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- 眼精疲労のブロック&ケア 眼鏡・コンタクトレンズ処方ハンドブック
商品情報
内容
情報化社会、スマートフォンの普及により「スマホ老眼」や「テクノストレス眼症」が増え続け、疲れ目、頭痛、肩こり、めまい、ドライアイ……合っていない眼鏡やコンタクトレンズが原因となる“眼精疲労”が年々増加していくなか、眼精疲労をいかに予防・治療するかが、眼科医療者の必須スキルとなっています。
本書では、屈折・調節・眼位のバランスに配慮して眼鏡やコンタクトレンズを処方するために知っておくべき視力測定のコツ、適正な矯正度数を求めるための両眼同時雲霧法のポイントをわかりやすく解説。処方のノウハウでは、レンズ選びの考え方や患者さんへの説明の仕方など、実践的な知識が身につきます。Case Studyでは、遠視矯正・近視過矯正・乱視未矯正・コンビネーション矯正の難しさと、それを解決してきた著者の技巧エッセンスが満載。調節異常の難治症例への対処法も学べ、「楽に見えるメガネがほしい」という患者さんのニーズに応えるスキルと知識が身につきます。
眼科医師のみならず、視能訓練士、眼鏡士、眼鏡店関係者まで幅広く、眼鏡とコンタクトレンズ処方にかかわるすべての人に役立つハンドブックです。
※本製品はPCでの閲覧も可能です。
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序文
はじめに
筆者が眼科医になって間もない頃,先輩から遠近両用眼鏡の処方方法を教わった.遠方が見える矯正度数と近方が見やすい矯正度数を併記する,いわゆる二重焦点レンズの処方であった.早速,患者さんに遠近両用眼鏡の処方を行った.遠用と近用の度数差は+2.50 D であった.2 週間ほど後に,その患者さんが「この眼鏡は掛けると気持ちが悪くなって,とても掛けられない」と訴えて再来した.眼鏡は二重焦点レンズではなく,累進屈折力レンズで作製されていた.累進屈折力レンズの知識は全くなかった.患者さんを待たせたまま,眼鏡店に走った.眼鏡店の主任さんが累進屈折力レンズのテストレンズセットを貸してくれた.それを持って外来に戻り,待っていた患者さんに試してみた.加入度数+1.50 D で満足してもらえた.累進屈折力レンズの処方には,テストレンズが必須であることを学んだ.
眼科医になって3 年目の頃,遠近両用累進屈折力レンズ眼鏡を処方した遠視の患者さんに,「眼鏡を使うようになってから,ひどかった肩こりがなくなったが,そのようなことはありますか?」と問われた.筆者は返答ができなかった.その後,数名の遠視患者さんに眼鏡処方後の肩こりについて質問してみた.異口同音に「そういえば肩こりを感じなくなった」と返ってきた.私事であるが,筆者は子供の頃から2.0 の視力があって,40 歳頃までは正視であったが,中学生の頃から眼は疲れやすく,肩こりがひどかった.筆者の肩こりも眼鏡で解消できるかもしれないと思い,遠用度数±0.00 D で加入度数+0.75 D の累進屈折力レンズ眼鏡を装用してみた.すると,激しかった肩こりを全く体感しなくなった.当時,筆者は35 歳だった.ちょうどその頃,眼科雑誌で“シューベルトの眼鏡”についての記述を見つけた.31 歳で他界したオーストリアの作曲家フランツ・ペーター・シューベルトが二重焦点レンズの眼鏡を掛けていたというものである.もしかすると,シューベルトも遠視だったのかもしれない.
