こういうことだったのか!! DIC~ある集中治療医の解釈

  • ページ数 : 222頁
  • 書籍発行日 : 2022年2月
  • 電子版発売日 : 2022年2月9日
2,970
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商品情報

内容

DICはおもしろい!!
誰もが悩むDICに関する疑問について、新たな視点からわかりやすく解き明かします


日本国内で,また日本と世界で,その考え方や取り組み方が大きく異なるDIC(disseminated intravascular coagulation: 播種性血管内凝固症候群).この違いが,DICに関する疑問が膨らみ,敬遠される一因と言える.本書では,説明しづらい事柄を,軽妙な語り口で分かりやすく伝えることに定評のある著者が,新たな視点でDICを紐解いた.これまでの疑問が氷解し,「DICはおもしろい」と思える1冊.

あわせて読む → 「こういうことだったのか!!」シリーズ

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序文

はじめに


集中治療室は多くの若手医師であふれます.そこで働く筆者は,彼らとのコミュニケーションをエンジョイしています.様々な大学,様々な研修病院出身の彼らからの情報を通じて,他病院で行われる新しい試みをゲットできることがあります.有名医師のコツが手に入ることもあります.

初期研修病院次第で重症患者管理はかなり異なると感じます.

その最たるテーマがDIC(disseminated intravascular coagulation: 播種性血管内凝固症候群)です.


DICについて一切教わりませんでした

DICへ即薬剤介入と習いました

DICへ積極輸血を習いました


エビデンスがないのでDICの治療は不要と習いました

バックグラウンドが異なる若手医師が受けたDIC教育はおそろしく異なります.エビデンス云々についても,具体的に聞くと答えはなく,「エビデンスがない」という言葉が一人歩きしていると感じます.DIC学の第一人者は,DICの一般的な認識が「disseminated international confusion(播種性国際的混乱)」「disseminated intracerebral confusion(播種性脳内混乱)」であると嘆きます1).DICのテキストはDICエキスパートによってのみ書かれてきたといって過言ではありません.

筆者は,DICに興味がありますが,DICエキスパートではない集中治療医です.あえて,エキスパートではない筆者が「なぜ若手医師へのDIC教育の違いが生まれたのか?」を紐解いてみたいと考え筆者なりにまとめました.若手医師がDICを理解する一助となることを願います.


2022年2月

小尾口邦彦


1)Iba T, Levy JH, Raj A, et al. Advance in the management of sepsis-induced coagulopathy and disseminated intravascular coagulation. J Clin Med. 2019; 8: 728.

目次

CHAPTER 01 アンチトロンビンをめぐる物語

頻用される言葉は元の意味が忘れられる

止血メカニズムとアンチトロンビン

DICとアンチトロンビン

KyberSept試験(2001年)の概要と結果

なぜアンチトロンビンは重症敗血症に対して効果を発揮できなかったのか?

海外においてはDVT予防目的のヘパリン投与が重視される

低用量ヘパリン併用はなぜアンチトロンビンの効果を減弱させるのか?

日本において行われた敗血症性DICに対するアンチトロンビンの効果を検証したopen-label RCT(2013年)

CHAPTER 02 プロテインCの10年

活性型プロテインCとは

PROWESS試験とKyberSept試験

PROWESS試験

ついにプロテインCは承認された

国際敗血症診療ガイドライン初版(SSCG2004,2004年)に推奨記載!!

アメリカと日本の医薬品価格決定や支払い制度の違い

DIC合併の有無で検討したPROWESS試験サブグループ解析

死亡リスクが低い重症敗血症へのプロテインCの効果を検証したADDRESS試験

プロテインCとヘパリン併用を検証したXPRESS試験

小児を対象としたRESOLVE試験

SSCG2008におけるプロテインC記載

最終決戦 PROWESS-SHOCK試験

筆者なりのプロテインC総括

CHAPTER 03 TFPI,お前もか

重症敗血症に対するTFPIの効果を検証した第III相試験 OPTIMIST試験

重症市中肺炎に対するTFPIの効果を検討 OPTIMIST試験サブグループ解析

仮説はRCTにより実証されるか? 重症市中肺炎へのTFPIの効果を検証した第III相試験 CAPTIVATE試験

CHAPTER 04 老舗ヘパリン最強?

