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初学者のための神経心理学入門

  • ページ数 : 316頁
  • 書籍発行日 : 2022年6月
  • 電子版発売日 : 2022年7月1日
6,600
(税込)
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商品情報

内容

臨床神経心理学の「わからない」を「面白い」に!

患者の主訴だけでは症状を見落としやすい、用語が難しい、など、わかりにくく複雑と思われがちな神経心理学。
本書では、多様な症状を理解するための基本的な考え方から、言語や行為などの各神経心理症状、さらに画像の読影法や臨床でよくみる認知症患者の診かたについて各領域専門家が丁寧に解説。
症状への気づきを促し、患者や家族への説明や対応の指導、リハビリテーションにつながるプロセスを伝授します。

※本製品はPCでの閲覧も可能です。
製品のご購入後、「購入済ライセンス一覧」より、オンライン環境で閲覧可能なPDF版をご覧いただけます。詳細はこちらでご確認ください。
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序文

緒言

本書は神経心理学をこれから本格的に学ぼうとする人のための入門書である。筆者が主催した第43 回日本高次脳機能障害学会学術総会での企画セミナー「初学者のための神経心理学入門」は立ち見があふれて部屋に入りきれないほどの盛況であり,聴衆の評価も非常に良好であった。神経心理学を基礎から学ぼうとしている人たちが多いことを実感した。そこで,その企画に参加していただいた講師陣にそのまま執筆をお願いし,講演の内容だけでなく,初学者のための入門書として必要と思われる事項を追加していただいた。さらに編者である筆者が全部の原稿を何度も読み直し,入門書として必要と考えられる項目を追加して執筆させていただいた。

もともと,この学会企画もそしてこの書物も,筆者がこの世界に本格的に身を置くことを決意させてくれた山鳥重先生の名著「神経心理学入門」(医学書院,1985年)の名称を継承させていただいている。山鳥先生の「神経心理学入門」は現在も色褪せることなく燦然と輝いており,その価値を失ってはいない。それなのに,この「初学者のための神経心理学入門」を世に出すことの意義と狙いについて語っておきたい。一つの理由は,山鳥先生の「神経心理学入門」は入門書としてはやや難解というイメージがあり,初学者には理解が困難という声を聴くことであった。もう一つの理由は,さすがに出版から年月が立ち,新しい知見が蓄積されてきているので,それを加えた入門書が必要であろうと考えたことである。特に最近ますます重要性を増している認知症や画像診断については別にまとまった解説が必要であると考え,その道の専門家に解説をお願いした。他の章についても基礎的な事項に加えて最近の新しい知見についても解説していただいている。

「初学者のための」と銘打ったものの,全著者に精力的に執筆していただいたことで,入門書としても,さらに本格的な学術書としても,十分に読む価値のある書物にできあがったと考えている。もちろん,山鳥先生の名著にはとても及ばないが,現時点での世界の知見に遅れず,しかも平易な入門書として利用していただければと思う。本書を読んだ若き臨床家が神経心理学の理解を深め,臨床研究への意欲を持つことになっていただければ,編者としてこれにすぐる喜びはない。

書物の企画から随分と時間がたってしまい,早くから原稿を書き上げていただいた著者の先生方や出版編集を担当していただいた新興医学出版社の岡崎さんには大変なご迷惑をかけた。この場を借りて深く謝罪したい。なお,全体の構成や各部の内容に齟齬があるとすれば,すべからく編者の責任である。忌憚なきご批判を賜れれば幸いである。


2022年1月

仙台にて 松田 実

目次

第1章 神経心理学の基礎 (松田 実)

Ⅰ 脳構造と認知機能との関係─大まかな原則 

Ⅱ 神経心理症状分析のための基本的な考え方 

Ⅲ 高次脳機能の局在をめぐって 

まとめと本書の構成 

第2章 失語 (佐藤睦子)

