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- 産科と婦人科 2022年 Vol.89 No.7【特集】産科診療の進む道―診療ガイドラインの先にあるもの―
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序文
産科診療の進む道
―診療ガイドラインの先にあるもの―
エビデンスに基づく医療(evidence based medicine:EBM)は各領域で浸透してきている.EBM の実践には,疑問の定式化,エビデンスの収集と批判的吟味,患者への適用検討などのステップがある.しかし,臨床医がこの全ステップを,自分の力だけで,すべての診療で行うことには無理がある.そこで大きな手助けとなるのが診療ガイドラインである.2008 年に発刊された「産婦人科診療ガイドライン産科編」は,版を重ね4 回の改訂を経て2020 年版となった.現在は2023年版に向け改訂作業中である.
当初は,まだ診療ガイドラインとはどのようなもので,日々の診療にどうかかわってくるか,自分を含め多くの医師は理解しておらず,医師の裁量を狭めるだけなのではないか,エビデンス偏重の権化ではないか,訴訟に利用されるだけなのではないか,などと多くの批判があった.しかし関係者の多大な尽力と,喧々諤々の白熱した議論のかいあって,今では本ガイドラインは広く認知され,受け入れられ,産科臨床の実践に不可欠なものにまで成熟した.エビデンスの収集と批判的吟味にかかる膨大な時間の節約が,誰の目にも明らかであったことは,本ガイドラインが普及した大きな理由であろう.また本ガイドラインが,ほかの診療ガイドラインと一線を画し,コンセンサスを重視し,実行可能性を加味した標準的産科診療を目指したことも普及の一因であろう.
今では逆に便利さゆえに,本ガイドラインへの過度の依存が,特に推奨への盲従が懸念される.これはキャリアをスタートさせたばかりの若い医師の間で強い傾向にあると感じる.ガイドラインは変えてはならない金科玉条ではなく,あくまでも,現時点での信頼に足る道標に過ぎないことを,われわれは今一度認識する必要がある.
「産婦人科診療ガイドライン産科編」は,この先どのように変わっていくのだろうか.それは産科診療の方向性とも軌を一にするはずである.
そこで本号では,今後の改訂で変化が想定される項目や,新たに取り上げられる可能性のある項目について,各分野のエキスパートの先生方に現状と問題点,方向性などを論じていただくこととした.もちろんすべてを網羅することはできないが,近未来の産科診療に向けて,いかに準備,対応すべきかを理解する一助となれば幸いである.
(東海大学医学部専門診療学系産婦人科 石本人士)
目次
Ⅰ.総論
1.診療ガイドライン産科編で今後取り組むべき課題 / 板倉敦夫
Ⅱ.各論
2.分娩誘発・頸管熟化方法 / 新垣達也・他
3.硬膜外麻酔による無痛分娩の現状と課題 / 鈴木俊治
4.産科出血への対応 / 兵藤博信
5.切迫早産管理の動向 / 田嶋 敦・他
6.一絨毛膜性双胎の管理 / 村越 毅
7.妊娠高血圧症候群の診療 / 田中幹二・他
8.静脈血栓塞栓症の予防と管理 / 杉村 基
9.胎児健常性評価法の課題と方向性 / 松岡 隆
10.胎児治療の動向と近未来 / 和田誠司・他
11.出生前診断・遺伝学的検査の現状と近未来 / 佐村 修
12.周産期メンタルヘルスケアの問題点と今後の方向性 / 笠井靖代・他
13.社会的リスクを有する妊婦への対応 / 水主川 純
連載
医療裁判の現場から 第33回
経口避妊薬(低用量OC)を服用した患者が,脳梗塞を発症し,左上下肢運動機能障害等の後遺症が残ったのは,医師が同剤添付文書記載の禁忌,使用上の注意に違反して同剤を処方したことによると主張したものの,裁判所がこれを認めなかった事例 / 山田隆史
症例
急速に進行する子宮体癌肺転移による呼吸困難感にペムブロリズマブが著効した1例 / 荻本宏美・他
当院で経験した急性虫垂炎合併妊娠の13例 / 古井憲作・他
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書籍情報
- ISBN:9784015208907
- ページ数:106頁
- 書籍発行日:2022年6月
- 電子版発売日:2022年6月22日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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