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- 胆と膵 2021年7月号(Vol.42 No.7)【特集】 胆管損傷と(医原性)術後胆管狭窄:回避とリカバリー法
商品情報
内容
胆管損傷を回避するためのdifficulty scoreの意義/ICG蛍光イメージングを用いた胆管損傷回避法/胆囊摘出術におけるAI を用いた胆管損傷回避法 ほか
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序文
序文:胆管損傷から肝移植に至る一本道を回避するために
肝胆膵外科において胆管損傷は依然として完全には解決されていない問題である。日本内視鏡外科学会の全国集計によれば1990 年~2017 年の腹腔鏡下胆摘術累積576,409 例における発生率は0.59%(3,397 例)である。2002 年には0.8%(155/19,557)であったが,2017 年には0.45%(145/32,178)に低下した1)。米国からの報告では,711,454 例の胆囊摘出術のうち胆汁漏が3,551 例(0.5%),胆管損傷が1,548 例(0.22%)発生したという2)。Strasberg ら3)によって提唱されたCVS(Critical view of safety)の概念は広く受け入れられ,近年では,Honda4)らの提唱するss‒innner を剝離層とする方法も発生率の低減に貢献していると思われる。しかし,誤認による胆管損傷は皆無にはならない。また頻度は少ないものの肝切除の際にも胆管損傷は一定の頻度で生じている。
胆管損傷は修復しても一定の頻度で術後に胆管狭窄をきたす。前述した日本内視鏡外科学会の集計によれば胆管損傷の約7 割が術中に発見され修復術を受けている1)。残りの3 割の患者のうち半数は外科的治療,残る半数は内視鏡などの保存的治療を受けている。術後の胆管狭窄発生率は6.9%(234/3,397)とされているが,遠隔成績は不明である。米国の報告では,胆汁漏のほとんどが内視鏡的に治療された。一方,胆管損傷1,548 例中1,294 例が外科的修復術を受け,186 例が内視鏡的治療,67 例が経皮的治療を受けた2)。この論文では遠隔成績も分析しており,胆汁漏だけでも3 年後の死亡率が5.8% vs 4.8%と胆汁漏発生例で約1%高く,胆管損傷例にいたっては5 年死亡率が14.8%と極めて高い衝撃的なデータを報告している。とくに外科的治療例では5 年死亡率が12.4%なのに対して,内視鏡的治療では5 年死亡率が31.9%と極めて予後不良である。もちろん内視鏡的治療しか行いえない状態の患者はやむを得ないが,内視鏡的治療で治癒しない場合は,外科的治療に移行することを常に念頭におくべきという警鐘と捉えるべきであろう。また,胆管損傷以外にも,胆囊癌などで胆管周囲リンパ節郭清を施行すると虚血によって術後胆管狭窄をきたすことも知られている。
術後胆管狭窄の治療には相当の期間を必要とし,最悪の場合,胆汁性肝硬変から肝移植を必要としたり,あるいは胆管炎性肝膿瘍で死亡する5)。術後胆管狭窄の治療は外科的治療と内視鏡・経皮的治療の組み合わせが行われることが多い。外科的治療の成功率は76~95%と比較的良好であるが,完璧に治癒するとはいえない6)。1 例をあげると,オランダからの報告では,281 例の肝管空腸吻合術後に13.2%(37/281)に吻合部狭窄が生じたという7)。さらにその後も再狭窄が5%,再々狭窄が2%に生じると述べており,一部の症例は治療抵抗性であることが分かる。胆管空腸吻合の再狭窄は多くの場合,肝内胆管まで狭窄が波及し,治療のためには肝葉切除が行われる場合がある。Laurentら8)の報告では,18 例に対して肝右葉切除を施行し,幸い死亡例はなかったものの11 例(61%)に重篤な術後合併症が発生したと述べている。この結果は,肝の線維化が進む前にもっとも信頼のおける治療法である外科手術(多くは肝葉切除)に踏み切る必要性を示唆している。
決断を遅らせる誘因となるのは,胆管損傷と胆管合併症による回復不能な状態(肝移植)になるまでときには20~30 年という長い期間を要することである9)。多くの場合,主治医は変わっていたり,患者は通院を中断したりしている。肝胆膵疾患にかかわる医療者はこの胆管損傷~狭窄~胆管炎~肝硬変への1 連の危険なシークエンスを十分理解しておく必要がある。すなわち,予防法を熟知することは当然だが,終末像である胆汁性肝硬変に至ることを未然に回避する方策とタイミングを熟知していなければならない。本特集では第一線のエキスパートの先生方に素晴らしい原稿を執筆していただいた。本号が読者の皆様のお役に立てれば幸いである。
遠藤 格
目次
特集 胆管損傷と(医原性)術後胆管狭窄:回避とリカバリー法 企画:遠藤 格
序文:胆管損傷から肝移植に至る一本道を回避するために
遠藤 格
胆管損傷を回避するためのdifficulty scoreの意義
時任 史聡ほか
ICG蛍光イメージングを用いた胆管損傷回避法
河口 義邦ほか
胆囊摘出術におけるAI を用いた胆管損傷回避法
遠藤 裕一ほか
急性胆囊炎に対する腹腔鏡下胆囊摘出術中のbailout surgery
日比 泰造
胆管損傷(Strasberg A〜D):対処法とフォローアップ―腹腔鏡下胆囊摘出術に伴う胆管損傷への対応―
坂本 太郎ほか
胆管損傷Strasberg E(対処法とフォローアップ)内視鏡,ランデブー
高橋 智昭ほか
肝動脈・門脈損傷を伴う胆管損傷に対する対処法とフォローアップ
浅井 浩司ほか
肝切除時の胆管損傷のリスク,回避法とリカバリー法
貞森 裕ほか
肝胆囊癌術後の胆管狭窄のリスクと治療法
桒谷 将城ほか
先天性胆道拡張症手術における胆道再建と術後胆管狭窄へのリカバリーショット
森根 裕二ほか
腹腔鏡下,ロボット支援下胆管空腸吻合における狭窄予防法
刑部 弘哲ほか
生体部分肝移植(duct-to-duct)における胆管狭窄の回避法
宮城 重人ほか
生体部分肝移植(duct-to-duct)後の胆管狭窄へのアプローチ法
小林 剛ほか
肝内結石症術後胆管狭窄に対する治療戦略
露口 利夫ほか
Roux-en-Y法再建腸管における胆管空腸吻合部狭窄への内視鏡的アプローチ法
石井健太郎ほか
症例
経皮経肝的に治療し得た肝内胆管と交通を有する肝円索膿瘍の1例
曽々木 昇ほか
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書籍情報
- ISBN:9784865174243
- ページ数:104頁
- 書籍発行日:2021年7月
- 電子版発売日:2022年7月22日
- 判:A4判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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