20 年以上前のことだが,湖崎 克 先生と遠視について雑談したときに,湖崎先生も40 歳くらいまでは正視だったが,当時は遠用度数+3.00 D 加入度数+3.00 D の遠近両用累進屈折力レンズ眼鏡を装用されており,「遠視ほどやっかいな眼はない」,「諸悪の根源は遠視」とおっしゃっていた.筆者自身も現在は,遠用度数+2.50 D 加入度数+3.00 D の遠近両用累進屈折力レンズ眼鏡を使用している.“諸悪の根源”の意味が少しずつわかってきた.眼の屈折値は加齢に伴って遠視化することを症例でも自らも体験し,裸眼でよく見える遠視のつらさと,矯正の難しさをずっと感じてきている.よく見える眼に対する眼鏡処方の必要性について記述した教科書は存在しない.
遠視に快適な眼鏡を処方するのはとても難しい.近視の過矯正を改善するのは遠視を矯正する以上に難しい.しかし,どちらも激しい眼精疲労を訴えている症例が多い.
1980 年代にパソコンが普及し,眼精疲労を訴える患者さんが急増した.原因は,長時間の近方作業による毛様体筋の疲労であった.しかし,それを診断する適切な他覚的検査装置はなかった.毛様体筋の筋電図がとれれば診断ができると思ったが,実現できそうになかった.その頃,興味をもって研究していた調節微動が毛様体筋の筋電図に代わるのではないかとの思いで開発したのが調節機能解析装置である.毛様体筋の活動状態が他覚的に検出できた.毛様体筋の疲労が原因の眼精疲労を検出し,点眼液や累進屈折力レンズ眼鏡で治療できるようになった.
2010 年代になるとスマートフォンが普及し,眼精疲労を訴える症例はさらに増加した.巷では“スマホ老眼”と警鐘を鳴らしている.この眼精疲労には毛様体筋の疲労に加え,過剰な輻湊負荷による外眼筋疲労も加わっている.プリズム加入の累進屈折力レンズ眼鏡が奏効することもわかってきた.一方で,コンタクトレンズの普及もめざましく,眼鏡ではなく,コンタクトレンズで矯正したいという症例も多い.対応に苦慮したが,意外にもモノビジョン矯正が奏効することがわかった.
良好な視力を提供する矯正は容易であるが,眼精疲労を予防する快適な矯正を提供することはとても難しい.なぜなら,遠くがよく見える矯正を希望する患者さんは多いが,現代のような情報化社会では,遠方がよく見える矯正は必ず眼精疲労を発症するからである.良好な視力だけではなく快適さを提供するためには,矯正用具の種類によって異なる特徴を最大限に活用できる処方の研鑽を積むことが必要である.本書がその一助になれば幸いである.
本書は今まで多くの患者さんに教わった,眼精疲労を訴える症例に対する眼鏡やコンタクトレンズの処方手技を眼科外来診療に携わる多くの医療関係者に伝えたい思いで執筆した.本書の出版を提案,企画,そして編集に尽力いただいた三輪書店の久瀬幸代氏に深謝する.そして,眼精疲労の治療に関する適切な教科書がない中で,筆者にとって患者さんは最良の教科書であった.気長に治療に付き合ってくれた患者さんたちに感謝している.
