項目も設けることで,本書の理解をいっそう助けるものと期待している.

編集にあたって原稿を通読させていただいたが,本シリーズの他領域とひけを取らない素晴らしい内容であると確信している.読者が本書を通読することで最新の知識を得て循環管理に関する理解を深め,日常臨床の質向上につながることを祈念している.


2019年4月

大阪大学大学院医学系研究科生体統御医学講座麻酔
・集中治療医学教室教授
藤野 裕士

目次

1章 定義と診断

1-1 循環不全の定義と診断

1 循環の生理学的意義

2 循環不全ならびにショックの定義

3 ショックの定義の変遷

4 循環不全の診断

1-2 急性循環不全の病態

1 急性循環不全の病態の基本

2 急性循環不全を誘導する4つの病態

3 ずり応力に依存した血管径調節作用

4 急性循環不全における虚血領域の血管拡張反応の病態

5 急性循環不全における心機能抑制の病態

6 急性循環不全に随伴する全身性病態

 Column Na+-Ca2+交換系(NCX)

1-3 急性循環不全の重症度評価(高橋一則,中根正樹)

1 初期評価

2 それぞれの病態に対する重症度評価

 Column ショック症状をきたさない低血圧

2章 診断補助

2-1 モニタリング総論

1 画像診断

2 生理学的検査/血液検査

3 血管内デバイス

2-2 胸部X線

1 臥位撮影での注意点

2 心原性における所見

3 循環血液量減少性における所見

4 閉塞性における所見

2-3 心電図

1 モニター誘導と標準12誘導

2 基本パラメータの把握

3 緊張性の高い心電図と注意すべき心電図変化

4 注意すべき心電図

5 心電図に影響を与えうる病態

 Column Cabrera forma

 Column 12誘導心電図から心室性不整脈の起源を同定する

2-4 血液ガス分析

1 血液ガス分析の実際

2 体外循環におけるPaCO2管理

2-5 心エコー

1 心エコー法の役割

2 左室収縮機能と1回拍出量の評価

3 左室拡張機能と左室充満圧の評価

 Advice 初期の心エコー検査の適応

 Topics ASEによる左室拡張機能評価のアルゴリズム

2-6 CT

1 CT検査で行うtriple rule out

2 急性大動脈解離の診断

3 急性肺血栓塞栓症の診断

4 急性心筋梗塞の診断

2-7 心臓カテーテル検査

1 冠動脈造影検査

2 右心カテーテル検査

3 心筋生検

 Column door-to-balloon time

 Column 抗血小板薬のローディング

 Column CULPRIT-SHOCK 試験

2-8 バイオマーカー

1 心筋梗塞診断における心筋トロポニンT,心筋トロポニンI測定

2 急性心不全診断におけるBNP,NT-proBNP測定

3 肺動脈血栓塞栓症診断におけるD-ダイマー測定

4 急性心不全の治療経過におけるバイオマーカーの推移

 Advice バイオマーカーの一般的注意

2-9 心拍出量モニター

1 急性循環不全の原因鑑別とモニタリング

2 動脈圧波形解析法の原理

3 酸素需給バランスの指標としての静脈血酸素飽和度

4 モニターから得られる指標に基づいた輸液蘇生

 Topics プロトコール化された輸液蘇生

 Column 肺動脈カテーテル

 Topics 呼気終末閉塞テスト

3章 症状・疾患における病態と治療

[1.ショック]

3-1-1 閉塞性・拘束性ショック

1 定義

2 閉塞性・拘束性ショックの病態

3 閉塞性・拘束性ショックの身体所見

4 閉塞性・拘束性ショックの検査所見

5 鑑別

6 閉塞性・拘束性ショックの治療

 Column 肺血栓塞栓症の否定

3-1-2 出血性ショック

1 定義

2 出血性ショックの身体所見

3 出血性ショックの検査所見

4 鑑別,原因疾患

5 出血性ショックの治療

 Topics トロンボエラストグラフィー(TEGR),トロンボエラストメトリー(ROTEMR)

3-1-3 心原性ショック

1 定義

2 心原性ショックの病態

3 心原性ショックの身体所見

4 心原性ショックの検査所見

5 鑑別

6 心原性ショックの原因疾患

7 心原性ショックの治療

3-1-4 敗血症性ショック

1 敗血症性ショックの病態

2 敗血症性ショックの治療

3 今後の展望

3-1-5 アナフィラキシーショック

1 定義と診断基準

2 アナフィラキシーショックの病態生理

3 アナフィラキシーショックの身体所見

4 アナフィラキシーショックの検査所見

5 アナフィラキシーショックの治療

6 症例提示

 Column Kounis症候群

 Column Bezold-Jarisch反射

3-1-6 神経原性ショック

1 定義

2 神経原性ショックの病態

3 神経原性ショックの原因

4 神経原性ショックの診断

5 神経原性ショックの治療

3-1-7 産科ショック

1 産科ショックと妊産婦死亡の発生状況

2 産科ショックをきたす疾患

3 産科DIC

4 産科危機的出血への対応

3-1-8 内分泌疾患によるショック

1 甲状腺クリーゼ

2 粘液水腫性昏睡

3 急性副腎不全(副腎クリーゼ)

