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- 状況別に学ぶ 内科医・外科医のための精神疾患の診かた
商品情報
内容
精神疾患の基礎知識とその診かたを”よくある”8つのシチュエーションで解説。一般医と接する機会が多く総合病院精神科勤務歴が長い著者が一般医へ語りかけるという意識のもと、日常診療でよく遭遇する精神科的問題をどう診て、どう考え、どう精神科医につなげたらよいのかという視点から執筆されています。企業に勤める産業医の方にもオススメです。
序文
序
日常診療において,統合失調症など精神疾患を有する患者の身体治療にかかわることや,身体治療中にせん妄やうつ状態などの精神科的問題が併発し,判断に困るようなケースを経験することは決して少なくないであろう.しかし精神症状があることだけで,何となく敬遠してしまいたくなることはないだろうか.そう感じてしまうのは「精神」という相手がよくわからないことが一番の理由である.逆にいえば,相手をよく知ることで,抵抗感が薄れ,距離を縮められる可能性がある.日々の臨床において,精神科的な問題を避けて通ることはできない.精神科的視点という軸が加わることによって診療における視野が広がり,新たな発見があるかもしれない.本書では,日常診療において必要とされる精神科の知識を扱っている.
対象とする読者は,精神科以外の医師すべてである.これを表す用語として,身体科医,非精神科医などがあるが,本書では「一般医」で統一した.臨床経験のある一般医向けではあるが,精神科のローテーション研修や,企業に勤務している産業医にも対応した内容となっている.
一般医を対象とした精神症状の見方や薬剤の使い方などに関する書籍や総説も少なくはないが,その多くは共著のため内容が断片的であったり,処方マニュアル的なものが多い.また,精神科医が使う用語や表現が一般医に理解しがたく,内容が十分に届いていない印象も受ける.筆者は,一般医と接する機会が多い総合病院精神科での勤務歴が長い.これまで受けたことのある質問を踏まえ,精神科医から一般医へ語りかけるという意識のもと,日常診療で遭遇する精神科的問題をどう診て,どう考え,どう精神科医につなげたらよいのかという視点から執筆した.内容について紹介する.一般医が精神科的問題に遭遇する場面は,ある程度パターンが決まっている.導入となる第1章では,8つのよくある場面をケースファイルとして提示し,考え方の道筋を示した.第2章では,一般医に知っておいてほしい精神科の基礎知識を扱った.患者との面接からはじまり,精神症状の見立て方,向精神薬の概要,代表的な精神疾患の見方のポイント等について述べた.第3章では,精神科との連携の観点から,精神科へのつなぎ方や精神病床,る形式で,分野を問わずQ&Aとしてまとめた.これらさまざまな観点から考えることで,精神科の理解が深まるかたちとした.
本書はいわゆるエビデンスを集めた書籍ではない.うつ病には○○,双極性障害には○○が効くというエビデンスを得ることは精神科医でなくてもできる.しかしうつ病や双極性障害がどのようなものかを捉えることができなければ,その先の治療に関する議論は意味をなさなくなってしまう.一般医に求められるのは,その基礎となる精神科的問題の捉え方と初期判断・対応である.基礎を学んでいれば,エビデンスを有効に活かすことも可能となり,応用が利く.本書においては,一精神科医からの" 直伝スタイル" をとった.筆者がこれまで学んだり経験してきたことを言葉で伝える形式である.筆者の過去を振り返ってみると,後々まで残っているのは,生きた言葉で教わったことである.
いわゆるエビデンスレベルの高さは,患者の個を消し,主観を排すことに比例するともいえる.この意味でのエビデンスは,独りよがりになることを防ぐ意味では重要であり,専門医には必要な知識である.しかし一臨床医の経験や語りが軽いかといえば,そうともいえない.そこには,さまざまな文献に当たったこと,諸先輩や同僚,後輩たちと議論したこと,うまくいったりいかなかったりと試行錯誤を繰り返したことすべてが含まれている.自身の専門以外を学ぶときには,経験からくる言葉のほうが理解しやすいのではないだろうか.
こうした背景のもと,一般医がどのように動いたらよいかという現場感が伝わるよう執筆したが,本文中の記載に疑問を覚えるところもあるかもしれない.その部分に関しては,個々で文献を調べたり,周囲の精神科医と話すきっかけにして頂き,精神科に対する理解を深めていってほしい.
本書が,皆さまの日々の診療に少しでも役に立ち,「精神科をもっと学んでみたい」と感じてもらえるきっかけとなることができたら望外の喜びである.
最後になるが,本書を作成する機会を頂き,企画段階から仕上げに至るまでアドバイスくださった中山書店の皆さま,内科医の視点を御教示頂いた吉澤篤人先生(岸病院),執筆のヒントをくれた当科スタッフに,心より感謝申し上げたい.