2018年 4月
梶田雅義
目次
Section01 問診のコツ
1.はじめにどこに注目するか
歩き方・様子
頭位・顔(表情)
2.患者さんの訴えから予測できること
合わない矯正と眼精疲労
3.患者さんに聞くべきポイント
眼の疲れのほかにどのような症状があるか
いつ症状が悪化するか
どのような視力矯正用具を使用しているか・使用していたか
症状が出てからどのような検査・治療を受けているか
家族に同じような訴えをしている人がいないか
Section02 調節力を考慮した視力測定
1.視力測定で大切なこと
2.視力測定のコツ
リズム
視標の提示
視力値の決定
・視力表
・指数弁
・手動弁・光覚弁・全盲
3.他覚的屈折検査を利用した矯正視力測定
他覚的屈折検査での配慮
・適切なオートレフラクトメータの利用方法
4.自覚的屈折検査を利用した矯正視力測定
自覚的屈折検査を行う前に
・調節とは
・自覚的屈折検査の注意点
・検眼枠の選択
レンズ交換法による矯正視力測定
乱視の検出
・スリット板を用いる方法
・乱視表・クロスシリンダ
5.視力測定のフローチャート
Section03 眼鏡・コンタクトレンズ度数の決定
1.“快適”な矯正度数の考え方
2.適正な矯正度数の求め方
両眼同時雲霧法のポイント
左右眼の屈折度数の差が2.00Dを超える場合
・片眼ずつの雲霧法
3.眼鏡・コンタクトレンズの試し装用
眼鏡
・不同視がある場合
・不同視がない場合
・初めて眼鏡を使用する場合
・使用している眼鏡度数を変更する場合
コンタクトレンズ
・ソフトコンタクトレンズ
・ハードコンタクトレンズ
・両面トーリックハードコンタクトレンズ(-3.50Dを超える乱視がある場合)
4.眼鏡やコンタクトレンズの試し装用中に不満が生じる場合の対処法
眼鏡
コンタクトレンズ
Section04 屈折異常と症状別の処方ポイント
1.遠視
処方のポイント
2.近視
処方のポイント
3.強度近視
処方のポイント
4.乱視
処方のポイント
5.弱視
処方のポイント
6.不同視
処方のポイント
7.眼位異常
処方のポイント
8.小児
処方のポイント
9.老視
老視の初期症状
処方のポイント
10.スマホ老眼
処方のポイント
Section05 患者さんからよくされる質問とその答え方
小児
成人
Case Study
001 適正矯正を目指した単焦点レンズ
002 累進屈折力レンズ
003 モノビジョン矯正
004 プリズム眼鏡
Summary眼鏡による近視過矯正の眼精疲労対策
[眼鏡処方 遠視矯正]005 単焦点レンズ
006 累進屈折力レンズ
007 モノビジョン矯正
008 プリズム眼鏡
Summary眼鏡による遠視矯正の眼精疲労対策
[コンタクトレンズ処方 近視過矯正]009 適正矯正を目指した単焦点レンズ
010 遠近両用ソフトコンタクトレンズ
011 斜位に対するモノビジョン矯正
Summaryコンタクトレンズによる近視過矯正の眼精疲労対策
[コンタクトレンズ処方 遠視矯正]012 単焦点ソフトコンタクトレンズ
013 遠近両用ソフトコンタクトレンズ
014 モノビジョン矯正
Summaryコンタクトレンズによる遠視矯正の眼精疲労対策
[コンタクトレンズ処方 乱視未矯正]015 乱視用ソフトコンタクトレンズ①
016 乱視用ソフトコンタクトレンズ②
017 乱視用ソフトコンタクトレンズ③
Summaryコンタクトレンズによる乱視未矯正の眼精疲労対策
[コンビネーション矯正処方]018 強度近視
019 強度遠視
020 不同視
021 強度乱視
022 外斜位(プリズム眼鏡とソフトコンタクトレンズモノビジョン)
Summaryコンビネーション矯正による眼精疲労対策
[眼鏡処方 調節異常]023 調節けいれん
024 テクノストレス眼症
025 高齢者
026 IOL(眼内レンズ)挿入眼
Summary調節異常の眼精疲労対策
[眼鏡処方 難治症例]027 Barré-Liéou症候群
028 外傷後の老視
029 白内障手術で消退した調節けいれん
[点眼処方 難治症例]030 難治性調節けいれん①
[眼鏡・コンタクトレンズ処方 難治症例]031 難治性調節けいれん②
032 難治性調節けいれん③
Summary調節異常による難治症例の眼精疲労対策
付録
・1 乱視表を用いた自覚的屈折検査
・2 クロスシリンダを用いた自覚的屈折検査
・3 医療費控除の対象となる眼鏡
・4 小児弱視等の治療用眼鏡等に係る療養費の支給について
Column 遠視矯正がなぜ難しいか ?
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書籍情報
- ISBN:9784895906258
- ページ数:250頁
- 書籍発行日:2018年4月
- 電子版発売日:2022年2月4日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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