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- あたらしい耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
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序文
序
耳鼻咽喉科は鼻,口,のどといった身体への入り口の診察を行い,感覚器を含めた頭頸部の多くの臓器を担当する.これらの器官は呼吸,摂食嚥下,病原微生物への免疫応答といった生命維持に不可欠な機能をもつとともに,人が人らしく生活するために必要な聴覚・平衡覚・味覚・嗅覚・音声・発話,すなわち感覚やコミュニケーションに関する働きをもつ.それゆえこの領域の学習ならびに知識の整理には他領域にもまして各器官の構造や生理機能の理解が必要である.一方,近年では耳鼻咽喉科学の進歩にともない診療対象となる疾病が増加し,とくに頭頸部腫瘍の領域では患者数の増加と治療法の刷新がめざましい.そこで今回発刊する『あたらしい耳鼻咽喉科・頭頸部外科学』ではタイトルに頭頸部外科の名称を付すとともに,耳,鼻,口腔・咽頭,喉頭・気管に加えて頭頸部腫瘍に独立した章を割り付けた.おのおのの領域の章では,総論として解剖や機能,検査に関する基礎知識を,各論として日常診療で遭遇する疾病の診断と治療について記載し,学生から医師まで広い読者層を対象とした教科書となることを目指した.
各項目の執筆は,臨床の専門性を確立し今まさに臨床現場で活躍している中堅の医師が中心となって担当した.編集には私とともに東北大学耳鼻咽喉・頭頸部外科で長らく外来医長を務めた日高浩史氏(関西医科大学耳鼻咽喉科頭頸部外科)があたり,耳鼻咽喉科・頭頸部外科の担当する数多くの疾病のなかで頻度が高いもの,患者の機能を考えるうえで重要なもの,ならびに学習のうえで重要なもの,を網羅した.各項には「Essence」を設けるとともに,それに続く本文はコンパクトで理解しやすい内容になるように努めた.局所所見や画像ではカラー写真を多用し,視認性のよいイラストレーションの執筆には二井一則氏(山形県立中央病院頭頸部・耳鼻咽喉科)のご厚意をいただいた.
本書は,医学生の方々には大学での実習から国家試験対策に,さらに研修医や臨床医の方々には専門医試験対策や日常臨床の一助となることを,強く意識して編纂を進めた.あるときは総論から各論を通読していただき,またあるときは鑑別診断や疾病の治療について各論を検索していただくなど,幅広く用いていただければ幸甚である.
最後に,本書を手にしていただく皆様,執筆者ならびに中山書店の担当者の方々に重ねて感謝を申し上げる.
2020年4月
香取幸夫
目次
第1章 耳科領域の基礎知識と疾患
総論 基礎知識
1 耳および側頭骨の解剖・機能
A 中耳・外耳の聴覚における役割
B 耳管の役割
C 内耳(蝸牛)の聴覚における役割
D 聴覚に関わる中枢器官とその役割
E 平衡器官としての内耳(前庭・半規管)
F 平衡覚にかかわる中枢器官とその役割
G 顔面神経の走行と周囲臓器とのかかわり
H 耳の発生と疾患との関連
2 聴覚の検査
A 音叉による検査
B 標準純音聴力検査
C 語音聴力検査
D 自記オージオメトリー
E 聴性脳幹反応
F 聴性定常反応
G 耳音響放射
H ティンパノメトリー
I アブミ骨筋反射
J 耳管機能検査
K 乳幼児の聴力検査
3 平衡機能の検査
A 前庭眼反射
B 前庭脊髄反射
C その他の平衡機能検査
各論 診断と治療
4 外耳疾患
A 耳介疾患
B 先天性耳瘻孔
C 外耳炎、鼓膜炎
D 外耳道狭窄症などの形態異常
E 耳垢塞栓
F 外耳道異物
G 外耳腫瘍
5 中耳疾患
A 急性中耳炎
B 急性乳様突起炎
C 慢性中耳炎
D 真珠腫性中耳炎
F 滲出性中耳炎
E 耳管機能不全
G 耳硬化症
H 耳小骨連鎖異常
I 好酸球性中耳炎
6 内耳から中枢の疾患
A 内耳炎、ウイルス性難聴
B 乳幼児の難聴、遺伝性難聴
C 加齢性難聴
D 突発性難聴
E 音響外傷,騒音性難聴
F 機能性難聴
G 薬剤性内耳障害
H 良性発作性頭位めまい症
I メニエール病
J 前庭神経炎
K 小脳橋角部腫瘍
L 動揺病
7 その他
A 外傷(鼓膜損傷、側頭骨骨折、外リンパ瘻、髄液漏)
B 顔面神経麻痺
C 顔面痙攣、眼瞼痙攣
第2章 鼻科領域の基礎知識と疾患