平成28年4月
国立国際医療研究センター病院 総合診療科/精神科
加藤 温
目次
第1章 CASE FILE 状況別に学ぶ精神疾患
外来編
初診患者
倦怠感など身体症状を訴えるも内科的には問題なさそう.
うつ病? どう考える
初診患者
しびれで受診,よくきいてみると「電気をかけられている」という.
どう考える?
通院患者
通院中の患者,最近眠れなくなってきた.どう考える?
救急外来
自殺未遂で救急搬送されてきた.どう考える?
入院編
がんの治療中,気分が晴れず不安,よく眠れない.どう考える?
看護師から「○○さんが不穏です」と呼び出された.どう考える?
アルコール多飲歴のある患者が入院してきた.気を付けることは?
高齢者が肺炎で入院してきた.精神科的に気を付けることは?
第2章 精神科の基礎知識
1.患者との面接
I 面接とは
II 面接のコツ
III 「精神療法」から学ぶ
広義の精神療法
狭義の精神療法
2.精神疾患をいかに捉えるか
I 精神科医は患者をどのように見立てるか?
診察の下準備 -問診票と見た目
診察に入る -患者と対面する
II 精神科診断とは
伝統的診断 -古典的分類
操作的診断 -新しい分類
III 一般医にすすめる精神症状の見立て方
まずは身体因(身体疾患,薬物)の検討
統合失調症,うつ病・双極性障害の可能性を検討
心因性とその周辺の疾患を検討
発達障害とパーソナリティ特性という視点
3.向精神薬を理解する
Ⅰ 向精神薬を使う際のポイント
II 向精神薬の種類
抗精神病薬
定型抗精神病薬
非定型抗精神病薬
抗うつ薬
代表的な三環系抗うつ薬
四環系抗うつ薬
選択的セロトニン再取り込み阻害薬
選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬
その他
抗不安薬
睡眠薬
気分安定薬
抗認知症薬
4.覚えておきたい精神疾患
I 統合失調症
II うつ病・双極性障害
III パニック障害
IV 身体表現性障害
V 認知症
VI 発達障害
VII 緊張病
第3章 精神科との連携
I 精神科へつなぐ
紹介先を間違えない -病状から判断する
精神科へのつなぎ方のコツ
入院患者のコンサルト
II 精神病床を知る -一般病床との違い
医療法上の病床区分が異なる
精神保健福祉法の下にある
III 精神科身体合併症を診る -一般医と精神科医の連携
精神科身体合併症の3パターン
精神科身体合併症の入院治療 -理想的な治療のかたちとは
IV 産業医として精神科医と連携する
第4章 Q&A 本当に知りたい精神疾患の疑問
Q1 精神科と心療内科の違いは何でしょうか?
Q2 統合失調症の患者には,メタボリック症候群の方が多いような気がしますが,どのような理由によるのでしょうか?注意すべき薬剤はありますか?
Q3 うつ病は励ましてはいけないのですか?
Q4 身体症状が前景に立つうつ病を見分けるポイントは?
Q5 「新型うつ」って何でしょうか?精神科医にも認知されているのでしょうか?
Q6 精神科医はなぜなかなか病名を記載しないのでしょうか?
Q7 一般外来においては,どのようなときに精神科に依頼すべきですか?
Q8 認知症になった家族をみている介護者へのアドバイスは?
Q9 幻覚や妄想がある患者にはどのように対応したらよいですか?
Q10 精神疾患の患者には喫煙者が多い気がします.禁煙支援が困難です.どのように対応すべきでしょうか?
Q11 入院患者の不眠,不安,不穏時として適切な薬剤は?
Q12 手術や侵襲的な検査の同意は本人から取れれば問題ないのでしょうか?うつ病の方に,最善と思われる治療法を勧めていたものの,同意を得られない場合の対処も含め,教えてください.
Q13 アルコールを睡眠薬代わりに飲むことの是非は?
Q14 精神疾患の遺伝性について,家族から相談されました.本来は精神科の主治医に質問してもらうべきでしょうが,どのように返答すればよいでしょうか?
Q15 ボーダーラインとは何ですか? どうかかわればいいのでしょうか?
Q16 摂食障害を診る際の注意点は何ですか?
Q17 低活動性せん妄とはどのようなものですか? どう対応すればいいですか?
Q18 精神科医のカルテでみることがある「非定型精神病」って何ですか?
Q19 精神病理学とは,どのようなものですか?
Q20 医療機関以外で,精神科的な問題を相談できる場所はありますか?
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書籍情報
- ISBN:9784521744070
- ページ数:240頁
- 書籍発行日:2016年5月
- 電子版発売日:2017年11月17日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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