4 高血糖緊急症

 Column 副腎クリーゼと胃腸炎

[2.重症心疾患]

3-2-1 虚血性心疾患

1 急性冠症候群

2 心原性ショックを合併する急性冠症候群

3 急性心筋梗塞に合併する機械的合併症

4 右室梗塞

 Column PCI vs CABG

 Column 肺動脈カテーテル

3-2-2 非虚血性心筋症

1 主な非虚血性心筋症

2 非虚血性心筋症の診断

3 非虚血性心筋症の治療

3-2-3 重症不整脈

1 重症心室性不整脈の病態

2 重症心室性不整脈の検査

3 重症心室性不整脈の治療

 Column アブレーション施行群と非施行群の無作為化比較試験

3-2-4 劇症型心筋炎

1 劇症型心筋炎の病態

2 劇症型心筋炎の診断

3 劇症型心筋炎の治療

 Column 心筋炎の定義と疾患概念のズレ

3-2-5 たこつぼ症候群

1 たこつぼ症候群の診断基準

2 たこつぼ症候群の病態

3 たこつぼ症候群の症状と検査所見

4 たこつぼ症候群の治療

5 たこつぼ症候群の予後

4章 治療選択

4-1 呼吸管理

1 右心機能と呼吸

2 陽圧換気と胸腔内圧

3 肺水腫とPEEP

4 左心不全とPEEP

5 非侵襲的陽圧換気(NPPV)

6 侵襲的呼吸管理

7 換気量の設定をどうするか?:肺保護換気について

8 人工呼吸からのウィーニングと循環

4-2 カテコラミン

1 カテコラミンの生合成および代謝

2 カテコラミンの生理作用

3 各種カテコラミン

4 薬物-受容体相互作用

5 PDE-III阻害薬

 Column カテコラミンとPDE-III阻害薬

4-3 輸液療法

1 初期輸液の考え方

2 輸液製剤の選択

3 輸液の生理学

4 輸液方法

4-4 IABP:導入と管理のポイント

1 背景

2 IABPの原理

3 IABPの導入:適応

4 IABPの禁忌

5 管理上のポイント

6 IABPの離脱

4-5 ECMO:導入と管理のポイント

1 ECMOの適応

2 VA-ECMOの導入方法

3 導入時の3段階

4 導入後

5 VA-ECMO特有の合併症

6 離脱

7 IMPELLA

 Topics PCPSとVA-ECMO

 Column Dirty double

 Column 鼠径部の穿刺

 Column 各社カニューレの特徴

4-6 補助人工心臓:導入と管理のポイント

1 体外設置型VADの適応

2 体外設置型VAD挿入後の予防的管理

3 心機能回復への試み

 Column LVAD装着後のリバースリモデリングとは?

4-7 一時ペーシングとペースメーカー植込み

1 一時ペーシング

2 永久ペースメーカー植込み

 Column 生理的ペースメーカーと非生理的ペースメーカー

4-8 植込み型除細動器(ICD)・着用型自動除細動器(WCD)

1 器質的疾患を有する症例の突然死リスクとICD

2 急性期病態における突然死リスクと除細動デバイス

3 着用型自動除細動器(WCD)とその適応

 Column 突然死の一次予防と二次予防の疫学

 Column 心筋梗塞発症後早期のICD使用

4-9 輸血

1 輸血の危険性

2 restrictive strategy(制限輸血),liberal strategy(非制限輸血)の是非

3 大量輸血

4-10 利尿薬

1 ループ利尿薬

2 抗アルドステロン薬

3 サイアザイド系利尿薬

4 ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)

 Column 利尿薬への抵抗性を形成する要因

 Topics 敗血症における急性腎障害とバソプレシン

4-11 心筋保護薬

1 心筋保護薬とは

2 左室駆出率からみた心不全の分類とリバースリモデリング

3 心筋保護薬のエビデンス

4 服薬遵守の重要性

5 心筋保護薬使用のタイミング,コツとピットフォール

6 HFpEFに対する心筋保護薬のエビデンス

4-12 抗血小板薬・抗凝固薬

1 抗血小板薬・抗凝固薬の作用機序

2 急性循環不全を呈する病態での使用法

3 抗血小板薬・抗凝固薬内服中の出血への対処法

4-13 抗不整脈薬

1 抗不整脈薬の分類と種類

2 抗不整脈薬の作用機転

3 抗不整脈薬の使用目的

4 抗不整脈薬の適応疾患

5 各薬剤の使用ポイント

6 併用療法

7 抗不整脈薬の副作用

8 禁忌疾患

 Column Naチャネル遮断薬とKチャネル遮断薬の作用の違い

 Column 発作性心房細動に対する停止法としての"pill-in-the-pocket"

 Advice 抗不整脈薬の排泄経路と主な副作用

4-14 ステロイド

1 急性循環不全におけるステロイド

2 敗血症に対するステロイド療法

3 敗血症性ショック患者すべてにステロイドを使用すべきか?

4 敗血症性ショックに対するステロイド投与に関し不明確な事項

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書籍情報

  • ISBN:9784521743356
  • ページ数:344頁
  • 書籍発行日:2019年5月
  • 電子版発売日:2020年1月10日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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