Ⅰ 脳機能分化の観点から:言語野について 

Ⅱ 失語症の定義:原因疾患があっての失語症 

Ⅲ 歴史的観点から:温故知新 

Ⅳ 失語症を構成する様々な症状:失語症は言語症状の寄せ集まり 

Ⅴ 多言語話者の失語症 

Ⅵ てんかん性失語 

Ⅶ 神経変性疾患による失語症 

Ⅷ 失語症タイプ:共通言語としての失語症タイプ 

Ⅸ 言語聴覚療法から考える失語症:言語症状への対応 

初学者への勧め 

第3章 失行 (二村明徳)

Ⅰ 動作・行為を支える神経系 

Ⅱ 運動系と感覚系 

Ⅲ 大脳連合系 

Ⅳ 頭頂連合野と動作障害 

Ⅴ 習熟動作と模倣 

Ⅵ 手指の巧緻運動 

Ⅶ 習熟動作の解放現象 

Ⅷ 大脳連合系の障害による高次運動障害 

第4章 失認 (佐藤正之)

Ⅰ 失認の歴史 

Ⅱ 失認のないことを確認するには… 

Ⅲ 視覚・聴覚の認知過程の大原則:背側経路と腹側経路 

Ⅳ 側頭極のはたらき 

Ⅴ 失認の定義 

Ⅵ 失認の脳内メカニズム 

Ⅶ 失認の評価の基本 

Ⅷ なぜ「失認は難しい」のか 

Ⅸ 失認の分類 

Ⅹ 視覚失認(visual agnosia) 

Ⅺ 聴覚失認(auditory agnosia) 

Ⅻ 触覚失認(tactile agnosia) 

  その他の認知障害 

第5章 記憶障害 (今村 徹)

Ⅰ 記憶の分類と図式:脳損傷患者の記憶障害を理解するために 

Ⅱ 記憶障害の患者と家族の診察,面接:行動観察と情報収集 

Ⅲ 神経心理学的検査による近時記憶障害の評価 

第6章 右半球症状 (太田久晶)

Ⅰ 空間性注意障害とその関連症状 

Ⅱ 病巣対側上下肢に対する注意と認識の障害 

Ⅲ 視覚性失認とその関連症状 

Ⅳ 動作の制御の障害 

Ⅴ 感情障害 

第7章 数の障害 (松田 実)

Ⅰ 数処理や計算のモジュール性について 

Ⅱ 数の概念について 

Ⅲ 数処理の障害 

Ⅳ 計算障害の分類 

Ⅴ 失算をきたす病巣─特に右半球の関与について 

Ⅵ 失算をきたす疾患 

Ⅶ 数に関する定型的検査 

Ⅷ 数に関わるその他の重要な臨床的事項 

第8章 認知症 (長濱康弘)

Ⅰ 鑑別診断について 

Ⅱ 皮質型認知症と皮質下型認知症 

Ⅲ 主要な原発性認知症疾患 

Ⅳ 認知症患者を診察する際のポイント 

Ⅴ 診察の組み立て 

Ⅵ 家族などの情報提供者への問診 

Ⅶ 認知機能検査(神経心理学的検査) 

Ⅷ 症例呈示─診察・検査結果の解釈のポイント─ 

第9章 脳解剖の読影法 (藤井正純・二村美也子)

Ⅰ 大脳皮質の読影に適した画像 

Ⅱ 脳表解剖と読影法 

Ⅲ 白質解剖 

Ⅳ 症例呈示 

第10章 補遺 (松田 実)

はじめに:用語の問題─特に「作業記憶」について 

Ⅰ 短期記憶と長期記憶の二重解離 

Ⅱ 作業記憶の概念について 

Ⅲ 神経心理学における二重解離や選択的障害の重要性 

おわりに 

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書籍情報

  • ISBN:9784880029160
  • ページ数:316頁
  • 書籍発行日:2022年6月
  • 電子版発売日:2022年7月1日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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