総論 基礎知識
1 鼻および顔面深部の解剖と機能
A 上気道としての鼻腔・副鼻腔
B 嗅上皮と嗅覚機能
C 頭蓋底
D 側頭下窩と翼口蓋窩
E 鼻副鼻腔の発生からみた疾患との関連
2 鼻アレルギーの基礎
A アレルギー性鼻炎の発症機序
B アレルギー性鼻炎の抗原とアレルゲン免疫療法
各論 診断と治療
3 外鼻・鼻腔の疾患
A 鼻出血
B 鼻?,急性鼻炎
C アレルギー性鼻炎
D 慢性鼻炎、肥厚性鼻炎
E 鼻中隔彎曲症
F 嗅覚障害
4 副鼻腔の疾患
A 急性副鼻腔炎
B 慢性副鼻腔炎
C 歯性上顎洞炎
D 副鼻腔真菌症
E 好酸球性副鼻腔炎
F 副鼻腔嚢胞
G 鼻・副鼻腔の良性腫瘍
5 鼻および顔面の外傷
A 鼻骨骨折
B 眼窩吹き抜け骨折,視神経管骨折
C 前頭骨骨折,頬骨骨折,上顎骨骨折
D 下顎骨折
第3章 口腔・咽頭科領域の基礎知識と疾患
総論 基礎知識
1 口腔・咽頭および関連する組織の解剖と機能
A 舌の構造と味覚
B 歯肉,口腔底
C 唾液腺と唾液分泌
D 咽頭の構造と機能
E 咽頭の発生からみた疾患との関連
F 開口障害と関連疾患
2 摂食嚥下のしくみと評価
A 摂食嚥下のしくみ
B 摂食嚥下障害に対する問診と理学的診察
C 嚥下内視鏡検査
D 嚥下造影検査
E 摂食嚥下の総合評価
各論 診断と治療
3 口腔の疾患
A 舌炎、口角炎、口内炎
B 口腔・咽頭の真菌症
C 口腔白板症
D 味覚障害
E 口腔の先天異常(口蓋裂、口唇裂を中心に)
F 歯原性腫瘍
G 口腔の良性腫瘍
4 唾液腺の疾患
A 唾液腺炎
B 唾石症
C ガマ腫
D 唾液腺
E その他の唾液腺腫脹をきたす疾患
5 咽頭の疾患
A 急性咽頭炎
B 急性扁桃炎、扁桃周囲膿瘍
C 慢性扁桃炎、反復性扁桃炎
D 扁桃病巣疾患
E アデノイド増殖症
F 閉塞性睡眠時無呼吸症候群
G 咽頭の良性腫瘍
H 咽頭の自己免疫性疾患
6 摂食嚥下障害
A 嚥下障害の外科的治療
第4章 喉頭・気管・頸部領域の基礎知識と疾患
総論 基礎知識
1 喉頭・気管および関連する組織の解剖と機能
A 喉頭の呼吸,発声,嚥下における役割
B 声帯の構造と音声機能
C 気管、気管支
D 反回神経と周囲臓器との関連
E 喉頭気管の発生からみた疾患との関連
2 音声機能の検査
A 聴覚心理的評価
B 声帯粘膜とその振動の観察
C 空気力学的検査
D 音響分析
各論 診断と治療
3 喉頭の疾患
A 喉頭炎、感冒(かぜ症候群)
B 急性喉頭蓋炎
C 声帯ポリープ,声帯結節
D 喉頭乳頭腫
E その他の喉頭腫瘤性病変
F 声帯麻痺
G 機能性発声障害
4 気管切開の適応と合併症
A 気管切開の適応と手技
B 緊急気道確保の手技
C 気管切開の合併症
5 喉頭気管の外傷、異物
A 喉頭・頸部気管の外傷
B 喉頭・気管・気管支の異物
第5章 頭頸部外科領域の基礎知識と疾患
総論 基礎知識
1 頭頸部腫瘍の治療に必要な解剖
A 脳神経と頸神経
B 頭頸部のリンパ節
C 甲状腺と上縦隔
2 頭頸部腫瘍の種類と疫学
A 悪性腫瘍
B 良性腫瘍
3 頭頸部腫瘍の病理所見
A A悪性腫瘍
B B良性腫瘍
4 治療法の特色と合併症
A 手術
B 放射線治療
C 化学療法
D 支持療法、緩和治療
各論 診断と治療
5 頸部良性疾患の診断と治療
A 頸部リンパ節炎
B 先天性頸嚢胞・瘻
C 深頸部感染症
D 頸部の良性腫瘍
E 茎状突起過長症
F 甲状腺腫
6 頭頸部癌の診断と治療
A 聴器癌
B 鼻・副鼻腔癌
C 口腔癌
D 咽頭癌
E 喉頭癌
F 唾液腺癌
G 甲状腺癌
H 原発不明頸部転移癌
7 その他の悪性腫瘍の診断と治療
A 悪性リンパ腫
B 肉腫
第6章 耳鼻咽喉科領域のリハビリテーションと心のケア
A 難聴のリハビリテーション
B 音声障害のリハビリテーション
C 嚥下障害のリハビリテーション
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書籍情報
- ISBN:9784521747873
- ページ数:573頁
- 書籍発行日:2020年6月
- 電子版発売日:2020年6月17日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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