KyberSept試験(2001年)の復習

OPTIMIST試験(2003年)の復習

なぜヘパリン単剤が最強となるのか?

敗血症への未分画ヘパリンの効果を検証したRCT HETRASE試験

敗血症へのヘパリンの効果と安全性に関するシステマティックレビュー・メタ解析

システマティックレビュー・メタ解析への危惧

CHAPTER 05 日の丸DIC治療薬トロンボモジュリンの戦い

トロンボモジュリンとは

トロンボモジュリンの国内第III相試験 ART-123試験

トロンボモジュリン国際第IIb相試験

トロンボモジュリンは世界初の敗血症治療薬となるか! 敗血症関連凝固障害へのトロンボモジュリンの有効性を検証した第III相試験 SCARLET試験

介入の遅れに足をすくわれた可能性がある

SCARLET試験のeditorialにおいて

SCARLET-2試験

CHAPTER 06 DIC治療薬国内第III相試験を振り返る

日本は創薬大国

日本で認可されたDIC治療薬を振り返ってみよう

DIC治療薬国内第III相試験のまとめ

CHAPTER 07 DIC離脱率をDIC治療薬試験のprimary endpointとすることは適切なのか?

DIC離脱率

ダナパロイド治験で登場したDICスコア改善度

DIC診断基準をDIC離脱診断基準として予後評価に利用できるのか?

Dichotomization(二分法)

DIC離脱率をグラフでイメージすると

厚生省DIC診断基準・急性期DIC診断基準において血小板数ファクターが大きい

急性期DIC診断基準をDIC離脱判定に用いるとき低特異度は問題とならないのか

DIC離脱判定日の設定

トロンボモジュリン薬事審議においても,DIC診断基準をDIC離脱診断基準とすることに疑義があった

なぜダナパロイド・トロンボモジュリン・遺伝子組み換えアンチトロンビンの国内治験・薬事審議において短期指標・代用指標であるDICスコア改善度・DIC離脱率が重視されたのか?

CHAPTER 08 日本版敗血症診療ガイドラインDIC治療薬推奨

SSCG2004・2008・2012

日本版敗血症診療ガイドライン

CHAPTER 09 なぜ敗血症あるいはDICをテーマとする臨床試験は難しいのか?

Heterogeneity

敗血症死亡率はここ20年間で劇的に改善した!!

細菌検査能力の向上も重症敗血症治療薬開発の逆風となる?

介入まで時間がかかりすぎる

1回だけのRCTで決めてよいのか?

国際共同治験の参加国・参加施設数が多すぎる

日本と世界の乖離

CHAPTER 10 DIC診断基準

厚生省DIC診断基準

急性期DIC診断基準

ISTH overt DIC診断基準

予後予測における3診断基準の比較

日本版敗血症診療ガイドラインにおけるDIC診断基準推奨

DIC診断基準策定の難しさ

CHAPTER 11 それって本当にDIC?

CHAPTER 12 DICの病型分類

DICの病型分類

FDPとD-dimerの復習

CHAPTER 13 DICの治療

DIC病型分類

線溶抑制型DIC(敗血症性DIC)への抗凝固療法

補充療法

線溶亢進型(線溶優位型)の治療

抗線溶療法

CHAPTER 14 外傷性DIC

外傷に伴う大出血

外傷性DIC

CHAPTER 15 産科DIC

分娩時異常出血

産科危機的出血

羊水塞栓症

狭義と広義の産科DICがある

CHAPTER 16 敗血症・DIC臨床試験を理解するために最低限必要な統計の知識

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書籍情報

  • ISBN:9784498166387
  • ページ数:222頁
  • 書籍発行日:2022年2月
  • 電子版発売日:2022年2月9日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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